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第二話「The Sting」(3)
  流の大きな足音が遠ざかると、がらんとした木造の教室に静寂が満ちた。
 無代は相変わらず転がされたまま、目の幅涙でだーだー泣いている。
 一方の香は香で、どこか途方にくれたようにぺたん、と座り込んだまま無代を睨んでいた。
 が、やがて諦めたようにふ、とため息をつくと、無代の首筋に指先を滑らせる。
 ちくり。
 「がああああああっ!」
 無代の身体が跳ね上がった。身体の自由が戻ったのだ。
 涙を袖で拭いながら、言葉にならない大声でわめきつつ、香の胸ぐらをぐい、と掴む。
 香の小さな身体ががくん、と揺さぶられる。が、その身体に抵抗の力はこもらず、細い首と手足もつられてがくがくと揺れるだけ。
 だん、と床に押し倒され、無代の腕で押さえつけられた。しかし、香に抵抗の意志が全くないことを悟ると、無代も腕から力を抜く。ただ、掴んだ襟は離さないところなど、なかなかに油断がない。
 仰向けの香。手足はてんでバラバラの方向に散らばり、首も力なく傾げられる。
 それはまるで、壊れた人形のようである。
 「…何なんだよ、アンタ…ワケわかんねえよ…」
 やっとのことで、無代が声を絞り出した。
 「…」
 香はぴくりとも動かない。
 「何とか言ったらどうなんだよ。何でこんなことするんだ?」
 「…分からなかったから…」
 「何?」
 「…どうすればいいのか、分からなかったから…」
 唇だけを動かして、香が答えた。小さな声。
 「どうすれば…ってオマエ…」
 呆れ声を出す無代に、香がくるりと顔を向ける。
 「…私は…人の運命が見える。…知ってるでしょう? 『一条の狂い姫』」
 「…まあ、噂だけは。…本当なのか? そんなもの見えんの? オマエ?」
 「…見える。いつでも何でも、というわけじゃないけど…自分の意志とは関係なく」
 無代はまだ信じられない、という顔。
 「自分の事も?」
 「自分の事は見えない。でも…自分の母親の死相まで…見える」
 「…そいつあ…。流のヤツも承知の上なんだな?」
 香がこくり、とうなずく。 
 「よし、アイツが信じるなら俺も信じる。…で、それなのに俺の運命が見えない、ってわけか、話を総合すると」
 香がまたこくり、とうなずく。
 「で? 見えないからって…何でこんなことする?」
 「…興味…が…あったから。どうして見えないのか。…ねえ、なぜ見えないの?」
 「知るかよ」
 香を押さえつけていた腕をぽい、と離して、無代が肩をすくめた。
 「俺に分かるワケないだろ。…で、何? それを見るために、俺とその…キスしたり…もっとアレとかコレとかする、っての?」
 こくり。手を離されてもまだ倒れたまま、香がうなずく。
 「…何だよ、回りくどいな」
 無代は香の方に向って、どかっとあぐらをかいた。

 「お前、俺のこと好きなんだろ」

 「え?」
 ぴょこん! 倒れていた香の身体がいきなり跳ね上がり、空中で色々動いたと見るや無代に向いてぴたっ、と正座した。
 「うお、びっくりした! 何それ、すげえ!」
 「…今…なんて言った…の?」
 驚いてのけぞる無代に、これまたびっくりした顔の香が詰め寄る。
 「何…って。お前、結局俺のこと好きなんだろ? 運命とか何とか回りくどいこと言ってるけどさ」
 「…どうして…そうなる…の?」
 「どうしてってお前…」
 詰め寄る香に、負けじと無代がぐい、と視線で押し返す。
 「お前、俺に興味あるんだろ?」
 「そう」
 「で、触ったりキスしたりしたろ?」
 「そう」
 「もっと…その、アレコレもしようとしたろ?」
 「それは…」
 「オレの胸はだけてくれたのは誰よ?」
 「…私」
 「アレコレしたかったんだろ?」
 「…そう」
 「好きなんじゃん」
 「…えええ!?」
 身を乗り出していた香が、がくん、と退いた。呆然、という顔で無代を見る。
 そんな馬鹿な、という思い。
 でも、思い返してみる。この男を最初に見た時。
 (…義兄様の友達だから、って言っても、きっとつまらない一生を送るのだろうと…)
 ところが、無代の未来に何も見る事ができず、混乱して逃げてしまった。
 その後…その真っ白な未来が気になって、頭から離れなくなった。
 その真っ白な未来を、あれこれ想像した。
 もう一度あの男を見れば、と思ったが、航海に出てしまったと知って『落胆』した。
 それが帰って来たと知って『嬉しかった』。
 じっとしていられず、両親に頼んで天臨館に通い始めた。
 そして望み通り、それこそ穴の開くほど彼を見た。いくら見ても飽きる事がなかった。
 女がいると知って『落胆』し、別れるのを見て『ほっと』した。
 何とか彼に触れないものかと悩み抜いたが、今日義兄に捕まったのは『渡りに船』だった。
 アレコレできなかったのが…『心残り』だけど。
 …。
 がーん、と頭を殴られたような衝撃が来た。
 理解できてしまった。
 これではまるで…恋に狂ったタダの惚け女ではないか。
 「その顔だと理解できたみたいだな?」
 無代がやれやれ、とため息をついた。
 「ゴチャゴチャ考え過ぎなんだよ。これだから頭でっかちのお姫様はね〜。…とは言ってもだな」
 無代はもう一段、ぐい、と乗り出すと、
 「確かにオレは美弥と別れて一人だが…って、そういや何でお前がそれ知ってるんだ?」
 「…見てた。振られるとこ…」
 「見てたのかよ! …ま、まあいいや…いや、あんまりよくないけど…流の義妹だしな。これまでのことは水に流してやる。とはいえ、お前と付き合うのとかは無理だな。その…好きになられてもな」
 「…!」
 本日最大の衝撃。
 だが、覚悟はしていた。
 分かっていたことだ。これだけのことをしてしまったのだから、彼の心が自分に向くはずはない。
 「無理強いするな」、と義兄に約束させられた時、自分と彼のつながりは切れたのだ。
 それが分かったからこそ、無代の麻痺を解いたのではないか。
 当然だ。
 そして、この男との関係が切れたところで大した事ではない。
 元に戻るだけだ。
 城に戻り、また一人の部屋で自分の修行をするだけだ。
 「じゃ、オレ行くから。女の子振っといて放って行くのもアレだけど…こんな事の後だし。天臨館の中なら、一人でも平気だろ? もう睨まないでくれよ」
 無代が立ち上がり、背中を向ける。
 その瞬間。
 香の中で、何かがごそり、と音を立てて消失した。
 そしてその跡に、大きな穴が開いた。
 消えたのは、彼の『真っ白』を見つめながら過ごした時間。
 思えば母が亡くなってから、家族以外の人間に自分から触れたのは初めてだった。
 いや、言葉を交わした事さえ初めてだった。
 (…人は、言葉を交わさないと、こんなにもお互いの事が分からないのだ)
 そんなことも忘れていた。
 無代の背中が遠ざかる。香には真っ白に見える、その背中。
 そうだ。失うのはこれまでの時間だけではない。
 これからの時間。
 彼を見て過ごせたはずの、時間。
 運命が見えない彼だからこそ、不吉な未来に不安になることもなく、決して見飽きることのない、時間。

 未来。

 色を無くした香の心に、無色を通り越した、ただの『穴』が開いた。
 どこまで行っても出口のない穴。どこにもつながらず、何も入っていない、穴。
 その穴がどんどん大きくなり、『香』そのものを消しにかかる。
 痛みはない。
 いや、嘘。
 (だって…こんなに…涙が…)
 香の目から涙が溢れ出した。
 深い闇色の瞳がこの時だけ、涙の色で柔らかく溶けた。
 
 (行かないで下さい)

 涙と一緒に、祈りがあふれた。
 運命が見える少女の、生涯で初めての祈り。

 (振り向いて下さい)

 運命というものがあるのなら、祈ったって無駄だ。
 でも、あの人の真っ白な未来なら、ひょっとしたら祈りだって届くかもしれない。

 (行っちゃいやだ! 振り向いて! 置いていかないで!)

 …いや駄目だ。やっぱり祈りなんて届かない。
 さっき気づいたばかりではないか。
 届くのは「言葉」だけだ。
 今。
 この時。
 彼に。

 「…む、無代…むだいぃっ!」

 精一杯の勇気と一緒に、言葉を絞り出した。
 …だけど駄目だ。
 …遅かった。
 …もう遠すぎる。

 「…あ…」

 『穴』が、香の心臓を飲み込んだ。鼓動が凍り付く。
 肺を飲み込んだ。呼吸が凍り付く。身体と心が次々に凍り付いて行く。
 その中で、香は最後の祈りを捧げた。

 (『目』が最後でありますように)

 彼を最後まで見ていられますように。
 真っ白な彼を、一分一秒でも長く見ていられますように。
 その祈りは、しかし叶ったのか叶わなかったのか。

 無代が振り向いた。

 (…え?)

 それどころか、こっちへ全速力で走って戻ってくる。

 (…なぜ?)

 自分が祈った事も忘れて、香は目を丸くする。
 無代は走る速度を緩めず一気に近づくと、そのまま香を抱きしめて叫んだ。
 
 「伏せろ! テロだ!」 
 
 香は状況が飲み込めない。飲み込めない頭はただの石。
 代わりに…無代の腕の中で、香は見た。
 無代の『真っ白』の正体を。
 そして。
 香の心に、色が溢れ出す。
中の人 | 第二話「The Sting」 | 21:19 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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