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第十二話「The Flying Stones」(1)
 『瑞波の無代(みずはのむだい)』。

 その男を語る時、よく登場するのが『弱かった』という言葉だ。
 『冒険者としては三流以下』と表現されることもある。
 確かに彼はその生涯を通じ、鍛冶士や僧侶など多くの職業のスキルを学んだが、結局どれも大成はしなかったし、より上級の職業へ転職することもなかった。中でも賢者、すなわち『セージ』に至っては、その世界で知らぬ者のいない最高の師に弟子入りしながら、とうとう初歩の魔法さえまともに使えずに終わった、とされている。

 だが無代の名誉のために記しておくと、彼は決して無能というわけではなかった。

 いや、彼を良く知る人々に言わせれば『何かと器用で物覚えが良く、実に多芸な男だった……戦闘以外は』という。
 無代が持っていた技能で特に有名なのは『料理』と『書道』の二つだが、商人としても帳簿に明るく、自前で商船を巡らせるための操船、航海術も一通りは身につけていた。また他にも大工や和裁洋裁、石工、木地(木工)などを齧っていたというし、珍しい所では盆栽や製紙、果ては杜氏すなわち酒造の技術まで持っていた、という話まである。
 無能どころか実に『物の役に立つ男』だったのだ。
 だというのに無代がここまで無能扱いされるのには、当然ながら理由がある。
 まず一つには、彼が生涯をかけて駆け抜けた舞台が、その能力に比べてあまりにも大きすぎた、という事が挙げられるだろう。確かに『割と器用で物覚えが良い』程度の男が『世界の存亡を賭けた戦い』などという舞台に上がって、一体何ができるというのか。仮に何か役割が与えられたとしても、せいぜい名も無き裏方が精一杯だろう。
 そしてもう一つ、彼がその人生で関わった人々が(敵か味方かによらず)誰も彼も、それこそ人類史上に名を残すような超人揃いだった、という事もある。『比較対象』が悪すぎるのだ。
 スポーツに例えるならば、オリンピックのメダリスト級がひしめく競技場のど真ん中に、地方の県大会上位クラスの競技者が、たった一人で放り込まれたようなもの、と考えれば分かりやすいかもしれない。一般人の目から見れば県大会の上位だって十分に凄い事なのだが、それでもオリンピックだのワールドカップだので鎬を削る連中とは、残念ながら次元が違う。努力や才能、環境といったあらゆる越えられない壁が、これでもかと立ちはだかるのだ。
 だからこそ彼は、生涯を通してそれら『越えられない壁』と戦い続け、そしてとうとう最後まで、どれ一つとして越えることはできなかった。
 決して無能ではなく、それなりに役に立つ男だったけれど、それでも無代という男が『どこにでも転がっている二流、三流の冒険者』の域を出ることは、ついになかったのである。
 だが、なぜか人々は『無代』という男を忘れなかった。それどころか、
 『瑞波の無代に代えは無し』
 と、その名を謳い、記憶の中に長く留める事になる。
 一つの壁を越える事もできず、しかしそこに一筋の、確かな道を築き通した一人の男。
 
 その男の名前を。
 
 「……『瑞波』の、『無代』……!?」
 振り向いた戦前種(オリジナル)・翠嶺(すいれい)の目が、驚きに見開かれた。
 シュバルツバルド共和国の山中にある名もなき湖、その湖面を翠嶺の得意技『凍線砲(フリーザー)』で凍らせた、分厚い氷の上。
 あの地上数千メートルの『空の牢獄』から、身体一つで飛び降りた無代とD1(ディーワン)。
 二人の落下を助けた戦前種・翠嶺。
 その三人による奇妙な、しかしあまりにも重要な邂逅が、今まさに幕を開けていた。
 「瑞波・一条家の小者、と言ったな? 本当に『無代』というのか、お前は?」
 翠嶺の言葉がつい詰問口調になるのも無理はなかった。翠嶺が今ここにいるのはまさに、その『瑞波の無代』を探すためだったのだから、その驚きはむしろ当然だろう。
 翠嶺が飛空艇『ヤスイチ号』の中で『霊威伝承種(セイクリッド・レジェンド)』一条香と出会ってから、ほぼ一昼夜が経っている。そして香から『無代』の捜索を請け負い、香やヤスイチ号の船長であるクローバーと別れ、船を降りてからほぼ半日。
 船を降りた(というか窓から強引に飛び降りた)翠嶺は、転送アイテムである蝶の羽を使い、セーブポイントであるフィゲルの町へテレポートした。フィゲルは大陸の東の端、シュバルツバルド領内にある小さな海辺の町で、そこから他の町へ向かうには飛行船を使うしかない、という辺境の地だ。
 さて、ここから『瑞波の無代』がいるというルーンミッドガッツ王国の王都・プロンテラへ向かうには、まず国内線の飛行船に乗ってシュバルツバルドの首都・ジュノーへ向かい、そこから国際線に乗り換えて王国の港町・イズルードに向かう、という経路をたどる。
    イズルードといえば、フールや静、速水厚志らがアルナベルツ法国へ向かう飛行船に乗り込んだ、あの王国直轄の港町である。
 だが翠嶺は、そんなのんびりした事をするつもりはなかった。そもそも飛行船でジュノーへ向かうだけなら、あのままヤスイチ号で送ってもらった方が早いぐらいなのだ。それでは空から飛び降りてまで先行した意味がない。
 フィゲルに降り立った翠嶺はその足で、下町にある冒険者宿へ向かった。この宿は、町の沖に浮かぶ難関ダンジョン『オーディン神殿』の探索に挑む冒険者達の基地であり、かなりの腕利きが集う事でも知られている。そこでプロンテラへのポタメモを持っている僧侶系の術者を探すのが目的だ。
 ポタメモ、つまり転送魔法『ワープポータル』の転送先を保存する技術。これを持つ冒険者の中に、プロンテラに直接転送できる術者がいれば、手間賃を払って転送してもらおうというわけである。
 しかし運悪く、ちょうどいい場所にポタメモを持つ術者がいない。プロンテラ以外でも王国内の都市であれば、カプラ嬢による空間転送を中継することで移動できるのだが、残念ながらその術者も見当たらない。ならばと彼女のホームである、ジュノーのポタ持ちを探すが、それもいない。
 よくよくツキがなかった。
 それでも粘ってみた結果、シュバルツバルド国内のフィールドで、通称『師匠マップ』と呼ばれる場所近くにポタメモを持つ術者を見つけ出した。
 この『師匠MAP』は『スリーパー』というモンスターの生息地で、これを倒した時に入手できるアイテム『グレイトネイチャ』が良い値段で取引されるため、金策目的の冒険者に人気のある狩場だ。金と経験値、その両方を安定して稼げるこのスリーパーを、冒険者たちがおふざけ半分に『師匠』と祭り上げて呼ぶ事から、この場所にこの名がある。
 残念ながら首都・ジュノーからはかなり遠い。が、逆に少し戻れば、シュバルツバルド共和国とルーンミッドガッツ王国との国境・アルデバランの町に着ける。ここからならプロンテラへのカプラ転送もある。
 「そこで結構」
 翠嶺は即断して手間賃を払うと、魔法によって作り出されるワープポータルの転送輪をくぐり、『師匠マップ』近くの荒野に降り立った。ここからアルデバランまでは、近距離をランダムにテレポートするアイテム『ハエの羽』と、あとは自分の足を使って移動するつもりだ。
 ツキの無さを嘆いたり、うだうだ考えるよりもまず行動。
 聖戦時代から長い時を生きている割に、その辺はあまり老成していないというか、はっきり言えば気短かで活動的なこの性格こそが、この鋭くも美しい戦前種の特徴なのだ。
 こうしてアルデバランへの道を急いでいた翠嶺の目に映ったのが、空から落ちて来る無代とD1だったというわけである。
 (……何だあれは?!)
 ここでも考えるより先に、翠嶺の身体の方が動いた。
 ほとんど反射的に、これまた得意技である『熱線砲(ブラスター)』を湖に叩き込み、二人の落下地点に巨大な水蒸気爆発を起こす。立ち上る大量の水と蒸気を使い、落下の衝撃を和らげるのだ。翠嶺自身がヤスイチ号から海へ飛び降りる時に使った、あの手である。
 その結果、無代とD1は湖面に叩き付けられる危機を逃れ、こうして翠嶺と相見える事になったわけだ。
 だが、この偶然というにはあまりに出来すぎた邂逅に驚いたのは、決して翠嶺だけではなかった。
 「手前をご存知でいらっしゃいますので?」
 言われた無代の方も、目を丸くして問い返している。
 この時の無代ときたら、カプラ社でもらったせっかくのタキシードも落下のダメージでボロボロ。しかも頭の先から足の先までずぶ濡れ、という悲惨な有様。それでも礼儀正しく氷の上に両膝をつき、両手を膝で揃えて翠嶺を見上げる姿勢を取り続けているものだから、余計に痛々しい。
 だが一方で、その目には翠嶺に対する微かな警戒の色がある。
 と言ってもこれはやむを得ないことだ。無代とD1、二人の立ち位置は今や『BOT』と『カプラ社乗っ取り』を巡る陰謀のど真ん中にある。目の前のこの女性が何者であったとしても、たとえ助けてもらった恩人であったとしても、自分を知っているからには『敵』である可能性は否定できない。
 その無代の警戒を察知したのだろう、翠嶺が一つの名を告げた。
 「天津・瑞波の『一条香(いちじょうかおり)』姫」
 その名を聞いて、今度は無代がはっとなる番だった。
 「姫君その人に頼まれて、『瑞波の無代』という男を探していた。お前が無代というなら、お前は香姫の……何だ?」
 翠嶺が、むしろ静かに問う。無代がその問いにどう答えるか、翠嶺の鋭い観察眼が光を帯びる。
 問われた無代が即答しなかったため、わずかの間ができた。その間、無代もまた翠嶺と同様に相手をじっと見ていたが、やがてふっ、と表情を緩めると、
 「やんごとなき姫君様におかれましては、まことに恐れ多いことではございますが、実を申しますと手前……」
 何やらもったいぶった前置きの後、左手をゆっくりと翠嶺の方に差し出した。そしてぐっ、と握りこぶしを作ると、その親指だけをぴん、と立て、
 「『コレ』で、ございまして」
 にか、と真っ白な歯を見せて、無代の笑顔が開いた。今までの神妙な態度とは打って変わった、開けっぴろげで曇りの無い表情。
 さすがの翠嶺が一瞬あっけに取られ、そして次の瞬間、
 「ぷっ」
 思わず吹き出していた。
 『想い女』を意味する小指に対し、『想い男』を意味する親指のジェスチャーは、とてもではないが品のある表現ではない。まして一国の姫君を捕まえて『親指小指』とは、礼儀知らずにもほどがある。
 「まことに申し訳ございません。どうにも育ちが悪うございますもので」
 無代が笑顔のまま深々と頭を下げた。が、その声の響きはちっとも悪いと思っていないどころか、何やら『してやったり』という響きまである。ここは翠嶺の方が、
 (一本取られた、というところか)
 笑いこそすぐに引っ込めたが、そう認めざるを得ない。
 「よろしゅうございますでしょうか?」
 そんな翠嶺の内心を見透かしたような、絶妙のタイミングで無代が尋ねてくる。微かに笑いを含んだ言葉は柔らかで、押し付けがましいところは微塵もない。
 「ん」
 翠嶺が微かにあごを引き、肯定を告げた。
 槍を手にした時の『冬翠嶺』の人格は、ご存知の通り『春』に比べると気難しく荒っぽい。それを相手にして、初見でこの反応を引き出したことは無代、なかなかの手柄と言えるだろう。
 「では改めまして、ご尊名をお教えいただけますでしょうか?」
 無代がもう一度、頭を下げる。そういえば、名乗っていなかった。
 「よかろう、言い遅れた。私は翠嶺。ジュノーのセージキャッスルに籍を置く研究者だ」
 「翠嶺、先生?」
 無代の眉がぴょん、と上がる。
 「もしや……瑞波・一条家の奥方様、巴様に魔法をご教授なさった戦前種の……?」
 「ああ、確かに教えた。あの頃は『冬待(ふゆまち)巴』と言ったな」
 無代の質問を先取りして答えた翠嶺に、しかし無代はさらに質問を重ねる。
 「その上、試験で『赤点』を?」
 「あはっ!」
 無代の問いに今度こそ、翠嶺は腹の底から吹き出していた。
 「くっ……あ、あははは!!! あ、あの子ったら、まだあの事を……?!」
 両手の槍の石突きをとん、と氷の上につき、それに体重を預けるようにして、笑いの発作に耐える。頭に冠ったつばの広い、豪華な帽子までが細かく揺れている。
 「はい。『学生時代の苦い思い出』と、翠嶺先生のお名前と共にお伺いいたしました事が」
 「くくっ。そう……よっぽど悔しかったのねぇ……ふふふ」
 翠嶺は何かを思い出すように少し目を閉じると、
 「あの子、巴さんはとにかく優秀過ぎてね。何でも一人でやってしまうものだから、少しは人を頼るように課題を出したのだけど……」
 くすり、ともう一度笑いを漏らすと、
 「意地張ってまた一人でやったから、赤点」
 にやり、と笑う。
 「奥方様も『今思えば、良い経験をさせていただいた』と、笑っておられました」
 無代も笑顔でフォローを入れた。初めて出会う二人の間でこんな会話が交わされていると知れば、あの豪奢な金髪の美妃もさぞ苦笑いすることだろう。
 「そう……今でも手紙はくれるのだけれど、もう長い事会ってない。元気でいる?」
 「はい。最後にお目にかかりましたのは半年ほども前でございますが……お召しのヒールの踵が、ますます高くおなりで」
 「あははは!」
 気づけば話が弾んでしまった。
 無代が、これまた絶妙のタイミングでぺこり、と頭を下げると、氷の上に横たわったままのD1の介抱に戻る。墜落のショックと、湖に落ちた時にしこたま水を飲んだせいで、一度は呼吸が止まっている。無代による蘇生措置と翠嶺が与えた回復剤の効果もあり、命の危険こそ去ったようだが、まだ咳や呼吸困難が続いている。
 「その娘はカプラ嬢、それもディフォルテーの筆頭『D1』だな? それがあんな空の上から落ちて来た事といい、色々と事情がありそうだ」
 「……恐れ入ります」
 型通りの応えを返したまま、だが無代はまた黙った。詳細を明かしたものか考えているのだろう。
 「よかろう。何にせよここでは話もなるまい。地面のある所へ戻るとしよう」
 翠嶺が促す。フリーザーで凍らせた氷の道はさすがの頑丈さだが氷は氷、湖水の上でいつまでも持つというものでもない。
 「ありがとう存じます。お供させて頂きます」
 D1の側で膝をついていた無代がそう言った、次の瞬間だった。
 「よっ、と」
 明るい調子のかけ声と共に、無代の身体がするり、と動いた。とみるや、気づけばD1の身体をその背中に背負ってひょい、と立ち上がっている。そばに置いてあった巨斧『ドゥームスレイヤー』を腰の後ろに回し、その柄を両手で支えておいて、その上にD1を腰掛けさせる格好だ。
 翠嶺がほう、という顔になる。
 D1、女性にしてはかなりの長身だ。しかもパラディンとして十分に鍛えられた強靭な肉体を持っていて、まあはっきり言えば、相当に重い。その上、落下のショックと溺れかけたダメージで、身体に力が入らない状態が続いている。
 実はこういう状態の人間を背中に背負うのは、口で言うほど簡単な作業ではない。背負われる人間が自分でバランスを取れないため、背負う人間にかかる負荷が通常よりも遥かに大きいのだ。だから無理に持ち上げようとすればバランスを崩して潰れたり、落としたりという事故もありうる。翠嶺も無代に手を貸してやらねば、と思っていたほどなのだ。
 だが無代は、その両手を使って実に要領よくふわり、とD1の身体を氷の上から浮かせると、その下に自分の身体を滑り込ませるようにして背中に乗せ、あっさりと背負ってしまった。何か超人的なパワーを持っているというわけでもなく、といってD1の身体に無理な力をかけたという様子もない。
 翠嶺が手を貸すまでもないのはもちろん、背負われたD1自身さえ何がおこったのか分からず、きょとんとしている。
 まあ、人を一人背中に背負っただけ、といえばそれだけの事で、特段に驚異的だの神業だのという話ではないのだろう。が、しかし『上手いもの』であることは確かだった。
 翠嶺が先になり、湖の岸へ向けて氷の道を戻る。徒歩、しかも少し融けかかった氷の上ときては、とても歩きやすいとは言えない。が、翠嶺はもちろん、D1を背負った無代も足取りを乱さない。腰を少しかがめ、いわゆる『がに股』気味に足を運ぶその姿は、決して見栄え良くはないものの、背負ったD1に余計な負担をかけない丁寧で安定した歩き方だ。それは翠嶺の目から見ても、
 (この男、慣れている)
 と、見て取れる。
 やがて氷の道が岸辺に着くと無代、
 「翠嶺先生、少々お先を失礼致します」
 丁寧にそう断っておいて、D1を背負ったままひょい、と翠嶺を追い越すと、先に立って歩きだした。休める場所を探すつもりらしい、岸辺の岩や林の様子をきょろきょろと見回しながら歩く。
 やがて、
 「ここがよろしゅうございましょう」
 無代が翠嶺を誘ったのは、人の背丈ほどもある岩と、広々と枝葉を張った巨木の間に囲まれた、ほんの四畳半ほどの空き地だった。下はほどよく乾いた小石と砂で、やや強い日差しは木の葉が和らげてくれる。
 腰掛けにちょうど良さそうな岩も転がっていて、なるほど居心地は悪くなさそうだ。
 「薪を集めるがいい、無代。火を焚こう」
 「いえ、少々お待ちくださいませ、先生」
 ずぶ濡れのままの無代とD1を気遣い、翠嶺が魔法の炎を召還しようとするのを、無代が制した。
 「恐れながら、焚き火は煙が出ます。どこから見られるか知れません」
 「ふむ……剣呑な状況なのだな?」
 「左様にございます」
 翠嶺も少し、表情を引き締める。無代とD1、2人が何者かに追われているのならば、外からは目につきにくいこの場所を休憩場所に選ぶのも理解できた。
 「よろしければ、ここはお任せいただけますれば」
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