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第十二話「The Flying Stones」(6)
 「無代」
 翠嶺から名を呼ばれるのと、目の前に鞘付きの槍がすっ、と差し出されるのが同時だった。鞘紐を蜻蛉の姿に結った方の、あの大槍である。
 もちろん無代、慌てることもなく即座に膝を付くとするり、と鞘を払って自分の腰に預かる。あれほど複雑に結った蜻蛉の鞘紐が、ひと撫でしただけではらり、とほどけ落ちる様は、この翠嶺をして、
 (魔法のようね)
 と思わしめる手際だ。
 続いて翠嶺の帽子が差し出され、これをまた無代が受け取る。 
 鞘から放たれた槍の穂先に、朝の青空が染めたように映り込み、一方で帽子から解放された鮮やかなエメラルドブロンドが、まるでそこだけが豊穣な春の野原ででもあるかのように風に舞う。
 「……!」
 遠く空を行く飛行船を見据えながら、翠嶺の手が抜き身の槍を天高く掲げ、大きく左右にゆっくりと振った。きらり、きらり、と、生まれたばかりの朝日が磨き抜かれた槍の穂先に反射し、合わせて翠嶺の髪も風の中にさら、さら、と輝きを解き放つ。
 回数にして二度、槍を輝かせておいて、
 「ん」
 翠嶺がまたすっ、と槍を無代の方へ差し出す。もう無代の方を見もしない無造作ぶりだが、一拍ほど置いてすっ、と槍を手元に戻した時にはもう穂先は鞘に納められ、今度は蜻蛉の代わりに蝶が結われていた。
 「僭越ながら、『羽根に星入り』のクリーミーは、手前のオリジナルの結びでございます」
 無代が自慢する『クリーミー』とは、この世界に生息する蝶の姿のモンスターだ。そう言われて結び目を見ればなるほど、どういう工夫かその羽根の真ん中にちょこん、とアクセントの星が飾られている。
 もう一度、手を差し出せばその手の中に、当たり前のように帽子がふわり、と戻って来る。
 もう一度差し出せば水筒。
 『至れり尽くせり』も、ここまで来ると少々嫌みにさえ思えて来る。
 「先生、少々差し出がましい事を申し上げますが」
 「うん、差し出がましいな?」
 だからちょっと苛めてみた。
 「恐れ入ります。……ですが先生、あれだけの合図で、本当にこちらが分かりますでしょうか?」
 だが無代、一歩も退き下がらない。一応恐れ入っては見せるが、しかし言いたい事はきっちり言う。
 「大丈夫、必ず分かる。まあ見ているがいい」
 だから苛めるのはやめて、ちゃんと説明してやった。いや、これでも『ちゃんと説明している』つもりなのだ、この戦前種の中では。
 
 ぶぉぉぉぉおおおおんん!!!
 
 果たして、飛行船のプロペラ音が変化した。その双胴の巨体が、無代達の方へゆっくりと回頭を始める。確かにあれだけの合図で、ちゃんとこちらを見つけたらしい。
 「失礼を申し上げました、先生」
 無代が深々と頭を下げる間にも、飛行船は昇りくる朝日を背にしてぐんぐんと近づいて来る。
 細長い葉巻型の気嚢を二つ平行に並べ、その間に挟まれるように船体が吊り下げられている珍しい双胴型。
 だが珍しいのはそれだけではない。
 無代達が見慣れた定期便の飛行船よりも、かなり小振りに作られた船体。その後部には、それぞれ独立したエンジンを持つプロペラが4つ、X字に配置されている。軽量、そして高出力を示すこれらの特徴は、乗客の数や積載量、燃費の良さといった経済性よりも、速度や機動性を重視したアクティブな設計思想を持つ証拠である。
 またもう一つ目につくのは船体の下部、船で言えば竜骨にあたる部分を、堅牢な金属の板でぐるりと補強してあることだ。船首から船尾まで、頑丈な鋼の一枚板を貼付けたその形は、まるで巨大な橇のよう。本来、地面に着陸する必要のない飛行船にとって、明らかに不要なその部品は、この船が『強行着陸』を行うことさえ想定されていることを示している。
 明らかにただの船ではない。
 船体がますます近づき、いよいよ艦橋に立つ乗組員の顔さえ判別できる、というところで、しかし飛行船は急に舵を切った。山頂で待つ翠嶺や無代達を、まるでぐるりと避けるようにして通り過ぎてゆく。
 「……どうして?!」
 飛行船の意図が理解できず、驚いた声を上げたのはD1だ。だが今度は無代が、それに応えた。
 「大丈夫だよD1。ちゃんと戻って来る。あれは『陽回し』さ」
 「『陽回し』?」
 「翠嶺先生に眩しい思いをおかけせぬよう、朝日と反対方向から接舷するつもりだろう」
 この世界では飛行船に限らず、目上の人物・貴人に対し、太陽を背にして接するのは非礼である。相手が眩しくないように、こちらが陽に向かって相対するのが正しい。貿易船で働いた経験もある無代は、そういう知識・習慣も身につけている。
 
 ぶおぉぉぉぉぉ!!!
 
 果たして、一度通り過ぎた飛行船はエンジンをひと吹かし。そのまま青空にぐるりと円を描いて大回りをし、今まで背にしていた朝日を正面から浴びながら、再びこちらへ近づいて来る。
 見上げる無代の目を、飛行船の甲板から発せられる鋭い光がちかり、と打った。続いてちか、ちか、ちかちかちか、と光が明滅する。
 『光信号』だ。
 「え? 投錨しないで直接拾い上げる?!」
 船に乗っていた時期に憶えたらしく、光信号を即座に解読した無代が驚きの声を上げる。
 「安心するがいい。船長以下、腕は確かだ」
 翠嶺の落ち着いた言葉を裏付けるように、飛行船の動きがまた変化した。

 ぶぉぉぉぉぉんん!!! 

 4つのプロペラが同時に逆回転し、まずは一気に減速。ついで、それぞれのプロペラがバラバラに、微妙なコントロールで回転を始め、速度をさらに落としながら、同時に飛行船の姿勢をぴたりと安定させる。高山の風がひっきりなしに吹き抜けるコンディションを考えれば、この飛行船の巨体をこの速度で安定させるのは、ただ真っすぐ飛ぶより遥かに難しい、まさに神業だ。
 (なるほど、確かに凄腕らしい)
 無代もそう認めないわけにはいかない。
 「船長だけではないぞ。監視のスナイパー、気嚢ガスを管理するクリエイター、エンジニアのホワイトスミスは賢者の塔の『教授位持ち』。他のクルーだって三分の一が『博士号持ち』だ。こんな船は世界中探しても他にあるまい」
  翠嶺の自慢話に、なにそれ怖い、とは無代の感想。
  なるほど、視力命中力を強化するスキルの最高峰『トゥルーサイト』を備えた監視員なら、空の上から翠嶺を見つけ出すことも大した作業ではあるまい。
 
 ぶぉぉん! ぶぉん! おぉん! おおおおお……!
 
 細かいプロペラ音を不規則に響かせながら、飛行船がついに無代らの真上に到着した。双胴の巨体が朝日を遮るため周囲は薄暗く、鳴り響くエンジンの音が腹の底まで響くようだ。
 見上げる3人の頭上、飛行船の甲板からぽーん、ぽーん、と3本のワイヤーが放られ、それを伝って水夫が3人、するすると降下してくる。
 「先生、槍とお帽子をお預かり致します」
 もう何度目だろう、無代が翠嶺の『三種の神器』を預かり、こればかりは落とさないようにしっかりと自分の身体に固定する。代わりに自作の食器や保存食を、思い切り良くバラバラと地面に撒いた。少々もったいない話だけれど、飛行船に無駄な重量を持ち込むわけにはいかない。
 「御免下され」
 ぽんぽん、と柏手を打ち、山の宝を無駄に捨てる非礼を詫びておいて、ポケットに取ってあった木の実の種を地面に埋め込む。万年雪を頂く高山ならともかく、この辺りの標高ならば雨も降れば風も吹くし、虫もいる。木の器も何もかもやがて土に還るだろうし、運が良ければ種も芽吹くだろう。
 いよいよ接触した屈強の水夫3人が、それぞれ翠嶺、D1、そして無代の身体を素早くワイヤーで固定する。荷役用のウィンチを利用し、現代で言えばヘリコプターによるレスキュー活動のような要領で、水夫を含め6人の人間を船上まで一気に吊り上げるのだ。
 水夫達が、頭上の飛行船に合図を送る。
 ぐん! という真上への加速感。
 無代の足下から、岩だらけの地面がみるみる遠くなり、代わりに広く開けた視界には、シュバルツバルドの黒い森を裾に履いた山々、その山ひだのグラデーションが芸術品のように映る。
 そんなめったに見られぬ絶景も、ものの数十秒。
 「お久しぶりです、翠嶺先生」
 飛行船の甲板で彼らを迎えてくれたのは、船長の制服と制帽がよく似合う、姿勢の良い初老の男性だった。
 「このような場所で先生にお目にかかれますとは。監視からの報告が一瞬、信じられませんでした」
 「見つけてくれて助かりました、『提督』」
 槍を無代に預けて、性格が『春』に戻った翠嶺が柔らかく微笑むと、無代とD1を『提督』と呼ばれた男に引き合わせる。
 「彼がこの船の船長『アーレィ・バーク』。シュバルツバルド最高の飛行船乗りで、通称は『提督』。このジュノーの浮遊岩塊空域を、目をつぶっていても飛べる達人……よね?」
 「せっかくのお言葉ですが先生、さすがに目をつぶっていては飛べません」
 バークが日焼けした貌に笑みを浮かべながら、無代たちに握手の手を差し出す。
 「ですが目を開けてさえおれば、どこへなりと。ようこそ皆さん、我が『マグフォード』へ。歓迎します」
 握り返した掌は無骨だが、自信と力に満ちている。
 (……なるほど、この船長なら)
 無代は心の中で安堵のため息をついた。いくら翠嶺の保証があっても、自分が命を預ける船の長は、やはり自分の目で確かめないと落ち着かないものである。
 その点、このバークという船長は、無代の目から見ても『本物』だった。
 本人の言葉や表情だけではない。先ほど見せた神業のような操船技術はもちろん、周囲で働く船員達のキビキビとした働きっぷりや、船体の整備・清掃の行き届き具合からも、船長の実力と器は十分にうかがい知れる。
 船長であるバーク自らの案内で艦内へ入ると、一行を真新しい木の匂いが包み込んだ。軽さと耐久性、価格など複数の条件を満たす素材として、まだ多くの場所に木材が使われており、その若い匂いが船内に充満しているのだ。掃除が行き届いていることも手伝って、新造船らしい活気と爽やかさが心地よい。
 (うん、良い船だ!)
 乗ったばかりの船だが、これでそう感じないなら、疑われるのは無代の観察眼の方だろう。
 さて、現状は色々な意味で緊急事態であり、船にはジュノーのポタ持ち、つまり無代たちの行き先であるシュバルツバルド共和国の首都へ即座に転送できる術者も乗り込んでいる。
 しかし翠嶺はバークを近くに呼ぶと、何やら小声で相談してから無代達に向き直り、
 「とりあえずこの船にお世話になりましょう」
 そう告げた。
 ジュノーへはとりあえず船員を一人、ワープポータルで伝令に向かわせるという。船が停止している今のうちに送る必要があるため、翠嶺がその場でセージキャッスルと、シュバルツバルド政府への短い手紙をしたためる。重大事案が発生したため『放浪の賢者』が塔に帰還することを伝え、同時に緊急の賢者会議と閣僚会議を招集するよう要請する内容だ。
 『重大事案』の詳しい内容は伏せてあるが、そのことが逆に物騒さを強調している。もちろん翠嶺、わざとそうしているのだ。
 「これが着いたら、ジュノーはさぞ大騒ぎでしょうな。ご老体の皆様が卒倒せねばよいのですが」
 バークが苦笑しながら手紙を受け取り、伝令の船員に手渡す。
 ところで読者の皆様は以前『ヤスイチ号』の中で、翠嶺が香に説明したワープポータルの話を憶えていらっしゃるだろうか?
 その話はこうだった。
 例えばもし、時速100キロで南へ走る乗り物の上でワープポータルを使い、別の場所へ転送したとする。すると転送された人間は向こう側に出た瞬間、同じ時速100キロで南へすっ飛んでいく。
 つまり転送前の移動エネルギーが、転送先でも保存されるのだ。
 このため、もし転送の出現場所が人ごみだったり、危険なモンスターのいるフィールドだったりすれば、下手をすると大事故につながりかねない。だから飛行船が動き出してしまえば、気軽にワープポータルを使うというわけにはいかないのだ。
 手紙を受け取った若い水夫がワープポータルの転送円に消え、バークが艦内伝声管を通じてブリッジへ出発を告げると、飛行船に再び力強いエンジンとプロペラの音が蘇った。まずは目的地へ回頭中らしく、窓の外の朝日がゆっくりと、差し込む方向を変えて行く。
 「先にシャワーをどうぞ。その後、お食事をご用意致しましょう」
 バークが一行に告げた。
 思えば昨日からの山行で身体を拭く事さえできず、無代はともかく女性二人には辛い状況だ。幸いにも、というかむしろ驚いた事に、この船には翠嶺専用の部屋があり、小さいながらも浴室を備えているそうで、彼女らはそちらへ向かう。
 一方の無代は船員用の共用シャワーだが、まともな替え服まで用意してもらうというのだから文句などあるはずもない。
 「それは助かります」
 無代の礼は本心からだろう。何と言ってもタキシードを裂いた半ズボンとベスト、ゴートの毛皮マントという『野性的』なスタイルで、船員達から好奇の目を向けられ続けている。そこは無代、翠嶺やD1の手前、平気な顔をしていたものの、やはり我慢はしていたのだ。
 翠嶺の二槍と無代の斧は、廊下の壁に設置された武器掛けに預けられた。なにせ槍は長いし斧は重い。船の中をいちいち持ち歩くわけにもいかないので、これもありがたい措置だった。翠嶺専用の部屋があることと同じに、彼女の槍にも専用の掛け具が用意されており、斧もその近くに掛けてもらう。
 武器掛けには、いざという時は船員達も武器を持つ心得があるのだろう、他にも剣や棍棒のほか弦を外した弓と矢筒、杖、どういうわけだかゴツいフライパンまで、様々な武器が掛けられている。
 と、その中に、ひときわ異彩を放つ妙な物があることに、無代は気づいた。
 何もかもが真新しいこの船内で、そこだけが場違いなほど古びた『物』。
 「これは……?」
 無代の目に映ったものは、少々不吉な例え方をするなら『厚みと幅はそのままに、縦の長さだけを倍ほどに引き延ばした棺桶』だった。その細長く巨大な箱が、船内を走る廊下の壁に沿って掛けられている。
 ぶ厚い木の板にニスを塗った本体を、これまたゴツい金属の箍で補強した見るからに頑丈そうな箱。だが一方で木部のニスはあらかた剥げ、箍の金属もよく磨いてはあるが、目を凝らせば表面を浸食する錆の染みが隠せない。どうやらかなりの年代物。そして掛けてある壁の金具の様子から、相当の重さがあるようだ。
 どんな謂れがあるのか、バークを始め廊下を行き交う船員達が皆、その箱に軽く敬礼して行くのが不思議である。
 「まあ、この船の『お守り』のようなものですよ」
 無代の疑問に答えるバークの説明も、どこかあいまいだ。どうもあまり詳しくは話せない雰囲気がある。
 (何か由緒のある、骨董武器か何かかな?)
 航海の安全を祈るため、海を行く船には神棚や、縁起の良い聖物の類いを乗せていることは珍しくない。無代が過去に乗り組んだ船の中にも、初代の船長が使っていたというカトラスを、お守り代わりに飾っている船があった。
 ところでこの箱に対する無代の感想は、ほぼ当たっている。
 それは確かに『由緒』のある、『骨董品』で、そして『武器』だ。ただ間違っているのは、その3つの単語の全部に、
 『半端ない』
 という接頭語が着く、ということである。
 だがその正体についての説明は、今しばらくお待ち頂きたい。
 箱の上面にちらりと見えた銀色の紋章。
 
 『X印の右横に縦棒三本』。

 今はそれだけを。

中の人 | 第十二話「The Flying Stones」 | 00:19 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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