04
--
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
--
>>
<<
--
RECOMMEND
RECENT COMMENT
MOBILE
qrcode
OTHERS
(c)
このページ内における「ラグナロクオンライン」から転載された全てのコンテンツの著作権につきましては、運営元であるガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社と開発元である株式会社Gravity並びに原作者であるリー・ミョンジン氏に帰属します。 © Gravity Co., Ltd. & LeeMyoungJin(studio DTDS) All rights reserved. © 2010 GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved. なお、当ページに掲載しているコンテンツの再利用(再転載・配布など)は、禁止しています。 当ページは、「ラグナロクオンライン」公式サイトhttp://www.ragnarokonline.jp/(または、ガンホーゲームズhttp://www.gungho.jp/)の画像(またはテキスト)を利用しております。
ro
ブログランキング
にほんブログ村 ゲームブログ ラグナロクオンラインへ にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
ブログランキング
LATEST ENTRY
CATEGORY
ARCHIVE
LINKS
PROFILE
SEARCH
<< 第十二話「The Flying Stones」(8) | top | 第十二話「The Flying Stones」(10) >>
第十二話「The Flying Stones」(9)
  バークの指揮棒がする、と地図の上を滑る。
 「ここ数日の風の状況から判断して、昨日の昼頃その空域にあったと思われる主な岩塊は3つ。『イトカワ』『アイザック』『オロシヤ』です」
 とん、とん、とん、と、地図の上で指揮棒が軽い音を奏でていく。
 「その中で今、無代さんが言われた大きさと特徴を持ち、かつ周囲に衛星岩塊を持たない孤立岩塊となれば、もう間違いありません。それは『イトカワ』です」
 どうもバークの口ぶりから、彼の中では最初からほぼ特定できていたようだ。無代たちに質問したりクルーに確認を取ったのは、あくまで念のためらしい。この手堅さも、彼が信頼に値する指揮官である事を示している。
 「『イトカワ』は岩塊の中でもかなり大型の部類に入りますので、大人数でも収容できる。かつ定期航路から大きく外れていて、地上もほとんど人が通わないエリアばかりを移動しますから、外部への連絡も難しい。こう言っては何ですが、カプラ嬢の皆さんを幽閉する目的なら悪くない選択です」
 無代達が落下した所へ翠嶺が通りかかったのは、まさに奇跡としか言いようがない、という。
 「さすがです、提督」
 翠嶺が満足そうにバークに微笑みかける。
 「それで提督、『イトカワ』とやらは今どこに?」
 「正確な位置はジュノーで、最新のデータを集めて計算しなければ出せませんが、昨日ゲフェン出港時に伝えられた風の向きと強さから推測して、およそこの辺りかと」
 バークの指揮棒が地図の上に描いた大まかな円、それを見た翠嶺がまた、難しい顔をする。
 「また微妙な位置ねえ。ここからだと、むしろ後戻りすることになるわ」
 「そうですね。ジュノーとリグローとイトカワ、どこへ行くにしても即座に、とは行きません」
 そう言うバークだが、その声には特に困ったような響きはない。要するに彼にはもう、既にこの結果は想定内なのだ。
 「船長として意見を言わせていただくなら、まずジュノーに帰って急いで補給を行い、次にリグローへ出向きます。向こうか、もしくは途中でクローバー船長と接触できれば、カプラ嬢救出はヤスイチ号に任せる、これが最速でしょう。運悪く接触できない場合はそこから直接イトカワへ回り、本船で救出を行います」
 「運が悪い方を想定した方が良さそうね」
 翠嶺の言葉は苦笑混じり。どうもツキがいまいち、というのが染み付いているようだ。
 「最悪、すべてをこの船で行うと想定した場合、カプラ嬢の救出までにはどれくらいかかりそう? 提督」
 「それでも本日、日没までには」
 バークの返答によどみはない。
 「現在の状況は?」
 「本船は現在『風待ち』中です。もう1時間ほどでジュノー方向へ風が変わりますので、それに乗って一気に加速する予定です」
 バークの説明はのんびりしているようにも聞こえるが、今から全力でエンジンを吹かして多少の距離を稼ぐ場合と、順風をつかまえてから出発する場合、結局どちらもジュノーへの到着時間は変わらない。ならば後者の方が燃料やエンジンの損耗も抑えられ、合理的である。
 「よろしい」
 翠嶺も満足そうにうなずいた。緊迫した事態でも、焦りや感情に捕われず最適解を導き出す。バークという男がそれだけの経験と落ち着きを備えた船長であることをよく承知している。
 「わかりました。いったんジュノーへ帰投しましょう」
 翠嶺が決断した。
 「どうかよろしくお願いします、バーク船長」
 「ご安心下さい、D1」
 沈痛な面持ちで丁寧に頭を下げるD1に、バークは身体ごと真っすぐに向き直る。
 「ジュノーのセージキャッスルと、アルデバランのカプラ社。この二つは我らシュバルツバルド国民の誇りです。その両方の象徴である翠嶺先生とD1、お二人を乗せて危難に立ち向かう。我らシュバルツバルドの飛行船乗り、『ペルロックの裔(すえ)』を名乗る者として、これほどの誉れはありません」
 バークが挙げた『ペルロック』とは、聖戦直後のシュバルツバルドにおいて、初めて民間の飛行船航路を開拓した伝説の飛行船乗りの名である。まだ聖戦の余韻が残り、危険なモンスターが満ちていたこの空に命とロマンを賭けて挑んだその男は、聖戦中に人間側へ寝返った魔王子と人間の娘の子であり、巨大な鹿そっくりの頭と角を持った偉丈夫であった、そう伝えられている。
 この伝説の英雄になぞらえ、この国の飛行船乗りは皆『ペルロックの末裔(まつえい)』を名乗るならわしだ。
 「我が『マグフォード』と乗組員一同、いかなる嵐も越え、いかなる場所でもきっとお連れします。どうぞお任せ下さい」
 繰り返すが、これを他の人間が言ったなら、間違いなく誇大か気障で終わるだろう。だが今、この場でその言葉を疑う者は一人もいない。
 話に一区切りがつき、紅茶のおかわりが注がれ、ブリッジに再びリラックスした空気が流れる。
 「ところで提督?」
 ブリッジの時計をちらりと見た翠嶺が、バークを呼ぶ。
 「はい、翠嶺先生?」
 「こちらもシャワーと食事が終わったし、そろそろ良い時間かしら?」
 「はい先生。今、お部屋へ使いをやっております。そろそろ戻るかと」
 主語もなにも無い会話だが、バークと翠嶺の間では十分に通じる話だったようだ。
 果たして、静かなブリッジに軽い足音が響き、まだ少年と言ってよい水夫(飛行船だから『空夫』とでも呼ぶべきか)が駆け込んできた。
 「失礼します、船長殿!」
 真新しいセーラーも、精一杯の敬礼も初々しい。だが、どうやら無代と同じ天津系と思われるその顔には、しかし困ったような表情が張り付いている。
 いち早くその表情に気づいたバークが、
 「どうした、草鹿(くさか)?」
 少年水夫に問いかけるのと、
 「……ひょっとして、『また』か?」
 翠嶺が顔をしかめ、その美しい額に指を当てるのが同時だ。
 「はい……いえ、あの……何度もノックして、お名前をお呼びしたのですが……」
 『草鹿』と呼ばれた水夫の困り顔が拡大する。
 「分かりました。案内しなさい、私が行きましょう」
 翠嶺が飲みかけのティーカップを置くと、いつのまにか無代が後ろに立っていて、椅子を引いてくれる。
 「先生……」
 バークも椅子から立ち上がって謝罪しようするのを軽く手で制し、
 「いいのよ、提督。迷惑をかけているのはこちらです。この子のせいではない。……無代」
 「はい先生、お供いたします」
 翠嶺の椅子を戻した無代が、当然のように応える。
 「うむ。手伝ってもらう事があるかもしれない。D1、貴女は私の部屋で休んでいて。少し時間がかかりそうだから」
 「はい賢者様……あの?」
 「貴女達に紹介したい人物がこの船に乗っている。ワープポータルで直接ジュノーへ帰らなかったのは、実はそれもあってのことなの」
 物問いたげなD1に、翠嶺が簡潔に説明する。
 「というよりこの船は元々、『彼』を乗せてゲフェンの魔術師ギルドへ行った帰りなのよ。その旅程と航路を憶えていたので、あの山の上で待ち伏せしたというわけ」

 『魔術都市ゲフェン』。

 それはルーンミッドガッツ王国にある地方都市である。
 この地はかつて『ゲフェニア』と呼ばれ、魔法文明を極めたエルフの都市があったという。いつの時代か悪魔に侵略され、地下深くに封印された後、その上に今の都市が建設されたという謂れがあり、そのためか古くから魔法が盛んな土地だ。
 何より魔術師の総本山『魔術師ギルド』の本部が置かれている事でも有名である。
 『魔術師ギルド』。
 それは魔法を扱う集団、という点で言うなら翠嶺が所属するセージキャッスルと共通するが、賢者の塔が『研究・教育機関』であるなら、魔術師ギルドはまさに『実践機関』。例えるなら『美術大学』と『美術家集団』、『法学部』と『法律家集団』のような関係にある。
 方や研究による精密な理論構築、方や現場で叩き上げた豊富な実践経験を武器に、魔法という未知の世界に挑む同志というわけだ。
 魔法に対するそれぞれのアプローチの違いから、必ずしも仲が良いとは言えない両者だが、お互いを必要としているという点では一致しており、定期的に情報を交換し、魔法の発展を支えている。
 「ジュノーとゲフェンの間に定期航路はありませんが、賢者の塔と魔術師ギルドとの人的交流の際には、非公式ながら飛行船を乗り入れる事が許されているのです。もちろん、非武装が条件となります」
 ブリッジを出て廊下を歩く道すがら、バークが説明してくれる。道理でこの船には、定期船にさえ備わっている大砲が一門もない。『携帯火器』以外の武装は禁止されているのだという。
 「ワープポータルを使えば移動そのものは一瞬だけれど、大量の資料を一緒に持ち込んだり、そもそもワープポータルをくぐれない物を持って行く事もあるので、結局飛行船が便利なのよ」
 これは翠嶺の解説だ。確かにワープポータルは万能の術だが、それ自体が魔法であるため、魔法そのものを乱してしまうような協力な呪物などは受け付けないこともある。
 「あとこれは内緒だけど」
 翠嶺がにやり、と笑いながらわざとらしく声をひそめ、
 「飛行船乗り入れの既成事実を積み上げて、いずれ定期航路を開いてやろう、って下心もあるんだけどね」
 そう明かすと、綺麗に伸びた人差し指をぴん、と立て、これまた花弁の様な唇にちょん、と当てた。
 「こちらのお部屋です」
 草鹿と呼ばれた少年水夫が一つの扉の前で立ち止まると、一歩退きながらバーク、翠嶺、そして無代に敬礼する。
 「ふむ」
 翠嶺がその手を拳にし、とんとん、と扉をノック。木製の頑丈な扉が、思ったよりも軽い音を立てる。
 応答なし。
 鍵はかかっていないらしく、ドアノブは軽く捻ることができたので、翠嶺がそれを押開けようとしたのだが、
 「?!」
 扉が開かない。
 いや、わずかながら開く事は開くのだが、ほんの数センチの隙間ができるだけで、とても中には入れそうもない。翠嶺のその有様に、廊下で控えていた草鹿が言いにくそうな声で、
 「あの……ドアの内側に本が……」
 「あー」
 事情を察した翠嶺が顔をしかめる。
 草鹿の言う通りだった。わずかに開いたドアの隙間から、それこそ床が見えないほどみっちりと積み上げられた本の山が見えている。数十冊、下手をすると数百冊も雑然と積み上ったその本が、ドアの開閉を妨げているのだ。
 ここでは『本』と一口に言うが、現代の我々が知るそれとはだいぶ違う。そこに積まれた本は大抵、ゴツい革の表紙に中身も羊皮紙。すなわち本全体が革製で、要するに非常に重い。さらには子供の背丈ほどもある巨大な本や、上下左右を頑丈な金属の箍で補強した、それこそ武器か防具と見まごう代物もある。いや、実際に武器や防具として使える『本』も、この世界には普通に存在しているのだ。
 しかしこうなると確かに、女の翠嶺の力では動くものではないし、人数を頼んで力任せに動かそうとすれば貴重な本が傷む可能性も高い。
 「昨夜お寝みになるまで、ちゃんとお世話をしなかったのか、草鹿」
 バークが少年水夫を詰問するが、少年は天津人らしい黒髪を振り乱すようにして、
 「いいえ船長殿! 昨夜は確かに、ベッドにお入りになるまでお世話を致しました!」
 訴える草鹿の顔は真っ赤だ。
 「提督、彼のせいじゃないったら」
 翠嶺が、はあー、とひとつため息をつく。
 「どうせ夜中に何か思いついて、一人で起き出したのよ。そして調べるだけ調べて満足して、そのまま本と一緒に床で寝てしまったのでしょう」
 不動のドアを前に、またはあー、と息を吐く。
 「というわけなのだけど、無代」
 「はい先生」
 『現場』から一歩下がって控えていた無代が、ちょっと苦笑しながら応える。
 「どう? 何とかできる?」
 「承知致しました」
 翠嶺に即答を返しておいてから、バークに向き直り、
 「バークさん、そちらの草鹿さんをお使い立てしてよろしいでしょうか?」
 「もちろんです」
 船長であるバークの快諾を得た無代が、少年水夫を近くに呼び、
 「まずはデッキブラシを2本と、清潔で厚手のタオルを2枚。タオルをブラシの柄に巻いて、ドアの隙間から本を摘まみ上げてどかしますので。お願い出来ますか、草鹿さん」
 「承知しました、お客様!」
 「どうぞ『無代』とお呼び下さい」
 「はい、無代さん!」
 無代に、バークに、そして翠嶺に敬礼し、廊下を駆け出して行く。
 「ところで翠嶺先生、このお部屋にはどなたが?」
 いらっしゃいますので? と、草鹿を見送った無代が翠嶺に尋ねる。
 「紹介の順序は逆になるけれど、まあ仕方ないわね」
 翠嶺が苦笑しながら、
 「この中にいるのは賢者の塔・呪文学部(ザ デパートメント オブ スペル)の助教授。そして無代、貴方の知己である『一条巴』以来、20年ぶりの『私の弟子』よ。しかも現在16歳。一条巴を超える、最年少記録保持者」

 『翠嶺の弟子』。

 いやしくも魔法を使う者で、その言葉の意味を知らぬ者はいないだろう。
 例えば過去、賢者の塔のトップである『大賢者』となった者で、この『翠嶺の弟子』の称号を持たない者は一人もいない。
 その他にもこの称号を持つ者は、魔術師ギルドの幹部やギルド戦で名を馳せた伝説の強者、一国の魔法師範といった、魔法の世界では知らぬものとてない大物として歴史に名を刻んでいる。
 聖戦以来の歴史の中で、この希有の戦前種に抜群の能力を認められた術者のみに許される、それは最高の称号だ。
 「名前は『架綯(カナイ)』。だがその名前よりも通りが良いあだ名もある」
 翠嶺には珍しく、弟子を自慢する口調になる。

 「人呼んで『呪文摘み(スペルピッカー)』。その唯一無二の力は……まあ、起こしてから見せるとしよう」
中の人 | 第十二話「The Flying Stones」 | 00:30 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment









Trackback
URL: