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第十二話「The Flying Stones」(10)
  気密式のドアを開けてもらい、一人、飛行船『マグフォード』の甲板に出たD1に、高空の空気は刺すように冷たかった。
 「コートをどうぞ、D1。この高度の甲板はかなり寒いですから」
 「ありがとうございます」
 若く、そしてなかなかにハンサムな副船長が差し出すボア付きの革コートを羽織る。洗髪して本来の輝きを取り戻したルビーの髪が、でたらめな風に舞うのを手で押さえるが、あまり効果はない。
 翠嶺には『部屋で休んでいろ』と言われたが、どうにもそんな気持ちにはなれず、副船長に頼んで甲板へ出してもらったのだが、これは想像以上に寒い。借りたコートがなければ、ものの5分といられないだろう。
 しかし逆に頭を冷やして考え事をするには、うってつけの環境と言えそうだ。
 副船長からエスコートの申し出があったけれど、
 「ありがとう。でもごめんなさい、少し一人になりたいのです」
 と、丁寧に断る。
 様々に気遣ってもらえるのは嬉しいし、ありがたいと思うのだが、そうされることで逆に今の自分に何も出来ないことを自覚するばかりなのは、まだ少し辛かった。
 甲板の手すりに軽く手を添え、目の前の空を見る。空の青と、雲の白とグレー、そして空に浮かぶ岩塊の鈍い鉄色が織りなす圧倒的な絶景。
 吹き抜ける風が髪を弄び、ばちばちと顔に当たる。さすがにこれは辛抱できず、コートのフードを被って髪を中に入れた。
 (……?)
 突然、身体がかってにくるり、と振り向く。
 武術を修めた優秀なパラディンとしての感覚が、何者かの視線を感知したのだ。だが、振り向いた先には誰もいない。甲板の向こうには、同じ空が広がっているだけだ。
 (気のせいか……)
 ふう、と背中で手すりに寄りかかり、天を仰ぐ。地面に映った自分の影を、敵と間違えて襲いかかる鳥が、異国には棲むという。愚かさの象徴の様なその鳥を、今の自分は笑えない。
 (……鈍ったものね)
 いけないと分かっていても、自嘲が頭をかすめてしまう。
 『カプラの誇りを取り戻す』
 仲間達の前でそう大見得を切り、無代と共に浮遊岩塊『イトカワ』から飛び降りたあの時、気持ちに一つの区切りはつけたと思っていた。その後、翠嶺と出会って導きの言葉をもらい、前に進む気力も得た。そしてついにはこの飛行船と合流し、ついに今の難局を打破する道筋すらも見えてきている。
 (だけど、私はまだ何もしていない)
 彼女の中にはまだ、その忸怩たる思いがある。
 自分で歩く事もできずに無代の背に揺られ、貴重な食料をただ飲み食いし、寝ていただけではないか。
 (……)
 亜空間倉庫を起動してみる。
 カプラ嬢になってから何度繰り返したか分からないその操作には、言葉も動作も必要ない。ただ軽く意識するだけで可能な、カプラ嬢にとって基本中の基本操作……だがやはり慣れ親しんだ起動音は鳴らず、もちろん倉庫も開かない。
 あの浮遊岩塊『イトカワ』に捕われた時から、カプラシステムへのアクセスは完全に断たれたままだ。
 (メインアクセスポイントに近づけばひょっとして……)
 という復活への希望もあった。しかし、ここはもうシュバルツバルトの首都ジュノーのフィールド圏内のはずで、やはりアクセスはシステムレベルで切られている、と考えるのが妥当だろう。
 そしてもう一つ。
 (カプラの力が戻ったとして、私はそれを使えるだろうか)
 その思いもある。
 空間を操るカプラの力。世界中の冒険者を等しく助け、支えて来た唯一無二の力。
 それが、異世界から来襲した魔物の力を借りたものだった、という事実は、想像以上に彼女を打ちのめした。
 (私は何のために今まで……)
 『イトカワ』の上で膝を抱えながら、あるいは無代の背中で揺られながら、またシュバルツバルドの山肌に横たわりながら、ずっと考えていた迷いが蘇る。
 (『カプラ』、そして『D1』の名は、本当に価値あるものだったのか……?)
 迷いが広がる。
 『カプラ嬢』、中でも『D1』を名乗るための道のりは厳しい。
 いや、そんな事はわざわざ言うまでもないだろう。世界中の女性が憧れる、この世で最も華やかでやりがいのある仕事。そこに至る道が『厳しい』など、むしろ当たり前のことだ。
 行儀作法や空間操作の修行はもちろん、危険なフィールドで立ち続ける時、己の身を守るための武術も必須である。そして何よりも『容姿端麗』を貫かねばならない。カプラ養成所の門をくぐる女性は多いが、その中で『カプラ嬢』を名乗れるのは、だから百人に一人ともいう。その上、トップチームである『ディフォルテー』を襲名できる者となれば、本当に一握りだ。
 ましてその頂点、カプラ嬢の象徴である『D1』に至る道は、『厳しい』とか『狭い』とかの言葉では足りない。
 『残酷』と、いっそそう言った方がふさわしいだろう。。
 例を挙げよう。
 実はD1を名乗るには、本人の能力が優れているだけでは足りない。
 まず本人以外の家族の信用が必要だ。カプラ倉庫に貴重な財産を預かる信用上、家族・係累を数世代に遡り、犯罪を犯した者がいないか調査される。カプラの象徴的存在に、万が一でも犯罪を犯す要素があってはならない。
 確かに厳しい条件だ。が、ここまでならまあ、まだギリギリ理解できなくもない。
 問題は次である。
 D1の候補となるには、本人の三親等以内(女系であれば曾祖母まで)の女性の容姿と健康状態、一生の体型変化までが選考対象となる。これで一定年齢以降、体型が崩れる可能性のある遺伝的要素を持つと分かれば、最初からD1の候補になることすらできない。無論、健康に懸念があるとなればなおさらだ。
 まるでトラックを駆けるために世代を重ね、交配を繰り返される競走馬のような優生思想。それは本人がどれほど強く夢見ようとも、どれほど厳しい努力を経ようとも、どれほどの能力を持とうとも、それだけでは決してたどり着けないことを意味する。
 まさに『運命に選ばれた者』のみに許された座。
 そしてその座に登れるのは、同世代にたった一人しかいない。
 実力伯仲のライバルがたとえ何百人いたとしても、その中の1人が『D1』に選ばれれば他は全員、否応無く脱落する。これが残酷でなくて何だろう。
 現役のD1たる彼女にも、共にその過酷なシステムに挑み、しのぎを削った多くのライバル達がいた。だが彼女がD1の座に登るのと同時に、彼女達の大半がヘアバンドを外し、カプラ社を去っていった。
 いずれ劣らぬほど美しく、そして優秀だったライバル達。D1を目指すレースから脱落しても、その気になれば同じ『ディフォルテー』のD2、D3といった『ナンバーズ』に、あるいは他のカプラ嬢として街角に立つ道でも、選ぼうと思えば選べたはずだ。
 だが彼女らは、それを選ばなかった。
 『D1になれないなら、カプラ嬢でいる意味は無いわ』
 静かに笑って、あるいは涙にくれながら、もしくは無言で、彼女達は去っていった。
 そそれほどまでに残酷な運命と、夢と、意志と、涙の上に積み上げられた、真にかけがえのない名前。
 『ディフォルテーNo1』とは、そういう存在なのだ。

 だが、その自分が『折れた』。

 その事実をD1は改めて受け止める。
 (いや、『だからこそ』私は折れてしまった)
 今は客観的に、そう見ることができる。
 カプラ社、カプラ嬢、ディフォルテー、D1。
 それらの言葉が持つ意味について、自分は一度たりとも迷った事はなかった。それらが持つ価値を、微塵も疑った事はなかった。
 例えるなら、それは夜空に輝く北極星だ。
 遥か道無き道を、荒れ狂う大海原を、その身一つで行く旅人が、道標としてひたすらに見つめ続ける不動の星。決して揺るがない、絶対の価値と意味を持つ存在。
 だからこそ総てを賭けてその道を駆け抜け、ここにたどり着いたのだ。
 だが、その星が揺らいだ。
 絶対の力と信じていたカプラシステムは魔物の力で、仲間のカプラ嬢には『BOT』が混じる。社の重役は彼女らを裏切り、拉致監禁にまで及ぶ。その総ての事実を、直接その身に突きつけられた時。

 彼女の北極星は、地に堕ちた。

 仲間と共に浮遊岩塊に囚われた時、彼女だってリーダーとして皆を導きたかった。力強く号令し、力を合わせて敵を打ち砕き、カプラの栄光を取り戻したかったのだ。
 だが、そのための道標は失われてしまった。導こうにも、導く先が分からない。
 たとえ重役達を社から追い出し、会社を正常に戻せたとしても、カプラの力が得体の知れない魔の物だという事実は変わらない。北極星に、元の輝きが戻る事はないのだ。
 (今の私には何もない)
 ずっと認めることを拒否してきた、それを考える事さえ逃げてきた、それら総ての事実と今、彼女は向き合う。『デフォルテー』を演じるための藍色のヘアピースも、ヘアバンドも、制服もない。
 すべて『イトカワ』に置いて来た。
 胸が痛む。
 きりきりと傷む。
 単なる精神の不快を飛び越え、ほとんど肉体的な痛みとなって、それは彼女の内臓を直接刺し貫く。
 カプラの仲間達の、先輩達の、そして去って行ったライバル達の目が、灼熱の針となって自分に突き刺さるのを感じる。もちろん、現実にはここにそんな人々はいない。だからこの針はすべて、彼女の中から生まれた、彼女自身の心だ。
 よって、逃げる事も隠れる事も決してできない。
 「……っ!」
 無意識にシャットダウンしそうになる思考を、しかし意志の力で押さえつける。ここで考えるのをやめたら、また堂々巡りだ。
 そうなれば、翠嶺やこの船の力を借りて問題を解決する事ができたとしても。

 (自分はもう二度とD1にも、カプラ嬢にさえ戻れないだろう)
 

中の人 | 第十二話「The Flying Stones」 | 00:32 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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