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第十三話 「Exodus Joker」 (3)
 
 「イエス、リーダー」
 と、お決まりの返事はしたものの、アクトにとってはこんな損な役回りもない。なにせ『セロ』の動きを一つ報告するたびに、アクトは何も悪くないにもかかわらず、流の機嫌がどんどん悪くなるのだ。
 (しっかりしてくれよ、おい……!)
 もう内心ではプロイスを応援すらしているアクトだが、その気持ちに反して状況は悪くなる一方。圧倒的な力で『マグフォード』を襲っておきながら、標的である翠嶺の収容にはモタつき、『マグフォード』の撃沈にも手間取る。
 しかもその理由が、あろうことか相手の苦しむ姿を鑑賞するため、と分かった時は、
 「……ちっ!」
 盛大な舌打ちが部屋の隅々まで響いたものだ。こうなるとタートルコアの面々も一様に肩をすくめ、アクトに『すまん、頼んだ!』の目配せだけを送って、『さわらぬ神に祟りなし』を決め込んでいる。
 (ちくしょー、ユークの坊主がいりゃ丸投げしてやれるのに!)
 考えようによっては非道いことを考えながら、仕方なく貧乏くじに甘んじるアクトである。
 もっともウロボロス4本隊に残ったユークレーズは今、敵からの逃亡の末に金剛モンク・ヨシアをはじめ多くの隊員を失う過酷な状況の真っただ中だ。もしそれをアクトが知っていたならば、夢にもそんな非道いことは考えないだろうけれど。
 ところで余談になるが、アクトの実況を聞きながら流が行っている日課の鍛錬というものが、実はちょっとした見物である。
 まず部屋の隅っこに行き、素材不明のツルツルの壁が90度で交わるその角に背を向けると、巨大な背中を壁に密着させる。ついで両手を左右の壁にぴったりと突っ張るようにしたと思うや、
 「むん……っ!」
 ぐい! とその両足を宙に浮かせたのだ。
 体重100キロを優に超える巨体が、何の手がかりもない90度の壁に両手をつっかえただけで、わずか数センチとはいえ確かに宙に浮いている。両腕と肩の力だけで、壁に対して驚異的な圧力を与えなければ不可能な離れ業だ。
 しかもこれで終わりではない。まだ始まりだ。
 「むんっ……!」
 不自然な姿勢から一瞬、全身をぐい、と緊張させたと思うや、その身体がさらに数センチ、上にずり上がったではないか。
 「ふんっ……むんっ!!」
 巨体の緊張が連続し、分厚い筋肉に鎧われた流の巨体がさらに上昇する。常人であれば、ただ止まっているのすら不可能な姿勢から、全身の力だけで勢いをつけ、まるで壁に吸い付く虫かトカゲのように壁を登って行く。
 ほどなく頭が天井につくと、今度は脚だ。
 「ふ……うっ!」
 壁を突っ張った両腕の力だけで全体重を支えながら、足先を揃えて伸ばした両足をぴったり90度、前方に持ち上げる。ちょうど体操選手が吊り輪や鞍馬で行うような、見事な静止姿勢。ここまで来るとさすがの流の肉体にも相当の負荷がかかるらしく、その全身がビリビリと細かく震えているのがわかる。だが姿勢そのものは一切の破綻なく、見惚れるほどの静止を続けること10秒ばかり。
 「す……うっ!」
 大きく一つ息を吸ったと見るや、背中で壁に張り付いたままの流の巨躯が、今度は壁に沿っていきなり垂直に落下した。腕の突っ張る力をわずかに緩めた結果だが、いかに流の身体が頑丈とはいえ、この体重で受け身も取らずに尻から床に激突すればタダでは済むまい。
 だがその身体が床に落下する寸前、
 「は……っ!!」
 ひときわ大きな気合いが響き、ぴたり、とその落下が止まる。
 流の姿勢は先ほどまでと全く同じ。ということは信じられないことだが、いったん緩めた両腕で再び壁を突っ張り、巨体の落下を止めたらしい。
 『止めたらしい』などと言葉で書けば簡単だが、それがどれほど人間離れした行為か。ただ腕力があればいいというものではく、その力を瞬時にゼロからMaxに、しかも精密極まるタイミングで発揮できなければ到底不可能な荒技。ちなみにこれはアマツの忍者が行う鍛錬法なのだが、さすがのタートルコアにもそれを知る者はいない。
 ふう、と一息ついて、流がその身体を床に降ろすと立ち上がった。さっきまでの離れ技が何かのトリック、いやいっそ幻だったと言われた方がまだ納得がいく巨大さと重量感が戻って来る。
 「アクト。続けろ」
 そう言われて初めて、アクトは報告を忘れていたことに気づく。既に何度も見ている流の鍛錬なのだが、見るたびに何かこう、感動するほど見惚れてしまうのだ。
 流の鍛錬はさらに、壁に向かってほぼ零距離から両腕で突き押す『鉄砲』、そして例の『四股踏み』と続くが、この二つは翠嶺が見抜いた通り、いずれもアマツの相撲に伝わる伝統的な鍛錬法である。
 生まれ持った巨体を、厳しい鍛錬でさらに重厚に鍛え上げる、そのスタイルは極めてシンプルで、それゆえに恐ろしい。
 重い体重と強大なパワーを存分に生かし、抜群の瞬発力で敵に肉薄、駆逐する。確かにその力を維持できるのはごく短い時間に過ぎないが、いざ敵が間合いに入った瞬間の破壊力は凄まじいの一言だ。もし敵が強力なスキルや魔法などを使おうとしても、その暇さえ与えず一瞬で距離を詰め、文字通り押し潰してしまう。
 この破壊力を表現するにはもう『格闘』だの『技』だの言うより、『人身事故』と言った方がふさわしい。
 実際、流のぶちかましをまともに食らった時のダメージときたら、現代でいえばちょっとした軽自動車に轢かれるのと同等、もしくはそれ以上。
 ここまで問答無用の破壊力が相手では、小手先の格闘技術など全く無意味となる。
 だが実は、一条流という若者の本当の怖さ、それは肉体の破壊力などにあるのではない。そもそも彼がこの力士のスタイルを選択し、そのための鍛錬を欠かさないのは、決してそれが『強いから』ではないのだ。
 むしろ反対、このスタイルが戦場において『死ににくいから』に他ならない。
 いかに知略に優れ、選りすぐりの強兵を集めて大軍を編成しようとも、それを率いる君主が死ねば戦は負けである。そのたった一人の死によって国は滅び、一族は根絶やしにされ、先祖の墓すら砕かれ埋められる。
 だからこそ戦の大前提は『勝つ』ことではなく、『君主が生き残ること』と、流は考えた。国を治める、その大前提も同様である。それは『一条銀』という実父、高い能力を持ちながら死の運命に飲み込まれざるを得なかった、あの悲劇の男を父にを持つが故の、独特の信念だったかもしれない。
 だからこそ流という青年は、いつか瑞波の君主となる日のために、こうして自らの肉体を徹底的にデザインしている。
 戦場においては、防御力に優れた重装の鎧を常に身にまとい、陣の奥深くに引っ込んだまま決して動かない。だが動くとなれば、この鎧のままほぼ三昼夜、不眠不休で行軍することが可能だ。水中であっても一昼夜、泳ぎ続けられる。
 遠距離からの矢弾は鎧で防ぎ、最も危険な接近されての攻撃は、むしろこちらから肉薄することで封じ込めてしまう。一口に接近戦と言っても槍の間合い、剣の間合い、短剣の間合い、拳の間合いと、それぞれに得意な距離には色々あるだろう。が、流のような力士が最も得意とする間合いは『零距離』だ。鍛え抜いた爆発的な瞬発力で距離を詰めて密着し、たとえ敵から一撃食らったとしても、二撃目を繰り出す前に圧し潰す。
 また戦闘以外で不慮の事態が起きたとしても、即死さえしなければ治癒アイテムや魔法による速やかな回復が期待できる以上、『戦場で死なない』ことに特化したこの流のスタイルは、極めて合理的かつ状況に左右されにくい。
 この巨大かつ重厚な肉体は、『生き残る』ための鎧であり剣なのだ。
 だが、いくらこうして理屈をこねてみたところで、それが尋常な生き方でないのは間違いないだろう。
 この世に生を受け、そして物心ついた瞬間から、一日も休まず『死なないための鍛錬』を続けるなど、まともな人間にできることではない。自分の人生をどう生き、どう死ぬか。それを子供時代から思い定め、そのために心と身体を自らの手でデザインし、彫り上げるのだ。
 瑞波の国の世継ぎとして生まれ、国を継いで君主となり、アマツの統一を目指して死ぬまで戦い続けること。
 そんな苛烈な意思を四股の一踏み一踏みに込めながら、自らの骨の一本、筋肉の一筋、血の一滴に至るまで、まるで言い聞かせるように鍛え上げるのだ。
 その日々を思う時、さすがのアクトも背筋が冷たくなるのを止められない。
 (自分の運命ってやつを、欠片も疑ってないんだよな。この人は)
 『一条流』として生まれ、生き、死んでゆく。そんな自分自身への揺るぎない確信。この恐るべき肉体は、その尋常でない半生を最も雄弁に語る、いわば語り部でもあるのだった。
 「アクト、報告」
 「あ、はい。『マグフォード』は一度目の爆発後、左右両方の気嚢後部に火災を起こして落下。その後は雲に隠れて見えませんでしたが、直後に二度目の爆発を起こしました。轟沈と推定されます」
 「ふん」
 流が悠々と四股を踏みながら鼻を鳴らし、
 「『キョウ』」
 一つの名前を呼んだ。
 「……んがぁ?」
 流の呼びかけに、さも『私は寝起きでございますヨロシク』と言わんばかりの、何とも間の抜けた返事が返って来た。どうやらベッドの上でひっくり返って寝ていたタートルコアの一人らしいが、規律の厳しいタートルチーム、いや軍隊ならどこだって懲罰間違い無しというダラっぷりである。
 しかしどういうわけか一条流、それを咎めもせず、
 「確認」
 「……うーい」
 流の命令に、適当にもほどがある返事が返る。しかも驚いたことにベッドから起き上がりすらしない。
 しかし何より驚異的なことは、『キョウ』と呼ばれたこのメンバーの態度を、あの流が再びスルーしたことだった。なにせこの若様の『規律好き』は誰しもが認めるところ。相手がどこの何様であろうとも、部隊行動中にこんな態度を許すなど、ほとんど異常事態と言っていい。
 「……んー、今は大丈夫っす。だーれも盗聴してないっすよ、リーダー」
 相変わらずの脱力声で報告が返る。声だけ聞いた限りでは男か、それとも女なのかちょっと分からない、何とも不思議な声だ。
 「ご苦労」
 「うーい……」
 とうとう最後までベッドから起き上がりもせず、しかもどうやらまた寝てしまったらしい相手に、何とねぎらいの言葉まで出た。もう奇跡のバーゲンセールだ。
 それにしてもこの『キョウ』なる人物、一歩も動かないどころかベッドにひっくり返ったままで、部屋の盗聴の有無をどうやって知ったものか。だが流はその報告を無条件で受け入れたらしい。
 「沈没は偽装だろう。恐らく『マグフォード』は健在だ」
 相変わらず四股を踏みながら、はっきりと断言した。
 「偽装?!」
 思わず聞き返したアクトだけではない、部屋のあちこちで好き勝手に過ごしていた他のメンバーも一瞬、それぞれの動きを止めて彼らのリーダーを注視する。
 「いいか? まず一度目の爆発で報告された真っ赤な炎と黒煙は、明らかにエンジンの燃料が引火したものだ。飛行船の気嚢ガスは安全のために遅燃性のものが使われているから、そもそも爆発しない。なのにその後の様子を聞けば、船体に目立った損傷はなく気嚢の一部が燃えていただけ。確かに気嚢が燃えるのは致命傷だし派手にも見えるが、爆発の性質とは矛盾が生じる。恐らく外付けの燃料タンクか何かを切り離して爆発させたんだ」
 さすがというか、見てもいないのにずばりと正解を言い当てる。
 「となると、一度目とほぼ同じ炎と煙が上がった二度目の爆発も、同じく偽装と見るのが自然だろう。船の性能的では劣るが、指揮官の役者は上だったということさ。……ま、『アレ』より下がこの世にいるとも思えんが」
 見事な洞察、そしてプロイスに対してはとことん辛口である。
 「ところでアクト。その後にもう一騒ぎあったようだが、何だ?」
 「遊びですよ、またいつもの」
 さすがのアクトがバカにしたように肩を両手を広げる。
 「『放浪の賢者』の救出に、一人で『マグフォード』を飛び下りた奴がいた、って報告しましたでしょう?」
 「ああ。結局、賢者は助けられず、ケガ人だかを救出したのだったか」
 「そう、その『勇者様』です。で、そいつが船に戻らず島に残っていたのを、わざわざ『セロ』で追い回してたんですよ。最後は空港への連絡トンネルに逃げ込んだところへ、エネルギーウィングを撃ち込んで、それで終わり。さすがに生きちゃいないでしょう。気の毒なこってす」
 「ちっ……!」
 四股のリズムは崩さず、しかしまたもや盛大な舌打ちが響く。
 「毎度つまらんことするもんですな、プロイス閣下も」
 「その『勇者様』とやらも自業自得だ」
 流の言葉は辛辣を極める。
 「状況から見て『マグフォード』の船長が指示したとは思えん。義憤に駆られたか何か知らんが、その手の衝動的なスタンドプレーは無意味どころか、逆に味方全体を危険にさらすだけだ。貴様らもよく憶えておけ」
 じろり、と部下を見回す。
 「そういうのが許されるのは、おとぎ話の中の英雄様だけだ」
 高々と振り上げた四股の足をゆっくりと床に降ろし、ずん、とひとつ地響きを起こしておいてから、
 「……ま、オレの幼なじみは別だが」
 ぼそり、と呟いた付け足しは小さすぎて、誰にも聞こえない。
 プロイスの来訪が告げられたのは、まさにその直後であった。
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