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第十三話 「Exodus Joker」 (8)
 
 時間、まさにそれが問題だった。
 要するに、この王道シナリオを実行するためには、時間がかかりすぎるのである。
 今から『マグフォード』があらん限りの速度を振り絞り、最速でどこかの都市へ駆けつけて事情を説明する、そこまではいい。『マグフォード』の努力で何とでもなる。
 だが、そこから公平かつ責任ある臨時政府を樹立し、総司令部を失った軍の足並みを揃えるのに、一体どれだけの時間がかかるか。
 さらに悪い事に、今は『カプラ社の内紛』という悪条件までが重なっている。
 つまり国内を瞬時に行き来できる奇跡の魔法・ワープポータルに信頼が置けず、事実上、使用不能なのだ。となれば国内で情報一つ交換するにも飛行船を飛ばすか、徒歩もしくは騎鳥ペコペコによる人力に頼らざるを得ない。
 実は共和国軍の中にだって、現在のような緊急事態が起きた場合に備え、即座に対応が可能な機動性の高い部隊は存在する。しかし彼らにしてもワープポータルが使えないとなれば、ジュノーまで自力で移動するしかない。
 これだけの悪条件が重なっていたのでは、本格的なジュノー奪還作戦が実行されるまで数日、下手をすれば数週間かかる可能性もある。
 いや、それどころか、この混乱の隙を突かれてアルナベルツ法国やルーンミッドガッツ王国による内政干渉、さらに最悪のケースとして侵攻まで許したとなればどうなるか。
 もう首都奪還どころの騒ぎではない、シュバルツバルド共和国の存在そのものが危うくなるだろう。
 「しかも『ユミルの心臓』だ。あれを敵の自由にされようものなら……」
 バークの言葉に苦悩がにじむ。
 『ユミルの心臓』、この万能の干渉器を悪意ある者が自在に使役する時、何が起きるのか。
 前例のない事態だけに具体的な予測すら難しいが、恐らくはこの世界の全兵器、全兵力を注ぎ込んだとしても、ジュノーを奪い返すどころか近づくことすら不可能になるだろう。
 つまりは『無敵』だ。
 「そうなれば総てが終わる。だからこそ、そうなる前に阻止せねばならない」
 静まり返った幹部達、そしてD1の顔を、バークがぐるりと見渡す。
 「そして今それができるのは……いや、それに『間に合う』のは唯一、この『マグフォード』だけなのだ」
 決然たる言葉の内容とは裏腹に、バークの声はむしろ落ち着いたものである。
 「よって本船はこのまま『イトカワ』に向かい、幽閉されたカプラ嬢を救出の後、ジュノーへ帰還する。これはセージキャッスルの『放浪の賢者』・翠嶺先生が決定された航路であり、現在のところ予定に変更はない」
 やはり落ち着いたその声は、まるで定期航行の飛行予定でも確認するかのような日常っぷりだ。
 いやバークにとっては、本当にそうなのだろう。
 同じこのテーブルで翠嶺が船の針路を決定したのは、ほんの数時間前のこと。それから短い時間の間に、船は確かに多くの事態に直面し、それを乗り越えて来た。だが、この航路を変更する命令は未だどこからも来ておらず、自己判断で進路を変更する理由もまた、ない。
 だから船は往く、そういうことなのだ。
 そして船の幹部達にとっても、それは同じ事であるらしい。会議中、あれほど多くの意見が出された割に、バークの決定には一切の異論は出ない。
 してみるとあの議論は、既に決定された航路の確認作業に過ぎなかったと見える。
 「了解、キャプテン」
 バークほどの自然さではないが、全員がその応えを返す。船の進路は決まったのだ。
 だが、バークはなお言葉を続ける。
 「そして改めて言うまでもない事だが、無代さんの事を忘れてはならない」
 バークの表情が、なぜか少し緩む。そう言われてみれば、あの無代という青年の名を語る時、わざわざ厳しい顔をする人間はあまりいない。アマツ・瑞波の国事を預かるあの大鬼でさえ、その名を出す時は言葉が和らぐ、とは養い子である小鬼の談だ。
 「無代さんには草鹿の命を助けてもらった借りがある。いや、あの人と灰雷が『セロ』に特攻してくれなければ、この『マグフォード』とて、こうして空に帰ることはできなかっただろう。『必ず帰還する』、その約束を違えることはできない」
 何のことはないバーク船長、最初からそのつもりなのである。ただ、これを一番最後に言うのが実に彼らしい。
 船を預かる船長、だからこそ通すべき筋は通さなければならない。例えばこの船が無頼の空賊船で、彼がその船長ででもあるのなら、義理や人情、仁義だけで舵を切るのもよかろう。
 だが『マグフォード』は空賊船ではなく、アーレィ・バークもそうではない。大体、それができるくらいなら、あの燃え盛る炎の中に翠嶺を置いたまま船を出したりするものか。
 船を守り、街を取り戻し、そして約束も守る。
 この紅茶のテーブルで交わされた誓いの真の重さ、過酷さを全員で共有してこそ、この船は飛ぶのだ。
 それがいかに困難な航路であろうとも。
 「現状、無代さんの消息は不明だが、灰雷がこの船に帰って来ないところを見ると、2人は行動を共にしている可能性が高い。ならばやすやすと倒れはすまい」
 バークの推量は正しいが、たとえ無代が死んでいたとしても約束は約束、そう考えるに決まっているから、これは蛇足というものだ。
 「さて、D1。そこで貴女に確認しておかねばならない」
 バークがD1に向き直る。
 「何でしょう、バーク船長?」
 「『イトカワ』に幽閉されているカプラ嬢の皆さんはジュノー奪還のために、本当に戦って下さるでしょうか?」
 当然の質問だった。
 いくら最高レベルの能力・スキルを駆使する女性達とはいえ、カプラ嬢は完全な民間人だ。軍船ではない『マグフォード』が戦う義務を負わないのと同じ、いやそれ以上に、カプラ嬢達には戦う義務はない。
 その高い戦闘能力にしても、あくまで自分もしくは顧客の財産を守る、つまり自衛が目的。今回のように巨大な軍事的脅威に対し、攻撃・制圧を行う事態など全く想定されていない 。
 「もしカプラ嬢の皆さんが戦いを拒否される、もしくはジュノーへの同行を拒まれるならば、『マグフォード』がジュノーに帰っても無意味どころか自殺行為となる。いかがでしょう?」
 バークの質問は厳しい。だがそれに対するD1の返答は明確だった。
 「戦います」
 その磨き抜かれた美貌に笑みさえ浮かべ、D1は断言する。
 「我がカプラ社を現在の危機から救うには、カプラシステムの奪還が不可欠。そのためには、敵に捕らわれた翠嶺先生、そして架綯先生のご助力が絶対に必要です。『ユミルの心臓』も同様。ならばその奪還に全力を尽くすのは当然のことです」
 「結構です。ならばもう一つ」
 バークから次に発せられた質問は、D1にとってもさすがに苛烈なものだった。
 「もし『イトカワ』に着いてもカプラ嬢の皆さんがいない、あるいは船に乗せても戦力にならない場合は、やはり同じ事になります。その場合はどうするか」
 「……!」
 D1の表情がさすがに強ばる。だが、この質問もまた当然だった。
 D1と無代の二人が、カプラ嬢達を残して『イトカワ』を脱出してから、既に丸一日が経とうとしている。その間、『イトカワ』に残された仲間達が無事でいる、という保証はどこにもない。
 食料や水については多少の備蓄もあり、よほどの異常事態が起きない限り一日や二日は平気だろう。
 しかし彼女らには明らかな『敵』がいるのだ。
 彼女らを拉致して『イトカワ』に幽閉し、同時にカプラシステムを乗っ取ろうと画策するカプラ社の重役達。そして彼らは恐らく、あの『セロ』を操ってジュノーを乗っ取り、翠嶺や架綯を拉致した者達とつながりがある。
 どちらか一方でも強力かつ得体の知れない敵が、あろうことか複数存在するのだ。
 だからこそ『イトカワ』に残ったカプラ嬢達に、彼らの魔の手が伸びていないという保証はない。いや、元々が彼女らを殺さずに幽閉したこと自体、後日『BOT』として再利用するためなのは明白ではないか。
 さすがのD1が言葉に詰まる。
 そう、バークの質問が苛烈なのではない。状況は既に、もう十分苛烈なのだ。そしてD1に何度も、何度も、その覚悟を試してくる。
 「その場合は、たとえ私一人でも……と、言いたい所ですが、それではただの自殺行為なのですね」
 「その通りです」
 バークがうなずく。
 「勇気と同時に、冷静さも必要です、D1。これから『マグフォード』が目指す航路は正直、後先を考えていては進めない。相当の『蛮勇』が必要になるだろう。しかしだからといって、まるっきりの自殺行為を許すつもりはない。私は船長ですから」
 勝算ゼロの冒険は冒険ではない。ノリや勢いだけで突き進んで、それで事が成せるほど楽な状況ではないのだ。
 「はい。……もし『イトカワ』に着いて、船長がおっしゃられたような状況の場合は、申し訳ありませんが私を地上に降ろして下さい。何とか自力でアルデバランへ参ります」
 アルデバランは、カプラ社の本社のある都市だ。
 「そして、一人で本社へ乗り込まれる?」
 「いいえ」 
 バークの質問をD1は否定する。なぜなら、それは自殺行為だから。
 「まずはカプラのOB達を頼るつもりです。信頼できる有力な方々が多くいらっしゃいますし、皆、事実を知れば黙ってはいないでしょう。ひょっとして今、街角に立つカプラ嬢が全員『BOT』にすり替えられていることに、既に気づいている方もいらっしゃるかも」
 「なるほど」
 この答えには、バークも微笑みを返す。
 なにせ歴代に渡って世界最高レベルの女性達を集めてきたカプラ社だけに、当然ながらOB達も粒ぞろいだ。また元々が良家の子女が多いこともあって、引退後は良縁に嫁ぐケースも少なくない。やや下世話な話になるが、有力貴族や大富豪、大ギルドの幹部などの間では、『元カプラ嬢の嫁』を持つことは一つのステータスにもなっている。
 確かに彼女らの力を借りれば、現役のカプラ嬢をまとめ上げて戦うのと同等、あるいはそれ以上の力を得ることも不可能ではあるまい。
 「ただ彼女達をまとめるにも、やはり時間がかかってしまう」
 D1の分析は正直なものだ。確かに元カプラ嬢といえばスペックは高いが、それゆえにプライドも高く、社会的な立場もまちまちである。後輩であるD1の言葉に、やすやすと従ってくれるとも思えない。
 「そうですな。今は何より『時間』が貴重だ。まずは『イトカワ』の皆さんの無事を祈りましょう」
 「……ですが、そういうことでしたらバーク船長、私からも質問をよろしいでしょうか?」
 話を締めくくろうとするバークを、だが今度はD1が引き止めた。
 「もちろんです、D1。……とはいえ、お尋ねの内容はおおよそ見当がつく」
 D1の質問を、バークが先取りする。
 「あの戦前機械『セロ』を相手に、この『マグフォード』が勝てるのか、ということですね?」
 おそらくこれこそが今、最も重要な質問だろう。それが証拠にテーブルについた船の幹部、艦橋のクルー達、その全員の間にさあっ、と、今までとは異なる緊張が走る。
 D1も敏感にそれを感じ、やや慎重に言葉を探す。
 「決して『マグフォード』を侮るわけではありません。しかし……」
 「疑問は当然です、D1。ですが実はこの船にはまだ、貴女にお知らせしていない事がいくつか……?!」
 しかしバークの言葉が最後まで、D1の耳に届く事はなかった。突然の事態が、それを遮ったのだ。
 艦橋の伝声管から警報音が鳴り響く。続いて緊張した報告の声。
 『マグフォード』の監視員からだ。

 「『イトカワ』推定方向に複数の異常発光を視認中! 砲発火炎(マズルフラッシュ)と思われます!」

 監視長を勤める共和国軍の退役スナイパーが、椅子を蹴り倒す勢いで席を立ち、大ぶりの双眼鏡を引っ掴んで艦橋を飛び出して行く。この慌てぶりは無理もない、まだ『イトカワ』が視認できる距離ではないため、部下に監視を任せて艦橋で紅茶を飲んでいたのだ。
 確かに『砲発火炎』の光ならこの距離でも届く。が、それを予測しろというのはちと酷だけに、バークも彼を叱責しない。
 ところで飛行船という乗り物は、巨大な気嚢を背負うせいで『上方』への視界が極端に悪い。そのため気嚢の上部に監視所を置くのが通例で、双胴船である『マグフォード』も左右双つの気嚢の上にそれぞれ二カ所、計4カ所の監視所が置かれている。
 艦橋を飛び出した監視長は、そのうち右前方の監視所へ、気嚢を縦にぐるりと半周する形で作られた梯子を昇ってたどりつく。
 数瞬の、まるで真空のような沈黙の後、伝声管が鳴った。
 「砲発火炎確認。艦載用の半(デミ)カノン砲と推定、最低でも3門を確認しました。飛行船の艦砲射撃と思われます、船長殿」
 そこは元軍人だけあって砲発火炎、すなわち大砲発射時に砲口から噴き出す炎の様子だけで、使用された大砲の種類まで割り出す観察・分析力はさすがだ。
 「『イトカワ』が飛行船から攻撃を受けている。そういうことか、監視長?」
 「は。『イトカワ』自体はまだ視認できないため断定は控えますが、そう考えて矛盾のない状況です、船長殿」
 「了解、監視を続けてくれ」
 バークがいつにも増して厳しい表情で伝声管を離れ、D1を振り向く。だが、バークはそこで意外な物を見ることになる。

 D1が笑っていた。

 ついさっきまで、不安や苦悩を隠せなかったその美貌に、まぎれもない笑顔が浮かんでいる。
 だがその笑顔は決して、美しく優しい癒しの笑みではない。
 暗い夜の底から吹き上がる、質量を伴った炎のような笑み。その美貌を飾る紅玉のルビーブロンドが、不可視のオーラに揺らめく。
 「D1……?!」
 さすがに驚いて声をかけるバークに、D1はその笑みをさらに広げ、
 「……戦っている!」
 「何?!」
 「攻撃を受けている、つまりそこに『戦う者』がいるということです、バーク船長。ならばその相手はカプラ嬢以外にありえない。……彼女達はまだそこにいる! そして戦っている!」
 決然と言い放つ。
 バークでさえ一瞬、返す言葉を失うほどの気迫が、D1の全身から湧き上る。
 戦いの在処を示す砲火の光が、逆に仲間の健在を示す希望の証とは、何という苛烈な運命だろう。しかしこの美しきカプラ嬢は今まさに、その苛烈の中で咲こうとする。
 燃え盛る火中に真の花と咲く、希有なる生命の有様こそ見よ。
 「急いで下さい、バーク船長。お願いします!」
 「了解」 
 バークが重くうなずく。
 D1、その命の炎に煽られるように艦橋内の緊張、そして意気が喚起される。
 「エナーシャ回せ! エンジン始動!、直ちに全開!」
 バークの指示が伝声管を通じ、谷間の風に揺蕩う飛行船を叩き起こす。

 ぶぅおぉおおおおおおおおおおおんんん!!!!

 4機のエンジン、その咆哮が吹き上がり、谷間を遥か木霊と響く。
 並の飛行船にはあり得ない『マグフォード』の超高等機動、気嚢のガスを抜く急降下の次は、プロペラの大推力をフルに使った急上昇だ。
 超急角度、空高く仰いだ艦橋の窓は、どこまでも澄みきった青色一色。
 双胴の巨鯨が風を打ち、シュバルツバルドの空へ舞い上がる!
中の人 | 第十三話 「Exodus Joker」 | 12:23 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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