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第十四話「Cloud Climber」(3)
 岩壁から張り出した岩を、人差し指から小指まで四本の指先を揃えてぎゅっと曲げ、引っ掛けるように掴む。この時、親指は人差し指の上に置き、指にかかる負荷を軽減する。
 これを『カチ持ち』という。
 岩登りの基本である。
 この時、猿が木の枝にぶら下がるときのように、腕を伸ばしておくと疲れない。
 『猿肘』だ。
 同時に、やはり猿がするように、使っていないほうの腕はだらん、と下げて休ませる。
 『猿休み』である。
 また指を引っ掛けるための張り出しがなく、ただ盛り上がっているだけの岩は、指をぎゅっと広げて張り付くように掴む。
 『ヤモリ持ち』という。
 あるいは氷柱のように下へ垂れた岩を両手で掴んで登る。
 『〇〇コ(いわゆる男性器の俗称)掛け』という。
 岩の裂け目に指を差し込んで登る。
 『〇〇コ(いわゆる女性器の俗称)掛け』だ。
 いささか下品なのは謝罪しておくとして、無代が四貢の山で教わった技術といったら万事がこの調子であり、技術の高度さ、複雑さに比例して隠語がキツくなっていく。
 ふざけている、と言えばその通りだが、逆に言えばそれだけの心の余裕がなければ使いこなせない、といってそれがなければとても登れない、そんな難所がいくつもあることを示している、とも言えた。
 さて、
 『一年で一人前のカツギになる』
 とまあ、口で言うのは簡単だ。
 (って、そんなワケないわな)
 今や青年となった無代は苦笑する。
 今はもう懐かしい思い出となった、あの老カツギとの夜を思い出すたびに自然と浮かぶ、それは苦笑だった。
 いくら才能を認められたといっても、結局は素人に毛の生えた程度でしかない少年が、そうそう簡単に一人前になれるはずもない。
 思い出せば、苦難の連続だった修行の日々。
 そして四貢山登山。
 その後に訪れた老カツギとの、そして『天井裏の魔王』との避けられぬ別れ。
 (結局最後まで、迷惑のかけ通しだった……)
 苦笑の次に思い出されるのは、苦い思いばかり。
 だがその苦さとは裏腹に、記憶の中の老カツギはいつも笑顔だった。修行の途中でも、別れの死の床でも愚痴ひとつ言わず、それどころかずっと楽しそうに笑っていた。
 『無代さん。お前ぇさんを御山に連れて来られてよかった……本当によかった』
 そう言って、最後まで満足そうに笑いながら逝った老カツギ。
 その魂が今も四貢山の懐に抱かれてあることを、無代は微塵も疑わない。
 (どうか……どうぞ見ていておくんなさい、大棟梁さん)
 無代は心の中でそう呼びかける。
 そしてあの日に教わった通り、基本に忠実な『カチ持ち』で岩を捕らえ、足の親指側で岩を踏む『内掛け』で身体を持ち上げる。
 ぐいっ、と身体を上方に持ち上げる時の、呼吸の回し方。
 身体と命を預けるロープの結び方、捌き方。
 それらすべての技術が今、無代の命を支えていた。
 風が、ひゅう、と無代をあおる。
 足の下には、文字通り何もない。
 見下ろしても見下ろしても、地上の影すら見えない断崖絶壁。そのど真ん中に、無代は張り付いていた。
 空中都市ジュノー、その外周壁だ。
 空の真ん中に浮遊する稀有の都市を囲む、冗談抜きで底無しの大絶壁を今、無代は登っているのである。
 岩壁の高さだけでも千メートル、そこから地面まではさらに遠い。
 落ちれば当然、命はない。百回死んでもまだ、お釣りの方が遥かに多いだろう。
 だがそんな極限の場所にいながら、無代の表情にはまるで恐怖も、緊張も感じられない。それどころか、
 (お蔭さんで楽なもんです。大棟梁さん)
 いっそ鼻歌交じりの勢い。この奇跡の空中都市を囲む大岩壁をひょい、ひょいと登っていく様は、進歩した装備や技術を持つ現代のクライマーさえ凌駕する。
 が、もちろんそこにはカラクリがある。
 「おし、灰雷。次、あのパイプだ」
 無代がそう言って、先端にフックの付いたロープををひょい、と宙に投げる。瞬間、
 しゅっ!
 岩壁すれすれを舞う巨大な影が、翼をひと打ち。空中にあったフックを嘴にくわえ、ロープを引いて空を翔る。
 武装鷹(アームドホーク)・灰雷(ハイライ)だ。
 グラリスNo1スナイパーの愛鷹である彼女は、飛行船『マグフォード』での邂逅以来、ずっと無代と行動を共にし、その行動をフォローし続けているのだ。
 「右、そう、そっちの一番太いやつに頼む」
 無代の指示を受けながら、ジュノー外壁に張り出したパイプの一本に、ロープの先のフックを引っ掛ける。
 鷹師の使う武装鷹はこのように、戦闘能力に加えて知能も高い。人語も相当のレベルで理解するし、行動能力も人間の子供程度は十分にある。
 この程度のお手伝いは、むしろ正しい意味での役不足だ。
 「よっ、と」
 ぐっ、とロープを引っ張って安全を確認し、無代が登攀を再開した。
 ところで、ロッククライミングの命綱というものは通常、登る人間の『後』にあるものだ。素手で岩を登ったところでハーケンを打ち、そこにロープを固定しておいて、また登る。そうすることで、もし手を滑らせたとしても、最後に打ったハーケンの位置で落下が止まる、という寸法だ。
 ところが無代の場合、その復帰ポイントが『自分より上』にある。こうなると、そもそも落下する心配がない上に、岩に適当な手掛かりが無い場合は、そのロープをよじ登ればいい。
 灰雷の助けも含めて、これは反則もいいところだった。
 もちろん、だからと言ってこの大絶壁を相手に、誰でもこうして鼻歌混じりで登れるわけではない。
 この高度でも平気で活動する胆力に加え、老カツギに鍛えられた技術なくしては、無代とても不可能だったはずだ。
 心配といえば唯一、ロープに不慮の破損があることだが、それも極小である。
 何せこのロープ、ただのロープではない。
 『忍者』の持ち物だ。
 しかもその辺の野良忍者ではない。誰あろう、グラリスNo14忍者、その人の忍具なのだ。
 (軽くて細くて、その上に丈夫と。さすが見事なもんだ)
 感嘆する無代だが、果たしてどこでそれを手に入れたのか。
 G14本人から? いや、違う。
 さしものグラリス師範忍者も、無代と出会った浮遊岩塊『イトカワ』の上では、ロープどころか手裏剣の一本すら持っていなかった。
 ではどこから?

 実はなんと、カプラ社宿舎にある『彼女の部屋』から拝借したのだ。

 戦前機械『セロ』に囚われた翠嶺を救わんと、灰雷と共に『マグフォード』を飛び出した無代。『セロ』に追われながら、辛くも空中都市ジュノーに上陸した彼が、まず最初にしたことこそ、街にあるカプラ社の宿舎に忍び込むことだった。
 もちろんこれが常時ならば、とても褒められた話ではない。
 いや、それどころか一発御用の犯罪行為だろう。
 が、今は非常時、真っ当なモラルを語っている場合ではない。もちろん、れっきとした目的もある。
 その目的とは、まず灰雷にメッセージを持たせたカプラ社公安員、エスナ・リーネルトに接触することだった。
 カプラ嬢達が浮遊岩塊『イトカワ』に囚われた後、ジュノーのカプラ社宿舎に置き去りにされていた武装鷹・灰雷に手紙を託し、空に放ってくれたエスナ。カプラ社幹部による会社乗っ取りの陰謀に、単身で立ち向かった彼女なら、きっと灰雷と無代の力になってくれるはずである。
 彼女がまだ宿舎に留まっているかは不明だが、ジュノーの中でほぼ単身の無代がアテにできる手掛かりといえば、今はそれしかなかった。
 さて、その空中都市ジュノーは3つの超巨大岩塊を連結して形成されている。
 政府庁舎やセージキャッスルなど首都機能を象徴する施設がある『ソロモン』。
 共和国図書館、シュバイチェル魔法アカデミーなど研究・教育機関が集まる『ハデス』。
 そしてジュノー国際空港を擁し、一般市街地が広がる最大の岩塊『ミネタ』。
 以上の3つだ。
 目指すカプラ社の宿舎は、ミネタ岩塊の外れ。無代達が上陸したジュノー国際空港とは、ちょうど反対側にある。
 今、ジュノー上空にはレジスタンスの首領『プロイス・キーン』が操る戦前機械『セロ』が周回しており、町中にもその配下のレジスタンス部隊が哨戒を続けている。
 無代は彼らに見つからないよう灰雷のナビゲーションを受けながら、あらん限りの速度で市街地を駆け抜けた。
 地を這うような低空を飛ぶ武装鷹に導かれる、破けたツナギにデッキシューズの妙な男を、しかし見咎めるジュノー市民の姿はない。
 (……?)
 無代が不審に思ったのも一瞬。無人の理由はすぐ判明した。
 彼らは全員、ハデス岩塊に移動させられているのだ。
 プロイス率いるレジスタンスは、数万人に及ぶジュノー市民を最小のハデス岩塊に移し、その上で連結橋を破壊した。
 なるほど、市民による抵抗を防ぐには極めて有効な手段だ。
 蝶の羽やワープポータルによる転移魔法で移動しようにも、本来『カプラ・グラリス』が立つべき3カ所のカプラポイントはすべて、BOT化されたカプラ嬢が占拠していて、空間転移を封じている。
 こうなってしまえばそれこそ翼でもない限り、ジュノー市民がミネタ岩塊に、まして『ユミルの心臓』が納められた賢者の塔を有するソロモン岩塊に移動することは不可能だった。
 (うまいこと考えやがる)
 敵ながら、都市制圧の方策としては的確だ。
 本来は重要施設を『守る』ことに特化した空中都市の構造が、今は逆に制圧のために利用されてしまっている。
 『マグフォード』にとどめを刺さず、まんまと逃したとはいえ、決してナメてかかれる相手ではなさそうだった。
 カプラ社宿舎。
 それは高い塀と、頑丈な門に守られた堅牢な石造りの建物である。
 そりゃ世界最高の『女の園』に忍び込もう、などという不埒者から、大切なカプラ嬢を守るためとくれば、この程度は当然の備えだろう。

 敵の見張りはない。
 カプラ嬢は全員囚われの身で、ここに戻る人間は皆無、と思い込んでいるのだろう。
 「……、よし、頼むぜ灰雷」
 無代が小声で、頼りになる相棒に合図。
 周囲の監視の目がないのを確かめ、高い外壁に向かって無代がダッシュする。ボロボロのデッキシューズで思い切り石畳を蹴ってジャンプ。
 もちろん届かない。だがそのタイミング。
 ばさあっ!
 後方から加速しながら飛翔してきた武装鷹・灰雷が、掬い上げるような急上昇軌道を描きながら、無代の背負った巨斧・ドゥームスレイヤーの柄を爪で引っ掛ける。
 ぐんっ!
 ジャンプの頂点に達し、落下に移る直前だった無代の身体が、さらに2メートル近く浮き上がった。
 がしっ!
 無代の身体が外壁の縁にしがみつく。さすが灰雷、無代を飛ばすことはできなくても、この程度の補助なら朝飯前である。 
 まんまと外壁を乗り越えた無代は、施錠された扉の鍵を複雑な道具で解錠すると、宿舎内に侵入した。カツギだけではない、大工やとび職、鍵屋の技術まである無代ならではの手際だ。
 何と言うか、いっそ『堂に入った』侵入ぶりである。

 彼を育てたと言ってもいい瑞波・桜町の職人たちが、無代について一番心配したのが、実はコレだった。
 『無代の野郎が手っ取り早く金を稼ごうと思ったなら、そりゃ泥棒んなるのが一番だ』
 そこまで衆目が一致するほど、無代という男が身に着けた技能は多彩で、そして『実用性』を極めている。
 もちろん無代、その技術を悪事に使ったことなどない……はずなのだが。
 侵入した寮内は、しん、と静まり返っている。
 (……無人、か)
 ある程度予想できたことではあるが、さすがの無代も少し落胆。
 女子寮の本来の住人たちはすべて、敵の手によって浮遊岩塊『イトカワ』に拉致された。
 それに対抗すべきカプラ公安部も、その長たるカプラ社専務ヒルメス・アイダ自身の裏切りで壊滅している。

 唯一それに抵抗し、この宿舎から灰雷を解き放ったカプラ公安員エスナ・リーネルトが、まだここに留まっている可能性に賭けたのだが、残念ながら外れだったようだ。
 とはいえ、いつまでも落ち込んでいる時間はない。
 『マグフォード』のアーレィ・バーク船長が約束した、ジュノー帰還の時間『4時間』まで、
 (やべえ、もう30分以上使っちまった)
 無代は即座に、次の目的へと行動を切り替える。
 第二の目的、それは『武装鷹・灰雷の戦闘装備を入手』することだ。
 灰雷にメッセージを託したエスナが、灰雷を解き放つ際に施した装備は、いわゆる『汎用型』。ある程度の距離を飛ぶことができ、戦闘能力もそこそこあるという、悪く言えばどっちつかずの装備である。
 だが今、敵陣のど真ん中にいる無代たちにとって、必要なのは敵に対する絶対的な戦力。
 すなわち『対人(アンチパーソナル)』・『対物(アンチマテリアル)』を目的とした強装備こそ必須である。

 またも灰雷の案内で、宿舎の裏手に回る。
 そこにはカプラ嬢達が使役する動物たちの飼育小屋と、広々とした運動広場がある。
 面積の限られる岩塊の上に建設されたために、何よりも『広さ』が貴重なジュノーの街で、動物たちだけのためにこれだけの面積を割ける、という事実が、何よりもカプラ社の力と財力を証明している。

 その時だった。
 がちゃり。
 女子寮の門が開く音。
 (……?!)
 びくり、と立ち止まった無代の耳に、近づいて来る足音が二つ。
 堅い、軍靴の音。街の中を移動中、何度か聴いた哨戒兵の靴音。
 敵だ。
 無代の全身を一瞬、焦りの炎が焼く。
 (やべえ……見つかった!?)

 つづく
中の人 | 第十四話「Cloud Climber」 | 03:26 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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