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第十四話「Cloud Climber」(5)
 空中都市・ジュノー。
 地上1800メートルを超えるシュバルツバルド山脈の頂に、巨大な橋で繋ぎ止められたこの浮遊都市は、『ソロモン』『ハデス』『ミネタ』という3つの超巨大岩塊で構成されている。
 そのうち最も小さく、『シュバイチェル魔法アカデミー』など技術・研究関係の施設や企業が集められた『ハデス』の石畳。
 少年賢者・架綯(カナイ)は、その冷たい石の上に転がされていた。

 魔法が使えないように箝口具を噛まされ、印を結ぶ指を封じる指なし手袋を着けられ、さらに両手両足を縛られている。それは奇しくも師の翠嶺がされたのと同等の厳重さで、『翠嶺の弟子』という称号に対する評価と、そして恐れの現れだ。
 が、もしそうでなかったとしても、架綯が抵抗することはなかっただろう。
 冷たい石の上に力なく置かれた頭、その目は虚ろで、呼吸は細く、顔色は悪いのを通り越してどす黒い。もともと弱い呼吸器が発作を起こし、ほとんどチアノーゼに近い状態にまで悪化しているのだ。
 そして何よりも、身体を支える精神が、ほとんど粉々と言っていいほどに砕けていた。
 飛行船『マグフォード』を下船し、ホームに戻ってきたと思った途端、敵に襲われ、供をしてくれた草鹿少年は重症を負ったまま生死不明、『マグフォード』は撃沈。
 加えて、架綯が絶対の信頼を寄せる師の翠嶺さえ囚えられた、というのが致命的だった。
 こうなってはもう、『ユミルの心臓』の力を使ってカプラシステムを取り戻す計画どころではない、逆に『ユミルの心臓』が敵に奪われるのも時間の問題だ。
 まさに万事休す。
 生来、理性的かつ論理的な学究賢者だけに、架綯にはもはや抵抗する気力すら無い。もっとも、そのおかげで敵の暴力や酷い扱いを受けることもなく、ただ拘束されて転がされただけで済んだのは不幸中の幸いとも言えたし、翠嶺から与えられた『ユミルの心臓』へのアクセスキーも、まだ気づかれないまま首に下がっている。
 これが敵の手に渡れば、『ユミルの心臓』は今すぐにでも敵の手に落ちる。
 もっとも、そうでなくても一定の時間をかければ、敵が心臓へのアクセス権を獲得することは可能だ。カプラシステムに介入した手腕からみても、彼らにその能力があることは疑いがない。
 そうなったら、どうなるのか。
 この世界のあらゆる事象に干渉可能な戦前装置(オリジナルマシン)が、悪意ある敵によって自由にされた時に何が起きるのか。
 もはや架綯にすら想像もつかない。
 確かなことは、この世界そのものが根底から改変されてしまう、ということだけだ。
 だがそんな状況にあっても、
 (どうして……どうしたら……どうすることも……)
 架綯は混濁した意識の中で、ただ無意味な思考をぐるぐると旋回させるだけ。
 『翠嶺の弟子』、『呪文摘み(スペルピッカー)』。万人に一人の異能も、そこから冠せられた異名も、もはや何の役にも立ってはくれない。
 巨大な動乱の中で、少年はただ無力だった。
 無力感を噛み締めることも、無力さを嘆き、悔しがることもできぬほど、あまりにも無力だった。
 「……!」
 「……!!」
 頭の上で、誰かと誰かが口論する声がする。
 彼よりも年かさの賢者たちが、彼らを監視する敵兵士に対し、架綯の治療を要求しているのだ。
 だが、相手は当然のように無視。賢者たちが声を荒げれば、武器をかざして黙らせる、その繰り返し。最初のうちは微かな期待を抱いていた架綯も、もう今では賢者たちの言葉さえ耳に入らない。彼らが架綯のために危険をおかしているのは分かっていても、彼の耳はただぼうぼうと耳鳴りだけを伝えるだけ。
 ……の、はずだった。

 「架綯坊っつぁま〜!!!!」

 なぜかその声は、架綯の耳にやたらとはっきり聞こえた。
 「かぁなぃ坊っつぁまぁあ!!!」
 腹の底から搾り出すような、塩っ辛いドラ声。
 半分死んだような有様で石畳に転がった架綯までが、驚きの余り苦しさも何もかも忘れ、首を仰け反らして声の方向を見る。
 「架綯坊っつぁま〜!無代ぇでごぜぇます〜!」
 『むだい』が『むでぇ』としか聞こえない、主にフィゲル方面で使われる強烈な訛り。確かにフィゲルは架綯の故郷だが、それを彼に告げたことはなかったはずだし、そもそもいつ、どこでそんな訛りをおぼえたのか。
 「ああああああ!!! 架綯坊っつぁま! いま無代が参りますで!!」
 やっと架綯を見つけた風に、無代の声が近づく。
 人垣が割れる。
 「……?!?!」
 やっと姿を表した無代の姿に、架綯はほっとするどころか、さらなる驚愕に目を剥いていた。
 ボロボロの服にボサボサの頭。背中や肩にでっかい風呂敷をいくつも括りつけた姿は、なるほどド田舎の実家から仕送りの荷物を届けに来た、お上りさんの使用人そのものだ。
 だが架綯が驚愕したのはそこではない。
 
 無代の左足、その膝から下が無かった。

 逞しい脚が途中からバッサリと切り落とされ、傷口は包帯でキツく縛り上げられている。恐らく、何かの回復剤で出血と痛みを止めているのだろうが、それでも包帯はどす黒い血が重く滲んでいた。
 「坊っつぁま! お、お薬を! 今お薬をお持ちしますで!!」
 片足の身体を支えるのは、ボロ布を巻きつけた歪な松葉杖。それも長さが足りなかったと見えて、先っぽにそのへんの樹の枝を接いで縛り付けてある。
 その不安定な樹の枝が、無代が歩く度にみっしり、みっしり、と不気味な音を立てた。
 「坊っつぁま……坊っつぁま……」
 無代の塩辛声が、うわ言のように変化する。出血か、あるいは重症によるせん妄だろう。人間は身体に大きなキズを負うと、そのストレスによって脳内物質の構成が変化し、ある種の精神病に似た状態になる場合がある。
 みしり、みっしり、と、杖の音が響き、無代がよろよろと架綯に近づく。
 周囲の人々があっけに取られて下がる中、さすがに警備の兵士たちは正気に戻るのが早い。近くにいた騎士2人、プリースト1人、そしてチェイサー1人の4人が、無代に殺到する。
 騎士は抜刀、チェイサーも弓を構え、いつでも無代を殺せる体制だ。
 そう、いつでも殺せる。こんなド田舎者の、しかも片足の半死人など、いつでも殺せる。
 「ひ、ひいぃぃ!!」
 それが証拠に、兵士の武器の輝きを見た途端、無代の顔に明らかな怯えの表情が塗りたくられる。
 「お、お許し下せぇ! お許し下せぇ!!」
 右手と、不格好な松葉杖を支える左手まで動員し、手のひらを兵士たちに向かってブルブルと震わせる。
 「坊っつぁまは、架綯坊っつぁまは、たいへんな御病気なんでごぜぇやす! フィゲルの旦那様と奥様に、無代が怒られちまいます!」
 やっぱり『旦那様』が『だンさン』、『奥様』が『おくさン』にしか聴こえない。
 もちろん兵士たちにとっては、この男が主人に怒られようが知ったことではないし、それ以前に彼が怒られることはないだろう。だって、ここで死ぬのだから。
 チェイサーが弓に矢をつがえ、騎士達が剣を構える。せめて一撃で殺すのが慈悲だ。
 だが。
 「ゆみるのしんぞう!!」
 無代が叫んだ言葉が、兵士たちの殺意をせき止めた。
 「坊っつぁまは、ゆみるのしんぞうを動かせるんでごぜぇやす!」
 無代の叫びを聞いた瞬間、チェイサーの目が周囲の人混みに走った。
 『ユミルの心臓を動かせる』、無代の言葉が苦し紛れのデマカセか否かは、無代自身を見ていても分からない。
 それはジュノーの賢者たち、そして誰よりも架綯その人の顔を見れば分かる。
 「賢者の塔の賢者様に、お許しを頂いたんでごぜぇやす! おっぱいのでっかい、べっぴん様の賢者様に!!」
 無代の叫びが続く。
 チェイサーの一瞥、それ以上は必要なかった。
 賢者たち、そして架綯の表情には、明らかな動揺がある。言ってはならないことを、知られてはいけないことを、わざわざ大声で喧伝されてしまった、その事に対する反応。
 つまり、無代の言葉は真実だ。
 「捕らえろ!」
 現場の指揮官であるチェイサーが、2人の騎士に指示を出す。騎士たちが剣を納め、相変わらずよろよろと近づく無代を左右から押さえ込みにかかる。
 その瞬間だった。
 「架綯坊っつぁまぁ!」
 一言叫んだ無代の身体が沈み、2人の騎士の腕をかい潜る。と、書くと何かの技のようだが、実際には単にバランスを崩し、架綯の方へつんのめってズッコケたようにしか見えなかった。
 どべしゃあん!!
 背中や腰のでっかい荷物に潰されるように、無代の身体が石畳の上に転がる。その腕が、転がされた架綯に届く。
 ごぉん!!
 松葉杖が石畳の上に倒れ、重い金属音を立てる。くくりつけてあった樹の枝が、ついに外れてコロコロと石畳を転がった。
 「ちっ……!」
 騎士が舌打ちして、倒れた無代を引き起こそうと近づく。まったく、余計な手間だ。
 現場の最前線で戦う騎士は本来、華麗で勇壮なもののはずだ。しかし得てして本当の意味での最前線では、こういう『雑事』の方が多くなる。
 ところで、後方に控えたチェイサーは油断なく弓を構え、念の為に無代の足に狙いを定めた。残った片足の、膝の裏を撃ちぬいておけば、何者だろうがめったなことはできない。
 また既に、さらに後方に控えたプリーストに合図を送り、周囲の兵士に警戒の強化を命じている。
 (これは陽動だ)
 指揮官なら当然、そう考える。
 飛空戦艦『セロ』を頂点とする彼らレジスタンスは、ジュノーをほぼ制圧していたが、『ほぼ』ということはつまり『完全ではない』。
 シュバルツバルド政府要人を守る守備隊の一部は未だに逃亡し、都市のどこかに潜伏したままだし、賢者の塔の構成員も全員を確保できたという保証はない。
 となれば、この場所に警備の目を引きつけておき、その隙をついて大規模な攻撃を仕掛け、市民を解放する、という作戦は十分に予想できた。
 だからこそ、下手に兵力をこの場所に集中させることなく、広く周囲を警戒させた、その判断は常識的かつ正しい。
 ただ不運なことにこの場合、相手があまりにも『非常識』だった。

 まさか『たった一人で』、『たった一人を』掻っさらいに来た、などと、誰が想像するだろうか。
 
 チェイサーが弓をきり、と一絞り。距離ほんの2メートルほど、外しようは無い。
 しゅん、と矢が放たれた。
 ジュノーの風に真一文字の線を引き、うつ伏せの無代に矢が突き刺さる、そう見えた時だった。
 「……今だ、灰雷っ!!」
 無代が発した言葉を理解できたのは架綯と、そしてもう一羽。
 ずばんっ!!
 無代の背中の巨大な風呂敷が、内側から爆発するように弾け飛んだ。
 黒黒とした影がやすやすと矢を砕き、さらに左右2人の騎士を飲み込む。
 かぃぃん!! 騎士たちの身体にかけられたバリア呪文『キリエ・エレイソン』の発動音。
 (爆弾?!)
 2人の騎士が思わず無代から飛び離れる。
 だが遅い。
 しゅっ!!
 真紅の虹が二筋、シュバルツバルドの青空に弓を描く。血だ。
 騎士の喉が横一文字に、すっぱりと斬られている。喉を守るはずの金属の帷子が、まるで紙か粘土細工のように切り裂かれ、吹き上げる鮮血を綺麗に整えているのが皮肉だった。
 しゃりん!
 軽い金属音を響かせて、翼を一振り。
 武装鷹・灰雷だ。
 野生の鷹ならば本来、武器としては使用しない翼に、魔法金属オリデオコン製の刃を織り込んで攻撃する。『対人(アンチパーソナル)装備』の一つ、『刃羽(ブレードフラッター)』。
 その威力。
 最初の一撃ちで、まず両側の騎士のバリアを完全に損耗させ、戻す一撃で帷子ごと頸動脈を切り裂いた。
 高レベルの両手剣クラス、しかも『二刀流』。
 カプラ女子寮で、無代の手によってほどこされた強装備。
 ほぼ全身を覆う魔法金属製の鎧は、敵に見つかりにくくするため反射光を抑え、さらに元々の黒灰色の羽色に合わせて着色されているため、ほとんど『不吉』と言っていいほどに禍々しい殺気を放つ。
 その重さと、空気抵抗の大きな形状のため、灰雷の力を持ってしても、もはや長距離を飛ぶことはできない。
 だがそれと引き換えに、戦闘能力は折り紙つきだ。
 「武装鷹?!」
 チェイサーが叫ぶ。そうしながらも、素早く矢をつがえ直したのはさすが。が、しかしその矢を発射することはできなかった。
 くしゅっ!
 弓を握った左手が、一瞬で肉塊に変わる。
 「あぎ!?」
 何が起きたのか、チェイサーは不幸にも、それを一瞬で理解した。武装鷹、その最強の武器が、自分の身に襲いかかったのだ。
 鷹という生き物が持つ最強の武器。
 翼? 違う。嘴? 違う。

 正解は『爪』だ。

 我々の世界に暮らす鷹の中にさえ、その握力が人間の平均の3倍近い140kgを超えるものがいる。ましてこの魔法の世界、しかもそれを『対物(アンチパーソナル)装備』で強化しているのだ。
 めしゃっ!
 チェイサーの同時に彼の視界が真っ暗になり、次の瞬間、すべてが暗黒に飲み込まれる。
 頭蓋骨を頭装備ごと『握り潰された』、と理解できなかったのは幸いと言うべきか。
 「リザレクショ……っ!?」
 惜しい。
 騎士の一人を蘇生させようと、魔法の最後の一文字を唱える、その直前にプリーストが即死する。
 チェイサーの頭から飛び立った武装鷹が、一気に加速しつつ飛来。プリーストの心臓を、胸を覆った胸甲ごとぶち抜いたのだ。
 わざわざ装甲の上から攻撃したのは、自分の装備の威力を確かめるため。いわゆる『試し斬り』だ。
 当初装備していた嘴は、普段の狩りで使うためのインプラント型。嘴の一部を削り、そこに埋め込むように金属製の刃を装着するタイプで、そのまま日常生活もできる汎用性の高いものだ。
 だが今、灰雷の嘴は、そのすべてが分厚い金属に覆われている。
 人間どころか鎧さえ破壊する『対物(アンチマテリアル)装備』、『穿通嘴(ピアシングビーク)』。着けた状態では餌も、水も摂れない、ただ戦うことしかできない人造の嘴。
 飛ぶことも制限され、食物すら摂取できないこの状態では、灰雷といえども一日と生きてはいられない。
 空で生きて死ぬ、自由な鳥であることを捨て。
 いや『生物』であることすらも、今は忘れた。
 敵を倒す、ただそれだけの兵器。
 無代はただ彼女をこの場に連れてくる、それだけでよかったのだ。
 至近の敵は排除した。だが周囲に散っていた敵が集まり始めている。
 「頼んだぞ、灰雷!」
 言われるまでもない。
 この自分を、ただ無事にこの場に運ぶ、そのために片足まで切り落とした男に、もはや何を言われるまでもなかった。
 いずれここは天空の都市。
 ならばこの空の上、どこの誰がこの翼に並ぶというのか。
 ぴっ!
 無代を振り向きもせず、器用に片翼だけを力強く振る。
 一人と一羽の救出作戦、その幕はとっくに上がっていた。

 つづく
JUGEMテーマ:Ragnarok
中の人 | 第十四話「Cloud Climber」 | 11:19 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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