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第十四話「Cloud Climber」(6)
 (……すまねえ、灰雷っ!)
 武装鷹・灰雷が彼女の戦いを始めたのを確認し、無代は無代の仕事に取り掛かった。『囚われた架綯を背負ってこの場を脱出する』、それが無代の、無代にしかできない仕事だ。
 だが急がねばならない。
 灰雷が、この瞬間こそ敵を引きつけてくれているが、彼女だって無敵ではない。それどころか、どちらかと言えば圧倒的な不利、と断言していい。
 元来、鷹が持つ戦闘力は『獲物を狩る』ためのもので、つまり『一対一』が基本となる。今のような多数の敵と同時に戦う局面には向いていない。
 しかも主人である鷹師・G1スナイパーと離れ離れ、すなわち彼女とリンクできない状態では、世界有数の武装鷹といえども出せる力は半減もいいところだ。
 だからこそ正面突破ではなく、無代が敵陣の側まで運び、奇襲をかける必要があった。そして敵を油断させるため、片足まで切り落としたのだ。
 敵はそれなりに訓練された集団、多少の偽装で架綯に近づこうとしても警戒され、殺されて終わりだろう。といって全くの無意味、無価値と判断されても、スルーついでに殺されるだけだ。
 とにかく徹底的に『無害であること』を強調する、そのための片足。
 同時に『生かして話を聞けば有益』と思わせるため、『ユミルの心臓』という言わば殺し文句を口にする。
 案の定、敵は無代への警戒をゆるめ、殺しもせずに接近を許してくれた。
 おかげで灰雷が苦手な多対一の戦いで、ほぼ同時に四人の敵を退け、架綯救出の突破口を開くことができたのだ。無代の捨て身のお膳立てが功を奏したと言える。
 それにしても、
 (ガキの頃、善兄に両手両足ふっ飛ばされた、アレを思い出せば!)
 確かに無代、先輩である善鬼の、あの手荒いにもほどがある洗礼を経験している。
 一時的に痛みを消す薬剤『アンチペインメント』を飲めば、痛みだって消せる。
 とはいえ、だったら誰でも簡単に片足を斧で切り落とせるかといえば、そんなわけもない。ぶっちゃけ、それは狂人のすること。
 マトモな人間のすることではない。
 善良で無害な一庶民のように振る舞いながら、しかしイザとなれば戦場の狂気に身を浸す覚悟もある。この『振れ幅』の大きさと、それをコントロールするバランス感覚。
 アマツ随一の暴れ大名・一条家の姫君やら若様やら、飛び切りの『戦人(イクサビト)』達が揃って、この無代という青年に一目置いているのは、まさにこういうところなのである。
 「……っ!!」
 目立たないように、敵の注意を引かないように、灰雷が入っていた風呂敷から転がり出た『足』を掴む。
 自分で切り落とした自分の足の重さ、というのも実にぞっとしない。
 (うえ……)
 視界が歪む。
 足という巨大な器官の喪失を感知した無代の脳が、ある種の精神病のような状態を引き起こしている。メーターが振り切れるほど強大なストレスにより、脳内物質の濃度・構成に凄まじい変化が起き、重度の躁鬱病もしくは統合失調症にも似た『せん妄』状態に陥っているのだ。
 脳は極めてデリケートな器官であり、脳内のホルモンや神経伝達物質に僅かな変化が起きても、人間の精神活動に大きな影響をもたらす。こればかりは、気合や根性でどうにかなる問題ではない。
 脳は頼りにならない。ならば脊髄反射。
 『身体で覚えた』肉体の技は、女に振られてショボくれようが、老いてボケようが必ずや駆動する。
 それが無代の戦い方。
 手首に巻いた布に仕込んだ回復剤『イグドラシルの種』を口に含み、足の傷口と足をくっつける。『後ろ前』につけないように気をつけるなど、もはや喜劇のレベルだ。
 ぼりっ!!
 きつく縛った止血帯をほどくのと同時に、口の中の種を思い切り噛み砕く。このタイミングを間違えれば……
 (出血で死ぬ!)
 がば、と吹き出した血で一瞬、目の前が暗くなる。だが最強レベルの回復剤が即座に効果を発揮、膝から下を血に染めたまま、傷口が一瞬で塞がる。
 じん、という強烈な刺激が傷口から脳へ走りぬける。常人ならそれで気絶してもおかしくない。
 「はぅぇ……!」
 無代といえとも消化器官がでんぐり返り、吐きそうになるのを必死でこらえる。吐いたらせっかくのイグ種がもったいないではないか。
 立ち上がる。
 片足を失った状態から、ものの数秒で完全復活する頑丈さは、もう回復剤がどうのこうのいうレベルではない。
 「き、君、大丈夫か?!」
 架綯の周囲にいた賢者らしい男が、恐る恐る尋ねてくる。現場の荒事に慣れていない研究者らしく、完全に腰が退けているのは目の前の無代がガチで血まみれだから、それだけではあるまい。
 目的のために足まで切り落とす、この青年の異常性が理解できないのだ。
 「御免を!」
 無代は質問には答えず、石畳に転がされた架綯の拘束を解く。両手両足、そして箝口具。
 「!!!……ぶ、無代ざん!」
 口が自由になるや、架綯が無代にすがりつく。無理もない、今までの恐怖と絶望を思えば、救出者への心理的依存は仕方ないことだ。
 「……若先生、お怪我は?」
 無代が優しく架綯を受け止める。
 だが、無代でさえ見誤った。
 架綯が無代に訴えたかったのは、決して自分自身の恐怖や、無代への依存ではない。

 「無代さん、草鹿さんが!! 草鹿さんが斬られて怪我を! 草鹿さんを!!」

 どこにそんな力があったのか、無代の逞しい腕に跡が残るほど強く、架綯はその指を食い込ませる。
 「……若先生」
 爪が食い込む腕が相当に痛いはずだが、無代は痛みを訴えない。それどころか架綯を見る無代の目には、なんとも言えない、いっそ嬉しそう、と言ってもいい光が宿っていた。
 無代は見誤り、そして今、その認識を修正したのだ。
 自分の命の危機だというのに、開口一番、友の命を心配したこの少年を。
 「大丈夫、草鹿さんはご無事でいらっしゃいます。ご安心下さい」
 告げる言葉も力強い。
 「ふぇ……?」
 架綯の目が見開かれ、無代の顔を穴が空くほど見つめる。いつも、いつだって一片の嘘もない無代の顔が、何よりも真実を伝える。
 見開かれた架綯の目から、大粒の涙があふれる。
 「よかっ……よがっだ……あああ」
 溢れる涙と引き換えに、架綯の身体から一気に力が抜け、無代の身体をずり落ちていく。
 「詳しいお話は後で。逃げます、歯を食いしばって!」
 伝える言葉は簡潔。
 今の架綯のように、力を失った人体を背負うのは難しい……難しい? 悪いが、それはこの男には関係ない話だ。
 小柄な身体を正面から抱き上げ、丈夫な紐を両手で、さらに口、肘の間接、果ては架綯自身の口まで使ってするすると捌き、あっという間にしっかりと固定する。
 荷物を腰に結わえ付け、斧を背負う。仕事の速さ、確実さはいつものごとく折り紙つきだ。
 「灰雷っ、逃げるぞ!」
 相棒に一言、叫んで走り出す。
 さっきまで片足がなく、傷口から失った血だって少なくないだろうに、もはや化け物じみた体力と言うべきだった。
 だーん!!
 銃声が響いた。敵の銃士が、灰雷に発砲したのだ。ジュノーの空を派手に飛び回り、無代と架綯に近づこうとする的にヒットアンドアウェイ、一撃離脱戦法を繰り返していた灰雷だが、ついに動きを読まれた。
 ぎーん!!
 空を一直線に舞う灰雷の身体が、一瞬乱れる。直撃弾。無代がまとわせた凄まじい重装備のため、大きな怪我にはならないが、それでも一時的に速度が落ちる。
 「灰雷っ! 畜生てめえら、俺はこっちだ!!」
 逆に敵を引きつけるべく、無代が叫ぶ。
 叫びながら身を低くし、ジュノー市民の人混みにこそこそと紛れ込む。言わば人間の盾だ。
 卑怯、迷惑、言いたければ言え。
 逃げる無代に迷いはない。彼は確かに善良でお人好しだが、決して聖人ではないし君子でもない。
 何より、『今成すべきこと』と『そうでないこと』を取り違えるほど馬鹿ではない。
 むしろ、同じように市民を盾にしようとしない灰雷に、。
 (……そういえば、何故だ?)
 微かな不審すら抱く。
 武装鷹の知能がいくら高いといっても、マスターである鷹師の指示もなく、市民の巻き添えを回避する、そんなところまで気を回すはずがない。マスターと離れ、単身で無代についてきてくれた灰雷でも、本来そこまでする義理はないはずだ。
 いや、そもそもマスターであるG1スナイパーの存命と、その居場所が分かっているのに、なぜ灰雷は無代について来るのか。
 (……何かおかしい)
 市民を盾に逃げまわる、そんな極限状態に陥って初めて、無代は相棒に不審を抱く。
 そして即座に忘れる。
 今は明らかに、そんなことを考えている場合ではない。
 架綯を抱えたまま、無代が走る。うろたえる市民の足元を、両足、それに両手も使い、まるで小猿を抱えた母猿のように走る。
 『ハデス』から『ミネタ』へ渡る橋にたどり着いた。
 だがその橋はほとんど根本から破壊され、渡ることは不可能だ。体術に秀でたテコンキッドの跳躍スキル『ノピティギ』を使ってさえ、到底届かない距離。
 「逃すな!!」
 銃声がとどろき、頭の上を矢が飛び抜ける。銃は空に向かっての威嚇だが、市民の頭の上を曲射で射てくる矢はまずい。
 敵のほうが市民に気を使っているのは妙な話だが、レジスタンスの首領プロイスから『市民を傷つけるな』とでも指示が出ているのかもしれない。
 「若先生、しっかり歯を食いしばって、無代にしがみついて」
 言いながら、無代が橋のたもとの瓦礫を探る。
 あった。フック付きロープの先端。ニンジャの装備だ。
 無代が、あらかじめ自分の腰と背中に固定してあったロープに、フックの先端を引っ掛ける。ちょうど向かい合わせになった無代と架綯の身体の間を、ロープが通り抜ける格好だ。
 びん、とロープの張りを一度だけ確認。その先は、『ミネタ』の岸壁につながっている。その距離、数十メートルはあろう。
 「動くな!!」
 後方から追っ手。だがこの状況、止まれと言われて止まる奴はいない。
 「飛ぶぞ! つかまれ!!」
 無代の叫びに、架綯が必死に無代の身体にしがみつく。汗と、埃と、獣と、そして濃い血の匂いが架綯の肺を満たす。
 己の身体を張って戦う、男の匂い。
 「うおおおおお!!!」
 瞬間、
 ふわり。
 重力が消えた。
 そして次の瞬間。
 「ひ……ひゃああああ!!!!!!」
 猛烈な落下感に、架綯は絶叫した。
 落ちる。
 落ちる落ちる落ちる落ちる!!!
 対岸につなげたロープ一本を支点に、無代と架綯の身体が四分の一の弧を描き、対岸の岩壁へと滑空する。
 滑空、と言ってもこの状況、速度も何もかも、もはや自由落下と変わらない。さながら斜め方向へのバンジージャンプ。
 重力が2人の身体を完全にとらえ、暴力的なまでの加速を与える。
 これがブランコのように、岩塊と岩塊の間にロープの支点があったならば、反対側に振れた時に減速もできるだろう。
 だが支点の位置が悪い。対岸の岩壁に付き出した欄干の支柱だ。
 これでは無代と架綯の二人は、ひたすら加速した挙句に対岸の岩壁に叩きつけられる。間違いなく命はない。
 だがもちろん、無代に死ぬ予定はなかった。
 (今だっ!)
 がきん!
 無代の背中に金属音。巨斧ドゥームスレイヤーの柄を、灰雷が足で確保した。
 ばっ!!
 灰雷の翼が展開される。対人戦闘用のブレードを編みこまれた翼は、広げれば実に4メートル。一撃で人間の喉を裂く致死の翼が羽撃く。
 さながら無代の背中に翼が生えた如く。
 なんとまあ、とんだ天使もいたものだが、掃除洗濯家事全般こなすこんな天使なら、意外と神様も重宝するかもしれない。
 とはいえ無代、まだ神様のみ元とやらに呼び戻されるわけにはいかなかった。
 ぐん、と落下速度が落ちる。
 灰雷の翼を持ってしても人間二人を、いや一人だって空を飛ばせることはできない。
 しかし、こうしてパラシュート代わりに落下速度を軽減する程度なら十分に可能。それはさきほどミネタからハデスに『行く道』で実証済みだ。
 まず、ハデスにひしめく市民や見張りに見つからないよう、少し岩壁を降りた位置に陣取る。
 ロープの先をくわえた灰雷が対岸へ飛び、欄干へフックを引っ掛ける。
 あとはさっきの要領で飛ぶ。これが、無代が橋のない岩塊間を移動できた秘密である。
 もちろん、この『帰り道』で使うためのロープを、ついでに張っておいたことは言うまでもない。
 岩壁が迫る。
 灰雷が必死に羽撃いてくれるが、それでも限界はあった。
 架綯の耳が、ぼうぼうと鳴り響く風で千切れそうになる。
 「歯ぁ食いしばれ!」
 だから、その無代の言葉が聞こえたのは奇跡だったし、とっさに言われた通り歯を食いしばれたのも、奇跡だった。
 がつんっ!!!!
 それはいきなり来た。
 無代が両手両足で衝撃を殺してくれたが、それでもビルの20階から落ちるはずが、まあ2〜3階から落ちた程度に軽減された、というところか。
 「ぶっふぇ?!」
 架綯の背中が結構な勢いで岩盤にぶつかり、変な声が出てしまう。
 「我慢しろ、もうちょいだ!」
 無代が架綯を励まし、岩盤から突き出たパイプを両手で掴んで、ロープで揺れる身体を固定する。
 「ふんっ!」
 岩盤に足を支え、ぐいっ、と斜め上に移動。途端に、架綯の背中に冷たい感触。
 「ひゃっ!?」
 教授服の背中を伝うのは、水だ。それも氷のように冷たい。
 ざくん!
 「痛っづう!!!」
 無代の顔が苦痛に歪む。ハデスから撃たれた矢が、無代の肩を貫いた。岩盤の上で二人分の体重を支えていた無代の腕力が抜け、がくん、と半メートルほど落下。
 びん、とロープが張り、それ以上の落下は止まるが、無代と架綯はまた宙吊り。
 ばちん、びしん、と続けざまに矢が届く。直撃こそしないが、このままではいずれハリネズミだ。
 「無代さん!」
 「大丈夫!」
 悲痛とも言える架綯の声を遮り、無代が無事な片手を伸ばす。岩のわずかな窪みをとらえて『カチ持ち』、力づくでロープの揺れを止める。
 だが、それは弓師にとっても狙いがつけやすい、ということだ。
 ばつん!
 無代の背中に正確に打ち込まれた矢を、空中から飛来した灰雷が弾き返す。だが鷹の身体の構造上、空中の一箇所に対空するのは得意ではない。総ての矢を弾き返す、それは不可能だ。
 「がああ!!!」
 無代が吠える。矢に貫かれた肩を無理やり動かし、苦痛を押してロープを掴んでよじ登る。
 しゅん!
 無代にしがみつく架綯の耳元を、猛烈な勢いで矢が飛び抜ける。
 「灰雷、入れ!!」
 無代が叫び、同時に両腕の総ての力を動員して身体を持ち上げる。
 「ぶはあ!」
 ばちゃん!
 二人の上半身が、垂直の岩盤から水平な空間へと移動した。
 トンネルだ。岩盤に空いたトンネル。床に水がたまっているらしく、架綯の教授服の背中に刺すような冷たさが広がる。
 「ぐおおお!!」
 無代が両肘を立て、トンネルの奥へ身体をずり込ませる。未だ宙吊りの下半身に、これでもかと矢や弾丸が降り注ぐが、奇跡的に直撃はない。
 トンネルに入った。岩塊を刳り貫いて掘られた、高さ3メートルほどの円形のトンネル。入り口の部分こそ頑丈な金属で縁取りされているものの、奥に入れば全周がむき出しの岩肌で、凍るように冷たく透明な水がわずかに底を流れている。
 対岸の敵からはまだ攻撃が続いているが、角度が悪い。少しトンネルの奥に入れば、もう攻撃は届かない。
 架綯を抱いたまま無代が立ち上がり、ロープのフックを外す。灰雷も二人の足元に着地。
 背中の巨斧・ドゥームスレイヤーを外し、両手にしっかりと構える。
 トンネルの入口部分、金属の縁取りの上部に取り付けられた、人の頭ほどの大きさの機械に狙いを定め、
 「むんっ!!」
 がぎん!!!
 金属同士の重い衝突音、トンネル上部の機械が外側へ歪む。架綯を抱いたままで腰が入り切らない一撃だが、それでも斧の重さに由来する打撃力は相当だ。
 「ふんっ!」
 もう一撃! 今度こそ機械が壊れ、トンネルの外へすっ飛んでいく。そして、
 どっぐわああああん!!!
 さっきとは比較にならない巨大な衝撃音、と同時に、無代と架綯を暗闇が包んだ。
 「?!」
 無代の身体に縛り付けられたままの架綯には、ただ大音響と共に周囲が真っ暗になった、としか分からなかった。だがもし正面を向いていたならば、トンネルの入り口に巨大な物が上から落下し、日光を遮ったのが見えたろう。
 シャッターだ。それも分厚い金属で作られていて、これがちょうどギロチンのように上から入り口を塞ぐ仕掛け。先ほど無代が壊したのは、そのロック機構だったらしい。
 暗闇の中、分厚い金属に矢や弾丸が当たるカンカンという音が響いていたが、すぐに止んだ。さすがに無駄だと気づいたのだろう。橋を落とされている以上、彼らがここまで追ってくることはできない。
 「ひとまず……安全でございますよ……若先生」
 無代が架綯を安心させるように、低い声でつぶやく。が、さすがに息が荒い。
 「ですが、ミネタの守備隊に……連絡が行ったはずでございます。何より、あの空を飛ぶヤツが来たら……ヤバい」
 確かに『セロ』の『エネルギーウィング』なら、こんなシャッターなどトンネルごと消し飛ばしてしまうだろう。その威力は無代自身が身を持って体験済みだ。
 「奥へ……逃げないと」
 だが、そう言いながら、
 ぐわぁん!
 無代の手からドゥームスレイヤーが落ちた。
 「無代、さん?」
 無代の身体に縛られた架綯が無代の異常に気づく。が、遅かった。
 真下へ、短い落下感。
 べちゃ、という音を立てて、無代の膝がトンネルの床に落ちる。
 「無代さんっ!?」
 「……」
 返事はない。代わりに、ぐらり、と残った上半身が崩れる。途中、不自然に身体が捻られたのは、無代の身体で架綯を潰さないように、という無意識の気遣いか。
 ばちゃん!!
 ついに無代の身体が仰向けに、真っ暗なトンネルの床へとぶっ倒れた。
 ぴい!!
 灰雷の鳴き声。
 「無代さん!! 無代さんっ!!!」
 架綯の叫び声。
 だが返事はない。
 硬い岩盤のトンネル、その暗闇の中で、冷たい水に身体を浸しながら横たわる無代の身体からは、何の返事も返ってはこなかった。

 つづく
中の人 | 第十四話「Cloud Climber」 | 11:14 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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