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第十四話「Cloud Climber」(7)
 シュバルツバルド共和国の首都ジュノー。
 この天空に浮かぶ都市は、実は『世界一住みにくい町』として知られている。
 まず『物価が高い』。
 都市の面積が限られているため、土地や家賃が法外に高額なのは当然として、農業を営む土地がなく、食料はすべて都市外からの輸入に頼っているから、これも慢性的に高コストだ。我々の暮らす世界でも山岳国家であるスイスの物価が高いことは有名で、例えばマクドナルドのビッグマックセットが日本円で千円を超す。ジュノーもそれと似た、いやそれ以上に過酷な経済状況にあると思って頂いてよい。
 だからジュノーに住めるのはよほどの大金持ちか貴族、もしくは家や生活費が支給される人々だけだ。政治家や公務員、賢者の塔の教授や生徒、カプラ社や飛行船会社の社員らがそれである。
 しかしもう一つ、金があってもどうしようもないものがある。
 『水』だ。
 ジュノーには水がない。
 空中都市であるため、当たり前だが流れ込む川がなく、汲み上げる井戸もない。
 世界各国の首都の中でも、ジュノーは破格に人口が少ない都市だが、それでも十万人を超す市民の生活用水をどうやってまかなうのか。
 答えは『雪』だ。
 もともと高山地帯に位置することから、ジュノーは非常に降雪が多い。冬季の降雪量は平均五メートル、最大で八メートルを記録したこともある。
 この大量の雪を集めて貯蔵することで、一年間の都市用水としているのだ。
 ジュノーに雪と言われても、読者の皆さんには余りイメージがないだろうが、理由がある。降った雪はすぐさま、市民の手によって除雪・貯蔵されてしまうからだ。
 ジュノーに雪が降ると、市民は直ちに雪かき用具を手にし、石畳のあちこちに作られた除雪ピットへ雪を放り込む。雪が溶けてしまえばおしまいなので、時間との勝負だ。放り込まれた雪は圧縮された後に貯雪槽へと送り込まれ、次の冬までの都市用水となる。
 ジュノーの街が常に清潔で、よそ者の冒険者がゴミ一つ落とそうものなら市民から袋叩きに合う、というのもうなずける。貯雪槽へ送られる雪が汚染されることは、市民にとってまさに死活問題なのだ。
 一方、都市の地下には巨大な『貯雪槽』が、頑丈な岩盤を刳り貫いて複数設置されており、それらの貯水力を合計すれば、ちょっとしたダムにも匹敵するだろう。
 こうしてジュノー市民は水質の保たれた、文字通り氷のように冷たい水を上水道として利用できる。
 無代(むだい)と架綯(カナイ)、それに武装鷹・灰雷(ハイライ)が逃げ込んだのは、その貯雪槽と上水道を構成する、ちょっとしたダンジョンのような地下水路だった。
 「無代さん! 無代さんっ!!!」
 架綯の声が、真っ暗な地下水路に響く。
 が、返事はない。
 どこかの貯雪槽から解け出したであろう、まさに『雪解け』の冷たい水が微かに流れる岩のトンネル。その底に大の字に、仰向けでひっくり返ったまま、無代はぴくりとも動かない。
 架綯の身体は、無代の身体に抱き合わせに括りつけられたまま。無代の方が遥かに大柄なので、架綯の頭がちょうど無代の逞しい胸に押し付けられた格好だ。
 見方によってはいささか妖しくも見える状況だが、当の架綯はそれどころではない。
 「無代さん! 起きて下さい、無代さんっ!!」
 必死に呼びかけながら、細い手足を振り回し、動かない無代の身体をぱたぱたと叩き続ける。だが、やはり返事はない。
 息はある。胸に耳を当てれば、心臓も鼓動を刻んでいる。
 ただ意識だけがない。
 (どうして……!?!)
 ついさっきまで元気に、それこそ片足を切り落としてまで動きまわっていた。飛行船『マグフォード』で架綯と接してくれた間も、彼のためにずっと親身になって働き続け、そして疲れた顔一つ見せなかった。
 それが今、まるで電池が切れたように動かない。
 あれほど頼りになる、架綯から見れば無限にも思える活動力を持った青年が、いくら呼んでも返事すらしない。
 キッ!
 鋭い鳴き声は武装鷹・灰雷だ。
 彼女もまた『相棒』の異変に不安を覚えている。外へとつながる防水壁が閉じられた地下水路は真っ暗で、もともと闇が苦手な灰雷にとっては不安も倍増だろう。
 (……どうしよう)
 半ばパニックに陥る架綯をよそに、無代が目覚める様子はない。
 だが彼にとって、これはやむを得ない結果だった。要するに、限界が来たのだ。

 無代だって人間である。

 聖戦時代から生きている『戦前種(オリジナル)』だの、その血をひく『伝承種(レジェンド)』といった生まれつきの超人ではない。また一条家の若君のような、特異な身体に特殊な鍛錬を科した者でもない。
 『疲れても、仕事をしていれば元気になる』?
 冗談ではない。そんな人間が本当にいたら、それはもう人間ではない。
 無代はただ明確な目的と、そこに向かって進む強い意志と、それを支える体力が人並み以上にある、それだけの凡人だ。
 その男が、飛空戦艦『セロ』に囚われた翠嶺を取り戻す、という高すぎる目標のために、気力と体力を振り絞るようにしてここまできた。さらに言うなら、事の発端となったルーンミッドガッツ王国首都プロンテラで、カプラ嬢殺害の容疑をかけられて拷問を受けて以来、彼はずっと走り続けてきた。
 浮遊岩塊『イトカワ』でカプラ嬢達と共に生き延び、『ディフォルテーNo1』と共に決死のダイブを敢行し、翠嶺と出会い、『マグフォード』と出会い。
 武装鷹・灰雷と共に、炎のジュノー空域を駆け抜けた。
 そして『架綯救出』という大きなハードルを、それこそ奇跡のオンパレードでクリアしてみせた。
 そこで、とうとう限界を越えたのだ。
 彼を支えてきた気力・体力のうち、まず身体の方が悲鳴を上げた。架綯救出を成し遂げ、一瞬気が緩んだその瞬間に、すべてのバランスが崩壊した。
 さすがの無代をして、ついに『精も根も尽き果てた』のである。
 だが、架綯にそれは分からない。
 (どうしようどうしようどうしよう?!?!)
 ひたすら混乱する。
 この少年賢者を、決して馬鹿にするつもりはない。
 だが、ぶっちゃけて言うなら彼はこれまで、無代を『人間扱い』していなかった。
 いや、はっきり言うならこの世界の誰も、実の両親とも、まともな『人間関係』を作ってこなかった。
 自分自身とさえも。
 少年賢者・架綯にとって、世界はシステムだった。
 それも出来の悪いシステムだ。
 周囲の人間には、応答性の悪いスイッチしか着いていない。押しても応答がない、答えても間違っている、そもそも押し方が分からない。
 自分のスイッチも同じだ。
 そんな中で、押せば必ず応えてくれた翠嶺という師は、実に出来のいいシステムだった。押さなくても応えてくれた無代という人間もまた、よく出来たシステムだった。
 そんな架綯に薄目を開かせたのが、あの『マグフォード』での一幕であったのだ。
 そして今、架綯というシステムは決定的に破綻しつつあった。
 真っ暗なはずの地下水路に、血まみれで倒れ伏す草鹿(くさか)少年の幻が映る。炎を上げて雲の中に沈む、『マグフォード』の幻が続く。
 無代の身体が冷たくなっていく。
 (……!!)
 そう、無代の体温が下がっている。架綯の身体の下、無代の心音さえ次第に弱まっているではないか。
 地下水路の床をわずかに流れる氷のように冷たい水が、意識のない無代の身体から熱を、命を、静かに奪っていく。
 「……無代さんっ!!!」
 架綯があわてて無代の身体にしがみつく。そうして自分の体温で温めようとするが、駄目だ。架綯の身体もまた、無代に負けぬほど冷えきっている。地下水路を満たす空気もまた、真冬のように冷たい。
 架綯はいまさら、自分の身体が半分以上、寒さに麻痺しつつあることに気づく。
 (死ぬ……?!)
 架綯を恐怖が満たす。
 地下水路に入って、まだ数分と経っていないのにこの有り様だ。自分の体力の無さに絶望するしかない。
 「う……うわああああ!!!!」
 恐怖が限界を越えた。そしてほとんど無意識に、
 「ファイアーウォール!!!!」
 喉も裂けよと、魔法の炎を呼んだ。
 轟っ!!
 真っ暗な地下水路の闇を切り裂き、魔法使いの基本技・炎の壁が出現した。
 キィッ!!
 架綯の盲撃ちに、灰雷が声を上げて逃げる。少々の攻撃は跳ね返す重武装だが、好んで炎に焼かれる獣はいない。
 「ファイアーウォール!! ファイアーウォール!!」
 轟、轟、と連続で炎の壁が召喚される。
 元々、研究職である架綯の魔力は高い方ではないし、魔法力を強化・収斂するための杖や魔具を持っていないため、熱量は大して高くはない。とはいえ『魔法使いはファイアーウォールに始まり、ファイアーウォールに終る』と言われるほどの基本技。成りたての初心者が使ってさえ、一定の効果を発揮するとなれば……
 「熱っづう!!!」
 架綯の身体が激痛に飛び跳ねる。といっても無代の身体に括りつけられたままだから、標本台にピン止めされた虫のような無様さだ。
 炎の壁の召喚位置が近すぎ、自分の身体を焼いてしまったのだ。
 (痛い……!)
 火傷は指の先。騒いだ割に何の事はない、ちょっと赤くなっただけだ。無代なら『ひと舐め』して終わりだろう。
 だが、架綯にとっては重大事。
 そもそも敵と戦ったことがない架綯にとっては、炎の壁を召喚すること自体、学生だった頃の試験以来だ。しかも精密・正確を旨とする彼の魔法人生で、自分の魔法で火傷するなど……
 「……あ」
 これでもかと炎に照らされた架綯の顔に、ある光が兆した。
 猛烈な熱で水路の水が煮え立ち、水蒸気となって立ち上る。岩盤に染み込んだ水が炎に焼かれて膨張し、パリパリと音を立てて小さな崩壊を起こす。
 とりあえず一定の熱量は確保した。とはいえ狭い地下水路、あまり火を使いすぎると、今度は『酸欠』の恐れがある。
 キッ!
 大丈夫か、と灰雷が鳴く。彼女なりに、このアンバランス極まりないパーティのリーダーのつもりなのかもしれない。
 だが架綯は、灰雷に応えない。いや、聞こえてもいない。
 ぶん、と、架綯の両手に魔法陣が出現する。ほとんど無意識に、架綯の指が魔法陣から術式を引きずり出す。
 何度見ても奇跡としか思えない、魔法術式を手で直接操作する神業『呪文摘み』だ。
 (炎の召喚術式……エリアを限定……そして威力の制御術式)
 いくつかの基本術式を複数組み合わせ、魔法術式を紡ぎ上げる。
 新たな魔法を創り上げようとする。
 架綯の脳内に、かつて師の翠嶺から聞いた『先輩』の逸話が蘇る。
 『魔法の矢・ボルトの威力をレベル1以下に絞り込んで、その代わりにフィールド全体へ同時召喚した』
 師の翠嶺でさえ、戦えば大損害を免れないと認めた、恐るべき戦闘術式。その基礎を成す『魔法の威力を絞り込む』術式は公開され、賢者の塔の図書館に納められているが、逆ならともかく『威力を下げる』術式に注目する研究者は少なかった。
 だが今、それが全く別の形で蘇ろうとしている。
 (もっと細く……0.0000000000000……もっと細く)
 火傷で赤く腫れ上がった架綯の指が、青く光る術式の文字を慎重に操作する。この超精密操作は架綯ならでは、オリジナルの術式を編み出した、かの異国の王妃にすら不可能だろう。
 (あとは……術式の反復、いや『分裂』だ。1が2に、2が4に……)
 一度唱えた術式が自動的に乗数分裂する術式を組み込み、その限界値を設定する。
 その数、80000000000000。
 八十兆。
 それはちょうど『人間の身体を構成する細胞の数』。
 組み上げられた魔法術式を架綯の指が摘み、中空に用意された空っぽの魔法陣にぐるりと配置する。どこか一箇所でも綴りのミスがあれば発動しない。
 いや発動しないならまだしも、数値の設定ミスで暴走でも起こしたら大惨事だ。
 賢者の塔で研究をしていた頃なら、何重にも隔離された厳重な試験エリアで、無人の自動術式システムを使って何度も試験を繰り返し、人間による行使に至るまでに少なくとも半年以上をかけた。
 だが今、そんな時間はない。
 ぶっつけ本番。
 架綯が術式を起動する。それは魔法戦闘・補助の職業であるプロフェッサーには、決して使えないはずの魔法。
 人の身体を癒す魔法。
 (いけ!!)
 キィュォォオオオオオ!!!
 魔法陣が回転し、魔力を吹きこまれた術式が世界を変革する。
 超・超精密にコントロールされた極微の炎が、無代と架綯の身体を円形に包むように召喚される。
 炎の魔法を象徴する炎獣・インプの幻影が、幻となって乱舞する。
 (お願い……お願いだから!!)
 両手を握りしめ、架綯は祈った。
 生まれて初めて誰かのために、そして自分のために祈った。

 (動け、僕の魔法!!)

 つづく
中の人 | 第十四話「Cloud Climber」 | 11:23 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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