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第十四話「Cloud Climber」(8)
 (動け……動け……!!)

 歯を食いしばって祈る架綯の周囲で、即席の魔方陣がゆっくりと回転する。
 魔法陣の外周部から開放された術式が、周囲の大気や岩石にアクセスし、そこに偏在する魔力を集約していく。
 確かに、人間の身体の中にも『魔力』はある。
 それは神が神であり、魔が魔であった神話の時代に、世界のすみずみを満たしていた魔力の名残だ。しかし神話の時代は余りに遠く、人間の体内に残された魔力の量も、今や見る影もないほどに少ない。『名残』というより、もう『残り香』といった方が正しいだろう。
 『魔力』を『意志の力』で行使し、世界を改変するのが魔法。ならば、人間の体内に残された魔力では、もはやろくな魔法は使えないのだ。
 だから足りない分を補う。
 大気から、岩の中から、トンネルを流れるわずかな雪解け水から、魔法式を駆動するためのエネルギーを吸い上げていく。
 そして第二のプロセスが起動、極小の炎を召還し、人間の身体の細胞一つ一つを魔法的な手段で温めることで、『生命力』そのものを活性化させていく。
 僧侶系の術者が使う『ヒール』や『サンクチュアリ』とは、同じく生命力を活性化させる魔法であっても、その根本原理が全く違う。
 例えるなら『ヒール』が『癒やす』魔法とすると、この架綯の新魔法は『活を入れる』魔法だ。本来は攻撃魔法である『炎召還』を、より精密かつ緩慢な形で作用させ、人間の身体の奥に眠る生命力を『叩き起こす』。
 ただし、今まではその理論だけが架綯の頭の中に存在し、実際に生きた人体に使ったことは一度もない。使ってみようと思ったことすらない。
 その理由を白状すれば、怖かったからだ。
 もしわずかでも熱量のコントロールに失敗すれば、効果範囲にある人間の細胞すべてに大やけどを負わせてしまう。最悪、細胞のすべてが燃え上がる、いわゆる『人体発火現象』すら引き起こしかねない。
 無代と架綯、2人身体が仲良く炎となって燃え尽きる、そんなシャレにならない結末が、架綯の脳裏を去来する。
 架綯の額に、じわり、と汗が浮かぶ。
 焦りから……違う。
 滲んだ汗がみるみるうちに玉になり、一筋、二筋、幾筋もの流れとなり、意識のない無代の胸板へ雫となってボタボタと落下する。明らかに異常な発汗量。
 「暑……っ!?」
 架綯の口から思わず声がもれ、そして同時にその目が見開かれた。
 暑い。
 身体が燃えるように暑い。
 すうっ、と息を吸う。苦しくない。
 呼吸器の発作が、いつの間にか綺麗に収まっている。意識が冴え、身体のすみずみまで生命力が行き渡っていくのがわかる。
 (成功?!)
 架綯の心を達成感が満たした、その時だった。
 「……ぶ」
 妙な音が聞こえた。
 (……ぶ?)
 架綯がぴょこん、と顔を上げるのと同時。
 「ぶ……暑っちゃああ!!!」
 がばあっ!!!
 トンネルの底にぶっ倒れたまま、今までぴくりとも動かなかった無代が、物凄い勢いで起き上がった。
 「ぷひゃ!?」
 その勢いで、架綯の顔面が無代の胸板に激突する。ついでに、こっちも汗まみれの無代から、汗の雨が架綯に降り注ぐ。
 「だーもう!! 人の寝床に潜り込むなクソ暑い、って言ってるだろが、香っ!!」
 無代、誰かと間違えているらしい。
 「無代さん?! 僕です! 架綯!」
 架綯が訴える。寝ぼけたまま、身体に括りつけた架綯の身体を振りほどこうと、じたばたと暴れる無代に必死でしがみつく。
 「あ……?」
 架綯の新魔法によって、淡い光に包まれたトンネルの中で、無代の目がやっと架綯に焦点を合わせた。
 「あれ? 若先生……?」
 「そーです僕です架綯ですっ!」
 このまま無代に暴れられてはたまらない。なにせ無代と架綯の身体は、他ならぬ無代の手でがっちりと固定されているのだ。下手をすれば架綯が大怪我をしてしまう。
 だがまあ無代、どうやら事情が飲み込めたようだ。
 「これは……無代としたことが、大変失礼を致しました」
 照れくさそうに頭をかき、素早く身体の紐をほどいて架綯を自由にしてくれる。
 「無代さん、身体は大丈夫ですか!」
 「身体?」
 魔法の効果を心配する架綯に問われ、無代がひょいと立ち上がる。
 「お? お?」
 頭をひねったり、手を振り回したり。
 「おおお?! おおおおおお?!」
 足を二度三度と屈伸、最後はトンネルの中でぴょんぴょん跳ねまわる。
 「これは何と?! 絶好調でございます!」
 「あああああ!! いきなり無茶しないで無代さん!!」
 勢いに任せて床運動でもしかねない無代を、架綯があたあたと制止する。
 やがて架綯の新魔法の効果も終わり、再びトンネル内に闇が落ちる。代わりに、架綯が魔法使いの灯火呪文を発動、熱を持たない青白い火の玉が、架綯の身体を中心に衛星軌道を描いて回転し、辺りを柔らかく照らし出した。
 「傷も疲れもスッキリ、新品同様でございますよ。これも若先生の魔法でございますか?」
 満面の笑みでいい加減なストレッチを繰り返す無代。確かにさっきまで、疲労と怪我で気を失っていた人間とは思えない。敵を油断させるためとはいえ、自分で片足を切り落とした肉体の負担と精神的ストレスその他、ここに至るまで無代の中に蓄積されていたダメージが、今や完全に消えている。
 それどころか逆に、身体の奥から新たな力が無限に湧いてくるようだ。生来の働き者である無代にとっては、これぞまさに理想郷である。
 さっそくトンネルの底を流れる水の出どころ、上水道のパイプが緩んで水漏れを起こしている場所を見つけ出し、容器を工夫してたっぷりと汲んでは、架綯や灰雷の喉を潤してくれる。
 もちろん自分も、腹が水ぶくれになるほど飲む。
 「改めて見直させて頂きました、若先生!」
 「いえ、そんな」
 こうして直接、手放しでほめられる経験が少ない架綯は、真っ赤になって手を降る。だが新たな治癒魔法が見事成功した上に、無代に絶賛されたことは、彼の中に確かな足跡を刻んだようだ。
 「さすがは翠嶺先生の御直弟子でいらっしゃいます!」
 ちなみに『御直弟子』は『ごじきでし』と読む。師から直接教えを受ける『直弟子』に尊敬・丁寧の『御』を付けた。
 だが『翠嶺』の名を聞いた途端、架綯の表情が曇る。
 「無代さん、翠嶺先生は……?」
 恐る恐る尋ねる架綯に、無代は真っ直ぐに向き合う。元々、それを話すつもりで水を向けたのだ。
 「翠嶺先生は、あの飛空戦艦とやらに囚われれておられます」
 あえてはっきりと口にする。
 「貴い御身をお捨てになって、傷ついた草鹿さんをお助け下さったのでございますよ。本当にご立派でいらっしゃいました」
 無代は笑顔で語るけれど、架綯は呆然と目を見開くだけだ。
 「大丈夫! きっとご無事でいらっしゃいますとも!」
 励ましの言葉。
 「『マグフォード』だって健在でございますし、きっと草鹿さんも、今ごろ元気に甲板を駆けまわっておいでですよ!」
 そこに根拠はまるでないけれど、今まさにこの場で必要なのは、正確な情報に基づく根拠などではない。
 「なあに、あと2時間もすれば『マグフォード』が、カプラ嬢の皆様を乗せてジュノーに帰って参られます。そうなりゃあこっちのモンでございますとも!」
 心を、身体を、『前』に向けて駆動する、その糧となるもの。言葉でも、感情でも、いっそ金でも何でもいい。
 ここで立ち止まらないために、自分に課すものこそ必要だ。
 「無代さん……」
 「となれば、無代もじっとしちゃあおられません」
 無代の言葉が、なぜか逆に静かになっていく。
 「あんなご立派な先生を、このまま外道どもの好きにさせた、とあっちゃあ、『瑞波男』の名がすたると申すもの」
 にか、と真っ白な歯を見せる。
 「及ばずながら無代、先生をお迎えに参上しようと存じます。ですので申し訳ございませんが、若先生はどこか……」
 安全な所に隠れていろ、その言葉はしかし、遮られる。
 「僕も行きます!」
 「なりません」
 架綯の反応を、おおかたは予測済みだったのだろう。無代が即座に否定する。
 「どうしてですか!?」
 「私では、若先生をお護りできません」
 無代は決して勇者でも、豪傑でもない。自分の身を護るのが精一杯、いや、時には文字通り自分の身を削って突き進まねばならない。その上に架綯を抱えては、進むものも進めない。
 「ココは女子供の出る幕じゃあございませんよ。無代と、この灰雷にお任せ下さいまし」
 「『女子供』って、灰雷は雌鷹でしょう!!」
 「えっ!? そこでございますか?!」
 びしっ、と人差し指で指摘した架綯、無代の論理の隙を見事に突いたつもりのようだが、もちろん論点はそこではない。無代も苦笑交じり、
 「そこはほら、灰雷は『戦人(イクサビト)』でございますから。あ、ヒトと申しましても、鷹のことでございますよ?」
 突っ込まれないように無駄なフォロー。
 「とにかく若先生はどこかに」
 「……嫌です」
 架綯がうつむいて、地面に何かを吐き捨てるような言葉を放つ。
 「若先生、どうか」
 「無代さんは!!」
 架綯の声が激しくなる。
 「無代さんはいいですよ! いつもそうやって格好いい! 強い相手に大怪我しても倒れても、一人で頑張って!」
 「あ、いやそれほどでも」
 「ほめてません!!」
 「あら」
 無代は冗談ごかしているが、架綯は真剣だ。
 「でもさっきだって、倒れて動けなくなって……どうするんですか、また倒れたら!」
 「今度は十分注意を致しますよ。ま、またぶっ倒れましても、その時はその時で」
 「だから僕が!」
 ぐっ、と架綯が顔を上げ、無代の顔をいっそ睨みつける。
 「僕が、僕の魔法があれば!」
 「若先生」
 「無代さんを助けられます! 僕には魔法が使える!」
 「若先生」
 「魔法が! 僕の魔法が!」
 「若先生!! 聞き分けて下さいませ!」
 感情が昂ぶり過ぎ、ろれつが怪しくなってきた架綯の両肩を、無代ががっしりと掴む。
 「無代は、翠嶺先生から若先生をお預かりしております。もし若先生に何かございましたら、翠嶺先生に合わせる顔がございません」
 「翠嶺先生は関係ないでしょう! 僕の話だ!」
 架綯は怒っている。
 多分、生まれて初めて、腹の底から怒っていた。
 誰に、何に対して怒っているのか、それは架綯にも分からない。
 草鹿を傷つけた敵に、翠嶺を囚えた『セロ』に、目の前にいる無代に。
 そして自分自身に。

 ああ。
 架綯という少年は、こんな少年であっただろうか。
 ほんの数時間前までは、人とまともに喋るどころか目も合わせられない子供ではなかったか。
 
 「僕は!……いや『俺』は!!」
 「架綯!!」
 無代が、今度は本気で架綯の両肩を掴み上げる。
 「それ以上言うな。今、それを言ったら、もう後戻りできねえ」
 無代の口調が変わる。
 「いいか架綯。ガキが……特に男がそいつを口にしたら、もうおしまいなんだ。何より、自分が後戻りを許さねえ。行き着くところまで行くしかねえ。一人ぼっちで、半泣きになりながら、走り続けるしかなくなるんだぜ」
 無代の言葉は、架綯を止めているようで、そうではない。架綯が、もう止まらないことは知っている。架綯の、いや少年の、この怒りを止める術はない。
 それは誰より、無代がよく知っている。
 その怒りも、無力さも、悲しみも、怖れも。そして小さな誇りも。
 誰に何を言われようが止まらなかった、あの少年の日の無代が知っている。
 だから、無代は止めているのではない。問うているのだ。
 架綯の覚悟を。
 「無代さん」
 架綯も、闇雲な怒りの中でそれを悟る。そしてすべてを理解した上で、その言葉を口にした。

 「俺はもう……ガキじゃない」

 痩せた身体に、どうしようもない怒りと怖れを抱いたまま。
 少年は今、男になった。
 「言っちまったな。もう泣いても知らねーぞ」
 無代がにやり、と笑って、どん、と架綯の薄い胸をどやしつける。
 「ま、しゃーねえ。一緒に翠嶺先生をお迎えに上がるとするか」
 「はい、無代さん」
 架綯が、しかしにやり、と笑い返し、
 「『おっぱいが大きい』とか言ってたの、先生には内緒にしときますから」
 「うお?!」
 早速これである。
 だが、和やかに感動している暇など、この二人と一匹にはなかった。
 がぁん!!!
 二人の背後で、凄まじい音が響いた。トンネルの入口、閉めたはずの遮水壁から薄い光が漏れている
 「?!」
 がぁん!!
 もう一回。漏れる光が一気に太くなる。何者かが遮水壁を破壊しようとしているのだ。
 どっぐわぁん!!
 一段と大きな、無代でさえ吐き気がするほどの大音響と共に遮水壁が、その開閉機構ごと破壊され、ずるずるずるずると落下していく。
 そして。
 がきぃん!
 巨大な鉤爪がトンネル上部に見えた、と思うや、巨大な影が一気にトンネル内に侵入してきた。トンネルの入口、いびつに丸く切り取られたシュバルツバルドの空をバックに、逆光のシルエット。
 重装甲の騎鳥にまたがった、これまた重装甲、重武装の姿。
 貴騎士・ロードナイト。
 最悪の陸戦兵機が今、無代と架綯に向けて槍を構えた。

 つづく

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中の人 | 第十四話「Cloud Climber」 | 11:53 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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