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第十四話「Cloud Climber」(9)
 「逃げろ、架綯(カナイ)っ!」
 無代(むだい)が叫んだ。
 同時に巨斧・ドゥームスレイヤーを両手に握り、騎鳥騎士に向かって突進する。
 (ちくしょう、ココまで追ってきやがった!)
 そうしながら、無代は内心で歯噛みするしかなかった。
 空中都市の外壁、その遥か下部に開いたトンネルに逃げ込んだことで、もはや追撃はないと油断していた。無代が武装鷹・灰雷(ハイライ)と、忍者ロープ一本を頼りに挑んだ空中アクロバットを再現でもしない限り、地上のレジスタンスがここまで追ってくることはない、と断定してしまっていたのだ。
 だがロードナイトを、いや騎鳥ペコペコを甘く見てはいけない。
 あのアルナベルツの荒野で、『魔剣醒まし』ことフールが愛鳥『プルーフ』と共に演じた離れ業、それを例に挙げるまでもなく、この騎鳥は岩だらけの山岳地帯だろうが垂直の岩壁だろうが、その足の爪で足場さえ確保できるならば、ほとんどの場所を踏破できる。
 四貢山で習い覚えたロッククライミング技術を駆使し、無代が命がけでよじ登ったこの外壁も、おそらくは特殊コマンドとして訓練を受けたペコペコにとっては、さして難所でもないのだろう。
 そして、この万能の騎鳥に跨った貴騎士・ロードナイトこそ、近接戦闘において最優を謳われる要職。
 もちろん保有する戦闘スキルも問答無用。
 巨大な斧を構えて突進してくる無代の姿にもあわてず、逆手持ちした大槍を肩上に構える。
 ひゅん!
 無代の背筋を異様な感覚が貫く。と同時に、無代の身体の周囲に魔方陣が出現した。形こそシンプルだが、異様な力強さを感じさせる小型魔方陣。
 ロードナイト有数の攻撃スキル『スパイラルピアース』。
 中型モンスター程度なら一撃で粉々にする威力は、現代でいえばちょっとした大砲にも匹敵するだろう。
 トンネルに入るなり、問答無用で最強スキルを撃ち込んでくる辺り、徹底した訓練と強烈な目的意識を併せ持った、要は一番敵に回したくないタイプの騎士だった。
 だが、無代にとってはむしろ好都合。
 (しっかり狙えよ、おい!)
 むしろ内心で騎士に茶々を入れる余裕。いや、これは余裕ではない。
 覚悟だ。
 時分の油断で敵に追いつかれてしまった、無代はその段階で即座に、全員無傷での脱出は諦めている。そして相手がロードナイトだと分かると、次にもう一つの要件を捨てた。
 『自分が無傷で生きること』を。
 だから今、目の前の貴騎士に向かって突進することで、最初の一撃を引き受ける。そしてその隙に、架綯と灰雷だけでもこの場から逃がすのだ。
 決して『死ぬ』と諦めたわけではない。それを言うなら、人は誰でもいつか死ぬ。
 無代はただ、その生命の使い道を決めた。
 架綯と灰雷を逃すのに必要な時間を稼ぐ、そのために自分の身体と命を使う、そう決めたのだ。
 必殺の螺旋槍を食らって即死すればそれまで。だがもし一瞬でも息が残っているのならば、
 (ペコの脚に、ドゥームスレイヤーの一撃でも入れる!)
 騎鳥の脚は装甲されてはいるが、その構造は熟知している。この巨斧の一撃ならば、骨折くらいさせられるはずだ。それでいったい何秒の時間が稼げるかは知らず、ただそれが今この場、この時における、無代という男の命の価値なのだ。
 無代のそうした行動を、いわゆる『特攻精神』や『自己犠牲精神』と見て美化するのは自由だ。実際、後の世に彼を評価した人々は皆、こぞってそのようにした。だが、当の無代にしてみれば、これはそんな大層なものではない。
 ただ『そうしなければいけない気がした』、あるいは『そうすることが一番いいと思った』。
 だからそうした。
 迷いも、躊躇もなく、ただそうした。というか、それしかできなかった。
 
 無代という男は本当に、徹頭徹尾、それしかできない男なのだ。
 無代の周囲の魔法陣の回転速度が速くなる。
 (……来る!)
 ロードナイトスキル『スパイラルピアース』は、手元の槍と対象物との間に、瞬間的な竜巻状の空気の渦を発生させ、槍に強烈な回転をかけて打ち出す技。相手の肉体をただ貫くのではなく、槍に与えられた運動エネルギーを着弾と同時に解放し、バラバラに粉砕してしまう。
 せめて脚かどこかに当たってくれ、と祈りつつ、無代はできるだけ身体を低くしながら、斧を手元へ引きつける。大振りは空振りの元、ここは手堅く一撃入れるのみ。
 直後に襲い来るであろう痛みと衝撃を無代が覚悟した、その時だった。
 ひゅぅん!
 螺旋槍とは別の、魔法起動音。
 ひゅっ!
 無代の身体を取り巻いていた魔法陣が消滅する。
 (!?)
 無代が驚くのと、
 「?!」
 敵のロードナイトが動揺するのが同時だった。
 魔法起動プロセス、その破壊と消滅。
 スキル『スペルブレイカー』。
 魔法職『プロフェッサー』の前期職『セージ』が修得する妨害スキルだ。敵が詠唱する魔法の起動プロセスに介入し、魔法を発動できなくするこのスキルは、もっと長い詠唱を必要とする大魔法に対して使うのが本来の使い方。今のように『スパイラルピアース』といった、騎士など前衛職が使う単詠唱のスキルに使うものではない。
 というか、使えない。
 相手の詠唱時間が短すぎて、妨害のための詠唱介入が間に合わないのだ。
 だが間に合った。
 そう、『彼』なら間に合う。あらゆる呪文を視覚的・体感的に使役する異能使いなら。
 
 『呪文摘み(スペルピッカー)』・架綯なら。
 「でぃやあ!!」
 ぐわっしょん!
 無代の斧が騎鳥ペコペコの脚に届いた。短く引きつけた斧に思い切り体重を乗せ、厚く重い刃を体ごと投げ出すように叩き込む。装甲の繋ぎ目、人間で言えば膝を狙うのは常道。
 ぴぃっ!?
 さすがに頑丈なペコペコの脚が、変な方向に折れ曲がる。無代をして、動物を傷つけることへの忌避感がゼロではないが、真剣に命のやり取りをしている今、手加減などヌルいことは言っていられない。
 騎鳥の巨大な身体が崩れ、騎乗のロードナイトごと横倒しにひっくり返る。特攻を仕掛けた無代も、そのままなら下敷きで大怪我するところ、狭いトンネルの中を器用に転がって避けたのはさすがだ。 
 だが斧は捨てた。さすがに巨斧を持ったままの曲芸は無理だ。
 だから今は素手。
 いや、素手ではない。武器はある。
 「こなくそぉ!!」
 その手にロープ。忍者が使う堅牢無比の細縄を両手に握ると、トンネルに投げ出されたロードナイトの首に巻き付ける。
 そして絞め上げる。
 「……!!!」
 相手に一瞬でも呼吸をさせてはいけない。全身から炎の闘気を吹き上げる『マグナムブレイク』など使われたら、こんな原始的な攻撃などひとたまりもない。
 「せぃっ!」
 無代の腕が正確に、そして力強くロープをたぐり、肘と、肩を入れた梃子の構えを取ると、さらに絞める。といって格闘技でも戦技でもない、要は『荷造り』で使う結束技術だ。
 ロードナイトがもがく。騎乗が崩れ、倒れたペコペコ身体で片足が下敷きになり、自由が効かない。とはいえそこはロードナイト、腰のナイフを手探りで引き抜く。
 背後の無代の脇腹を刺す、しかしその暇はなかった。
 しゅん!
 目の前の視界を、灰銀の輝きが埋めた。
 「が……?!」
 灰雷の嘴が、ロードナイトの眼窩から脳までを刺し貫いた。無代に一瞬遅れたとはいえ、武装鷹がこの隙を逃すはずはない。
 ごきり。
 ぞっ、とするような破壊音が、架綯の耳まで届いた。ロードナイトが即死すると同時に、無代が絞め上げていた首の骨が折れた、と、架綯の知識が告げる。
 「……!」
 架綯の背筋に戦慄が走る。
 殺した。
 確かに、直接手を下したのは無代だ。だが『スペルブレイカー』が、自分の魔法がそれを導いたことに違いはない。
 人を殺した。
 ざくん!
 トンネルに響くさらに重い音。無代の斧が、倒れたペコペコに止めを刺した音だ。
 ここは戦場。
 やらなければやられる。
 知識と論理でそう分かっていても、そうすぐに心が納得できるものではない。
 「……若先生」
 斧を背中に戻し、無代が架綯に近寄る。
 その姿に、鮮血で汚れた無代の姿に、思わず腰が退けてしまう。
 「あ……」
 そんなつもりはなかった。無代を忌避するつもりなどなかった。そのことに動揺し、さらに身体を強ばらせてしまう。
 「……」
 無代は、そんな架綯の前に膝をつき、頭を下げる。
 「ありがとう存じました、若先生」
 「……ぼ、僕」
 「はい、若先生」
 震える唇で短い言葉をつなぐ架綯を、無代は真っ直ぐに見てくれる。
 「無代さんが、死んじゃうと、思って」
 「はい」
 「だから……だから」
 「はい。お助けくださらなければ無代、死んでおりました」
 「でも……でも」
 「若先生」
 無代の手が、架綯の両肩を掴む。
 「今は、生きてこそでございます」
 それは慰めでもあり、叱咤でもある。
 「おかげさまで無代、生きてあります。若先生も、灰雷も、生きてなにより。それ以上のことがございましょうか」
 シンプルな言葉は、シンプルゆえに力強い。
 人を殺し、鳥を殺し、その血の上に立つとしても。
 たとえ、この世の何と引き換えにしても。
 きっ!!
 灰雷の警戒音。トンネルの入口にロープが垂れている。
 追撃、後続が来る。
 「参りましょう、若先生」
 「……!」
 動けない架綯を一瞬だけ見て、無代がその身体を背負う。状況は、世界は決して優しくはない。
 ほんの何分か前、男であると宣言したばかりの少年には、余りにも高い壁を次々と立ちはだからせる。
 「参ります!」
 大きく、逞しい無代の背中で、架綯はその声を遠くに聞いていた。

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中の人 | 第十四話「Cloud Climber」 | 14:13 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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