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第十四話「Cloud Climber」(10)
 (畜生、やべえ!)
 無代(むだい)は暗いトンネルの奥へと、架綯(カナイ)を背負って走りながら、こみ上げてくる焦りを抑え切れなかった。
 飛行船『マグフォード』を降りて以来、武装鷹・灰雷(ハイライ)の助けを借りながら、命がけの仕事をこなしてきた。本来なら何度死んだか分からない、そんな無茶を運よく、本当に運よくy切り抜けてきたのだ。
 だがいよいよその運も尽きたか。
 あと少し走れば、ジュノーの上部都市へと続く長い竪穴と梯子がある。そこからジュノーの都市部へ逃げ込み、どこかの空き家にでも隠れるのが無代の作戦だった。
 (けど、もう駄目だ)
 今、背後に追っ手が迫る中で、地上への長い梯子をのんびり登っていたら、たちまち追いつかれてしまうのは明白である。
 といってこれ以上、トンネルの奥へ逃げ込むこともできない。なぜならば、
 (灰雷が飛べねえ)
 そう、灰雷は暗闇で目が見えない。無代ならば手探りと、あとは勘任せでどうにか前に進めるトンネルも、灰雷にとっては数メートルすら飛べない最悪の条件。さらに悪いことに武装鷹の全身を凶器と化す対人・対物装備が災いし、無代が彼女を抱えて走ることも不可能。彼女を抱いた無代の身体がなます切りになるのを覚悟するなら別だが、どの道それではいくらの距離も走れまい。
 となれば、残る可能性は一つ。
 (地上からの光が入る梯子穴で、俺と灰雷が敵を食い止めてる間に、架綯を梯子で逃がす。それしかねえ)
 一人しか登れない梯子穴の中なら無代があっさり殺されたとしても、灰雷一羽で相当の時間が稼げる。うまくすれば架綯を地上に逃がした上で、灰雷も脱出できるかもしれない。
 無代の犠牲を前提とした逃亡策。またこのパターンか、と言われればそれまでだが、何のことはない、本当に彼らには『それしかない』のだ。
 前方にかすかな明かり。
 梯子穴。
 「架綯、あれを登るんだ!」
 無代が『若先生』ではなく『架綯』と呼ぶ時は、それだけ状況が切羽詰った時である。
 「いいか、絶対下を見るな! 上に出たらとにかく走って……って、おい灰雷?!」
 鋭い声で架綯に指示を飛ばしていた無代が、急にあわてた声を出した。
 「灰雷、ちょっ、どこ行くんだおい!!」
 無代の声を尻目に、翼を広げた灰雷が梯子の縦穴をあっさりスルーし、トンネルの奥へ、すいーっと滑空していくではないか。
 「灰雷??」
 戸惑う無代に、
 ぴいっ!
 『早く来い!』と言わんばかりの鳴き声が、鋭く響く。
 困惑した無代、立ち止まること数秒。
 「……ええい、ままよ!」
 架綯を背負ったまま、灰雷を追って無代が再び走り出す。背後に敵が迫っている以上、のんびり考えている暇も、灰雷を呼び戻す暇もない。
 それにしても不思議なのは灰雷。
 狭いトンネルの中、翼を動かさない滑空状態で数メートルを飛んで着地、また滑空して着地を繰り返す不自由な飛び方で、それでも走る無代より速く、奥へ奥へと進んでいく。
 梯子の縦穴から差し込む最後の明かりも遠くなり、無代でさえ片側の壁に手をつきながら手探りで進まなければならない、そんな暗闇になってさえ、そののスピードは落ちない。
 それどころか、
 ぴっ!
 警戒の鳴き声が聞こえたと思ったら、目の前に行き止まりの壁。トンネルが左右に分かれたT字路だ。
 ぴ。
 しかも灰雷、『こっちだ』といわんばかりに無代と架綯を先導し、先へ先へと進んでいく。
 明らかに見えていない目で、いや、たとえその目が見えていたとしても、彼女がトンネルの構造まで記憶し、その内部を自在に飛べるはずがない。
 そう、これはまるで。
 (まるで何かが……いや『誰かが』灰雷を導いているような……)
 無代の脳裏に疑念がさす。考えてみれば灰雷という鷹には、不可解なことが多すぎた。
 マスターである鷹師以外には決して従わないはずの武装鷹が、ほとんど初対面の無代に協力してくれる、という最初の段階から既におかしい。その後も、ジュノーを制圧したレジスタンスの目を鮮やかにかいくぐり、無代を目的地へと導いた。架綯の救出で大暴れした時は、まるで周囲の市民を護るかのような素振りさえ見せた。
 そして今の、トンネルの中の暗闇飛行。
 そのどれもが、一般的な武装鷹の能力を超えていた。世界でも指折りの鷹師・グラリスNo1スナイパーの愛鷹であることを加味しても、やはり異常に過ぎる。
 何かあるのか。
 この鷹に。
 (……いや、考えちゃいけねえ)
 だが無代はその考えを打ち消す。
 雑念は疑念を、疑念は迷いを生むものだ。
 そして、いざという時に襲う一瞬の迷いが生死を分ける、そういうことが少なからずあるものだ。
 (灰雷のことは分からねえが、ここまでアイツに命預けてきたのは俺だ。行くなら地獄の底まで!)
 そう、思い切る。
 そもそも、この空中都市で灰雷の助けがなければ、無代一人ではとっくに死ぬか、もし生きられたとしても一歩も動けず隠れたままだったはず。ならばどこまでも、この鷹を信じるのみ。たとえそれが物言わぬ獣であっても、そう思えるのが無代という男なのだった。
 それから迷路のようなトンネルを、どれほどの距離走ったか。
 頑健な身体と体力を持つ無代ではあるが、こんないつ終るとも知れない逃亡では、ペース配分など不可能だ。
 切れた息が喉を焼き、疲労が全身を犯し始める。架綯の新魔法で体力を回復していなければ、とっくに二度目の昏倒を喫していたに違いない。カプラ女子寮で拝借した回復剤を走りながらすすり、どうにか身体だけは前に進める。
 だが。
 かちん!!
 トンネルの岩壁に金属音、と同時に一瞬の火花が散り、その正体を映し出す。
 矢だ。
 追っての弓師。ついに射程距離に入った。問答無用で撃ちこんで来るのは、最初から殺す気の証拠。
 (糞っ!)
 無代が立ち止まり、背負った架綯の身体をくくった紐をほどく。
 「架綯、灰雷についていけ! 走れ!」
 もう何度目になるか、架綯を逃し、自分は残るという。
 ぴっ!
 すぐ近くで灰雷が抗議の声を上げるが、今度こそ無代はそれを聞かなかった。
 「さすがにもういくらも走れねえ。灰雷、架綯を頼む」
 ぴっ!
 ぴっ!
 ばさばさと翼をはためかせ、『だめだ、来い!』と言わんばかりの灰雷。
 「頼む、灰雷。お前に何か不思議の力があるなら、この先のためにそいつを使ってくれ」
 腹を据えた、無代の声。
 瑞波の無代、頑固一徹。こうなったらもう梃子でも動くものではない。
 ぴーっ!
 『馬鹿野郎!』とでも言ったのか。だが、もう押し問答の時間はない。
 かちん!!
 今度は足元に矢の一撃。恐らく、次は当たる。
 「行け!」
 巨斧ドゥームスレイヤーを握った無代が叫んだ、その時だった。
 「こっちへ走って! 早く!」
 トンネルの奥から、鋭い声が響いた。
 初めて聞く、女性の声。
 「早く!」
 ぴぃっ!
 無代より架綯より早く、灰雷が返事を返すと、ばさっ、と翼をひと撃ち。
 「……架綯!」
 一瞬遅れて、無代が再び架綯を背負って走りだす。
 ぱすん!
 矢が無代の頭上、髪の毛ギリギリをかすめる。まさに間一髪。トンネルの暗闇と、無代たちが走り続けているために、さしも弓師の矢も命中精度が落ちている。
 とはいえ、それもいつまで続くことか。
 走る無代たち、その先のトンネルに薄い明かりがさす。その明かりが、先頭を走る女性の姿を薄く浮かび上がらせた。
 いっそ神秘的にさえ見える、長く伸びた紫色の髪(アメジストブロンド)。
 引き締まった身体を、上下カーキ色の軍用服に包み、脚には頑丈な編上げブーツ。
 そして首に、なぜか大きなヘッドホン。
 トンネルの奥の、光が近づく。
 「飛び込んだら伏せて、耳をふさいで! 灰雷、来なさい!」
 なぜ灰雷の名前を知っているのか、だが疑問を問いただす時間はなかった。
 今までの暗闇から一転、床まで真っ白な光が乱舞する空間へと、無代達が飛び出す。
 「伏せて!」
 言われるままに真っ白な床を走り、素早く背中の架綯を下ろして、抱え込むように床に伏せさせる。
 そうして無代は、この真っ白な床と部屋の正体を知った。
 雪だ。
 ジュノーの地下にいくつか作られた、巨大な貯雪槽。この床も、無代達の回りを囲む壁もすべて積み上げられた雪で、それが天井に輝く魔法の灯火の下、真っ白に乱反射している。
 「耳を!」
 紫の髪の女性が四つん這いの格好になり、翼をたたんだ灰雷を腹の下へ。首のヘッドホンを両耳に当て、両手で灰雷の耳を優しく塞ぐ。
 無代も架綯に耳を塞がせ、自分の耳も両手でカバー。
 たたん!
 無代たちが駆け抜けてきたトンネルから、連続して矢が撃ち込まれる。近い。
 いよいよトンネルから敵がなだれ込んでくる、そう思った時だった。
 「今よ、カール!!」
 紫の女性が叫ぶ。次の瞬間!

 どっぐわぁん!!!!!

 真っ白な雪の壁をぶち抜く真っ赤な 砲発火炎(マズルフラッシュ)、続いて真っ黒な砲煙(パウダースモーク)。耳を塞いでいてさえ鼓膜が、いや内臓がひっくり返るような爆音と衝撃が、無代たちを襲う。
 だがそれさえ、トンネルからなだれ込もうとしたレジスタンスの兵士たちに比べればマシだった。
 それはそうだろう。狭いトンネルの中、嫌でも整列した状態。
 そこに『戦車砲弾』を撃ち込まれたのだから、たまったものではない。
 何がどうなるか、もう描写するのも凄惨に過ぎるので割愛し、さしもの無代もまともに目を向けられなかった、とだけ書いておこう。
 まさに乾坤一擲。
 がぅぉおおおんん!!
 真っ白な排煙とエンジンの音も高らかに、ずさあ! と雪の壁を崩して現れた鉄の塊。
 雪の段差で一度大きく弾み、左右二門の戦車砲が、まるでお辞儀をするように跳ねる。
 「戦車……!」
 呆然としている無代の隣で、架綯が目を丸くしてつぶやく。
 「せ、せんしゃ?」
 「はい、シュバルツバルトの最新兵器で……僕も本物は初めて見ます」
 「ハート技研製・六式戦車。通称『バドン』」
 紫の女性が教えてくれた『バドン』の元ネタは、南の海に生息するヤドカリ型のモンスターだ。ずんぐりと固く、左右一対のハサミで攻撃する格好を、この左右二門の主砲を持つ戦車になぞらえたか。
 「申し遅れました、手前は『瑞波の無代』と申します。お助けいただき、感謝の言葉もございません」
 無代が丁寧に頭を下げる。
 「そしてこちらが……」
 「『呪文摘み(スペルピッカー)』架綯助教授」
 紫の女性が無代の言葉を先取りする。
 紫の髪に紫の瞳。神秘的なほどの美貌だが、とはいえどうにも愛想がない。
 「名高い『翠嶺の弟子』のお一人、もちろん存じ上げています。私は……」
 言いかけた紫の女性を、今度は無代が先取りする。
 「カプラ公安、エスナ・リーネルト様、では?」
 「……」
 答えは沈黙。だが無代はそれを肯定と知る。
 「やはり左様で」
 したり顔でうなずく無代に、エスナの視線が鋭くなる。
 「なぜ、私の名前を?」
 「失礼ながら、貴方のお手紙を拝見致しました。灰雷にお預けになった、カプラ嬢宛の」
 無代の答えに、だがエスナの顔は曇る。
 「そう……灰雷が。じゃあ、あの手紙は……」
 では、灰雷は届けてはくれなかったのか。
 あの手紙を届けるべき人に、届けてはくれなかったのか。
 「いいえ、届きました」
 無代の言葉は力強く。
 「え……?」
 「届きました。あのお手紙は、ちゃんと届きましたとも!」
 エスナが絶望の中で記し、微かな希望だけを頼りに差し出した手紙。
 それは届けるべき人に、カプラ嬢の頂点・ディフォルテーNo1『D1』ガラドリエル・ダンフォールの元に届き。
 そして彼女を、カプラの誇りを取り戻させた。
 「D1が今、『マグフォード』と共にカプラ嬢の皆様をお迎えに向かっております。皆様が戻ってくれば……」
 「でも……あの船は」
 「沈んでおりません!」
 エスナの無表情が、無代の力強い言葉で崩されていく。
 「『マグフォード』が沈む、そんなわけがございません。『必ず帰る』と、バーク船長はお約束下さいましたとも!」
 雲に沈む飛行船から、無代へと届けられた発光信号を、無代は今でも鮮明に思い出すことが出来る。
 「アーレィ・バークが嘘を言う男か、シュバルツバルト人である貴女の方がよくご存知のはず」
 「……」
 「希望はございます」
 ついに黙り込んだエスナに、無代が畳み掛ける。
 「まだ希望はある。ジュノーはまだ、落ちてはおりません!」
 それが限界だった。
 エスナが両手で顔を覆い、雪の床にうずくまる。優美な背中が小さく震えている。
 泣いている。
 「あー……」
 その背中を無代が撫でようとしたのは、
 『別段やましい気持ちがあったわけではない。女性が泣いていたら優しくするのが当然』
 と、無代は言うだろうが、はて本当のところはどうだか。
 その真偽はともかく、無代がエスナの傍らへと足を踏みだそうとして、
 「のわっ?!」
 ずでえん! と、思い切り後ろへひっくり返る。
 犯人は灰雷。
 無代が背中に背負った巨斧の柄を、両足で掴んで思い切り引っ張った。
 「痛って……何すんだ灰雷っ!」
 猛抗議する無代の前で、ごろろん、と重い金属音。戦車『バドン』の上部ハッチが開いた。
 よっこいせ、と中から姿を表したのは、小太りの身体に戦車兵服、鉄兜というダサい格好の中年男性。
 ひらり、と格好だけは華麗にエスナの隣へ降り立……とうとして、思い切り尻餅をつく。
 が、やせ我慢。
 「話は聞いていたよ、エスナ」
 精一杯気取った声と『どや顔』。
 「よかった……本当によかった」
 そう言ってエスナの両肩を抱く、しかしその言葉と表情に込められた優しさ、そして愛情に偽りはなかった。
 「よかったなあ、エスナ」
 「……」
 涙に濡れたエスナの顔が、男の胸に埋まる。優美といってもいい腕が、赤子がするように男の首にからむ。
 美女と野獣、とまではいかないにしても、なかなかの凸凹カップルぶりだ。
 「……あのー」
 お株を奪われた格好の無代。声をかけるのもためらい気味なのは、誰も『馬に蹴られ』たくはないからだ。
 「おお、申し遅れた」
 中年の男が顔を上げる。美女は抱いたまま。
 「無代君と言ったね。私はカール・テオドール・ワイエルストラウス。今はしがない、この戦車の戦車長だ」
 そう言って、ふっくらとたるんだ両頬を緩めると、いかにも人の良さそうな親父顔になる。
 「これはご丁寧に。改めまして手前、瑞波の無代と申します」
 そういって頭を下げる無代の、その隣。
 架綯。
 「あ……あ……」
 戦車を見て丸くした目に加え、今度は口まであんぐりと開けて。
 
 「だ、大統領閣下……!?」

 シュバルツバルト共和国大統領カール・テオドール・ワイエルストラウス。
 生涯に二度、側近に裏切られ、国家存亡の危機を招いた『最低の大統領』。
 だがそのたびに、多くの人の助けと自らの努力で、見事に国を救った『最高の大統領』。
 ゆえに、度重なる失政にも関わらず国民から圧倒的な支持を得て、歴代大統領の中で最長の在位記録を打ち立てた男。

 そして無代にとっては生涯の『飲み友達』。
 いや『愚痴友達』となる男との、これが最初の出会いであった。

 第15話『Crescent Scythe』につづく

 
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中の人 | 第十四話「Cloud Climber」 | 08:13 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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