11
--
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
--
>>
<<
--
RECOMMEND
RECENT COMMENT
MOBILE
qrcode
OTHERS
(c)
このページ内における「ラグナロクオンライン」から転載された全てのコンテンツの著作権につきましては、運営元であるガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社と開発元である株式会社Gravity並びに原作者であるリー・ミョンジン氏に帰属します。 © Gravity Co., Ltd. & LeeMyoungJin(studio DTDS) All rights reserved. © 2010 GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved. なお、当ページに掲載しているコンテンツの再利用(再転載・配布など)は、禁止しています。 当ページは、「ラグナロクオンライン」公式サイトhttp://www.ragnarokonline.jp/(または、ガンホーゲームズhttp://www.gungho.jp/)の画像(またはテキスト)を利用しております。
ro
ブログランキング
にほんブログ村 ゲームブログ ラグナロクオンラインへ にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
ブログランキング
LATEST ENTRY
CATEGORY
ARCHIVE
LINKS
PROFILE
SEARCH
<< 第十五話 Crescent scythe(1) | top | 第十五話 Crescent scythe(3) >>
第十五話 Crescent scythe(2)
  マリン=スフィアーことマリン・スレアは、女神フレイヤを奉ずるアルナベルツ法皇庁、その文化局に席を置く中級神官である。
 が、実は元からフレイヤ教徒でもなければ、アルナベルツの国民ですらない。
 出身はルーンミッドガッツ王国。その下級貴族の娘として生まれ、早くから魔法に才能を発揮した彼女は、成人前にはシュバルツバルド共和国にある魔法学校『シュバイチェル魔法アカデミー』に入学。そこで魔法の研究に没頭し、卒業後はそのまま賢者の塔・セージキャッスルに移った。
 そこで放浪の賢者・翠嶺にその才能を見出される。
 といっても異能・天才がひしめく『翠嶺の弟子』の枠内ではない。マリンが持つ魔法の才能や技術は、賢者の塔の研究者としてはごく平均的なもので、まちがっても魔法の矢・マジックボルトの超精密制御で知られた『氷雨の巴』こと一条巴や、魔法式を直接触ってコントロールする異能の少年賢者・『呪文摘み(スペルピッカー)』架綯(カナイ)のような規格外の術者ではない。
 では、あの美しき女賢者の目に止まったのは何か。それはマリンの、言葉は悪いが『極度の専門馬鹿』っぷりだった。

 彼女の専門、それは『オートスペル装備』だ。

 『オートスペル装備』とは、ある種の魔法が込められた兜や鎧、靴などの装備品で、それを身につけたまま敵を攻撃すると、込められた魔法が自動的に発動する、というものである。これを装備すると、本来魔法を使えない職業でも魔法が発動可能、しかも自前の魔力は必要ない。
 具体的な例を挙げれば、ここに『ヘルファイア』という槍がある。地獄の炎、という名の通り火属性を持つ大槍で、さらに炎の魔法も込められており、敵を攻撃する際に『ファイアーボール』という炎魔法を撃ち出す。槍を持っている騎士は、ただいつものように敵を突いているだけでいい。そうすれば勝手に魔法が発動し、敵に炎を浴びせてくれるのだ。魔法自体のレベルは低く、せいぜいが軽い火傷を負わせる程度だが、それでも使い手次第では下級のモンスター程度なら焼き払ってしまう。
 オートスペル装備、こう書くといかにも便利そうに見える。
 だが、その割にあまり世間に広まっていないのは、つまり『問題』があるからだ。
 問題の一つは、まず『魔法の発動率』にある。
 オートスペル装備の多くは、とにかく発動率が低い。ちょっと振り回しただけで強力な魔法がばんばん発動する、というような都合のいいものではない。それどころか『忘れた頃にちょっと発動する』程度がほとんどで、これではまるでアテにならないのだ。
 もう一つは『魔法の威力が低い』。せっかく魔法が発動しても、その多くはごく初歩的な魔法が多く、相手に大したダメージを与えられない。
 結局、オートスペルを持たない普通の装備で、もっと強力な装備を使った方がマシ、となってしまう。
 これが現在、いまひとつ世間に広まらない理由だった。
 プロフェッショナルの世界からは、
『素人が魔法ぶっ放して喜ぶためのオモチャ』
という、実に手痛い評価をする者も少なくない。ある程度好意的な者でも『良くも悪くも中途半端』という以上の評価は得られていない。

 だがマリンは、そんなヘンテコ装備にこそ魅せられた。

 オートスペル装備の多くは聖戦時代かそれ以前に作られ、ろくに使われもしないまま死蔵されていたり、効果を知られないまま市場に流通していたりする。マリンはそんな、国家の宝物庫の奥でホコリをかぶっていたり、日々開かれるバザーの露店に一山いくらの屑装備と混じって並んでいるオートスペル装備を、眼の色を変えて収集・研究した。
 具体的にはオートスペル装備を着けてフィールドに出、そしてモンスターを攻撃する。
 ひたすら何千、何万回と攻撃するのだ。
 そして、まず魔法の発動率を割り出す。どの程度の回数殴れば魔法が発動するか、それを膨大な試行によって弾き出す。
 同時に、発動した魔法の種類と威力を計測する。発動するのが攻撃魔法なら、それが敵に与えるダメージと、特に効果の高いモンスターもリストアップする。補助魔法であれば有用性を考察し、有効範囲や継続時間も弾き出す。
 ひたすらそれに没頭した。
 そして魔法アカデミー在学中の4年間と、賢者の塔に移った5年目までの計9年間で、賢者の塔が保有するオートスペル装備のデーターを残らず収集し、レポート化してしまった。結果、そこから『極めて有効』と判断されたいくつかの装備が賢者の塔によってコピーされ、非常な高額で市場に出回ることになり、塔の財政を大いに潤わせる。なにせ魔法の研究のほか、飛行船『マグフォード』の建造などにも手を広げる賢者の塔、資金はいくらあってもありすぎることはない。
 こうして今まで日陰の存在だったオートスペル装備と、そしてマリンという研究者が一躍、注目を集めることになったのである。
 そしてある日、放浪の賢者・翠嶺からマリンに呼び出しがかかった。
 「今後は私の下で研究してもらいます」
 賢者の塔の創立者の一人とも伝わる女賢者は、有無をいわさずそう宣言し、マリンを翠嶺直属の研究スタッフ『賢者の道具箱(ワイズマンズ・ツールボックス)』の一員としたのである。
 魔法の異能才能ではなく、その旺盛な研究行動力こそが、翠嶺の目に止まった。それはマリンにとって、ある意味『天才』を見いだされるよりも大きな誉れであったに違いない。
 翠嶺はさらにマリンへ、
 「アルナベルツ法国へ出向し、法皇庁の宝物庫に納められたオートスペル装備をデータ化せよ」
 という新たな命令を下した。 
 この命令を、マリンは飛び上がる勢いで拝領し、ほとんどその足で空中都市・ジュノーから飛行船に飛び乗ると、アルナベルツ法国へ向かっている。
 いくらなんでも研究資材や、身の回りの生活用品さえ放ったらかしで出発するのは早計もいいところだったが、しかしそれも無理はない。
 大陸西北部の辺境に位置するアルナベルツ法国法皇庁、その宝物庫といえば、研究者にとっては垂涎の的、まさに『宝の山』だ。一生に一度は足を踏み入れ、ただ収蔵品を見るだけでも、と夢見る者は多い。
 だが、それは簡単に実現する夢にあらず、むしろ夢のまた夢。
 それも当然、アルナベルツ法国は極めて閉鎖的・排他的な国家なのだ。
 この国に暮らす人々は、北の大山脈から流れ出る雪解け水が所々に湧き出した、いわゆる『オアシス』の周辺に、文字通り身を寄せ合うようにして生きている。が、その農業生産力は低く、農業以外の産業発展も遅れている。
 つまりは『貧しい』。
 世界の覇権を狙う野望の王国・ルーンミッドガッツ王国と、先進的な工業力で急成長を遂げるシュバルツバルド共和国という2大国の間で、よくまあこんな貧国が生き残って来られたものだが、そこには2つの理由がある。
 積極的な理由と、消極的な理由の2つだ。
 まず最初に消極的な、そして恐らくは最大の理由を挙げると、ぶっちゃけこの国には他国から侵略を受けるほどの魅力がない。繰り返すが土地は痩せて乾燥し、鉱物などの地下資源も決して多くない。人口も少なく、侵略して支配しても旨味がないのだ。
 もう一つ、辛うじて積極的な理由を挙げれば、それは国民の結束力だろう。
 『教国』の名を冠することでも分かるように、この国は『女神フレイヤ』を主神とする宗教国家であり、国民のほぼすべてが熱心な『フレイヤ教徒』だ。
 いや『熱心な』という表現は、あまりにも穏やかすぎるかもしれない。
 『狂信的な』。
 そう、まさに『狂信的』と言っていいだろう。全国民がほとんど命がけで、ただひたすら女神フレイヤを信仰する、それをイメージしていただきたい。。
 しかも『フレイヤ教』は、他の2国が奉ずる『オーディン教』とは教義を異にし、お互いを異教・邪教と見る対立関係にある。アルナベルツ法国の歴史は、他の2国からの排他と迫害の歴史と言ってもいい。
 貧しさと、厳しさ。
 それが逆に国民の結束を産み、『女神フレイヤの化身』とされる『アルナベルツ教皇』に対する、まさしく狂信的な宗教的依存を生んでいる、それがアルナベルツ法国だった。
 そんな国が閉鎖的・排他的になるのはむしろ当然だろう。
 しかもその中心的存在である法皇庁の、秘密の核心とも言うべき宝物庫に他国の研究者が入るなど、本来ならばまさに夢のまた夢なのだ。
 そこへ赴任の命令が出たのだから、マリンが飛びつくのもまた、当然というべきだった。
 とはいえもちろん、そこには『裏』がある。
 アルナベルツの歴代法皇は全員、魔法を学ぶ師として、大陸で最も尊敬される魔法の権威・翠嶺を選んでいる。もちろん当代の法皇も、まだ少女身ながら慣習を踏襲し、翠嶺を家庭教師として魔法の習得に励んでいた。飛行船『マグフォード』内に翠嶺の部屋が存在するのも、この家庭教師役のためシュバルツバルト共和国首都・空中都市ジュノーと、アルナベルツ法国首都・オアシス都市ラヘルを行き来するためなのだ。
 この縁あって、マリンがフレイヤ教に改宗して神官となることを条件に、研究が許された……というのが表向きの理由で、真実は賢者の塔がオートスペル装備で一儲けしたことを知り、財政不足に苦しむ法皇庁が翠嶺に相談した、ということらしい。
 そこでうってつけの人材として、マリンに白羽の矢が立った、というわけだ。
 マリンにとって、改宗は決して気軽な判断ではなかったが、それでもアルナベルツ法皇庁の宝物庫、通称『アルナ魔窟』は魅力がありすぎた。
 こうして法皇庁所属の技術神官となったマリンは、大神官直属となる『呪物技官』の官位をもらって宝物庫に立ち入りを許され、以来、ろくにジュノーに帰ることもせず研究に没頭してきた。

 一昨日の深夜、上司の呼び出しを受けるまでは。

 (……イヤな予感はしたのよねえ)
 マリンはその時の事を思い出すたびに、どうにも暗い気分にならざるをえない。
 そもそも法皇庁に出向して以来、上司に呼び出されるどころか、会うことすらなかったのだ。マリンの研究室は宝物庫のすぐ隣の、元は罪を犯した神官の懲罰房だったという小屋を改装したもので、まあ粗末といえば粗末な環境だが、最低限の快適性は確保されているし、何より誰も近づかないため静かなのが気に入り、彼女は研究から寝食まで、すべてここで行っている。あとはフィールドに出てモンスターを殴っているか、どちらかだ。
 対して上司は法皇庁の重鎮として、壮麗な庁舎の最上階に巨大な部屋を持ち、そこで執務を執り行う。あるいは法皇の宣託を受け、あるいは外国のVIPにも対応する。だから直属の上司と言っても仕事上の接点が無い上、お互い多忙を極め、さらに致命的なことには、そもそもお互いにまるで興味がなかったから、会うことがなかったのである。
 それが突然の呼び出し。これでイヤな予感がしないほうがおかしい。
 しかし、マリンを前にした上司は、
 「突然呼び出してごめんなさい」
まずそう言って頭を下げた。これは珍しい、というか大変なことである。
 『法皇庁の大神官』ともなれば、現代日本で言えば首相と内閣の大臣すべて、それに最高裁判所と警察のトップを合わせて『人数で割らない』ぐらいの権力を持つ。まさに、
 『神の代弁者』
 そのものだ。
 それが部下の、それも他国から出稿してきたにわか信徒に頭を下げるなど、あっていいことではない。かてて加えて、上司が着る大神官専用のゆったりした神官服の胸元から、盛大に零れ落ちそうな乳房。
 マリンはまさに圧倒される気分だった。
 (翠嶺先生もすごいけど、この人のは一段と……私の何倍あるかなあ?)
 などと呑気なことを考えているマリンをよそに、上司・ニルエン大神官は頭を上げると真剣な目で、
 「それでも、もう信頼できるのは貴女しかいない」
 これまた真剣極まる声で告げる。
 「他国の、しかも元異教徒の貴女に頼らねばならない窮状を、どうか察してほしい」
 身を乗り出すようにして訴えてくる。
 乳房が迫る。
 「は……はい?」
 「あるものを、秘密裏にある場所へ運んでもらいたい。できれば翠嶺師にお願いしたかったけれど、もう時間がないの」
 「は……はあ?」
 「やってくれますね?!」
 あまり背の高くないマリンの視界に、ニルエン大神官の胸が迫る。
 「あの……ところで何を、どこへ運べばいいんですか?」
 「やってくれますか!!」
 「内容によります」
 圧倒されつつも、そこは現場の研究者らしいリアリズムで対応するマリンに、ニルエン大神官はむしろ安心したようで、
 「当然です。ただ、その内容を聞けば最後、貴女に拒否権はなくなります。引き受けるか、死ぬか、どちらかです」
 母性的な外見とは裏腹に、この上司はやると言ったらどんな残酷な手段も平気でとる。まさに政治家そのものだ。
 それがここまで言う以上、マリンも腹をくくる覚悟を決めねばならないようだった。
 「聞かせて下さい。死ぬにしても、なぜ死ぬのか知ってから死にたい」
 「いいでしょう。それは……」 
 ニルエン大神官が、頼みごとの内容を語った。その頃にはもう、同時にマリンの視界のほぼすべてが上司の乳房で埋まっている。

 いろんな意味で、マリンに拒否権はなさそうだった。

 大神官の部屋から直接、法皇庁の裏庭に出、建物の影の闇にこっそりと準備されていた6鳥立ての鳥車に乗せられ、こっそりと法皇庁をぬけ出す。
 砂漠を、まず東へ。そして北へ進路を転じた辺りで、襲撃があった。
 襲撃があるかも、とは上司から既に警告されていたが、思った以上に早く、そして本格的な攻撃だった。
 その攻撃をしのぎながら、
 (……胸の大きな上司には気をつけよう!!)
 マリンは心の底からそう思ったのである。
 つづく。
 
JUGEMテーマ:Ragnarok
中の人 | 第十五話「Crescent scythe」 | 12:50 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment









Trackback
URL: