11
--
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
--
>>
<<
--
RECOMMEND
RECENT COMMENT
MOBILE
qrcode
OTHERS
(c)
このページ内における「ラグナロクオンライン」から転載された全てのコンテンツの著作権につきましては、運営元であるガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社と開発元である株式会社Gravity並びに原作者であるリー・ミョンジン氏に帰属します。 © Gravity Co., Ltd. & LeeMyoungJin(studio DTDS) All rights reserved. © 2010 GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved. なお、当ページに掲載しているコンテンツの再利用(再転載・配布など)は、禁止しています。 当ページは、「ラグナロクオンライン」公式サイトhttp://www.ragnarokonline.jp/(または、ガンホーゲームズhttp://www.gungho.jp/)の画像(またはテキスト)を利用しております。
ro
ブログランキング
にほんブログ村 ゲームブログ ラグナロクオンラインへ にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
ブログランキング
LATEST ENTRY
CATEGORY
ARCHIVE
LINKS
PROFILE
SEARCH
<< 第十五話 Crescent scythe(5) | top | 第十五話 Crescent scythe(7) >>
第十五話 Crescent scythe(6)
 「あっちゃん、大丈夫?!」
 敵の眼前、倒れたオークロード=速水厚志を守るように立ちはだかった静が、視線を正面から動かさないまま、背後に声をかける。
 「平気……ごめん、しーちゃん」
 「……回復、急いで」
 無事を伝える速水の言葉に、静の指示は短い。この少女剣士が人の『嘘』を一発で見抜いてしまうのはご承知の通りだが、別に静でなくても今の速水の有り様を見れば、即座にそれが嘘だと分かるはずだ。
 オークロードの巨体を支える脚、その右の向こう脛が完全に砕かれている。前から後ろへ、いびつな『く』の字を描いて折れ曲がり、ぱっくりと裂けた肉の中から、奇妙なほどに白い骨が見えている。
 重傷だ。
 最初の『アースクエイク』の一撃で、岩山の斜面に取り付いた敵を一掃。そのまま勢いに乗り、肩の上に静を乗せたまま斜面を駆け下りると、残った敵に襲いかかったまでは順調だった。
 オークロード、とにかく強い。
 その巨躯を鎧う筋肉は重厚かつ強固で、敵の戦槌をまともに喰らっても被害はわずか、ちょっとアザができる程度。逆に特大の攻城槌にも似た豪腕を一振りすれば、たとえ重装甲のハイプリーストであっても、撃ち抜かれたゴルフボールのように軽々とふっ飛ばされる。
 だがそれも当然。本来ならば強力な魔法を連打できる熟練の後方支援を、それも複数以上そろえたフルパーティでなければ挑めない強モンスターだ。
 「いけー! やってしまえー!」
 静が調子に乗るのも無理はない、まさに快進撃。だが、そこに油断あり。
 『聖槌連』の生き残り、その一団の中から突然、一人の鎧僧が疾走し、オークロードの足元へ走り込んだ。オークロードには遠く及ばずとも、人間としては相当の巨体。だが、その動きはまるで地を這う雷。肩の上でご機嫌だった静の反応が一瞬、間に合わない。
 ごぎぃっ!!!
 肉が裂け、骨が砕ける、耳を覆いたくなるような破壊音。
 さしものオークロードが前のめりに倒れる。それを下で待ち構え、真下から顎を撃ち上げる一撃を加えんとする鎧僧。
 もし、これが決まっていたら、いくらオークロード=速水厚志といえども命がなかっただろう。巨体が倒れ込む重力加速度に、カウンターで下から叩き上げる槌の威力が加われば、最低でも顎が砕け、おそらくは頚椎が破壊される。
 だが、そこまで許す静ではない。
 「ふ……っ!!」
 オークロードの身体が崩れるより速く、その肩からするり、と尻を滑らせ、迎撃態勢を整える。さて、すでに打ち上げの態勢に入った鎧僧を、どう止めるか。
 飛び降りる勢いのまま、銀狼丸で受け止める?
 否だ。
 敵の鎧僧の体格、そしてオークロードの脚を砕いた威力を見る限り、静の全体重を乗せた一撃を持ってしても、食い止めることは不可能。それどころか静もまとめて、銀狼丸ごとぶち砕かれかねない。
 (……槌も普通じゃない。ひょっとすると『神器』)
 静の目は、とっくに鎧僧の異能を見抜いている。
 では鎧僧の足元に着地しておいて、その脚を狙う?
 それも否だ。
 確かに、装甲の薄い足首を狙った銀狼丸の横薙ぎ、あるいは渾身の足払いを加えれば、さしもの強敵もバランスを崩し、オークロードへの追撃はなるまい。だが。
 (間に合わない!)
 着地して、撃つ。その2動作を実行する時間が足りない。静の予測では、どう頑張っても敵の脚を払うのと、敵がオークロードの顎を砕くのが同時だ。
 ならば?
 (……ならば!!)
 静の引き締まった尻が、きゅっ、とわずかに方向転換。着地位置を正確に定める。右手に銀狼丸、左手でオークロードの肩をとん、と突いて落下する。
 どこに?
 まさに振り上げられようとする、槌の真上だ。サンダル履きの静の脚が、まるで体操の平均台に飛び降りる一流選手のキレと優雅さで、鮮やかな着地を決める。もし今が競技中なら、審判全員の満点は確実だろう。
 「むう!?」
 だが審判ならぬ鎧僧は動揺を隠せない。
 いかに怪力、いかに神器といえども、まさに振り上げようとする槌の先端に、人間一人の体重を落とされてはたまらない。支点と力点、世界で最も古く原始的な力学法則、『テコの原理』だ。
 しかも相手は一条静、ただ飛び乗っただけで満足するようなタマではない。
 飛び乗ると同時に、いやその前からとっくに銀狼丸を地面と平行に横たえ、上半身をひねりつつ顔の脇に引き付けている。
 上段突きの構え。銀狼丸の切っ先が狙うのは、兜の面頬の奥に守られた眉間、ただ1点。
 「うぉお!?」
 鎧僧が吠える。
 突きが放たれる。
 静の突きには気合声もなければ、殺気すらない。この間合いでは、気合声はおろか息ひとつでさえ、相手に攻撃のタイミングを知らせてしまう。
 無垢、無音。
 ただブログラム通りに動くだけの処刑器具のような無機質さで、銀狼丸の刃が飛来する。
 上下左右、どちらにも避けられない。ならば面頬の隙間ごしに眉間を貫かれ、即死。
 だが、鎧僧もまた恐るべき手練だ。動揺もつかの間、あるいはそれすら偽装。
 「むんっ!」
 静の脚に、文字通り乗っ取られた戦槌の柄を、思い切り上に振り上げる。といっても、戦槌そのものを振り上げるのは力学的に不可能。
 だから、逆だ。戦鎚の先はそのままに、握った柄だけを振り上げる。読者の皆様には、
 『ちゃぶ台返し』
 と表現すれば、一発でお分かりいただけるだろう。
 戦槌の上に乗った静ごと槌を持ち上げるのは困難、ならばだがその端を持ち、斜めにひっくり返せばどうか。
 槌の先端が支点となり、上に乗った者は吹っ飛ぶ。さっきのお返しとばかりの『テコの原理』だ。
 きゃりん!!
 銀狼丸の先端が面頬をかすめる。ぞっとするような死の気配。だが、
 「っ、とお!」
 さしもの静も、唯一の足場を後ざまにひっくり返されては、突きを完遂させることは不可能。ただし、そのままちゃぶ台の上の食器のごとく、大地にぶち撒けられるかといえば、それはない。
 とんっ!
 後ろへバランスを崩しながらも足先で戦槌を蹴り、後方へ飛ぶ。すらりと長い脚がアルナベルツの空を裂き、くるり、と一回転。
 石塊だらけの荒れた大地に、乱れひとつ起こさず着地。またも満点だ。
 だがここは戦場、得点板も喝采もない。
 着地した静の脳天に、戦槌の一撃が墜ちる。速い。静を振り落とすことさえ、決して簡単な技ではなかったはずだが、即座に立て直して追撃ときた。
 この鎧僧の手練ぶり、相手がまともな人間ならば、大抵の敵は相手にもなるまい。
 相手が、まともな、人間、ならば。
 「むぅんっ!!!」
 ターバンに巻かれた静の脳天に迫る戦槌。それは決して、全体重を乗せた渾身の一撃、というわけではなかった。この鎧僧にしてみれば、威力よりも速度を重視した、それこそ『撫でるような』一撃でしかない。
 だが、加えられるのは神器の威力、兜もない生身の人間の頭蓋であれば、例え静だろうが撫でるだけで即死確実。
 さらには鎧僧、静の回避力も侮ってはいない。左右、あるいは後方へ、素早く身をかわしておいて、あのアマツ刀で反撃してくる、それも予測済みだ。先ほどは槌に飛び乗られる、という失敗をおかしたが、今度はそうはいかない。
 静がどうかわそうが、右だろうが左だろうが、あるいは後方に逃げようとも『このまま突進する』。
 左手の盾、右手の槌、そして全身を覆う重鎧。その防御力は、実はこうした密着戦にこそ真価を発揮する。
 静の武器では、鎧僧の装甲を貫けない。アマツ刀は軽く、切れ味も鋭いが、ゆえに『威力』が足りない。殺傷力はあっても、破壊力がない。十分に振りかぶり、正確に打ち込んだ時こそ恐ろしいが、相打ち覚悟の問答無用で突き進んでくる鎧武者に対する抑止力、マンストッピングパワーに欠ける。
 まして静は女性、このままもつれ合いに持ち込めば、体格もパワーも鎧僧が上回る。
 (取った……!)
 そう思ったし、それは決して間違いではない。
 
 相手が、まともな、人間、ならば。

「ふ……ぅ」
 致死の戦槌が、ほとんど額に触れるほどのタイミングで、静が動いた。右でも、左でも、後ろでもない。
 前だ。
 鎧僧の巨躯、その懐に飛び込みながら、銀狼丸を振り上げる。だが、斬るためではない。この位置からどう振り回そうとも、敵に致命傷を与えられないことは承知の上だ。今、静に必要なのは銀狼丸の刃ではない。
 柄だ。
 頑丈な革紐を水に濡らし、革が伸びたところで柄に巻く。革は乾けば縮むため、柄は木の根を巻いたように固定される。その堅牢な柄を、鎧僧の手首にぶち当て、そして絡める。柄と手と腕、そして肘が、まるで組木細工のように絡まる。
 「っせいっ!!!」
 気合一閃、静の身体が鎧僧の打ち込みとシンクロし、大地へと沈み込む。
 一瞬。
 ばぁんっ!!
 「がっ…ああああ!!」 
 異様な破裂音と同時に、鎧僧の面頬の奥から、たまらぬ悲鳴が噴き上がった。
 それでも渾身の力で盾を振り回し、静の胴を薙ぐ。ひらり、と静が飛び離れ、オークロード=速水厚志の側へと戻る。
 「ぐっ……ヒ、『ヒール』!!」
 鎧僧が治癒の魔法を使おうとするが、態勢が崩れすぎてうまく発動しない。
 その腕、頑丈な手甲の隙間から、大量の血がこぼれ出る。だが斬られたのではない。
 『折られた』。
 手首に絡んだ銀狼丸の柄を支点にしたところまでは分かるが、それ以上はどこをどうしたものか、表現のしようがない。ただ敵の打ち込みの威力に、静自身の体重をまるまる乗せて、鎧の中の腕を折る。それも、折れた骨が肉を裂いて飛び出す、いわゆる『開放骨折』という重傷を負わせた。
 それだけではない。
 膝も砕けている。
 手首を極めただけではなく、同時に足さばきを使って敵の踏み込み脚を絡め、しゃがみ込む勢いを使って膝をへし折った。
 いずれも『テコの原理』だが、ここまで来ると高度すぎて、本来のシンプルさとは程遠い。

 瑞波柔術・秘伝大蛇(オロチ)『氷柱(ツララ)砕き』

 いささかベタなことは認めるとして、敵の打ち込みにシンクロし、敵の自重で敵を砕く、という意味では正鵠を射た技名だろう。
 刃の立たぬ鎧武者を制するために、あの厳忽寺で編まれたその技を、静が持たないはずがない。
 鎧僧は確かに手練だ。
 だがこの姫君は、それを遥かに上回る手練中の手練なのだ。
 
 そして冒頭。

 「回復、急いで」
 「うん」
 オークロードの身体が、一瞬にしてプリースト・速水厚志に戻る。
 「?!」
 この変身を初めて見た聖槌連が、何より驚愕したのは当然だろう。
 「……その業前と装備、ただの坊主とは思えない」
 静が、銀狼丸を肩に担いだ『山賊スタイル』で言葉を投げる。
 「名のある武人なら、名乗ったらどう?」
 「……」
 だが、それに返事はない。
 既に回復し、サポートに来た部下らしい聖槌連のいち団をうるさそうに振り払うと、立ち上がる。
 だが、無言。
 「……なるほど、名乗る名はない、と」
 静が、心底バカにしたように顎をつん、と上げ、
 「名も、神の紋章も隠した賊徒に、この名を聞かせるのはもったいないけれど」
 ひゅん、と、銀狼丸の切っ先を突きつける。
 「アマツ、瑞波の守護職・一条瑞波守鉄が三女、静! 推して参る!」

 つづく
 
JUGEMテーマ:Ragnarok
中の人 | 第十五話「Crescent scythe」 | 13:06 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment









Trackback
URL: