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第十五話 Crescent scythe(9)
 (これ、ちょっとヤバい)
 さすがの静も、内心で焦りを隠せなかった。
 銀狼丸の刃こぼれが、もはや彼女の手に負えないレベルに達した、その事実がはっきりと認識されたからだ。
 静の愛刀・銀狼丸』は、ルーンミッドガッツ大陸において『ツルギ』と呼ばれる刀である。読者の皆様は先刻ご承知の通り、アマツ・瑞波国の先君、一条銀が、生涯にただ一振りだけ鍛えた刀であり、本来は静の幼なじみでもある無代に与えられた刀であった。それが、生まれたばかりの静の『守り刀』として貸し出され、以来、彼女の愛刀となった経緯もご承知の通りだ。
 そしてもう一つ、これまで幾度となく指摘してきた『あまり良い刀ではない』という事実も、同時にご記憶いただいているはずである。
 本来の持ち主である無代曰く、

 『刃紋はでこぼこだし、刃は歪んでいるし、すぐ欠ける。ホント下手糞で、ひどい刀
 
 『精錬もしていなくて、スロットにはウルフカード一枚きりというのだから笑ってしまう』

 と、まさに『けちょんけちょん』である。もちろん、そう言う時の無代の表情が限りない優しさと、そして一抹の寂しさをたたえていることは、誰もが知ることだ。
 とはいえ、この銀狼丸が正直、さほど上等な武器でないことは隠しようもない事実である。
 それが、この物語が始まって以来、王国の特殊部隊から最強のBOT戦士まで、あらゆる強敵を退けて来られたのは、ひとえに使い手、すなわち静の手柄だ。
 この天才剣姫はこれまで、斬る時も受ける時も他の局面でも、刀に余計な負担を与えないよう細心の注意を払い、ほとんどミクロン単位の修正を加えながら戦い続けてきた。
 今の聖槌連との戦いにおいても、威力に勝る大槌を振るう敵を相手に、敵の打撃を柄本に近い丈夫な部分で受けたり、装甲の弱い部分を正確に狙って貫くなど、銀狼丸の刃を守りつつ、100%以上の殺傷力を発揮できるよう技巧を凝らしている。
 もしそうでなければ、銀狼丸はとっくに折れるか、使い物にならなくなっていただろう。いや、常識で考えれば、ここまで刀が保つほうがおかしいのであって、銀狼丸が現状でも武器としてちゃんと使用可能である、という事実はほとんど奇跡に近い。
 だが、それでも限界はある。
 刀は人体と違い、魔法や薬剤では回復しない。静の超絶技巧によって、その限界を遥か先延ばしにしていただけで、限界は必ずやってくる。
 直前、聖槌連のリーダーから受けた予想外の一撃、それによって生じた刃こぼれは、まさにその前兆だった。
 (このままだと、折れちゃう……)
 刃こぼれを確かめ、銀狼丸を握り直しただけで、静にはそれがわかってしまう。
 もちろん、これまでにも細かい刃こぼれや歪みと無縁だったわけではない。戦いのたびに刃は欠け、刀身に微妙な歪みも生じる。だが、これまでの刃こぼれは静でも、荒砥石を使ってごしごしと研げば十分に再生可能だったし、刀身の歪みも、斬撃の際に気をつければいいレベルに収まっていた。
 だが、この刃こぼれは違う。今までのものとはレベルの違う大きさと深さ。こうなるともう、静の技術では修復も修正も不可能で、専門の修復技術を持つ職人に預け、きちんと研ぎ直してもらう必要がある。
 専門技術を持つ職人、つまり無代だ。鍛冶師・ブラックスミスであると同時に、故郷の瑞波国で多くの職人技を身につけているあの青年は、当然のごとく『研師』の技術を持ち、また柄を巻き直す『柄師』の心得もある。瑞波では他にも鍔を専門とする『鍔師』、もっぱら鞘をしつらえる『鞘師』、刀の下げ緒を結う『紐師』などの専門職が存在し、それぞれが分業で刀を仕上げていくのが通例だ。
 そして無代は、当たり前のようにそれらすべての技術を齧っていて、さすがに、
 
 『一人前の職人さんに比べれば、素人に毛が何本』

 と、謙遜はするものの、十分に実用に足るレベルで行使できる。だからこそ、静もプロンテラに来て以来、無代に全てを預けて安心しきっていたのだ。
 だが、その無代も今はいない。いや、もしいたとしても、すぐにこの場で銀狼丸を受け取り、戦場のど真ん中で研ぎ直せ、というのは無茶な話だろう……とはいえ無代のこと、決して『できない』とは言うまいが。
 ぎり、と静が奥歯を鳴らす。肝心な時に無代がいないこと、そして油断から銀狼丸を傷つけてしまった自分の不甲斐なさに、舌でも噛みそうなほどの苛立ちが湧き上がる。
 「静ちゃん、退って!」
 うきの声が聞こえるが、静は動かない。
 「ぅおーいぃ! お返事が聞こえませーん!」
 「……ちっ」
 盛大な舌打ち。
 「ちょっ!? 感じ悪りぃ!?」
 うきが直近の敵をなぎ倒し、静の側にひらり、と着地。
 「交代。コイツはあたしが抑えるから、静ちゃんは他のを片付けて」
 「やだ」
 即答。
 「ダメだって! 刀、もう限界でしょそれ!」
 「やだったらやだ!!」
 まるで駄々っ子である。
 剣の達人、というイメージから、この静を聖人君子のように思う者も多いが、実のところまったくそんなことはない。性格的には圧倒的に闘争心が勝った、ぶっちゃけかなりの暴れん坊である。
 実は、剣の達人=物静かな聖者というイメージは、日本において武家社会が完成し、その宗教的バックボーンとして『禅宗』が選ばれたことで作られた、いうなれば『虚像』にすぎない。
 『剣禅一如』など、実戦においてはほとんど何の意味もない。禅宗のイメージを前面に押し出すために作られた、いわゆるキャッチコピーに過ぎないのだ。
 日本において武家社会が完成し、徳川幕府が天下を統一して政治を掌握した時代、多くの剣術が宗教を精神的バックボーンに持っていた。
 有名なのは鹿島神道流で、文字通り『神道』を中心とした武道である。他にも密教をベースとした流派も存在したが、実はこれらの流派は、幕府にとっては問題があった。
 それは『天皇=朝廷』との関係だ。
 日本において天皇は神の子孫・天孫である。となると、天照大御神を主神とした神道をベースにした場合、幕府の上に天皇を頂くことになる。あるいは幕府成立まで、朝廷と深く結びついて日本を支配してきた密教系仏教も同様である。
 『日本は歴代、天皇を頂点に仲良く暮らしてきた』などという人もいるが、少なくとも徳川幕府が日本を牛耳った時代においてこれは大嘘で、幕府は天皇をまるで大事にしなかった。それどころか天皇の収入を絶ち、兵糧攻めに合わせるなど迫害を続けたことは有名な史実だ。
 それもこれも、日本国を支配するためには幕府こそ頂点であり、天皇はそれ以下、という暗黙のイデオロギーを示すためであった。
 よってその幕府=武士が神道や密教をバックとし、天照大御神や不動明王を上位とする武術を珍重することは、イデオロギー的に矛盾することになる。
 そこで登場したのが、中国から伝わったばかりの最新宗教であった『禅宗』である。そしてこの禅宗をいち早く取り入れたのが柳生新陰流・いわゆる柳生一族であり、彼らが幕府の中枢に深く食い込んで政治を動かしたことはご承知の通りだ。
 かの宮本武蔵も著作『五輪書』の中に『神仏は尊し、神仏を頼まず』という有名な一文を残していて、現代では彼のリアリストぶりを示すものとされているが、当時このような武術・宗教戦争が巻き起こっていたことを考えると、その意味はまるで違うものとなることが分かる。
 それはともかく、『剣の境地=悟り』だの『活人剣』だの、いわば誤ったイメージが定着した背景には、こうしたドロドロな政治的・宗教的背景があったことは間違いない。
 まあ、だからといって戦場の真ん中で駄々をこねるのは、さすがに美しい見世物とは言えまい。
 「ワガママ言うな、このバカ姫!」
 「誰がバカだこのうき!!」
 「人の名前で罵倒された?!」
 女二人、ぎゃいのぎゃいの言い争いながら、しかし敵の攻撃を確実に避け、うきに至ってはさらに1人を刺し殺している。スキル『デットリーエンチャントポイズン』による斬撃は、重装甲の敵すら一撃で葬り、かつその遺体を復活も不可能なほどに損傷・溶解せしめる。
 「コイツはアタシがやるの!!」
 「だから! その刀、無代っちの宝物じゃん! 折れたら何て言うのさ!」
 「そうだけど! ……うき、なんでそれ知ってんの?」
 「あ……む、無代っちに聞いた! ……かなあ?」
 「いつ?」
 「い、イツダッケカナー?」
 うき、この姫様に嘘をつけばバレる、と知って誤魔化すが、もちろん誤魔化せるものでもない。
 「これ終わったら、色々訊くことがありそうねー、うき?」
 「に、ニゲチャオッカナー?」
 冗談みたいなやりとりを続けながら、静の腕がムチのようにしなり、銀狼丸が稲妻のように飛ぶ。
 カーン! ぱぱぁん!
 「がっ?!」
 静に近づこうとした聖槌連の一人が、兜の上から片目を貫かれて崩れる。
 まるで飛び道具のような、瞬速の突き技。それも二連撃、一発目でバリア魔法・キリエエレイソンを砕き、二発目で敵を貫いた。
 刃にこれ以上のダメージを与えないために、敵と切り結ばず、かつ敵を一撃で葬るために、即席で編み出した打法だ。
 背中の肩甲骨から肩・腕・肘・手首のすべてを、まるで流体のように柔らかく連動させ、遠い間合いの敵に対して、まるで剣を投げつけるように振り回し、撃ち貫く。
 
 『楔(クサビ)』

 遥かに遠い未来、この技をそう名づけ、ただこの技のみをもって幾多の戦いを制した武者が現れることになるのだが、それはまたまったく別の話。
 今はただ、刃が風を斬り、肉を貫く音が響くのみ。
 さらに1人、また1人。
 静の剣と、うきのカタールが敵の命を奪っていく。敵も蘇生や治癒の魔法を駆使し、倒れた仲間を立ち上がらせては押し寄せる。
 殺す速度と生き返る速度、この世で最も残酷なイタチごっこが展開する。
 「……強いのう」
 とうとう、感に堪えたように、聖槌連のリーダーが声を上げた。
 老境にさしかかった男の、しかし張りのある強い声。
 「『アマツの姫』がまことかは知らぬが、『アマツが武の国』とは、まことのようだのう」
 「あら、口があったんだ」
 煽る静に、
 「あるわい。名もあるぞ。ヴァツラフ・ヴォールコフという」
 「『右神将・ヴォールコフ』。2人しかいない大将の1人で、アルナ聖皇軍の事実上のトップだよ」
 うきがその正体を告げる。
 「中身は、そんな大層なもんではないがの。ただの力持ちの坊主よ」
 会話の間も戦いはやまない。静とうきにとっては、手を控えればたちまち、倒したはずの敵が蘇生されてしまう。敵が話しかけてきたなら、それはむしろ罠と思うのが戦場だ。
 「そのお偉いお坊さんが、なんで女神様の紋章まで隠して山賊仕事?」
 「強いばかりか、痛いところを突きおるわ」
 ヴォールコフが苦笑する。
 「だが、わしの心配より、いいのか? 鳥車が危ないぞ?」
 ヴォールコフの言葉に、静がはっ、と岩山を振り向く。
 そこには、地震で崩れた斜面を駆け上る数人の武僧の姿。岩山を背に、頂の鳥車を守ってきたが、うきと静、そしてフールと速水の4人では、いずれほころびは出る。
 「フール! あっちゃん!!」
 「無理だ!」
 「ごめん、しーちゃん! 間に合わない!」
 三大魔剣を駆るフールも、ふたたびオークロードに変身した速水も、それぞれの敵を抑えるのに精一杯だ。静が舌打ちする。
 「マリン! そっち行った! ちょっとだけ頑張って!」
 「うええええ?!」
 岩山の上で呑気に構えていたマリンが、いきなり呼ばれて飛び上がる。
 「ちょ、待っ?!」
 「すぐ行くから!!」
 静が銀狼丸をひと拭いして腰の鞘に戻し、ヴォールコフらに背を向ける。
 「うき! その大将、残しといてよ!」
 「知るかぁ! 早よいけ!!」
 うきの罵倒を背に、静が走り出す。ゴロゴロと岩だらけの地面だが、静にとっては舗装道路と変わらない。たちまち加速し、崩れた岩山の斜面を駆け上る。
 だが間に合わない。3人の武僧が頂上に達し、鳥車に襲いかかる。
 「うわっ……?!」
 慌てた御者が手綱さばきを誤り、驚いた騎鳥・ペコペコのうちの数羽が盛大に羽をバタつかせる。パニック状態だ。狭い岩山の頂で、鳥車が一瞬、制御を失って横滑りを起こす。
 「危な……っ!」
 御者台にいたマリンが振り落とされ、どうにか着地したものの、もはやどうすることもできない。
 横滑りした鳥車、その片方の車輪ががこん! と斜面に引っかかり、一気に傾く。
 「やばっ!」
 駆け上る静の真上、今にも落下しそうな鳥車の姿。だが静といえど、あれだけの重量を支えることなど不可能だ。
 ばくん!!
 真横に傾いた鳥車、その下向きになった扉が、静の方へ向けていきなり開いた。
 中に、小柄な人影。
 何か細長い包を胸に抱えている。鳥車がさらに傾く。保ってあと数秒。
 その人影と、静の視線が交錯する。

 「……飛んで!!」

 静が叫ぶ。
 
 つづく
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中の人 | 第十五話「Crescent scythe」 | 17:49 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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