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第十五話 Crescent scythe(10)
 「……飛んで!!」
 崖の下から、静が叫ぶ。
 見る見る傾いていく鳥車、その観音開きの扉が激しく揺れる。鳥車の中にいた小柄な人物と、静の目が合う。
 小柄な人物、少女だ。
 純白をベースに、金糸の刺繍をほどこした豪奢な法服。銀色の髪。
 静を見つめるその瞳は、右が赤、左が紫。
 その2つの輝きが、静の心に不思議な印象を刻む。それは、まだ幼く無垢なようでもあり、同時に、はるかに歳経て皺深くも見えた。
 あるいは子猫の姿のまま、百年を生きた猫がいたとすれば。
 雛の姿のまま、千年を生きた鶴がいたとすれば。
 もしも本当にそういうものがいたとするならば、ひょっとすれば彼女のような『もの』になるかもしれなかった。
 左右で違う瞳の色。
 ずれて、かみ合わない心と身体。
 
 不均衡(アンバランス)。

 「……目をつぶって飛んで! 受け止める!」
 静がもう一度、鳥車に向けて叫んだ。決して攻撃的ではないが、それこそ尻を引っ叩くような声。
 少女がはっ、と一度、目を見開いて、そして意を決したようにしっかりと目を閉じる。扉にしがみついた片手を離し、もう片手に抱えていた細長い包みを両手で抱きしめる。
 たんっ!!
 少女の、これも白絹を金糸で飾った布のサンダルが鳥車を蹴った。……と、言うのは簡単だが、崖から落ちかけの鳥車から『下へ飛べ』と言われて、果たして本当に飛べる人間がどれほどいるだろうか。『受け止める』と言われても、言った相手はほとんど見も知らぬ他人だ。その言葉には何の根拠も、保証もありはしない。
 だが、それでも少女は飛んだ。
 この世界で、おそらくは彼女だけにしか分からない、何かを信じて。
 「ひえええ!!」
 この世の終わりみたいな悲鳴はマリンだ。
 「!?」
 聖槌連、そして彼らを率いるヴォーコルフまでが、はるか崖上で繰り広げられる光景に息を飲む。
 「しィッ!」
 鳥車から飛んだ白と金の少女めがけて、静の身体が崖をダッシュする。ほとんど垂直に近い、それも広域破壊スキル『アースクエイク』で崩壊したばかりの岩だらけの崖を、まさに超人的なスピードで駆け上る。
 落下地点。
 計算通り。
 「でぇぃ!!」
 崖を蹴って跳躍。静の長身が宙を舞う。
 ばすっ!!!
 白金の少女の身体を両腕でキャッチ。だが、このままでは二人まとめて崖下へ一直線。それでも静一人ならば、何とか怪我で済む程度の着地が可能だろうが、この少女を抱えたままでそれは不可能。
 下手をすれば、いや、しなくても二人とも死ぬ。
 轟!!
 二人の耳元で風が鳴る。死の国への自由落下。地面まで、ものの半秒。だが。

 ぽよん!!!

 静と少女、岩に叩きつけられるはずの二人の身体が、何かの超弾力に包み込まれ、次の瞬間、真上へ弾き返された。
 そして再び落下。

 ぽよん!

 また跳ねて、

 ぽよん!

 また落ちて、そしてやっと止まった。
 「……ふう。あっちゃん、ナイス!」
 少女を抱いたまま、長い脚を投げ出すように座った静が、尻の下に向けてグッジョブのサイン。
 二人の下にはピンク色の、丸く巨大な塊。落下の衝撃を受け止めたのはこれだ。
 『マスターリング』。
 この世界で最もポピュラーなモンスター『ポリン』の巨大版で、ほとんどのギルドから『ボス指定』を受けている異生物である。とはいえボスの中では比較的、狩りやすいとされているため、駆け出しから中級へ至る冒険者パーティーに狙われたり、あるいは腕自慢の上級冒険者に単独でかられることもある。
 危険なモンスターでありながら、しかし愛嬌のある外見から、冒険者からは意外と愛されているともいう。
 ぽよん!
 マスターリングに変身した速水が、返事の代わりに身体を揺らし、少女と静をもう一度、軽く弾ませる。崖上への救援が間に合わないと悟り、同時に静の意図を理解して、その落下を崖下で待ち受けたのは、確かに彼の手柄と言えるだろう。
 「落ちるぞぉ!」
 崖の上からマリンの声。
 「おっと! あっちゃん、移動移動。あっち!」
 静が指示を出し、マスターリング=速水がぽよぽよと移動する。ここにじっとしていたら、上から落ちてくる鳥車に潰されてしまう。
 崖の上ではマリンが、おおわらわで御者と協力し、鳥車と騎鳥・ペコペコを切り離しにかかる。鳥車はもう完全に崖下へとバランスを移し、六羽の力を持ってしても、ズルズルと下がるのみ。このまま鳥たちごと落下するよりは、せめて鳥車を犠牲にしても鳥たちは助ける。
 「『フファイアーボルト』!!」
 マリンの魔法が閃き、鳥車の連結が一気に破壊された。同時に、
 がしゃん!!
 辛うじて崖上に残っていた最後の車輪が支えを失う。
 がしゃん! ぎゃららぎゃががしゃどどどどっど!!!!
 巨大な鳥車は、一瞬だけ四つの車輪で崖面を走り降りると見えたが、直後に大きくバウンドしたと思うや、そのまま錐揉み状態になりながら、一気に斜面を転がり落ちる。
 がしゃああ!
 最後にもう一度、大きくバウンド。
 どんぐわっしゃあん!!!
 着地。いや、落下。
 さすが丈夫に作られているらしく、本体の原型こそ留めているが、四つの車輪は砕け、あるいはひん曲がり、あるいはゆらゆらと揺れながら回り続けている。
 もう二度とは走れまい。
 「ふ、ふい〜」
 その惨状を崖上から見下ろしていたマリンが冷や汗を拭う。オートスペル研究のため『安全な狩り』のみを繰り返してきた彼女にとっては、こんな大騒動は生まれて始めてのことだ。
 「間一髪……って?!」
 気づけば、マリンの両脇に人影。
 『月』と『星』、静たちの連れの双子の少年だ。BOT技術によって魂を抜かれ、誰かの言葉に唯々諾々と従うだけの人形と化しているが、その辺りの事情はもちろん、マリンは知らない。
 「え、と? 怪我ない?」
 マリンの言葉に双子が揃って顔は向けるが、もちろん返事はない。 
 二人とも直前まで、鳥車の後ろの荷台に座り込んでいたはずだが、身体に危機が迫ると勝手にその場を退避し、近くにいる誰かの側に移動したらしい。魂を持たず、ただBOTブログラムのままに行動するだけなのだが、もともとの身体能力が高いため、相当の危機であってもきちんと反応し、自分の身体を守るのだから便利といえば便利だ。
 「……」
 その二人が、揃ってひょい、とマリンから離れる。
 「……?!」
 一瞬の困惑の後、マリンはその意味を悟る。『この場所は危ない』ということだ。
 「うひゃあ!!」
 ぶん!!
 ギリギリのタイミングでしゃがみこんだマリンの頭上を、巨大な戦槌が走り抜ける。聖槌連、敵はまだいた。
 「っのお!!」
 マリンも反撃。背中から愛本『死神の名簿』を引き抜くと、
 「『ファイアーウォール』!」
 攻防一体の設置魔法・炎の壁を召喚。敵の身体が焼かれ、同時に数メートルも弾き飛ばされる。この『ファイアーウォール』をいかに使いこなすか、それが魔法系術者の戦いを左右する。
 「逃げて!」
 マリンが双子の少年、そして鳥車から切り離したペコペコを抑えるのに必死な御者に向かって叫ぶ。
 敵は三人、守り切れる自信はない。
 だが今、ここで戦えるのは自分一人。
 (やるしかない!)
 これは研究でも、試験でもない。撤退する場所も、手段も、ない。
 (装備選択! リスクコントロールを全無視! ……ならば!)
 「どうなっても知らない!」
 炎の壁の向こう、敵に向かって歯を剥き出す。
 背中のリュックから小さな箱を取り出し、頭の上に掲げると、蓋を開く。直後、
 ぼわんっ!!!
 マリンの頭上に大きな、真っ黒い塊が出現した。それはどう見ても『雲』。
 『黒雲』。
 
 ゴロゴロゴロ……。

 マリンの真上に浮遊した黒雲が不穏な前兆音を奏で、ついでにその表面に細かな閃光を走らせる。
 「どうなっても……」
 『死神の名簿』を敵に向かって突き出す。炎の壁の効果が突き、敵の姿が顕になる。           

 ガラガラピシャーン!!
 
 崖の頂上に凄まじい閃光と轟音。
 雷光と雷鳴。
 「知らないからね!!!」

 つづく
 
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中の人 | 第十五話「Crescent scythe」 | 13:12 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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