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第十六話「The heart of Ymir」(10)

 G1スナイパーが、その異様な風を感じたのは、『マグフォード』の倉庫で騒動が起こる直前のことだ。

 彼女が『女王』と呼ぶ、シュバルツバルトの上空を統べる風。そして、その風から生み出される無数の『子供たち』。

 G1スナイパーはそれらの風と、雲が織りなす壮大なタペストリーを、ほとんど瞬きもせずに監視し続けている。『イグドラシルの実』を潰して目尻に塗りつけ、その果汁を目薬のように眼球に流し込み続けることで、乾ききった眼球を強引に治癒しているとはいえ、その耐久力、忍耐力、そして集中力の凄まじさを見よ。

 意味の混乱は承知で、もはや『光学レーダー』とでも呼ぶべき範囲と精度をもって、マグフォードの敵を決して見逃さない。

 (……?)

 G1スナイパーの目が一つの風を捉えた。女王が生み出す風の子供たち、いや、正確に言えば、その『破片』だ。例えば、高い山の頂に風がぶつかった時、このようなバラバラに砕けた風が生まれる。

 が、この空域、この高度にそんな山は存在しない。

 なのに、風を砕くほどの巨大な質量が存在するとすれば……。

 (どこだ……?!)

 G1スナイパーが両目の目尻にイグ実を追加。渇いた目が焼け付くようだが、泣き言を言っている時ではない。そうしている間にも、ひとつ、またひとつと、砕け散った風の欠片がG1スナイパーの目の前を通り過ぎる。

 近い。

 初めて、監視所に備え付けの巨大な双眼鏡を手に取り、目に当てる。双眼鏡越しでは、風を見ることはできない……が、

 (いた……!)

 砕けた風の向こう、雲と青空の境目に微妙な光が揺らぐのを、G1の神眼がとらえた。ジュノーの街角でカプラ嬢として仕事中、何度か目にした揺らぎ。

 間違いなく、光学ステルスの揺らぎだ。

 雲の後ろ、じっと動かない。

 (待ち伏せのつもりか……)

 

 「総員、戦闘用意!」

 G3プロフェッサーの声が、飛行船の倉庫に響いた。

 もっとも戦闘要員たるチーム・グラリスの面々は、G1スナイパーから『敵発見』の連絡を受けると同時に、即座に行動を開始している。だからG3プロフェッサーが叫んだのは、むしろそれ以外のカプラ嬢たちへ、緊張と覚悟をうながす意味が大きい。事実、

 「ではD1」

 G3プロフェッサーが、カプラのリーダーであるディフォルテーNo1に声をかける。

 「はい、G3」

  「あとは任せます。手順通り、全員をできるだけ席につかせて。座れない者も身体を固定する。どうしても恐怖に絶えられないと思ったら、G7が配った睡眠薬を使って。……ただし!」

 G3が念を押す。

 「効き目が強力すぎて覚醒に時間がかかる。いざ船を脱出する時のために、『リカバリー』が使える者を残すこと。忘れないで」

 『リカバリー』はプリースト系の魔法で、睡眠などの状態異常を治癒できる。

 「承知しました、G3」

 「心配すんな、D1」

 横槍はG2ハイウィザード。

 「敵なんざ、とっとと叩き落として、チリも残さず焼き払ってやるから。アタシぐらいになればね」

 「はい、G2……ご武運を!」

 G2ハイウィザードの大言壮語は毎度だが、それでD1の表情からふっ、と緊張が消えるのだから不思議なものだ。

 チーム・グラリスが階段を登り、扉をくぐって甲板に揃う。

 以前は甲板の上を塞いでいた双胴の気嚢が、今は甲板の左右へ平行に移動している。さえぎるもののない青空のど真ん中、グラリスたちの赤銅色の髪と、濃い臙脂のカプラ服が風に舞う。

 ごぅんごぅん……。

 甲板の一角にあるハッチから、荷役用のクレーンが倉庫へと降下、白銀に鮮血の赤色を添えた巨大な『ヴェスパー鎧』に包まれたG9パラディンが吊り上げられる。完全に荷物扱いだが、鎧があまりに巨大過ぎて、『マグフォード』の通路を通れないのだから仕方ない。

 「おーらい、おーらい」

 『マグフォード』の若い甲板員達の手で甲板へ。さらに鎧の各所から、幾本ものワイヤーを張って甲板に固定される。

 「G9、問題は?」

 G3プロフェッサーが、鎧の伝声管の側に寄って話しかける。

 「問題ない」

 G9パラディンの応えはシンプル。

 「では、始めましょう。『マグフォード』、進路そのまま」

 「了解……作戦を開始する。『マグフォード』、進路そのまま」

 G9パラディンが鎧の拡声機能と、それに直結された飛行船の伝声管を使い、全艦に指示を伝達する。G9パラディン、そして指揮官のG3プロフェッサーさえ、もはや大声を上げたり、叫んだりすることなく、いっそ淡々とした声を出している。

 理由は、その必要がなくなったからだ。

 浮遊岩塊『イトカワ』を皮切りに、若いカプラ嬢たちの先頭に立って戦っていた時は、全員に指示を徹底し、かつ士気を鼓舞するためにも、声を張り上げることが多かった。

 だが今、もはやその必要はない。

 自分のやるべき仕事を知り尽くし、他人に士気を左右されることもない、真の精鋭たちの戦いが始まる。

 「うっし、戦るさー!」

 今作戦の主役たるG11ガンスリンガーが、甲板船首部分に設えられた銃座に着く。巨銃・エクソダスジョーカーXIIIの大砲じみた巨体を支えるため、短時間で急造された代物だが、そこはG5ホワイトスミスの仕事。金属製の銃座も、木製の椅子も、簡易ながら堅牢そのものだ。

 支援にG4ハイプリーストとG15ソウルリンカー。給弾役にG10ロードナイトという豪華さはそのまま、『BOT』から復活したばかりのテーリングNo4、T4がアシスタントとして側につく。

 「ほい、持っとくさ」

 G11ガンスリンガーが、腰の後ろにX字にぶち込んでいた双銃『シキガミ』をベルトごと外すと、T4に預ける。信頼の証だ。

 「ちょっと、このハーネスっての窮屈なんだけど。外していい?」

 逆に文句たらたらなのはG2ハイウィザード。

 甲板にいる全員が、上半身をたすき掛けにベルトで固定するハーネスを着け、さらに背中に引いた伸縮ロープで甲板からの落下を防いでいる。

 「船が逆さまになっても平気でありんすか、渦ちゃん?」

 G6ジプシーが意地悪く聞くのも当然だが、一方で、

 「そういうアンタはどうなのよ?!」

 G2ハイウィザードが聞き返すのも当然。なにせG6ジプシーときたら、窮屈なハーネスなんぞどこ吹く風。伸縮ロープ一本、片手の手首に絡めたなり、悠々と甲板に立っている。

 「懐かしや懐かしや。おとーちゃんの船団にいた頃は、よく歌ったもんでありんす。『命歌』」

 「……聞いちゃいねえ」

 G2ハイウィザードが顔をしかめる。ちなみに『命歌』とは、海で嵐に襲われた時、船団の船が旗艦から逸れないよう、その位置を知らせるために歌われる。

 「嵐の夜、あちきが夜通し歌って、おとーちゃんが舵取って……」

 そして嵐が去った夜明け、兄弟たちの船が一隻も欠けず生き延びたと分かった時には二人、抱き合って涙したものだ。

 

 ブラギをなんと呼ぶべきか……♪

 

 G6ジプシーの歌が始まる。大気中の魔素を収束し、魔法・スキルの発動を容易にする効果を持つ魔歌だ。途端、荒々しい風に吹きさらされた『マグフォード』の甲板を、どろりと重い空気が包む。

 「あら、大変」

 反応したのは盲目のG7クリエイター。

 「G3、全員に通達を。緑色の『吐き止め薬』を服用するように」

 G3プロフェッサーを通じて指示を出す。目の見えない彼女は盲導ホムンクルスを傍らに、甲板に固定された専用の椅子に座って身体を支えている。

 「G6が本気だわ。不慣れな者は、放っておくと『魔素酔い』を起こします」

 飛行船『マグフォード』に乗船している乗組員、カプラ嬢の全員に、G7クリエイターから事前に薬剤が配布されている。その中身は回復薬だけでなく、このように多彩な状況に対応できるよう考慮されているのだ。

 「いーから、とっとと撃ち落としちゃってよもう」

  結局、ハーネスを我慢することにしたG2ハイウィザードが、G11ガンスリンガーを急かしにかかる。

 「おっけー。んで、ターゲットはどこさ、G1?」

 「正面やや右。ドリラーのエリマキみたいな形した雲の、上辺に隠れてる」

 気嚢の上の監視所から、甲板へと移動した神眼のG1スナイパーが指差す。

 「んんん……?」

 銃座に座ったG11ガンスリンガーが軽く肩を揺らし、巨銃のスコープに目を当てる。

 発射態勢に入ったことを確認したG4ハイプリーストから支援魔法が贈られ、G9パラディンからは献身のスキルが飛ぶ。光の紐が続く限り、ダメージはすべて聖騎士のものとなる。

 薄い光をまとったG14ソウルリンカーからは、1回限りのダメージ無効魔法。

 さらにG11ガンスリンガー自身も、浮遊岩塊『イトカワ』の時には使わなかったガンスリンガーのスキルも動員。

 きぃーん!

 手首に装着したコインケースから、手首の動きひとつで魔力が込められたコインを弾き出す。ガンスリンガー独特の自己強化アクション。

 精神が研ぎ澄まされ、五感を含むあらゆる感覚が何倍にも増幅されていく。

 銃との一体感、さらに弾丸や弾道そのものまで、自分の感覚とシンクロしていく。G11ガンスリンガー自身が、まるでターゲットに直接手を伸ばし、触れているような感覚。

 「……いた」

 G11ガンスリンガーがつぶやくのへ、

 「え、見えんの?」

 G2ハイウィザードの疑問。敵はステルス能力を持ち、見えないはず。

 「見えないけど……わかるさ。確かに、いる。……撃っていいか、G3?」

 「どうぞ、タイミングは任せます。撃ってください」

  G3プロフェッサーの応えは明快。

 「よーし、アタシが撃て、って言ったら撃つんだ、G11!!」

 また勝手なことを言い出すのはもちろん、G2ハイウィザード。

 (……うん、見えてきた)

 もちろんG11ガンスリンガー、聞いちゃいない。

 今まで第六感だけで捉えていた『ターゲット』が、彼女の目にも見え始めている。もちろん敵にはステルス機能があるため、はっきりと捉えることは不可能だ。

 だが、大空に薄く散った雲の向こう、微かに不自然な光の屈折があるのを、G11ガンスリンガーの目が捉える。これでもかと贈られた支援魔法、そしてガンスリンガーのスキルによって、G1スナイパー並みの視野を手にした結果だ。

 (……っし!)

 脳内で弾道を計算。こちらも移動中の飛行船で、不安定。しかもターゲットは見えない。

 常識で考えれば、数十発の弾を撃ちまくりながら着弾を調整したとしても、まず当たるものではない。

 だが、

 (いけるさ!)

 それができるからこそグラリス。師範銃士(マスター・ガンスリンガー)。

 (いくぞ、鹿頭! アンタの好きな。空のケンカだ!)

 心の中で、巨銃の持ち主に呼びかける。

 「撃て!」

 G2ハイウィザードの勝手な合図。だが奇跡、タイミングは完璧。

 どんっっ!!!

 猛烈な射撃音と衝撃。

 かかかかーん!!!

 同時に周囲に贈られたバリア魔法が発動し、ダメージを受け止める。だが、誰もダメージなど気にしてはいない。すべては弾道の、その行方。

 G1スナイパーが神眼を凝らす。その目は、遥か音速を超えて飛ぶ弾丸すらとらえるのか。

 「……よし、当たる」

 小さな呟き。

 着弾すれば、弾頭に込められた召喚魔法によって膨大なエネルギーを発生させ、敵を葬り去る無敵の弾丸。

 それは彼女らの勝利を意味する

 

 だが。

 

 ばぁっ!!

 突如、青空の向こうに光の束が出現。彼女らの望んだ爆発は起こらない。

 「……?!」

 スコープを覗いていたG11ガンスリンガー、そしてG1スナイパーまでが閃光に目を焼かれる。

 「……『エネルギーウィング』」

 G3プロフェッサーがつぶやく。放浪の賢者・翠嶺が調べた『戦前機械(オリジナル)』の調査資料に書かれていた、飛空戦艦唯一にして最大の武器。

 12枚の、光の羽根。

 巨銃の弾丸が着弾する寸前、その光の守りが発動し、弾丸を蒸発させた。爆破の魔法が発動する前に、魔法陣ごと消し去ってしまった。

 どんっ!!

 G11ガンスリンガーが、即座に次弾を発射。

 ばしっ!!

 だが結果は同じだ。魔法が発動しなければ、弾丸は石ころより無害。

 師範銃士が、巨銃のスコープから目を離す。両手を広げて上に向け、肩をすくめる。

 「……ダメっさね」

 呆れるほどあっさりと降参。

 『マグフォード』の甲板に、一瞬の沈黙。

 

 「ちょ!? ええぇぇぇええええ?!!?!」

 

 G2ハイウィザードが、目をむいて絶叫した。

 

 つづく

 

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中の人 | 第十六話「The heart of Ymir」 | 11:31 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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