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第十六話「The heart of Ymir」(11)

 シュバルツバルド共和国首都・ジュノー。

 戦前機械(オリジナル)・「ユミルの心臓」が引き起こす重力干渉を利用し、空中に浮遊する3つの巨大岩塊を連結して作られた、世界唯一の空中都市だ。

 その存在は孤高にして難攻不落。唯一の弱点は「水不足」だが、都市の地下に雪を蓄えることで対応している。

 「まこと、凄いものございますねえ」

 無代が嘆息するのも、決してお世辞ではない。

 彼らが立っているのは、ちょっとした運動場ほどもある四角い雪の広場である。ジュノー製の戦車『バドン』に乗って連れてこられたのがここだ。

 四方は岩の壁、そして天上もまた岩。

 それは都市の地下、花崗岩の岩盤をくり抜いて作られた最大級の『貯雪槽』だった。

 深さ40メートル、幅50メートル、奥行きは実に100メートル。その床は、奥へゆくほど低くなっており、ちょうど斜めに掘られた巨大トンネルの様相を呈している。

 街に降った雪は最終的にここへ集められ、まるで高山に降った雪が氷河となって降るように、下へ下へとずり落ちていく仕組みだ。

 「そして夏になったら、底から解け落ちてくる水をくみ上げて、上水道に流して使うんです。冷たくて美味しいんですよ」

 無代と並んで立った少年賢者・架綯の解説に、自慢の色が混じるのもまた、仕方のないことだ。

 しかもジュノーを形成する3つの岩塊には、これと同規模の貯雪槽が最低5つ、最大で9つも掘られており、また自家用の貯雪槽を備えた家も少なくない。

 「それでも水は貴重だからね」

 戦車の上から、解説の最後を引き取ったのは他でもない、カール・テオドール・ワイエルシュトラウス。

 

 シュバルヅバルド共和国大統領、その人だ。 

 

 「ジュノーの市民は皆、節水に努めてくれている。世界一、水を大切にする市民だよ」

 その声に自慢が混じるのもまた、自然なことだろう。

 「本当に素晴らしいことでございます」

 無代が賛辞を重ねるのも、やはりお世辞ではない。

 シュバルツバルド共和国は、世界でも唯一、国民投票による大統領制を布いている民主国家だ。

 『迷信や強権によらぬ、科学と理性によって立つ国家。本当に素晴らしいことだ』

 無代にとって最高の師であった瑞波一条家の前当主・一条銀は、常々そう評価していた。

 『国民が国民の中から、自分たちで元首を選ぶ。それならば、最後の一人になったとしても国は滅びない。一部の支配者層が崩れれば、それで終わる国とは違うのだよ』

 銀は、首を傾げる無代にそう説いた。

 『もちろん、そういう国家を実現するには、国民の誰もが元首となれる資質と、教養を備えていなくてはならない。当然、そのための高度な教育制度があるはずだ』

 病の床で夢を見るように、銀はつぶやいたものだ。

 『そこには、我が妻・巴の師であった賢者殿のような師が集い、この世のあらゆることについて思索をめぐらせ、そして培った知識と知恵を次の世代へと伝えていくのだ』

 それは血で血を洗う戦国の世に生まれた一人の男が描いた、一つの理想そものであったのだろう。

 瑞波の国内に教育機関・天臨館を創設したのも、彼にその思いがあったからに違いない。そして事実、その学び舎から巣立った者たちが、のちに瑞波の民主化を成し遂げることになる。

 『空に浮かんだ都市、岩をも穿つ工業力、空飛ぶ船、民主主義……人間の力と知恵に果てはないのだ……』

 銀の言葉は夢か、それとも病が見せたうわごとであったか。

 (……アンタの夢は本当だったよ、天井裏の魔王)

 結局、一度もこの街を訪れることがなかった男に、無代は心の中で呼びかける。妻の師である翠嶺に何度か招待を受けたが、そのたびに体調を崩してしまった。

 (祭りの前に熱出す子供と一緒だ、まったく)

 無代は苦笑したものだ。

 もし彼がこの街を訪れていたら。無代と同じように飛行船に乗り、地下の大空洞を戦車に乗って駆け巡ったならば。

 (熱出すぐらいじゃすまなかったろうな。はしゃいじまって、『もう帰らない』って言い出したかも)

 「無代さん?」

 黙ってしまった無代の顔を、架綯が下から心配そうにのぞき込む。

 「いえ、なんでもございません、若先生」

 無代が顔を上むきに振ってごまかした。こんなところでわけもなく涙ぐんでしまっては、ただの変な人だ。

 「あまりに見事なもので、言葉を失っておりました」

 そうほめると、小柄な少年賢者はさらに嬉しそうな顔になる。彼もまた、いつかこの国を支え、あるいは導くために育てられた未来の卵なのだ。

 「ここも決して安全ではないが、敵は決定的に数が少ない。常に移動していれば、そうそう補足はされないだろう」

 大統領が、戦車から降りてくる。小太りの身体をツナギの戦車服に包み、頭には金属製のヘルメット。

 正直、ダサい。が、冬眠前のクマだと思えば、一周回って可愛いと言えなくもない。

 「カール」

 かわって、戦車の上から顔をのぞかせたのはエスナ・リーベルト。

 紫色の長髪と謎めいた美貌を持つ、カプラ社公安部門の生き残りだ。

 「バドンのオーバーホールを」

 「うむ……任せたよ、エスナ。無代さん、架綯先生もバドンに乗ってくれ。灰雷も」

 大統領に促され、二人が戦車に乗る。武装鷹・灰雷はもともと、戦車の主砲を悠々と止まり木にして休んでいて、いっそ戦車の主(ぬし)は彼女のようだ。

 ぐろろろ……と、巨大な戦車が低い唸りを上げ、エスナの操縦で前進を始めた。雪の上に残されたのは大統領と、わずかな護衛のみ。

 ごろごろと5分ばかりの移動だったが、架綯は安心と疲れからか、無代に寄りかかってうとうと。

 「どちらへ?」

 無代が聞いても、エスナは答えない。無視しているわけではなく、行けばわかる、ということだろう。

 戦車が向かう雪の先に、人の一団が見えた。人数は20人ほどか。

 ごぅん、と戦車が止まる。だが、そこに集った人々は無言……どころか、エスナが戦車を降りて近づいても、こちらを見もしない。

 「……バドンのオーバーホールをお願いします。戦闘がありました。主砲を撃っています」

 「……」

 返答なし。

 「あの……」

 「帰んな」

 エスナの呼びかけに、冷たい声が返った。

 「国民を見捨てた大統領に貸す腕はない。我ら『ハート技研』にはな」

 

 つづく

 

 

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中の人 | 第十六話「The heart of Ymir」 | 11:54 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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