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第十六話「The heart of Ymir」(13)

 そうと決まれば瑞波の無代、仕事は早い。事情の説明は架綯に任せ、とっとと食料をチェックし、メニューを組み上げ、調理にかかる。

 もちろんその前に、着替え一式を借り出すのも忘れていない。

 革の安全靴に、汚れても目立たない藍染のズボンとシャツ。これに洒落た赤色系のネクタイを締め、丈夫な革のジャンパーを羽織るのがシュバルツバルドの職人流。仕事の時は、さらに革の手袋とヘルメットが必須だ。

 「なんかイマイチだな」

 イナゥヴァ技師長が、無代のなりを見て苦笑する。何を着ても微妙に似合わない、という無代の特技は、ここでも健在らしい。

 「不徳の致しますところで」

 無代も苦笑で返したものだ。

 ところで無代、事情の説明を架綯に任せてしまっている。荷が重いのは承知の上で、だ。

 実際、架綯先生ときたら、今も顔を真っ赤にし、大汗をかきながら演説の真っ最中。

 「ですから! 敵の狙いは『ユミルの心臓』! あれの制御を奪われたら、もう手の打ちようがなひ!」

 慣れない大声で、声が枯れている。 

 「それを阻止するために、『マグフォード』とカプラ嬢の皆さんは帰ってくりゅ!」

 噛んだ。

 それを背中で聞いている無代、笑いをこらえるのに必死だ。だが同時に、

 (だが、それでいい。ばっちりだぜ、若先生)

 内心で、心からのエールを送っている。もちろん無代自身が説明すれば、もっと要領よく、かつ劇的に相手の心を打つことも可能だが、

 (ここは若先生の一択だ)

 そこは無代、計算がある。

 なにせ架綯、ほとんど嘘というものをつけない。そしてハート技研の連中もまた、そのことをよく知っている。よって彼らの信用を得ること、それを第一に考えるなら、

 (今は腹芸キメてる場合じゃねえ)

 そういうことだ。

 差し出せるものはすべて差し出す。その上で、最大限の譲歩を願う。

 もちろん『他者との交渉』とは、そんなイージーなものではない。相手の望むものと、こちらの望むものをすり合わせ、腹を探り、時にはだまし、時にはだまされたふりをしながら、互いの利害を細かく調整していくものだ。

 相手が商人なら、無代もそうしていた。

 (だけど、この人たちは違う)

 無代は彼らに出会って早々、それに気づいている。

 (『職人』なら、話はできる。いや、してみせる)

 少年時代、どんな頑固職人相手でもひるまず、心を開かせて技を盗んだ。

 (で、まずは『胃袋』だ)

 ぽん、と手を打つ。

 「さあ皆様、出来上がりでございます。熱いうちにお召し上がりを」

 そう言って無代が振舞ったのは、水で溶いた小麦粉をフライパンで焼いた、いわゆる『クレープ』だ。

 だが卵も、ろくな調味料もなく、小麦粉と、わずかなバターだけでこれを焼くのは至難の技。

 至難の技……?

 いや『瑞波の無代』ただ一人、それは当てはまらない。

 向こうが透けて見えるほど薄い皮で、ソースを絡めて焼いた薄切り肉や野菜をくるくると巻いてかぶりつく。

 あり合わせの乾燥果実にワイン、ニンニク、そして香辛料を煮詰めたソースは濃厚そのもの、焼けばさらに香ばしさが倍増しだ。寒々と暗い貯雪倉の中が、突然明るい屋台の側に早変わりしたかのよう。それでも、

 (半マスでもいい、醤油があればイチコロなんだがなあ)

 無代、味には不満がある。

 醤油をベースに、バナナやマンゴーといった南国果実を煮詰め、大量のスパイスを加えたソースこそ、少年時代の無代が屋台で売って名を成した『元祖あゆたや焼き』、そのキモとなるものだった。

 半信半疑で口に入れた人々が、夢中になって頬張る様を、どれほど誇らしく見たことか。そして今。

 「これは……!」

 シュバルツバルドの男たちが、子供のように口の端をソースで濡らしながら、目を剥いてかぶりついていく。

 「お口に合いますでしょうか?」

 無代が、聞くまでもないことをわざわざ聞く。

 「む……むん!」

 こくこく、と言葉もなくうなずく、それこそ無代にとって勝利の証だ。

 「つきましてはイナバ様」

 「なんでえ?」

 じろり、と睨む老技師も、手に残ったソースを残らず舐めている最中ではしまらない。

 「あちらの方々にもお振る舞いを、お許し願えませんか?」

 無代が指したのは、貯雪倉の向こうに固まった、シュバルツバルド大統領の一行である。

 「……いいだろう。食わしてやんな」

 「ありがとう存じます」

 無代、丁寧に頭を下げておいて、

 「では、皆様の『お代わり』を作りました、その後に」

 そう言って、また手を動かしたものであった。

 

 つづく

 

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中の人 | 第十六話「The heart of Ymir」 | 12:37 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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