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第十六話「The heart of Ymir」(14)

 ほどなくして無代、

 「さあ大統領閣下、お供の皆様、『おすそ分け』でございます」

 シュバルツバルト大統領のもとへ、大量の料理を届けている。食料保存用の木箱の蓋を、お盆代わりに左右の手に掲げ、上に幾つもの皿を並べた『出前スタイル』だ。

 「戦車の整備も請け負っていただけました。しばし待て、とのことで」

 「……ありがたい」

 暗い雪の上、一団となって座り込んでいた大統領御一行様に、少しほっとした空気が流れる。その空気は食事が進むにつれて暖かく広がり、溶かした雪を沸かして作ったウイスキーの湯割りに、ほんのりとハチミツを効かせた飲み物が配られる頃には、笑いさえ漏れるほどになっていた。

 「ありがとう、無代君」

 ヒゲで小太りの大統領が、無代に頭を下げる。

 「とんでもございません。お粗末さまで」

 無代が首をふりつつも、残さず平らげられた皿を片付ける表情、満更でもない様子だ。

 「……無代君。彼らから、私のことは聞いたかね?」

 「何をでございましょう、大統領閣下?」

 大統領が水を向けてくるのへ、無代が聞き返す。

 「『国を見捨てた大統領』、そう言っていただろう?」

 「そう申されれば、そのようなことをお聞きしましたような?」

 無代があからさまにとぼける。

 「彼らの言うことは本当だ。私は国と、国民を見捨ててしまったのだよ」

 大統領の言葉に、無代はあえて答えず、代わりに湯割りのおかわりを差し出した。大統領の視線が、もはや無代を見ていないことに、とっくに気づいていたからだ。

 『誰かに聞いてほしい』

 自分の話を。しくじりを。

 

 罪を。

 

 その相手に他でもない、無代という男を選んだことは大統領、何より大正解であったといえるだろう。こと他人の話を聞くことにおいて、無代以上の聞き手はそうそういるものではない。

 「レジスタンスどもの裏切りと、ジュノーへの攻撃は突然だった」

 ヒゲの大統領は、雪の上に座り込み、湯割りの器を両手に抱え込むようにして、その時のことを語り始めた。

 「レジスタンスのリーダー、ブロイス・キーン。ヤツが『ヤスイチ号』の同型艦である『セロ』を、こともあろうにルーンミッドガッツ王国から入手して、保護者である我が国に牙を剥きおった」

 ぐっ、と大統領の全身に力がこもる。

 「大統領府の上空に『セロ』を出現させ、あの光の剣を抜き放ち、無条件降伏を勧告してきたのだ……恐ろしい光景だった」

 「お察し致します」

 無代、実際に光の剣・16本のエネルギーブレード『ルシファー』の一振りに襲われ、命からがら逃げ延びた経験がある。武装鷹・灰雷の助けがあったとはいえ、本当によくも生き延びたものだ。

 「そもそも『対ルーンミッドガッツ王国レジスタンス』は、私の3代前の大統領が作った秘密組織だ。ヤツ、ブロイス・キーンの祖父が最初の頭を務めていた」

 大統領が遠い目をする。

 「ルーンミッドガッツ王国内部の権力争いに敗れたり、罪を得て国を追放された貴族や騎士たちを集め、強力な外人部隊を作る。その一方で、王国内部の機密情報を入手し、また内部工作の窓口にも役立てる目的があった。そして、それはうまく行っていた。少なくとも最近までは、だ」

 大統領の表情に苦味が混ざる。どうも大統領、気持ちが顔に出る性格だ。ただ、それが政治家として身についた『芸』なのか、元々の性格なのか、そこまではまだ無代にもわからない。

 「組織に軋みが生じたのは、クローバーと『ヤスイチ号』が亡命してきた、その直後からだった」

 「『クローバー船長』。そのお名前は、翠嶺先生からもお聞きしております」

 「うむ……翠嶺先生は、彼を信頼しておられたからな」

 「大統領閣下は?」

 「私もだよ、無代君」

 ヒゲの大統領が、初めて笑顔を見せる。

 「クローバー。彼には悲しみ、苦しみを乗り越えたさ強靭な心と、『ヤスイチ号』の無限の力に惑わされない冷静さ、誠実さがあった。だからこそ『ヤスイチ号』の指揮を預けていたのだ……だがヤツ、ブロイス・キーンは違った」

 大統領の目が暗くなる。

 「ヤツは『ヤスイチ号』が手に入った直後から、その力でルーンミッドガッツ王国を叩くべし、と主張してやまなかった。それどころかアルナベルツ教国も、世界の他の国々も平らげるべし、とね。明らかに、異形の力に飲まれていたのさ」

 「大統領閣下は、どのようなお考えでいらっしゃったので?」

 無代が水を向けるのへ、

 「バカバカしい。『ヤスイチ号』一個の力で世界征服など、子供の遊びだよ」

 ヒゲの大統領は、吐き捨てる。

 「圧倒的な力で『敵』を殲滅し、支配する。反抗するものがあれば飛んでいって、殲滅する。あっちで殲滅、こっちで殲滅。挙句に出来上がるのは無人の荒野だ。もし万一、支配がうまくいったとしても、99%の奴隷を1%の主人が支配する『国家』の一丁上がり。そんなもの、シュバルツバルト共和国の建国理念が許さん」

 国民主権。国とは、そこに住むすべての国民ものである。

 「ブロイス・キーンとは、だがそういう男だった。それでも『ヤスイチ号』がクローバーの手にあり、翠嶺先生の手足となって働いている限り、暴挙に打って出ることはないと思っていた」

 「その男が、こともあろうに『セロ』を手に入れてしまった、ということでございますね」

 「その通り。もはやヤツにはルーンミッドガッツ王国に対抗してきた先祖の意地も、保護者たるシュバルツバルト共和国の理念もない。……いや、ヤツには最初からそんなものはなかったのだ。ただ強力な力と、支配への欲求があっただけ」

 「いっそ分かりやすい『外道』で結構、というものでございますよ」

 「まったくだ。だが、その外道を野放しにしてしまった我が国の、私の責任は逃れられん」

 大統領の顔から、表情が消えた。そこで初めて無代は、この政治家の百面相が『芸』だと知った。

 「それなのに、私はヤツと戦わなかった。ヤツの降伏勧告の前で、私はどうしたと思う? 無代君?」

 「……」

 無代は答えない。答えてほしいと、相手が思っていないことは明白だった。

 「ジュノーの市民に向かって『ヤツの言葉に従え』、と指示したのだよ。軍にも『一切の抵抗をするな』と命じた。結果、軍は武装解除の上、すべての市民と一緒に『ハデス』岩塊に幽閉された」

 「……ですが、市民に犠牲は出なかった。そうではございませんか?」

 「だから、何だというのかね」

 大統領は無表情のまま。

 「私はね。ただ怖かったのだ。ジュノー市民に被害が出ることが、軍に犠牲が出ることが怖かった。『ヤスイチ号』と同等の力を持つ敵に、今のジュノーの戦力ではどうやっても手が出ない。そのことを知っていたから、ね」

 「……」

 「私はね、情けない大統領だ。彼らの言うとおりだよ。国と、国民を売り渡して、こうして自分だけおめおめと生き延びた」

 がぱ、と、すっかり覚めた酒をあおる。

 「大統領の資格など、最初からない男なんだよ、無代君」

 

 つづく

 

 

中の人 | 第十六話「The heart of Ymir」 | 14:51 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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