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第十六話「The heart of Ymir」(16)

 真っ直ぐに天を指した無代の指。そのさらに真上を、

 ばさり!

 巨大な羽を打って旋回したのは武装鷹・灰雷だ。今や全身に対人・対物用の重武装をまとった彼女もまた無代と、架綯と共に戦うつもりなのだ。

 「どうかしてるぜ、手前え……」

 イナバが毒を吐いたが、その言葉は明らかに、迫力に欠けていた。

 「まさか『神様の声が聞こえる』、ってクチかよ」

 狂人、そうとでも扱わなければ、収まりどころがない。だが残念、瑞波の無代はいたって、誰よりも正気だ。

 「神様と申される御方は、いささか遠くにおられるご様子で」

 無代は笑う。

 神様というヤツの声も、そしてその手も、人のもとへ届くには、いつだって遅すぎる。

 「手前に聞こえます声は神にあらず、アーレィ・バークの声」

 『必ず帰る』、その約束。

 

 「D1の声」

 『もう泣かない』、その誓い。

 

 「架綯先生の声」

 『俺はもう、ガキじゃない』、その叫び。

 

 「そして翠玲先生のお声」

 言葉にはならず、しかし確かな師弟の契り。

 

 「神でなく、人。手前がこの目で見、この耳で聞いて『よし』と信じた皆様の声こそ、天の声にございます」

 無代は、だから揺るがない。

 誰に雇われたというなら、それらすべての人々に、自分は雇われた。思えばプロンテラの宿屋で腐りきっていたあの日から、どれほどの声に、人に雇われてきたか。

 だから、もう迷わない。

 (畜生……!)

 イナバは、腹の中で唸り声を上げていた。。認めがたいことだが、この百戦錬磨の熟練技術者をして、無代という青年に『嫉妬』したのだ。

 この先に待つ困難を、事もあろうに『仕事』と、そして、それを『天から請け負った』と言い放つ。

 『男子一生の仕事』を得て、その道を迷いなく突き進む。

 職人ならば、男ならば。いや人間ならば、誰もが一度は憧れる。

 イナバとて、それは同じなのだ。

 「ところでイナバ様。この仕事、募集人数に限りはございません」

 無代がにこり、と、またひと笑い。

 「ひょっとして今、お手隙ではございませんか?」 

 なら、アンタも一口乗らないか。誘う無代の言葉は回りくどいが、もはや駆け引きはない。自分の言葉がイナバに、そしてハート財団の職人たちに響いている。無代にはそのことが、はっきりとわかっている。

 そう、無代にはわかるのだ。

 『行くべき道を求め、さまよう者』の姿と、苦悩が。

 だからこそ、わざわざ『仕事』という言い方で彼らを煽った。

 いつの間にか、戦車の中にいた職人たちも全員、外で無代の声を聞いている。その面々を、イナバがぐるり、と見渡しておいて、

 「……確かに、手は隙いてる」

 答えたイナバの声から、棘が消えている。

 「では?」

 「だがその前に、聞かなきゃなんねえことがある」

 イナバの表情、もはや鋭くはないが、しかし真剣。

 「雇われたというなら、アンタの報酬は? そして俺たちの報酬はどうなる?」

 無代の目を真っ直ぐに見る。

 「報酬の無え仕事はしねえ。ハート技研、創業以来の鉄則だ」」

 「ごもっともでございます」

 無代がうなずく。

 無報酬といえば美しくも聞こえるが、報酬のない『仕事』は職人を腐らせるだけでなく、雇い主をも腐らせる。

 『いい仕事』には、それに見合った『報酬』が不可欠。無代も、それを理解した上で、

 「では僭越ながら、まず手前の報酬から申し上げましょう」

 わざと真面目腐った顔で、

 「『コレ』でございます」

 

 『小指』。

 

 イナバ以下、ハート技研の職人たちが一瞬、ぽかんとし、

 「ぶはははは!!!」

 いっせいに笑い崩れた。

 「『女』ときたか、おい!」

 「はい。これが『飛び切りのヤツ』でございましてですね」

 わざと糞真面目な顔でつなぐ無代に、

 「ぶはははは!! そいつぁ確かに、命賭けたっていいや!」

 ばんばん、と手を叩いて大受け。が、まさかその『女』が『一国の姫君』とは、さすがに夢にも思うまい。

 ついでに、ばさり、と灰雷。なぜか無代の頭上を再び一回転し、戦車の砲身に戻る。

 「……で?」 

 イナバが笑いを消す。彼らへの報酬を示さねばならない。

 「これだけの人数が命賭けるんだ。安かねえぞ」

 イナバがわざわざ吹っ掛けてくるのは、決して意地悪ではないし、駆け引きでもない。

 職人の誇りと、覚悟がそうさせるのだ。

 沈黙。

 だがその時だった。

 「……?!」 

 びくん、と身体を震わせたのは他でもない、少年賢者・架綯だった。

 なぜなら瞬間、二人の男が同時に架綯に働きかけたのだ。

 イナバの目が、架綯の目を真っ直ぐに見た。

 無代の手が、架綯の背中を力強く押した。

 結果、どんぐり色の教授服に包まれた架綯の細い身体は、つんのめるように前に押し出される。

 目は、イナバの目を見つめたまま。

 「え……あ、あっ?!」

 少年賢者は、そして気づく。残念、出番には遅れたが、ここで自分で気づいただけ、若先生も成長したといえるだろう。

 そう、ここは彼の出番なのだ。

 「ええと、ええと、ぼ、僕が! ……いや、お、『俺』が!!」

 声も、身体も震えたまま、それでも。

 「俺が皆さんを雇……!」

 いや、違う。言い方が違う。

 (先生なら……翠嶺先生に!)

 

 「『お前たちを、俺が雇う』!!」

 

 がくがく、と崩れそうになる架綯の両肩を、ばん、と無代が叩く。

 「俺が雇う!!」

 上から叩かれたのに、崩れそうだった膝が、逆に伸びたのはなぜだろう。

 「雇うはいいが、金はあるんだろうな、先生?」

 「お金……?!」

 ぐっ、と詰まる。セージキャッスルからの給料はほとんど使わずに貯金してあるが、いかんせん助教授になってまだ日が浅い。何より研究以外に無頓着だった架綯、そもそも給料をいくらもらっているのか、それさえ知らない。

 それを承知の無代が、ここは助け舟。

 「『出世払い』では?」

 「……なに?」

 無代の言葉に怪訝な顔を向けるイナバへ、

 「手前の故郷の風習でございまして。『今は払えないが、将来必ず出世して大物になって払う』という」

 「『大物』、ときたか。どうなんだ、先生」

 イナバが架綯に視線を戻す。架綯の顔は、もう真っ赤。

 そして必死。

 「きょ、『教授』に!」

 懸命に絞り出した叫びに、しかし前後から、

 「足りねえな」

 「足りませんね」

 イナバと無代、二人のツッコミ。

 「……っ!!」

 架綯、真っ赤な顔に、涙まで浮かぶ。セージキャッスルの助教授だって、簡単に登れる地位ではない。さらにのその上の教授となれば、数いる研究者のなかで一握り。

 だが、それでも足りないと彼らはいう。

 しかし考えてみれば、それは当たり前なのだ。

 

 人の人生を、『人の命』を買うのだから。

 雇う方にも、架綯にも、相応の覚悟がなくてどうする。

 腹をくくれ。

 そして叫べ。

 

 「『大賢者』ぁあああっっ!!!」

 

 『大賢者』、それはセージキャッスルの長。そして架綯の師・翠嶺と並び立つ、と当代唯一の存在だ。

 魔法の頂点。少年は、そこまで駆け上がる。

 『男子一生の仕事』。

 叫びながら、指で真っ直ぐに天を指したのは無代の真似だが、その誓いは彼だけのもの。

 「……売った!」

 イナバの答えは短く。そして何よりも確かだった。

 「ハート技研一同、今より賢者・架綯の雇用となる。契約書は後日、双方の協議とする。よろしいですな?」

 イナバの顔に浮かんだ笑み。おそらく、背後の無代も同じ顔をしているはずだ。

 ちなみに架綯は気づいていないが、契約内容が『双方の協議』である以上、どちらかが欠ければ不成立となる。

 『生き残る』、それが前提だ。

 「よっしゃ、手前ら! クライアントからお言葉だ!」

 イナバが架綯の背後に、無代と並ぶ。

 架綯はひとつ、息を吸うと、 

 

 「仕事だ! かかれ!」

 

 つづく

 

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中の人 | 第十六話「The heart of Ymir」 | 13:11 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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