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第十六話「The heart of Ymir」(18)

 『キル・ハイルの自動人形(オートマタ)』

 それはハート財団のみならず、シュバルツバルドの職人・技術者にとって、まさに悪夢の別名だ。

 まずもって、自分の持つ技術を己の欲望のためにだけ使う、これがいけない。

 先人から継承した技術は、自分だけのものではない。いや、たとえそれが自分で開発した技術だとしても同じだ。

 技術とは、社会に役立てるためにある。

 これは民主国家であると同時に、世界有数の技術立国であるシュバルツバルド共和国の国是でもあるのだ。

 だが、キル・ハイルという男は違った。

 意中の女性を手に入れたい、他の男に渡したくないという邪念の一心で、己の技術を売り渡すことも、犯罪に手を染めることすらいとわなかった。

 シュバルツバルドの職人・技術者にとって許しがたい。

 怒りがある。

 と同時にもう一つ、そこに『羨望』があることも否定できない。

 職人・技術者ならば誰でも、他人の仕事を見て、それを己の仕事と比べることをやめられないものだ。ほとんど本能のようなものといってもいいだろう。

 その彼らがキル・ハイルの『仕事』を見れば、どうしても分かってしまうのだ。

 自分が及びもつかない、超高度の技術。

 そこに至るまでの、気の遠くなるような研鑽と試行錯誤。

 それを乗り越える精神力。

 執念。

 たとえそれが、邪な情念に支えられたものであったとしても、成し遂げた『仕事』のレベルの高さは否定しようもない。

 (悔しいが、凄え)

 そう思わないわけにはいかない。

 そして今、その恐るべき『仕事』が、群れとなって襲いかかってくる。それは二重の意味での絶望を意味する。

 「キル・ハイルの亡霊!」

 彼らがそう呼ぶ自動人形が、貯雪のトンネルを次々にくぐり抜けてくる。

 青を基調とした女学院の制服と、真っ白なニーハイソックスに黒い革靴。いずれもキル・ハイルが人形量産の隠れ蓑とした学園のものだ。

 本来なら、明るい春の日差しと、爽やかな風の中でこそ映える装いのはずが、今は雪解けの泥水で汚れ、頭にかぶるはずの青色のベレー帽も、とうにどこかにすっ飛んでいる。

 黒灰色の髪はざんばら。

 まぶたの存在を忘れたかのように見開かれた目は、人間離れした真円。

 両袖に咲いた花弁のようなフリルは、指が変形した戦爪によって内側から、無残にもズダボロに切り裂かれている。

 かんっ!

 伸びやかな足先で、革靴が雪を蹴る。

 かかかん、かん!

 トンネルから雪に着地した人形たちが、次々に革靴を鳴らす。

 自然で美しい、しかし強靭無比な機動。その二律背反こそ技術の粋と、技術者たちは知っている。

 畏怖する。

 「うぉおおお!」

 大統領親衛のロードナイトたちが、騎鳥に飛び乗って迎撃開始。槍と剣、武器こそ違え、そこは精鋭。

 ばん! ばつん!

 たちまち1対の人形が脳天を貫かれ、もう1体が胴体を袈裟懸けに両断される。と、同時に後方のハイプリーストからの支援魔法が2人を包み、半瞬遅れてハイウィザードの大魔法。

 「『ストームガスト』!!」

 ばきん!

 魔法で召喚された霊物質・エクトプラズムが、『極低温という現象を再現』しながら、綺麗な1列の発動線を作り上げる。そして次の瞬間、

 ばきばきばき!!!

 超低温の列は地面を南西から北東へ、大陸を押し渡る寒冷前線のように発動線を移動させていく。

 ばりばりばり!!!

 冷気に巻き込まれた自動人形が氷結し、北東方向へみりみりと押し込まれていく。見開かれたまま瞬きもしない目が、ばちん、ばちんとショート光を放つ。

 「うりゃ!!」

 ロードナイトの剣が閃き、氷ごと人形を両断。もう1体も槍で、床の雪へと縫い止められ動かなくなる。

 だが。

 「ダメだ、こいつら喰い切れん!」

 大統領親衛のハイウィザードがうめく。人形の集団を冷気に巻き込んで、しかし凍ったのは半数に満たない。霊物質による現象再現、この場合は超低温をキャンセルされたのだ。高レベルのモンスターや、人間でも修練を積んだ冒険者相手ならば起こりうる現象。

 「これがキル・ハイルの亡霊か!」

 シュバルバルド山脈の奥深く、彼らの学園に乗り込んだ軍部隊が、ほとんど打つ手もなく全滅させられたのも無理はない。

 限りなく人間に近い人形を指向したキル・ハイルの手は、いつか人間をはるかに超えた存在を作り出した。

 「退がれ!」

 戦車・バドンの拡声器から声。ヒゲの大統領。親衛隊が即座に現場を離脱。

 「……!」

 どぅん!!

 バドンが備える2門の主砲、その片方から砲撃。冷気の渦を抜け出した人形に、砲弾の一撃が襲いかかる。

 ばきばき!!!

 前後になった2体の人形に直撃、粉砕。両脇にいた1体も巻き添えで半身を砕かれ、さらに2対が腕やら足やらをもぎ取られる。さすがの破壊力。

 「いかん……数が多すぎる!」

 しかし、大統領はうめく。

 トンネルを抜けてくる人形の数が止まらない。まるで獲物に群がるアリのように無感動に、そして無慈悲に。

 かか……かか……かかん!!

 雪を蹴る革靴の音が無数に反響し、それだけでこちらの精神までおしつぶされそうになる。

 「退け! 20メートル!」

 大統領の指示。

 がじじじじじ、と、バドンのキャタピラーが雪を蹴る。両翼に詰めた親衛隊たちもすばやく後退。ハート財団の技術者や無代たちも、すでに一団となって後退中だ。

 そして空いた空間に、アリたちが詰め………

 ばぁん!!!

 突然、床の雪が爆発。前進してきた人形のスカートがめくれ上がる。もちろん、淫らな妄想などしている暇はない。爆風と炎が下半身から上半身へ、そしてざんばらの髪まで覆い尽くし、一瞬でまだらの炭となって崩れ落ちる。

 弓師スキル『クレイモアトラップ』

 召喚した霊物質に、火属性の爆発術式を仕込んで地面に設置する。いわゆる『地雷』だ。

 カプラ公安、エスナ・リーベルトの『仕事』である。

 ば、ば、ばばばばあん!!!!

 地雷の連続発動。親衛隊と戦車が人形と交戦している隙に、後方の雪中へ地雷を仕込んで回っていた。

 そして今も、

 「無代、そこどいて」

 「あ、申し訳ございま……」

 「どいて!」

 戦車のさらに後方、無代をどつく勢いで、新たな地雷原を敷設中だ。

 「カール、OKよ!」

 「後退、20メートル!」

 再び地雷原。

 「くそ、全然減らん!」

 イナバが歯噛みする。

 「こんな人形、どこから……!?」

 「キル・ハイル学園だろう」

 戦車の中から大統領。

 「レジスタンスのヤツら、あそこに封印した人形を、どうにかして制御する方法を見つけたんだ。そして私たちを見つけ出すために、地下に放った」

 複雑怪奇なジュノー地下の貯雪路を、人間の手で捜索するのは人手がかかりすぎる。レジスタンス組織も、もともと人数そのものは多くない。

 「あの……ごめんなさい」

 そこに小さな声を挟んだのは架綯だ。

 「それ、ボクです。人形の圧縮スクロールに、外部からハッキングして操作する術式を……」

 「……?!」

 「その、こんなことに使われるとは思わなくて……ごめんなさいっ!」

 無代のそばで小さくなった架綯を、全員がなんとも言えない顔で見たものだった。

 

 つづく

 

JUGEMテーマ:Ragnarok

中の人 | 第十六話「The heart of Ymir」 | 12:57 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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