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第十六話「The heart of Ymir」(19)

 「ごめんなさい! 賢者の塔の掲示板に『問題ノ解決ヲ乞ウ』の張り紙があって……それで」

 架綯は小さくなったまま。

 ジュノーのセージキャッスル・賢者の塔には、誰でも使える巨大な伝言掲示板があることで有名だ。

 この掲示板は、単純に誰かに伝言を残すだけではなく、不特定多数の研究者に対し広く知識を集めたり、問題の解決を依頼したりもできる。

 つまりは現代、インターネット上にある巨大掲示板とよく似た使い方ができるのだ。ちなみに、よほどの内容でない限り報酬や対価も不要。そこは世界中の魔法に関わる術者からの寄付金や、大国が拠出する莫大な補助金が流れ込むセージキャッスルだけに、賢者たちは基本、給料以外の報酬を受け取らない。

 その掲示板に『以下の圧縮スクロール術式に対し、外部から接続・改変・操作が可能な術式の構築』を依頼する張り紙が出されたのが先月。そして翌日には、もう架綯による回答の張り紙が、その上に重ねて貼られていた。

 目の前に術式が提示されれば即座に手を伸ばし、解析し、最適化し、任意に改変する。『呪文摘み(スペルピッカー)』こと架綯にとっては、ほとんど無意識の行動だった。

 逆に架綯先生、術式の使用目的などには、とんと興味がない。

 ましてそれがこんな風に悪用され、しかも自分たちを危機にさらすなど、まるで想像の範囲外だった、というわけだ。

 「若先生は、ご自分の御価値というものを、もう少し真剣に評価なさった方がよろしゅうございますね」

 無代が苦笑しながら、大きな手で架綯のどんぐり色の髪をぐりぐり。

 「はいぃ……」

 架綯。力あるものが自分の振るう力に対し、無関心・無自覚であるほど恐ろしく、また危険なことはない。

 「で、ということは若先生。あれをどうにかできるのでは?」

 「はい……?」

 無代の質問に、架綯がきょとん、とした顔を返す。言われたそばから無自覚なのが架綯らしい。

 「あの人形が、若先生の仕事で動いたなら、若先生がなんとかできるのでは?」

 「あ……?!で、できます! できます!」

 噛んで含めるように言われ、やっとつながった。

 「無代さん、人形を捕まえて下さい! 1体でいいです!」

 「また無茶を……!」

 なんとかしろ、と言ったのは無代だが、自動人形は無代より遥かに強力な敵。倒すことも、まして捕まえろなどと無茶ぶりもいいところ。

 だが、そこへ助け舟。

 「『ストームガスト』!」

 轟っ!

 大統領親衛のハイウィザードが、大雪嵐の魔法を発動。ちょうど真横から無代たちに接近していた自動人形が数体、極低温に巻き込まれて凍結する。

 「今だ!」

 「ありがとう存じます!」

 無代がハイウィザードの支援に一礼、架綯を連れて走る。霊物質・エクトプラズムの氷に閉じ込められた自動人形。

 「接続(アクセス)……!」

 架綯が自動人形の背中に手をかざす。同時に、

 ぶわあっ!!

 人形の背中から、半透明に輝く無数の魔法陣が、まるで爆発したような勢いで一斉に展開する。

 「うわ!?」

 未知の事態に、ハート財団のぎした地はもちろん、無代でさえ一瞬、仰け反った。人間を超える性能を与えらえた自動人形だけに、それを制御するための魔法術式も当然、膨大なものになる。

 それを巻物(スクロール)の中に超圧縮状態で収納し、自動人形に内蔵する技術こそ、キル・ハイルという狂気の技師が成し遂げた『仕事』の根幹だ。

 架綯は、その膨大な制御術s機を仮想の魔術空間内へ、無造作にぶちまけた。もしキル・ハイル本人が見たら卒倒しそうな光景だ。

 たとえばそれは、銃弾が飛び交う戦場のど真ん中で、コンピューターを分解して地べたに広げるような行為だ。しかも図面もなにもなく、ネジから集積回路の一つまでバラバラにしてぶち撒けた。もうそれは『分解』とかいうレベルではなく、単純に『破壊』と表現した方が正しいだろう。

 圧縮スクロールに納められた魔法術式を、固定の魔方陣もなにもない屋外で全展開するとは、そういうことだ。展開したとして、絶対に元には戻せないし、まして改造など不可能。

 

 『呪文摘み(スペルピッカー)』・架綯を除いては。

 

 あらゆる魔法呪文・術式を、概念(コンセプト)ではなく物体(オブジェクト)として、自分の『手』で直接操作できる反則級の異能。

 「こうして……こっちだ!」

 何かをぶつぶつとつぶやきながら、細い両手の指であっちを摘み、こっちを切り離し、こっちと結ぶ。時々、自分の手の甲をしゅっ、と指でこすり、そこから新しい術式を引き出す。呪文を制御するための『工具』や『金具』、『接着剤』にあたる術式を、皮下に仕込んだ魔方陣に収納してあるのだ。

 こうして仕事に夢中になっている時は架綯、さすが放浪の賢者・翠嶺に認められた一人前の術者の顔。

 「……できた!」

 架綯が全ての術式を、『まるで魔法のように』自動人形へと収納した、ちょうどその瞬間。

 バリバリ!! ばあん!!

 霊物質の氷が砕け、閉じ込められていた自動人形たちが動き出す。架綯が『摘まんだ』人形だけではない、他の人形も真円の目を不気味に光らせ、かぁんと革靴の底を鳴らす。

 「若先生、離れて!」

 無代が後ろから、架綯の教授服の襟を掴んでぐい、と引っ張る。

 「ぐぇ?!」

 壊れた人形のように四肢をバタつかせる架綯、その胸元へ戦爪。間に合わない!

 ぶん!

 だが空振り。

 がぎぃん!

 架綯を狙った自動人形、その顔面に、別の人形の戦爪がまともに食い込み、前進を阻んだ。

 ばちぃ! じゅん!

 顔面を砕かれた自動人形の頭部に火花が走り、がくん、と全身の力が抜ける。

 ばん!!

 さらにもう1体。破壊された人形の脇を通り抜け、架綯たちに襲いかかろうとした人形が、脇腹を真横から蹴り上げられ、いびつなブーメランの形になってすっ飛ぶ。

 がつん!

 蹴った足を地面の雪へ下さず、そのまま空中で翻し、もう1体の顎の下へ。

 ばきばきぶち!

 顎を蹴り上げられた人形の首が折れ、内部の人工筋肉と配線が、ちぎれた皮膚の下からブチブチとはみ出す。

 「おお?!」

 そこでやっと、人間たちが反応した。

 「若先生、あれは?!」

 「げほ、無代さん……離して」

 「あ、これは申し訳ないことを」

 襟をつかまれたままだった架綯が、無代の手にすがって苦しそうに体を起こす。

 「どうぞ、若先生」

 無代が手渡したのは棒付きキャンディー、ではなく、回復剤である『イグドラシルの種』に小さな棒を刺したもの。

 呼吸器の弱った『天井裏の魔王』が愛用し、そして今は架綯の愛用品となった回復アイテムだ。

 「もご……。人形の『敵味方判定』を書き換えました。僕らではなく、人形を攻撃します」

 がきょん!

 また1体、背中から戦爪を突き立てられて停止する。架綯が摘まんだ人形は、まだ他の人形が『敵』と認識していないらしく、やりたい放題だ。

 「よし、あれをもっと作りましょう!」

 「っても、あんまり余裕ないぞ!」

 無代に叫んだのは親衛のハイウィザードだ。事実、自動人形の数は増える一方で、すでに100、いや200は軽く超えている。もはや、どうやっても捌ける数ではない。

 1体、そしてもう1体の人形を味方にしたところで、潮目が変わった。今まで架綯の人形を無視していた敵が、反撃しはじめた。

 「『敵』認識されたみたいです」

 架綯が苦い顔。こうなると数の暴力、人形はたちまち人形に取り囲まれ、バラバラに破壊されていく。

 「壁まで下がれ! バドンの陰に入るんだ!」

 大統領の号令一下、戦車・バドンと一緒に、全員が走る。巨大な貯雪槽の端、岩盤がむき出しの壁に張り付くと、その前に戦車が停止、左右を大統領親衛が固める。

 架綯が摘まんだ人形たちは、まだ戦っているのかどうか、敵の集団の中に埋もれてわからない。

 「もう1体!」

 「無理だ! 隠れてろ!」

 大統領親衛の声も必死だ。もはや無代たちのリクエストに応じる余裕はない。この間にも敵の数は増え続けている。実際、あと1体や2体、味方の人形があったところで、焼け石に水だろう。

 「くそ……ん?」

 戦車の中から、ヒゲの大統領がひょい、と首を出した。手には双眼鏡。

 「どうなさいました、閣下?」

 「……」

 無代が戦車の後方から尋ねるが、返事はない。

 「閣下?」

 「敵がこちらを襲ってこない。戦っているようだ」

 「若先生の人形が?」

 大統領の言葉に、無代が戦車によじ登り、敵を透かし見る。貯雪槽の中は暗く、少しでも離れるともう暗闇だ。

 「投光器!」

 かっ!

 目もくらむ光の帯が、戦車から伸びる。その先。

 がぁん!

 1体の自動人形の首がちぎれ、遥か天井に届くほど高い放物線を描くと、

 どん!

 無代たちの眼前に落下した。下顎が上顎に完全にめり込み、首の人口骨がぐしゃぐしゃに引きちぎられている。

 「?!」

 無代たちが目をむく。そこへ、

 がしゃあん!!

 今度は人形の全身が吹っ飛んできて、戦車の脇腹に激突。両手と両足が、ちょうど『卍』の形のようにひしゃげ、

 どしゃん!

 戦車の側壁から雪の上に、ちょうど『逆卍』の形に落下して止まる。動かない。完全に壊れている。

 「これ……若先生の人形が?」

 「……いや」

 無代の質問に、双眼鏡を食い入るようにのぞきこんでいた大統領が首を振る。

 「あれは……あれは?!」

 があん! がん! がん!

 再び、いや三度、四度、『卍』型の人形が戦車に叩きつけられ、雪の上に積み重なる。その胸に刻まれた、くっきりとした靴の跡。

 女生徒の革靴とは違う、ヒールのある靴だ。

 キル・ハイル学園の自動人形ではない。

 ひゅん!

 自動人形の集団の中心から、何から飛んだ。素晴らしく高い放物線は、跳躍スキル『ノピティギ』。

 すとん!

 無代たちの前に立ったのは、すらりとした長身に、赤銅色に染められた髪と眼鏡、そしてカプラ服。

 「……グラリス?!」

 無代がつぶやく。

 「G16!」

 ヒゲの大統領が叫ぶ。

 

 16番目の、最後のグラリス。

 そしてキル・ハイルの闇が産んだ最後の、最高の人形が今、血の繋がらぬ姉妹たちと相対したのだ。

 

 つづく

 

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中の人 | 第十六話「The heart of Ymir」 | 14:38 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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