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第四話「I Bot」(4)
 首都プロンテラ。
 静たち3人の去った真夜中の街はしかし、未だに喧噪の中にあった。
 テロによって出現したランドグリスが、まだ片付いていない。
 出現したのは最終的に5体。
 うち3体は討伐されたが、まだ2体が残っている。1体はまだ西門、もう1体は噴水付近まで移動して暴れていた。
 漆黒の翼、闇色に燃える大槍。堕ちた戦天使が地上に振りまくのは祝福ではなく、死と破壊だ。ついでに、そっくりな姿の『ゴースト』が周囲を取り巻き、混沌をを増幅する。
 「…ちょっと多すぎたんじゃないのかねえ?」
 「…いえ、首都の冒険者は侮れません。これぐらいでないと陽動には…」
 「その割には、制圧に手間取ってるじゃないか?」
 通りを見下ろす高い建物。その屋根の上に、二つの人影がある。
 長身の女と、その後方に控える屈強な男のシルエット。男はパラディンのようだが、女は不明。
 「ま、『ファルコン』はうまく『ビニット』を連れ出したようだけど…任務完了の報告が遅いね」
 「…確認中です」
 『ファルコン』。
 『ビニットを連れ出した』の単語から、どうやら静やフールとやり合ったあの一団の事らしい。報告が遅いのは…静たちのせいだろう。
 では、この女がその首謀者なのか。
 「ああ、いけない。ランドグリスの取り巻きが露店街に流れそうだよ。クルト、西門の方は?」
 「…片付いたようです。マグダレーナ様」
 「結局、4体片付けたのかい? 『タートル』が?」
 「は。…あ、いえ。片付けたのは『ロビン』ですが…何というか『タートル』が街の冒険者をあっという間に組織化しまして…とどめを『ロビン』が…」
 『クルト』と呼ばれたパラディンが複雑な顔をする。成果に対してどう評価したものか迷っているらしい。
 というのも…。
 「『ロビン』は強行偵察チームだよね?」
 「…はい、マグダレーナ様」
 「で、『タートル』は後方および移動支援チームだよね?」
 「はい…ですが…あの男…『タートルリーダー』の指揮能力がケタ違いで…」
 「そんな事聞いてるんじゃないよ」
 『マグダレーナ』と呼ばれた女がピシャリと言う。
 「サポートチームがランドクリス4体、奇麗に片付けました。でもアタックチームの『イーグル』がたった1体にこのザマです、かね? 情けない」
 マグダレーナの視線が、大通りに向けられる。
 石畳や建物から発せられる魔法の灯火が、その横顔を浮かび上がらせた。
 見た目は40代後半。だが、同じく40代後半に見えるクルトと比べても、明らかに『風格』が違う。恐らく実年齢はそれより遥かに上だろう。
 そして魔法の灯火が照らし出す奇異がもう一つ。
 瞳の色だ。左右で違う。
 右目が紫、左目が蒼。
 オッドアイ自体は珍しくないが、この色の取り合わせは一言で言って『異様』。
 視線を向けられた者はことごとくこの世と切り離され、どこか未知の場所に立たされているような気分になる。
 「…ああ、もう駄目だ、決壊するね。『露店様』に迷惑かけちゃあ陽動もくそもない。その前に抑えるよ」
 マグダレーナの言葉通り、道を塞いでいた冒険者たちの陣が、ランドグリスの巻き起こした猛烈な地震によって、まさに決壊するところだ。
 その隙をついて、取り巻きのゴーストの強力なヒールが本体に降り注ぐ。
 決壊した連中も彼らなりに踏ん張ってダメージを与えたのだが、このヒールによってそれも無駄になる。
 「娘たちや」
 「…はい、お母様」
 マグダレーナの呼びかけに応え、ふ、と闇の中から声が返る。
 「悪いけど、頼りないガキどもの尻拭いだ。アタシがヤツの羽根をむしったら、袋叩きにしなさいな。『月影魔女』、状況開始だよ」
 「了解しました、お母様。『月影魔女』、状況を開始します」
 またふ、と声が消える。
 「さてと」
 マグダレーナが通りに視線を戻す。
 「久々に行くかね」
 わぁん! 
 マグダーレナの周囲の空気が震えた。
 じゃらん、と鳴ったのはマグダレーナのネックレス。ロングロープ型の長いそれに、隙間無くずらっとつながれているのは宝石ではない。
 ブルージェムストーン。ワープポータルの他、いくつかの魔法の触媒となる魔法石。
 首から外したそのネックレスを、両手の親指に引っ掛けて広げ、腕を伸ばして掲げる。
 そのスタイルのまま、両手に一つずつ石をつまむ。
 詠唱。
 その呪文は…呪文そのものは実は何の変哲もない。
 魔法によって空間と空間をつなぎ、人や物をこちらからあちらへ転送する。
 成りたての駆け出しでも使える、ごくごくありふれた呪文。
 『ワープポータル』
 マグダレーナの唇が動く。
 わぁん!
 空気が震え、魔法陣が出現した。通常の魔法陣に比べて『一巻き多い』、見た目も派手な魔法陣。
 そして本来ならば術者の足元に出現するはずのその魔法陣はしかし、あらぬ場所に出現した。
 暴れるランドグリスの『真上に一つ』。
 そして。
 ランドグリスの『真下にもう一つ』。
 回転する魔法陣に導かれるように、神秘の光輪が出現する。
 上下に二つの転送円。
 通常は不可能な『モンスター転送』が可能な特殊ポータルだが、その目的は転送そのものではない。

 ここで読者に一つ、質問を差し上げよう。
 二つのワープポータルが対象物を挟み込むように、例えば上下に出現した場合、対象物はどうなるだろうか。
 上の転送円に吸い込まれるか。
 それとも下に吸い込まれるか。

 …その答えは…。

 ランドクリスの身体が『歪んだ』。
 強力な冒険者たちの渾身の攻撃にも悠然と耐える、それこそ最強レベルのモンスターの身体が、まるで熱した飴のように歪んだ。
 漆黒の翼が、上の転送円に吸引される。
 真紅のマントをまとった身体が、下の転送円に吸引される。

 キァアアアアアア!!!

 モンスターの『悲鳴』が響いた。
 ワープポータルの転送力に『逆らえる者』など存在しない。その力場にがっちりと掴まれてしまえば、例え何者だろうが引きずり込まれ、転送されるのだ。
 ぶつん!
 ぞっとするような音が響き、石畳に真っ黒な血がまき散らされる。
 ランドクリスの羽根が『むしられた』。
 それと同時に身体と羽根が、それぞれ別々の転送円に吸い込まれる。
 そして直後にその場に出現。べしゃっ、と濡れた雑巾を叩き付けたような音とともに、別々に地面に落下した。
 転送先は『ここ』だったらしい。
 原理は極めて単純。
 二つのワープポータルで真ん中にあるものを挟み、転送の引力を使って引き裂く、それだけだ。
 だがその威力こそ絶大。
 いかなる怪力も、いかなる防御力も、空間そのものを歪曲させ転送する『力』に抵抗することは不可能だ。
 物質はもちろん、霊体であっても現界している以上、この力の影響を受けざるをえない。
 となれば理論上、この方法で破断できないものは存在しない。
 「…『転送断頭台(ギロチンポータル)』…お見事です。マグダレーナ様」
 クルトの、その絞り出すような言葉の響きにお世辞の要素はない。素直な感嘆。
 そして恐怖。
 この驚異的な術とて、この女性の力のほんの一端に過ぎない事を、彼は骨身に沁みて理解しているのだ。
 道の上では『引きちぎられた』超級モンスターが、それでも暴れようともがいていたが、街角から出現した数人の女冒険者がそれを取り囲む。
 アサシンクロスとチャンピオンが息を合わせ、ランドグリスの身体に飛び乗ると、真上から大砲並の威力を持つスキルを叩き込む。
 地面が揺れる。
 残ったメンバーがゴーストを引きつけ、露店街への侵攻を巧みに抑えている。
 いかな敵でも、ほどなく息絶えるだろう。
 状況からみて、先ほど『月影魔女』と呼ばれた一団。もう訓練とか熟練の域を超えた実力者揃いらしい。
 「…ふん。アタシや『娘』たちの手助けが要らないように、早くガキどもを鍛え上げておくれよ、クルトや」
 「…は」
 会話の流れから、どうやらクルトは若い兵士、あるいは士官の教官であるらしい。そして、この一連の騒動を引き起こしたのがその『生徒』。
 首都にモンスターを召還して冒険者たちを集め、その隙に『ビニット』を街の外に連れ出して殺害。召還したモンスターは暴れすぎないように、適当な所で自分たちで処理。
 そんなところか。
 「ま、『鍛える必要の無いヤツ』もいるようだがねえ?」
 「…は。あの…マグダレーナ様」
 「ん?」
 「『あの男』は、やはり帰さねばなりませんか?」
 「『あの男』? …『タートルリーダー』かい? その話は済んだはずだがね?」
 マグダレーナが苦笑する。だが、クルトは引き下がらない。
 「…あの男を自分の副官に下されば…いえ、いっそ自分があの男の副官でも構いません」
 「ちょっとちょっと、落ち着きなよアンタ?」
 「自分は真剣です。…もしそれが実現すれば10年、いえ5年で世界を制してご覧に入れます」
 「…そりゃまた大きく出たねえ」
 真剣だ、というクルトの目にはしかし、どこか別の光もある。
 狂気。
 マグダレーナの目は見抜いてしまう。
 (これほどの武人でも…いやだからこそ魅入られてしまう…か)
 『あの男』の逞しい巨体が脳裏に浮かび、マグダレーナの苦笑が深くなる。
 「アンタの気持ちはわかるよ、クルト。…アイツが故郷の天津でどれほど鳴らしてても、こっちじゃ無名。『タートル』なんてパッとしないチーム名に、仕事は支援…なのにたった半年でコレだ。アイツの名前と力を知らないヤツは、もういないだろうね」
 「はい」
 「だけどダメだ」
 マグダレーナがまたぴしゃりと言う。
 「アレを帰さなかったりしたら、アレの故郷の連中が何をするか分からん。…本当に何をするか分からないよ。『狂鉄』の現役時代は、アンタだって知ってるはずだ」

 『狂鉄(きょうてつ)』。あるいは『クレイジーアイアン』。

 それは瑞波の殿様こと一条鉄の、王国軍人時代のあだ名だ。
 「…」
 「狂鉄だけじゃない。『氷雨の冬待』に『潰しの善鬼』までアレの帰りを待っている。3人の義妹…『成功例(サクセス)』もだ。田舎者と嘗めると痛い目に会うよ、『一条』の連中をね」
 『冬待』は一条鉄の妻、巴の旧姓。彼女もまた王都の軍人だった。善鬼は鉄の副官。
 ならば、この会話に上がる『あの男』とは、もう疑うまでもなかろう。
 『一条流』。
 静の婚約者であり、無代の友である若者の、これが消息であった。
 「…しかし…」
 「まあ落ち着きな。…アレの気持ちだってあるだろう? アレの首に縄付けて、アンタの自由にできると思うのかね?」
 「…それは…」
 「無理に王国に繋ぎ止めずとも、アレの使い道はいくらもある。アレに天津を統一させて…それからでも何も遅くはないさね。まだ若いんだ…アンタだってね。」
 「…は…」
 クルトはやっと引いたが、納得していないのは明らかだ。
 「『一条流』…か。効きすぎる薬は毒、ってヤツだね、まったく」
 マグダレーナの苦笑が深くなる。
 (『狂鉄』のヤツ…大人しく差し出して来るから変だとは思ったが…まさかこうなると分かってて…いや、多分そうだろうね…)
 今度は若き日の一条鉄の顔、いや『ツラ』が浮かぶ。
 (あの『やんちゃ男』にもさんざんかき回されたもんだけど…この義息子はひょっとしたら、もっとタチが悪いかもねえ…)
 そんな内心の懸念と裏腹に、マグダレーナの表情は柔らかい。
 いやむしろ嬉しそうでさえある。
 鉄と流、二人の義親子の事を意外と気に入っているらしい。
 (鍛えてやっといて、その上に何もかも持って行かれました、なんてことにならなきゃいいけどね)
 「…で、『ファルコン』の報告はまだかい? そっちまでしくじったとか言わないだろうねえ…?」
 見下ろす大通りの石畳では、消滅したランドグリスが残したアイテムに、露店商たちが群がりつつある。強力なモンスターほど、その死に際しては貴重なアイテムを残す、という法則はまず外れない。
 「…ま、露店街への『迷惑料』だよ。とっといておくれ…」
 『テロ』とは別の喧噪に包まれて行く街に向け、マグダレーナが笑いながらつぶやく。


 「…寒っ!」
 ルティエ。
 通称『雪の街』。
 ワープポータルの転送円から飛び出したその街は案の定、雪だった。
 寒いのが苦手らしい速水が、僧服の前をかき合わせる。静とフールは平気。
 「…川のある方だから…南だよね。行こう!」
 フールのペコペコの鞍に器用に『姫座り』したまま、静が仕切る。ただ、静は女性にしては長身で、手足もすらりと長いため『姫役』としては少々ミスキャスト。
 鞍の半分を占領されたフールもいささか居心地が悪そうだったが、もう文句は言わずに手綱をさばいて走り出す。
 「あー! 待ってよ2人とも! ボク1人徒歩なんだぞー!」
 速水が文句を言いながらも悠々とついてくる。静もフールも突っ込まないし、見もしないけれど、速水の足は人間のそれとは別の物に変形している。
 ルティエの街の名物である、中央の大クリスマツリーまで来たところで、
 「…止まって!」
 静がフールにペコペコを止めさせた。
 即座に姫座りを解いて飛び降りると、だーっと走ってツリーに取り付き、あっという間にするすると登って行く。
 「…木登りの上手な姫様…ってホントにいるんだねえ。…おとぎ話の中だけか思ってたけど」
 速水が静を見上げながらつぶやく。
 フールも呆れたように静を見上げていたが、やがて静が降り始めると、ペコペコを操って木の根元に寄せた。
 登った時とほぼ同じ速度でするすると降りてきた静は、途中でフールを目視するとぴょん、と飛び降りる。
 すとん、と正確に鞍の上に降りるあたりはさすがだ。
 「いたよ。東の橋渡った、城壁の向こう」
 「…よし。静姫と、速水クンはここにいて。ボクが…」
 フールが言いかけるのを無視。静が鞍から地面にぽん、と降りると、
 「あっちゃん、アタシ連れて城壁越えられるよね? さっきみたいに?」
 「…え? あ、うん…」
 「アタシとあっちゃんが東の端から城壁越えて回り込む。フールは真っ当に橋渡ってくれれば、挟み撃ちにできる」
 言いながら腰の銀狼丸を抜き、目釘やら刃の状態やらを確かめている。
 フールが慌てて制止。
 「駄目だって。分かってないな。相手は訓練された『軍隊』だ。人を殺すための部隊だよ? キミが強いのは認めるけど、『剣士』のスキルだけじゃどうにもならない」
 「平気よ」
 静が銀狼丸をぱちん、と鞘に納めると、今度は腰のポシェットから『飛爪』を掴み出し、一つずつ吟味してから袖口の隠しポケットに収める。
 「…確かに『大陸のスキル』は凄い。魔法もね。…天津にアレが伝わった時は、みんな度肝を抜かれたそうよ…。でも、天津の武芸者だって指をくわえて見てたワケじゃない」
 飛爪を収納し終えた静は、次に小柄を数本、これも襟の後ろやらブーツの内側やらに仕込む。見た目の可憐さ、涼やかさに騙されてはいけない。
 この少女はまさに全身武器。
 「『大陸のスキル』には弱点がある」
 きっぱりと、少女は言い切る。
 そして最後に、胸の内側のポケットから小さなお守りを取り出すと、片手で軽く押し頂いてから元に戻した。
 フールと速水は知らないが、その中には静の家族たちの髪の毛と、そして無代との契約の血印が入っている。
 それは彼女の出陣の儀式。
 そして、これが彼女の初陣。
 「…」
 さすがのフールも諦めたらしい。ため息を一つ。
 「…分かった。でもこれはボクの問題だから、キミたちはあくまで手伝い。いいね?」
 「はいはい」
 静の応えは『ちっとも分かってませんし、分かる気もありません』としか聞こえない。
 顔をしかめるフールを見て、速水が思わず笑いをもらす。が、フールにじろりと睨まれて、首をすくめて黙る。
 「…『アンタの問題』とやらは後でゆっくり聞くとして…でも『ビニット』が殺されるって話なら、無関係じゃないわよ」
 ぐっ、と左手で腰の銀狼丸の鞘を押さえ、静が目を閉じる。
 フールと速水、二人の若者が見守る中、しばし不動の姿勢。
 そしてぱち、と目を開けると、
 「吹雪になるわ。もう間もなく…5分もない。行こう!」
 真っ先に駆け出す静に、若者二人が続く。今夜はもうかなりの距離を走っているはずだが、静のスピードは落ちるどころか…。
 「…どんどん速くなってるよ…しーちゃん…」
 「…身のこなしも切れてきてる…今朝はあそこまでじゃなかったはず…」
 期せずして、フールと速水が顔を見合わせる。
 自分たちが何か、とんでもない事に立ち会っているのではないか。そんな不安と疑念。
 そして高揚。
 「…『進化』してる…?」
 「…むしろ『羽化』してる…って感じかも」
 静を追いかけながら、二人が話すともなく言葉を交わす。
 疾駆する静の背中に、雪が舞う。
 その雪が一瞬、二人の若者の目に、広げた羽根の幻を見せた。
 純白の、幻の羽根。
 「…『戦精(シリオン)』…」
 フールがつぶやく。
 『戦精』。
 それは、生に迷った戦士たちを『あるべき戦場』へと導くという伝説の妖精。
 『あるべき戦場』。
 それは『死すべき戦場』の異名だ。
 ぞっ…。
 痛みも苦痛も知らないフールの身体に、小さな戦慄が走る。
 速水も無言。

 …貴方の死に場所が知りたい…?

 戦闘妖精の背中が誘う。

 …貴方が命をかけるべきものが知りたい…?

 街が吹雪に包まれていく。
 静の言葉の通り…が、フールも速水も、もう驚くとことさえない。
 このまま静の背中を追えばどうなるのか、考えようとしても思考が働かない。
 魅入られた。
 そうとしか表現できない何かが、二人の若者の心を絡めとっていく。

 …教えてあげる…

 …私が教えてあげる…
中の人 | 第四話「I Bot」 | 16:59 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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