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第十六話「The heart of Ymir」(30)

 ひゅう……

 グラリスNo8チャンピオンの耳元で風が鳴き、普段、グラリスを演じる時はヘアピースで隠しているショートカットの硬い髪の毛が、炎のように逆立つ。

 身体にまといつかせた光の玉は『気弾』と呼ばれ、自らの魔力を『気』という形で外部保存できる、いわば外付けの燃料タンクだ。

 数は5つ。

 そして彼女には『この状態でしか撃てないスキル』がある。

 

 『すべてのスキルの中で最強のスキルは何か、貴女は分かる?』

 

 G8チャンプの脳裏に、一人の女性の優しい声が蘇る。

 (……御師さん)

 頭を綺麗に丸め、鶴のように痩せた老女の姿が蘇る。その本当の名前は知らず、ただ『御師(おし)さん』、とだけ呼んでいた。

 G8に武僧・モンクの技を教え、そして覇者・チャンピオンへと導いた恩師。

 彼女は、かつてモンクの総本山『カピトリーナ修道院』において、技を極めた者にのみ与えられる『虎妃(トラノキサキ)』の称号を与えらえた女武僧だった。

 武人としても、また指導者としても優れた能力を持ち、多くの優秀な弟子を育て上げた。そのため、一時はカピトーリナ修道院において一派を為すほどの権勢を誇ったこともある。なぜなら強力な武人を安定して供給できる、ということは、現代でいうなら一種の軍需産業だ。

 結果、『強力な兵器』を求める各国の王家をはじめ、野望を持つ貴族、大商人、大ギルドの代表たちが、彼女の元に列をなした。そして同時に、

 

 『もっと強力な兵器を。他国が、他人が持っていない兵器を』

 

 と、求める声が高まる。資金も、人材も、勝手に集まる。

 そして何よりも彼女自身、

 

 『人はどこまで強くなれるのか』

 

 知りたい、という欲求を抑えきれなくなった。

 カピトーリナ修道院の外れに専用の修練場を新設し、弟子たちと共にそこに籠もった彼女は、さらなるスキルの開発に挑み、そして期待通りの成果を上げていく。

 新たな打撃技、新たな連続攻撃。

 周囲の敵を一掃する範囲攻撃。

 特筆すべきは人体に隠された『経絡』に着目し、身体の一点を突くことで治癒、強化、攻撃など様々な効果を発揮する『点穴』の発見。

 どれ一つをとっても、武僧の歴史を変える強大なスキル群に、周囲は熱狂した。

 だが逆に、彼女自身の不満は増していく。

 (これは過去の遺産の発展にすぎない)

 彼女の不満はそれだった。

 人体に『チャクラ』というものがある。

 医学・生理学的には全く目に見えないものでありながら、生命エネルギーの発生・伝達に関わる重要な器官だ。

 現状で知られているのは、背骨の基部から上に数えて7つ。この7つのチャクラを活性化させることで、人は体内に魔力・霊力・気力を生成する。

 そしてモンクの修行を積んだ者はもう一つ、最初のチャクラのさらに下、8つ目のチャクラを開眼させる。『獣(ケモノ)』のチャクラと呼ばれるそれは、人間がまだ人間に進化する以前、背骨の先に尾を持っていた時代に存在し、そして進化の過程で忘れ去られたもの、とされる。

 この8つ目のチャクラを開眼させることにより、モンクは人を超えた、野生の獣に匹敵する生命力を発揮し、呼吸法によって自ら大量の気力を生成できる。

 (だが、それでは人はいつまでも獣を超えられぬ)

 彼女の不満はそれであり、

 (人が人として、人を超えるためのチャクラ、『9番目のチャクラ』があるのではないか?)

 彼女の探求は、そこへと向かった。彼女は弟子たちに、

 『9番目のチャクラを探せ』

 そして、その隠し場所の最大の候補は、

 『脳』

 それだった。

 人が獣ではなく人である、その最大の所以がそこにあるからだ。彼女と弟子たちは瞑想と修行により、脳の奥へ、奥へと探求を進めた。

 だが、それが彼女にとっての命取りとなる。

 探求の途中、有力な弟子たちが一人、また一人と精神を病んでいったのだ。中には発狂し、自殺する者まで出た。

 脳を癒すという本来の役目を捨て、脳そのものにストレスを与えて反応を探る修行。『荒瞑想』と彼女が呼んだ修行に、彼らは耐えられなかった。

 そこへ、悪いことに弟子の一人が禁忌に触れた。功を焦った彼は師匠に伝えぬまま、スポンサーから密かに『提供』された『材料』を基に、口にできない『実験』も繰り返していたことが発覚したのだ。

 人体実験。

 結果、その汚名までも着せられた彼女は、『虎妃』の称号を剥奪され、カピトーリナ修道院を追放される。

 いや、正確に言えばその前に、彼女は自ら修道院を去っていた。非道な人体実験は彼女の知らない話だったが、その弁明すらしなかった。

 (発狂した者も、禁忌に手を染めた者も、結局は私のせいではないか)

 優秀な弟子たちを、自らの欲望のままに壊してしまった。そのことに気づいた瞬間、彼女はもう虎妃でも、武僧でもいられなかったのだ。

 (このまま朽ちて消えよう)

 そして尼僧は一人、大陸を放浪した。彼女の腕を見込み、その行方を捜すものは多かったが、

 (二度と『兵器』は作るまい)

 そう思い定め、最後にアルナベルツの荒れ山に庵を結び、隠れ住んだ。

 武僧時代の知識と技術を元に荒地を畑にし、寄ってきたモンスターを狩り、たまに里に降りてドロップ品を売り、わずかな金を得る。

 ろくに草も生えない荒れ山の中で、小さな姉妹を見かけるようになったのは、その頃のことだった。

 貧しい里の子らしい、見るからに痩せ、みすぼらしい服を着た姉妹。やや年長の姉が幼い妹の手を引き、山中をうろうろと歩く姿を見て尼僧は、

 (『おこぼれ拾い(ドロップピッカー)』か……)

 すぐさま察する。

 自分ではモンスターを狩れず、冒険者が通った跡をつけて歩いては、狩れれが拾い残したドロップ品を拾う、主に子供を指す言葉。

 むろん、差別語である。

 有力な冒険者ならわざわざ拾わないような、拾うだけ荷物の邪魔になる安価なドロップ品。だが貧しい彼らにとっては、それでも明日の家族の糧として十分だ。相手が子供なら、冒険者もあえてとがめず、『施し』として黙認する。

 (私がドロップ品を売りに来るのを見て、親に言いつけられたのでしょう)

 あのババアの後ろについて、おこぼれ拾ってこい、とでも言われたか。

 (……)

 義理はなかったが、しかしそこは元僧侶だ。弱い者がいれば、助けてやりたくなる。まして尼僧がモンスターを狩らず、ドロップ品を残さなかった次の日、姉の方の顔が無残に腫れ上がっているのを見せられては、なおさらだ。

 それが親の『手』と分かっていても、やはり助けてやりたくなる。

 (仕方ない)

 尼僧やがて、姉妹のために狩をするようになる。こんな荒れ山でも、奥へ行けばかなりの大物モンスターがいる。もちろん危険な相手だが、御察しの通り尼僧の敵ではない。

 それがしばらく続いたある日、彼女は姉妹に異常を見る。

 姉が背中に妹を背負い、ふらふらと歩いている。幼かった妹も十分に成長し、姉が背負っても足がにょきり、と下に垂れる。重さも相当だろう。

 『どうしました?』

 尼僧は初めて、姉妹に声をかけた。

 姉は、しばらく驚いたように目を見開き、目の前の痩せた尼僧を見つめていたが、やがて小さな声で、

 『……病気』

 そう答えた瞬間、姉の目に大粒の涙があふれ、

 『助けて……助けてください! 病気なんです! お願いします! 助けて!』

 『見せなさい』

 妹を地面に降ろさせ、胸をはだけて触診する。いや、するまでもなかった。

 妹は、すでに死んでいた。蘇生魔法で生き返らせるにも、とっくに限界時間を超えている。

 黙って首を振る尼僧に、姉は必死で、

 『だって、だって家を出る時はまだ……?!』

 『ウィレスの人体感染です。発症したら最後、短時間で死に至る。潜伏期間が2週間、その間に山のどこかで身体に入り込まれたのでしょう』

 尼僧はできるだけ冷静に言った。が、それは姉の救いにはならない。

 『昨日から具合が悪くて……でもお父さんもお母さんも、山に行け、って』

 姉は、涙さえ枯れた目で妹を見つめる。尼僧は、

 『治療は……』

 受けなかったのか、と聞きかけて、やめる。体内に入り込んだウィレスを浄化できる僧侶や冒険者が、あの貧しい里にいるわけがない。たとえいたとしても、そんな治療費は誰にも払えまい。

 『一番下のいらない子だから、って』

 姉の声は、もう絞り出すようなうめきと変わらない。

 両親が姉妹をモンスターが徘徊する山へ送るのは、必ずしもドロップ品を拾うためだけではない。『余った子供を処分するため』だ。

 両親が老いた時、自分たちの面倒を見させる子供は必要だ。貧しい家は子供の死亡率も高い、それゆえに『歩留まり』を考えて多くの子供を作る。

 しかし逆に、死亡せずに生き残りが多すぎても困ってしまう。

 目の前の姉妹は、まさにそんな現実の悲しい落とし子たちなのだ。

 『武術を、教えてください』

 妹の亡骸から目をあげた姉が、決然と言葉を吐いた。

 『あの家にいたら殺される。でも死にたくない』

 姉は、尼僧の前に身を投げ出した。

 『武術を教えてください!』

 もう二度と『兵器』は作らないと誓った、彼女の前で。

 

 『私に、生きる力をください!』

 

 かつて『虎妃』と呼ばれた尼僧の、最後の『弟子』。

 グラリスNo8チャンピオンは、このようにして誕生したのである。

 

 つづく

 

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中の人 | 第十六話「The heart of Ymir」 | 14:55 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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