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第十六話「The heart of Ymir」(37)

 「キョウ、先行しろ。動くものはすべて、動かなくしていい」

 「けふ」

 一条流の命令一下、女魔剣士・キョウの痩せた身体が廊下を走り出した。かあん! かん! という金属音は、彼女が引きずる魔剣ムラマサが、廊下や壁にぶつかる音だ。

 「参りましょう」

 続いて、流がマグダレーナを促す。といっても、自分は動こうとしない。マグダレーナとその親衛隊『月影魔女』に先行しろ、というのだ。

 言葉は丁寧だが、指揮権とリスク管理だけはしっかり握っているあたり、流らしいと言えるだろう。

 マグダレーナ、そんな流をひと睨みし、

 「行くよ」

 『月影魔女』を率いて、自ら走り出す。ここへきてグダグダ言っても仕方ない、と腹をくくっているのだろう。

 続いて一条流とタートルコア。こちらはいちいち口に出さずとも、流の指先一つ、顎の動きひとつで、まるで一つの生き物のように動く。

 「アクト」

 「イエス、リーダー?」

 副官のアクト=ウインドが流の側に寄る。お互いにしか聞こえない小声。

 「『月影魔女』との連携は考えるな。キョウを死なせないことだけに集中しろ」

 「イエス、リーダー」

 アクトがうなずく。連携無視、それはアクト自身も考えていたことだ。

 そもそも『月影魔女』とタートルコアでは、実力も成り立ちも、行動原理もまるで違う。

 子供時代にマグダレーナに引き取られ、その下で厳しい修行を積んだ魔女達の実力は、ルーンミッドガッツ王国軍ならエース級、王室親衛隊すら退けると言われる強者揃いだ。

 対してタートルコア。

 チームの精鋭、といえば聞こえはいいけれど、元々が支援任務を主とするタートルチームから、多少マシな人材を選んだ寄せ集めに過ぎない。それも、一条流という指揮官を護衛し、移動の便宜を図り、指揮の伝達をスムーズにする、という目的のためだ。

 もし『月影魔女』のような超人クラスと連携しろ、などと言われたら、

 (文字通り、お手上げだからな)

 アクトも胸をなで下ろす。もっともアクト自身はプロフェッサーとして、月影魔女に劣らない技量の持ち主であり、連携しろと言われれば不可能ではない。が、

 (どうにも、ぞっとしねえや。あの魔女ども)

 気乗りしないこと、この上ない。

 実際、今でもマグダレーナの背後にアサシンクロスがぴたり、と付いている。後方の流たちを信用していない証拠だ。

 (いいさ。俺たちは今まで通り、リーダーにくっついてくだけだ)

 アクトも、とうに腹をくくっている。

 父から『一条家の男に付けば、運命が変わるかもしれない』、そう言われて歩んできた道だが、もう変わるどころの話ではない。

 今や空を飛ぶ戦前機械(オリジナル)を乗っ取り、ルーンミッドガッツ王国の暗部を牛耳る女黒幕を配下にしよう、という勢いだ。

 (俺は何だ? アレか? モノホンの魔王にでも付いたのか?)

 アクトが、そんな妄想に近い自問に沈んだ、その時だ。

 「きひぃ!」

 先行した女魔剣士の奇声が響く。

 「キョウ、開戦」

 ほとんど反射的に、アクトがチームに戦闘開始を告げる。

 閉鎖された廊下の隔壁を切り破った、その先に敵が待ち構えていた。そこへキョウが躊躇なく飛び込んでいる。

 「ぃぃぃぎ!」

 細身・長尺の魔剣『大水蛇村正(オオミズチムラマサ)』が、ほとんどデタラメとも見える太刀筋で暴れ回り、そのたびにじゃっ、じゃっ、と血しぶきが舞う。

 廊下の白い床や壁、天井が赤黒く染まっていく。

 カーン、カーン、というバリア呪文の発動音が響いている以上、敵にも備えはあったはずだが、キョウの殺戮は止まらない。

 よく聞けば、バリア呪文の発動音にカカカカカ、という短い連音節が混じるのに気づくはずだ。あの浮遊岩塊『イトカワ』の戦いで、グラリスNo12チェイサーが、敵のバリアを手の指で連続して叩くことで、バリアの耐久力を削り取ってしまう、通称『モロク撃ち』という技法を見せた。

 キョウが使う技もそれに近く、刀身がバリアに接触した瞬間、腕と肘に闘気を集めて骨伝導衝撃波(ボーン・ソニック)を発生させ、刀身を細かく震わせることでバリアを『削る』。

 闘気を操る剣士系のスキル、バッシュやマグナムブレイクの変形技で、キョウのオリジナルスキルだが、文字通り彼女がキレている時しか使えないため、名前もなければ模倣も不可能。

 瞬く間に3人ほどが斬り伏せられる。そのままキョウが暴れまわって決着、と思われた、だがその時だ。

 からん。

 妙に乾いた音を立てて、キョウの魔剣ムラマサが床へ落ちた。

 「ふえ……?」

 瞬時、完全に輝きを失っていたキョウの目に知性が戻り、同時にぼんやり、と立ち尽くす。

 「あ、やべ!」

 アクト。廊下の後方からだが、状況は見えている。というか、魔剣士と化したキョウは、間違っても愛刀を落とすことはない。それが落としたということは、

 (『ストリップウエポン』だ)

 それしか考えられない。敵が持つ武器を、持ち主の意志に反して剥ぎ取ってしまう悪漢系のスキル。魔剣の力で戦う、キョウの泣き所だ。

 「キョウ、伏せろ!」

 叫びながら、アクトが身振りでタートルコアのハイプリーストに合図を送る。支援と保護の魔法を贈る。

 だが間に合わない。

 ばつん!

 キョウから武器を奪ったチェイサーからナイフ、さらにロードナイトが大ぶりの剣を叩きつけてきた。

 「げひっ!」

 キョウの細い体が壊れた糸人形のように吹き飛び、壁に叩きつけられる。

 壁に大輪の血の花が咲く。

 「『ヒール』!」

 タートルコアのハイプリーストから回復呪文。まともに考えれば即死級のダメージだが、キョウが咄嗟に両腕を身体に巻きつけ、二つの刃を辛うじて防御したのが見えた。

 両腕はちぎれて落ちたが、まだ死んではいない。

 ぼぅぅ……

 キョウの身体を回復魔法の光が包み、千切れたばかりの腕がふわり、と宙に浮いて元の位置に癒着する。ちなみに千切れた部位が魔法で焼き尽くされ消失した場合や、魔法の効果が届かないほど遠くにすっ飛んだ場合は、千切れたところから新しい部位が『生えてくる』。

 神の恩寵は結構だが、効果は意外と雑なのだ。

 回復したキョウに追撃。だがマグダレーナと『月影魔女』が追いついた。

 「ふっ!」

 マグダレーナの戦槌。神器か、あるいはそれに匹敵する逸品だろう。対するチェイサーは、再び『ストリップウエポン』、いや鎧も装備もすべて剥ぎ取る『フルストリップ』か。

 だがキョウに気を取られた分、一瞬対応が遅れた。マグダレーナにとってはそれで十分。

 どん!

 重く巨大な戦槌を、まるで細剣(レイピア)のように、腕をまっすぐに伸ばす遠撃ちで相手の胸板へ。

 「がふっ!?」

 一瞬で心臓と肺を叩き潰され、気管を逆流した血が口からあふれる。ぐるん、と白目を剥き、死亡。

 残りの敵も『月影魔女』たちにより、ほとんど鎧袖一触で排除される。蘇生・回復の暇も与えないのは、対人戦の基本だ。

 「ぐぅ」

 キョウが立ち上がる。ムラマサは、なんと口にくわえている。ストリップウエポンで武器を奪われると、一定時間は神経系が混乱したままになり、武器を持つことができなくなる。

 だからといって口にくわえるというのは異常。といってキョウ、それもダメなら自分の身体に刺して持ち歩きかねない。

 「マグダレーナ様、キョウがこの有様ですので、隔壁をお願いできますでしょうか?」

 後からのうのうと追いついてきた流が、マグダレーナに声をかける。隔壁を斬るキョウが武器を奪われているので、マグダレーナの戦槌で破れ、というのだ。だが、

 「私が」

 『月影魔女』のチャンピオンが進み出る。最大級の破壊スキル『阿修羅覇王拳』、チャンピオンにはそれがある。が、それより何より、母とも慕うマグダレーナが流の命令下にあるのが気に入らないのだ。

 阿修羅で、隔壁が開いた。

 さらに待ち伏せがあるかと警戒したが、もう誰もいない。

 「あそこか、キョウ」

 廊下の突き当たり、隔壁ではない扉がある。

 「うう」

 長大な刀身を横咥えにしたまま、キョウが首を縦に振る。

 「もう刀を持てるだろう。斬れ」

 「うく」

 キョウが言われるままにムラマサの柄を握る。ぎゅう、と握りを確かめ、

 「くひ」

 唇の両端を耳まで釣り上げる狂喜の表情。

 「ひびぃ!」

 ムラマサが宙を駆け、後からキョウの身体が飛び、扉が切り裂かれる。扉の向こうは薄暗い、だが奇妙な燐光があちこちに瞬く部屋。

 扉の正面に、拘束されたままの翠嶺がいた。

 流が近づこうとして、いったん止まるとタートルコアの女ハイプリーストを手招き。彼女が翠嶺の箝口具を外すのを待つ。

 「人が悪いくせに、そういう気遣いはできるんだね」

 「……何かおっしゃいましたか?」

 マグダレーナが茶化すのを、流が知らないふりをする。長時間、箝口具を噛まされた翠嶺が、意図せずあふれた唾液で汚れている。彼女に無用の恥をかかせぬための時間だ。

 「遅いぞ、一条の御曹司」

 部屋の中から声がかかった。入って良い、という合図だ。

 「お待たせいたし、申し訳ございません、翠嶺先生」

 流があらためて、その巨体を室内に入れる。

 翠嶺、既に他の拘束具も外され、長椅子に横坐り。

 「手を貸せ。足が痺れて立てん」

 「承知つかまつりました」

 言われた流、だが手を貸すどころか太い両腕を差し出し、翠嶺の身体を抱き上げる。いわゆる『お姫様抱っこ』だ。翠嶺は長身だが、流がそれを上回る巨体のため、素晴らしくバランスが取れている。

 鎧姿の巨漢が、緑の髪の美女を抱き上げる様は、まさに神話の1ページ。

 「お初にお目にかかる。放浪の賢者殿。ルーンミッドガッツ王国元老院付、マグダレーナ・フォン・ラウムと申す」

 マグダレーナが進み出て、名乗る。元老院付とは元老院直属、ぐらいの意味だが、王国内における彼女の地位は、そんな曖昧なものに止まらない。単なる飾りである。

 「セージキャッスル第一席、放浪の賢者・翠嶺だ」

 セージキャッスルの第一席は大賢者の席だが、翠嶺がセージキャッスルに帰還している間は第一席を彼女に譲る、というのが慣例となっている。

 

 千年を生きた『戦前種(オリジナル)』。

 戦前種を模して作られた『完全再現種(パーフェクトリプロダクション)』

 

 2人の女性が顔を合わせたのはこれが初めてのことだった。

 

 つづく

 

JUGEMテーマ:Ragnarok

中の人 | 第十六話「The heart of Ymir」 | 14:51 | comments(1) | trackbacks(0) | pookmark |
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posted by - ,2017/05/10 11:47 PM










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