10
--
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
--
>>
<<
--
RECOMMEND
RECENT COMMENT
MOBILE
qrcode
OTHERS
(c)
このページ内における「ラグナロクオンライン」から転載された全てのコンテンツの著作権につきましては、運営元であるガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社と開発元である株式会社Gravity並びに原作者であるリー・ミョンジン氏に帰属します。 © Gravity Co., Ltd. & LeeMyoungJin(studio DTDS) All rights reserved. © 2010 GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved. なお、当ページに掲載しているコンテンツの再利用(再転載・配布など)は、禁止しています。 当ページは、「ラグナロクオンライン」公式サイトhttp://www.ragnarokonline.jp/(または、ガンホーゲームズhttp://www.gungho.jp/)の画像(またはテキスト)を利用しております。
ro
ブログランキング
にほんブログ村 ゲームブログ ラグナロクオンラインへ にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
ブログランキング
LATEST ENTRY
CATEGORY
ARCHIVE
LINKS
PROFILE
SEARCH
<< 第十六話「The heart of Ymir」(37) | top | 第十六話「The heart of Ymir」(39) >>
第十六話「The heart of Ymir」(38)

 翠嶺とマグダレーナ、2人が顔を合わせた時に何が起きるか、そこにいる誰もが危惧し、あるいは恐れ、あるいは意地悪い期待を抱いていた。

 が、予想に反し、2人とも特にこれといった反応は示さない。

 お互いの名を名乗り、一瞬だがお互いの目を見つめて、反らす。起きたことといえば、それだけだった。

 「一条の御曹司、状況を」

 流の腕に悠々と抱かれたまま、翠嶺が質問する。

 「どうぞ私のことは『流』と」

 流、前置きしておいて、

 「本艦は飛行船『マグフォード』と交戦、何らかの手段で返り討ちにあい、機能に異常をきたしたようです。結果、我々は脱出できました」

 「『マグフォード』が無事だったか」

 翠嶺の表情がぱっ、と明るくなり、そして一瞬だけ、異質の思考に囚われたように固まる。

 「……まあ予想はしていたが、嬉しい知らせだ」

 そんな翠嶺の表情を、流は見逃さない。

 「本艦、もしくは『マグフォード』について、何か思い当たることがおありでしたら、ご教示願えれば幸いに存じますが?」

 「む」

 流の質問に翠嶺、

 「『マグフォード』には、戦前兵器(オリジナルウエポン)の備えがある。恐らくは、それだろう」

 わずかな思考の後、答えた。賢者の塔にとっての機密事項ではあったが、今、それを隠すのは得策でない、と判断。

 「戦前兵器とは?」

 流の目が光る。同時に、マグダレーナの表情も微動。

 「『エクソダスジョーカーXIII』。聖戦直後、飛行船番長・鹿頭のペルロックが使っていた巨銃だ……が、もちろん実戦を想定したものではない。航海の無事を祈る、お守りみたいなものさ」

 翠嶺の説明、後半はマグダレーナに聞かせるための『弁明』である。賢者の塔の権威をバックに、国境も航路も無視して飛行することを許された『マグフォード』、それに武器が積んであったとなれば、ルーンミッドガッツ王国のみならず各国にとって、明らかな信義違反となる。

 「実際に使用するとなれば、一発撃つだけでも困難を極める。『大木は日陰の他に役立たず』だよ」。

 ことわざ入りの弁明は賢者らしいが、ごまかしには違いない。

 「だが、撃てた」

 マグダレーナが突っ込む。

 「もし撃てた、とすれば」

 翠嶺が微笑で受ける。ついでに前提を微妙にぼかしている、意外にクセモノだ。

 「撃てたとすれば、今回は特別だ。『マグフォード』は、シュバルツバルドの浮遊岩塊に幽閉されていたカプラ嬢たちを救出する任務を帯びていた。船の船長は『提督』アーレィ・バークだ。彼女たちを救出し、戦前兵器の運用を託した」

 翠嶺が目を閉じ、流の太い腕に軽く頭をもたせかける。

 「この『セロ』は攻撃を受けても、そのダメージを相殺する特殊な装甲を持っている。現代の人間がこれを壊すのは『奇跡』だ。が、『マグフォード』とカプラ嬢たちがタッグを組み、あの巨銃を使いこなしたならば、不可能ではなかろう」

 以上、説明終了、と言わんばかりに、翠嶺が両手を豊かな胸の前に組む。

 長いエメラルドの髪と、同じく緑と青を基調にデザインされた薄手の教授服がさらり、と揺れる。

 巨漢の流に抱かれた姿は、本当に森の精霊(ドリアード)もかくやの美しさだ。

 「……まあ、銃の件はいずれにしましょう」

 マグダレーナがクギを刺しつつも、撤退。今これ以上、翠嶺を追求したところで大した利益はなく、時間も惜しい。しかも加えて、流がやんわりと視線を向けてくる。

 (余計なことは聞くな)

 そういうことだ。

 (……あー、もう!)

 マグダレーナは内心、舌打ち。

 その時だ。

 ごぅん……。

 『セロ』の船体を、下から突き上げるような振動。

 「着底したな」

 翠嶺が目を開け、つぶやく。

 「もう動けない、と?」

 「いや、そうではない」

 流の質問に、しかし翠嶺は首を振る。

 「装甲のダメージが限界を超え、飛行に支障が出たために着底した。が、時間が経てばダメージは中和される」

 「中和とやらにかかる時間は?」

 「正確にはわからんが、長くはない。この船が姉妹艦の『アグネア』……ヤスイチ号とジェネレーターの出力が同じ、と仮定して……30分はかかるまい」

 「承知」

 それを聞き、流が背筋を伸ばす。マグダレーナと月影魔女、タートルコアの面々を見回し、

 「戦闘続行だ。この船を乗っ取る……翠嶺先生、ご協力願えますか?」

 「よかろう。ただし」

 翠嶺が流の目を見る。

 「あくまでこの世界の平穏を願うゆえだ。この船を私利私欲に使うことは、誰にも許さん」

 「……この私が私利私欲に走る、と?」

 流が、いっそ笑いを含んで問い返すのへ翠嶺先生、真面目な顔で、

 「ああ。なにせ、あの子の息子だからな」

 容赦なく返答したものだ。

 「母のことを……?」

 「勘違いするな。お前の母は懐かしく、可愛い弟子だ。……だが」

 「だが?」

 「それとこれとは、話が別だ。何者かの野心のため、聖戦時代の力を現代の災いにしてはならぬ。それはあの時代を生き、そして今を生きる戦前種(オリジナル)、つまり私の義務だ。生きる理由と言ってもよい」

 「……」

 さすが放浪の賢者・翠嶺、伊達に一千年を生きていない、と言うべきか。気の遠くなるような歳月に裏打ちされた揺るぎない信念に、さしもの流も返す言葉を見つけられなかった。

 「大義であった」

 翠嶺は言い捨てると、流の腕からするり、と抜け出す。

 「ご無理をなさっては」

 「よい」

 とんとん、と履物を直し、すっく、と流の巨体に相対する。

 「助けてもらった借りは忘れん。『セロ』の奪取に手を貸してもよい。だが、お前の野心は捨ててもらう。この力は誰かが、あるいは国家が自由にしてよい力ではないのだ」

 「その約束はできかねます」

 流の顔から、表情が消えている。

 「我は天津鎮北・瑞波武士。まして頭領に生まれついたこの身なれば、奪るは必定。いわば……『生きる理由』」

 一条流、言い返した。

 奪る。

 人を、田を、畑を、金を、女を、国を。

 

 夢を。

 

 ばちん。

 流と翠嶺、2人の視線がぶつかり合う。千年の賢者に、若き武士の目は、しかし負けてはいなかった。

 人も畏れる森の神鹿を、去年生まれた狼の子が喰って悪い、と誰が決めたか。

 「……ちっ!」

 断じて美女賢者がしていい顔ではない、盛大なしかめ面で舌打ちし、退いたのは翠嶺の方だった。

 「お前の母……巴といい、あの無代といい、アマツ人というやつは皆こうなのか? なぜ人の話を聞かん!」

 「それは心外!」

 さっきまで翠嶺相手に一歩も退かなかった流が、なぜか血相を変えて、

 「拙者、母よりよほど素直にござる。まして無代の石頭ずれと比べられては!」

 大真面目な顔で、なぜか武家言葉まで動員して反論したものだ。

 これには翠嶺もぽかん、と口を開け、やがて諦めたようにぶすっ、と頬をふくらませると、

 「もう知らん! 勝手にしろ!」

 腹いせにげしっ、と流の足を蹴っ飛ばすと、ぷい、と横を向いてすたすた、と部屋を出てしまった。なお、無代のことが2人の話題に上るのはこれが初めてなのだが、無残にもスルー。

 流にしては珍しい、これ以上ないほどの交渉失敗。

 「……振られたな」

 マグダレーナが、なぜか妙に嬉しそうに突っ込む。

 それがツボったらしく、全員がぶほっ、と吹き出す。

 「時間がない。いくぞ」

 スルーして指示を出す流の声にも、いつものキレがない。

 ただ一条流、その表情は決して苦くも、暗くもなかった。不思議なことである。

 あるいは彼にとって、こうして本気の本音でぶつかり合い、お互いに退かない中にも理解を深める、そんな経験が貴重で、ひょっとして楽しいものであったのかもしれない。

 いずれこの2人、瑞波の国益と賢者の塔の公益を巡って衝突を繰り返し、間に立つ無代を悩ませ続けることになるのだが、これはその第一ラウンドであった。

 

 つづく

 

JUGEMテーマ:Ragnarok

中の人 | - | 13:56 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment









Trackback
URL: