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第十六話「The heart of Ymir」(39)

 「それと、言い忘れたがな」

 翠嶺が、ひょいと部屋の外から顔をのぞかせ、

 「お前の義妹、一条香もこの船に囚われている。おそらく、この部屋の奥だ」

 ぶっきらぼうに告げる。

 「ありがとう存じます」

 礼を言う流だが、声は硬く、そして動こうともしない。

 「いいのか、連れて行かなくても?」

 「構うな、と申しておりました」

 「申し……?」

 流の言葉に、翠嶺が首をかしげる。

 「我が義妹は、常にはない力を持っております。時には人の口を借りてしゃべることも」

 「……なるほど」

 翠嶺が合点する。香の力、『鬼道』のことは、彼女も心得ている。

 「だが、本当にいいのか?」

 「構いません」 

 流は微動だにしない。

 義妹と同じく超感覚を持つキョウが、翠嶺の気配と共に『船の後方に大きな力を感じる』と告げていた、それが香のことだったのだろう。だが『霊威伝承種(セイクレッド・レジェンド)』の力を色濃く受け継ぎ、未来視さえ可能にする義妹の言葉は、瑞波の戦人(イクサビト)にとって神託と同様だ。

 「ふーん」

 翠嶺が鼻を鳴らし、

 「時間がない。先に行く」

 ひょい、とまた顔を引っ込め、かつかつと廊下を歩き出す。

 「お待ちください、翠嶺先生」

 「……」

 巨体を部屋の外に滑り出させ、流が追ってくるのを、翠嶺は無視する。が、流も構わず、

 「ご無礼」

 「ちょ……?!」

 その丸太のような巨腕を伸ばし、再び翠嶺の身体を抱き上げたではないか。

 「何をする?!」

 血相を変える翠嶺に、しかし流は無表情のまま、

 「お召し物が汚れます、先生」

 平然と答えた。

 見れば確かに、廊下の先には流たちが倒したレジスタンス兵の死体が転がり、無残な有様だ。特にキョウの魔剣・ムラマサやマグダレーナの戦槌を食らった者は、もはや人の形を留めていない。

 廊下や壁はもちろん、天井まで含めて血と肉の海だ。

 「あたしはいいのかい、流や?」

 後ろから意地悪く聞いたのはマグダレーナ。戦槌を肩に担ぎ、軽装とはいえ鎧をまとった尼僧兵の姿は、もちろん他人の気遣いが必要とは見えない。

 母の恩師である翠嶺を丁重に扱う流に、同じ女として嫉妬、というわけでもあるまいが、茶化すぐらいの気持ちはあったろう。

 ぴた。と、流の巨体が止まり、くるりと振り向く。そして、

 「失礼」

 「?!」

 両腕で抱き上げていた翠嶺の身体を、軽々と片手に抱き変えるや、つかつかとマグダレーナの側へ歩くと、

 「お……ま、待ちな、こら?!」

 慌てるマグダレーナの身体を反対の腕で、これも軽々と抱き上げてしまった。

 「ば、馬鹿! 冗談だ! 降ろしな!」

 「お静かに。暴れられますと、抱き具合がよろしからず」

 「な……?!」

 言葉だけ聞けば、妙な誤解を招きかねない。が、言っている流は平然たるものだ。

 双子を抱えた父親よろしく、といっても抱いている相手は2人とも成人。マグダレーナこそ、やや少女じみた体躯とはいえ、武装を加えれば重量も十分だ。

 それを片手で1人ずつ抱き上げ、すたすたと歩き出す。呆れた腕力、というか、もはや怪力といって差し支えない。

 じたばたしていたマグダレーナだが、一瞬、反対側に抱かれた翠嶺と目が合い、

 「……」

 「……」

 お互い、苦笑いで肩をすくめると、大人しくなった。

 じゃり、と流の足が血と肉をかき分ける。確かに、ここを歩くのはぞっとしない。タートルコア、月影魔女の猛者たちも、足取りは慎重だ。違うのは

 「ひゃひ」

 嬉々として先行するキョウぐらいである。

 「流」

 翠嶺がつぶやくように、

 「私の言い方が悪かった」

 まだ不機嫌な表情ながら、謝罪した。

 「……いいえ。こちらも感情的になりました。武士にあるまじきことです。申し訳もありません」

 流も謝罪を返すが、こちらの表情にも笑顔はない。

 お互い、決して相入れぬ場所があることは確認済みなのだ。

 「船を悪用されてはならぬ、という先生のご懸念はごもっとも」

 流が口火を切る。どうでもいいがこの男、人間2人を抱えて歩きながら、息も切らさない。

 「ですが、少なくとも自分は、あのプロイス・キーンとやらに比べれば千倍もマシ、と心得ます」

 「それは認めよう」

 翠嶺が即座にうなずく。

 「というか、アレより下は探してもおるまいがな」

 「ごもっとも」

 けちょんけちょんである。

 「では流。これ以上、この船をアレの支配下に置いてはおけない。その点では一致できるな?」

 「承知」

 「しかと?」

 「武士に二言はござりませぬ」

 「……聞け、流」

 翠嶺が身じろぎし、身体を床へ降ろさせる。既に血の海は過ぎ、マグダレーナも続く。

 「私は聖戦を見た。『人類が勝った』、それは嘘だ」

 翠嶺が流の目をじっ、と見上げる。

 「嘘」

 「そう、嘘だ。この話は、初めてする」

 流から目をそらさず、翠嶺は語る。

 「異界からの敵は、あまりに強大だった。人類の抵抗は、ほとんど意味をなさなかった。ただ一部の人間がうまく身を隠しながら抵抗し、その間に敵が去った。そして辛うじて絶滅を逃れた。それだけだ」

 「敵が去った?」

 「飽きたのだろうさ」

 「……」

 流は沈黙するしかない。

 「だが、それでも人類が生き残れたことには理由があった、と私は思っている」

 「理由? それは?」

 「皆が力を合わせたから、だ。……別に子供の説教ではないぞ」

 翠嶺は真剣な顔で、

 「あの時だけは、国家も、人種も、性別も、年齢も関係なかった。残された者たちは1人残らず、我欲を捨て、生き延びるために協力した。いいか、1人の例外もなく、だ」

 ふっ、と翠嶺の表情がくずれかかり、すぐに戻る。

 「あの時の力こそ、人の真の力だと私は信じている。他でもない、この目で見たから言うのだ」

 「……先生」

 流がなにか言おうとしたが、翠嶺は許さず続ける。

 「私はずっと1人で生きながらえながら、人々の間にあの団結を再現しようと試みた。だが、それはとても難しかった。結局、人はまたバラバラになり、口々に我欲を言い立てる。私はなにもできなかった」

 それでも、翠嶺は目をそらさない。

 「だが私は諦めない。諦めずに種を蒔き、水を与え続ける。それが私だ」

 どん、と、その優美な手で流の胸を叩き、彼女の話は終わった。くるり、と背を向け、廊下を歩き出す。

 その時だ。

 

 ごう……

 

 『セロ』の船体が揺れた。

 「まさか、もう中和した?! そんなエネルギーがあるはずが……」

 翠嶺が血相を変える。

 「もしや……『ユミルの心臓』が?!」

 

 つづく

 

JUGEMテーマ:Ragnarok

 

 

中の人 | 第十六話「The heart of Ymir」 | 17:52 | comments(1) | trackbacks(0) | pookmark |
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管理者の承認待ちコメントです。

posted by - ,2017/05/31 6:39 AM










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