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第十六話「The heart of Ymir」(48)

 「右主砲、撃(て)ぇ!」

 

 どむーん!!

 

 双頭戦車『バドン』が備える2門の主砲、その片方が火を吹く。

 「続いて左主砲……撃ぇ!」

 シュバルツバルト共和国大統領、今は『バドン』の戦車長におさまるカール・テオドール・ワイエルストラウスその人が景気良く命じる、と同時に、今度は左の主砲。

 

 どぉんー!

 

 反動で、戦車の車体やキャタピラー、そして戦車の車体が乗る巨大な石畳までが、ぎしんん、と軋みをあげる。

 「右主砲!」

 大統領の指示が飛ぶ、砲弾装填の手間を考えればだいぶ気の早い指示だ。が、

 「良し!」

 装填完了の返事が、ほとんど即座に返ってくる。 

 「撃ぇ!!」

 

 だぁん!!

 

 『バドン』には操縦手1人のほか、2門の主砲に1人ずつ、計2人の砲手が搭乗する。その一方で、砲弾を込める装填手は1人しかおらず、しかも首都を奪われた際のドタバタによる人手不足から、専門の装填手ではない大統領自身が代わりを勤めていた有様だった。

 それが今。

 「左しゅ……」

 「良し!」

 大統領の確認より早く、装填完了の合図が返る。その間にも、発車の終わった右主砲から空薬莢が引き抜かれ、ぽん、と一度宙を舞ったと見るや、戦車の隅っこ置かれた弾薬箱にことん、と綺麗に整列して収納される。と見るや、すかさず次の砲弾が取り出され、まるで吸い込まれるように砲塔内へと装填される。

 魔法のようだが、もちろん魔法ではない。

 2門の主砲の装填口にそれぞれ括られた2本の紐と、それを操る1人の男の仕業だ。

 「撃ぇ!」

 

 どぉーん!

 

 左の主砲が火を吹く。すかさず、男が左手で紐を引き、自分の体を左砲塔の装填口へ。流れるように装填口を開き、厚い手袋をした手で空薬莢を微かに浮かせる。

 「よっ!」

 軽快な掛け声。引いた紐を空薬莢の下へ滑り込ませ、紐を弾く反動でぴょん、と空中へ。まるで戦車の中を舞うように見えた、これが正体だ。そして宙を飛んだ空薬莢が空き箱へ収まる、その様子を見もせずに、

 「ほっ!」

 新たな砲弾を左手一本で尻からつかみ出し、またしても引いた紐の上にするり、と滑らせたままに装填口へ。

 「はっ!」

 左の装填口が閉まった時には、もう右砲塔の面倒を見るため、右へと紐を引き始めている。

 決して広くない戦車内で、装填手が2人いるかのような働きぶり。

 「……凄いな!」

 足元の戦車内を覗き込み、思わず感嘆を漏らす大統領に、

 「右も左も装填済みでございますよ、閣下」

 にやり、と笑いを返して見せたのは他でもない、瑞波の無代、その人だ。

 「本当に初めてなのかね? 無代くん?」

 大統領が疑念を抱くのも無理はないが、

 「申し訳ございません。手前、シュバルツバルトの秘密兵器に触った経験はございませんので」

 無代が苦笑する。が、それも当然。他国に対して秘密裏に開発された共和国機動部隊の秘密兵器に、一介の冒険者である無代が触ることはもちろん、見たことすらあるはずがない。

 「それはそうだが……うーん」

 そんなことは当然承知で、それでも大統領は首をひねる。実際、それほどに無代の仕事ぶりが見事なのだ。

 元々、仮の装填手である大統領が片方の大砲の面倒を見る間、もう片方の面倒を少しでも見てもらおうと、装填の手順を教えたのだ。

 それが無代、ほとんど一目見ただけで、

 『なるほど、承知いたしました』

 さらに2、3度作業を繰り返すと、もう大統領の作業速度を追い抜いてしまった。

 それだけではない。

 見る間に作業を自分流に改良し、挙句にはニンジャのロープを短く切った紐を車内に張りめぐらすと、

 『僭越ながら閣下、ここは手前が』

 大統領を本来の指揮席に追い出すと、代わりに2人分、いやそれ以上の働きを始めたのである。

 結果、ジュノーの地下から抜け出した戦車『バドン』は、本来の設計性能を遥かに超える火力を得て、空中戦艦『セロ』に立ち向かうことになったのだ。

 もちろん、戦車の主砲は空中の敵を攻撃する、いわゆる対空攻撃能力は持っていない。が、ここは世界に稀な空中都市。飛行機械と戦車の高度が偶然にも近づいた結果、

 「丘の上の敵を撃つ要領だ! よく狙いたまえ! 右主砲、撃ぇ!」

 大統領の声とともに、砲撃音が車内を満たす。

 無代が動く。機械と機械の間を、軽やかな風のように駆け抜け、戦車を戦いの座へと導いていく。

 瑞波の無代と言えば、

 

 『戦いでは無能』

 

 と誰もが口を揃えるが、多少見方を変えるだけで、その評価もずいぶん変わる可能性があるのではないか。

 

 ずがん!

 

 砲弾が新たに1発、船体を赤黒く染めた『セロ』を貫く。

 飛行船『マグフォード』との戦いで、防御の要である流体装甲を失った『セロ』ならば、『バドン』の主砲でも十分なダメージを与えられる。

 榴弾が装甲を焼き、徹甲弾が船体を穿つ。

 「大統領、あの船には翠嶺先生がいらっしゃいます!」

 無代が注意を促すが、

 「大丈夫……というのもなんだが、この砲であの船の中までは届かんよ。人が乗るエリアは、それこそ難攻不落だ」

 大統領が苦笑いで応じる。聖戦時代の、それも異世界から飛来したオーパーツがどれほどの怪物か、姉妹艦であるヤスイチ号を通じ、彼はよく知っている。

 「今はヤツを『マグフォード』から遠ざける。装甲のダメージが蓄積すれば、飛行できなくすることも可能だ」

 今は撃つのみ。

 

 ちか、ちかちか、ちかちかちか!

 

 『マグフォード』から発光信号。国民皆兵制を敷くシュバルツバルト共和国では、小学生でも読める。

 「む……」

 大統領が顔をしかめる。

 「ヤツはすでに『ユミルの心臓』からエネルギー供給を受けている」

 「え?!」

 大統領の後ろから、ひょい、と驚いた顔をのぞかせたのは少年賢者・架綯(カナイ)だ。

 無代に背負われて地下を脱出した時は、ほとんど病人同然まで衰弱していたが、今は自ら編み出した魔法を使い、顔に赤みがさすまでに回復している。

 僧侶系の回復魔法とはまったく違う、細胞を活性化する炎の魔法陣。

 後に『温呪(ウォーマー)』と名付けられることになる魔法は、『死体さえ、死んだまま回復する』と称された。

 架綯、いくら虚弱でも生きている。回復は当然だ。

 「若先生、お具合はいかがで?」

 「もう平気です!」

 無代の気遣いへ、返事にも張りがある。ちなみに大砲の爆音だけを鼓膜の直前で和らげる『耳栓』の魔法を、ついさっき即席で編み出したばかりだ。

 

 ちか、ちか、ちか、ちかちかちかちか!!

 

 『マグフォード』から発光信号。

 「くるぞ、『マグフォード』が胴体着陸を敢行する! 『バドン』、西側の縁まで移動だ」

 大統領が操縦士に指示し、『バドン』が動きだす。

 「移動中も砲撃を止めるな。無代くん、いけるか」

 「もちろんでございますとも」

 無代が、もはや自分の手足と化した左右の紐を握り直す。

 「……ありがとう」

 いかにも偉そうな口髭の下で、大統領がつぶやく。一度は市民を捨てて逃げた国家元首が、異国の風来坊に頭を下げる。

 そんな男に、瑞波の無代が返すのは笑顔。それ以外にあるはずもない。

 「参りましょう、閣下。お下知を」

 「うむ! 右主砲……うお?!」

 砲撃を命じようとした大統領が、髭を歪める。

 「どうなされました、閣下?!」

 「いかん、『マグフォード』が……壊れる!」

 

 ばりばりばり……!!

 

 次の瞬間、車内の無代にもその音が届いた。飛行船『マグフォード』その船体と二つの気嚢が分離を始めたのだ。

 「『マグフォード』が落ちる……!」 

 

 

 つづく

 

JUGEMテーマ:Ragnarok

 

中の人 | 第十六話「The heart of Ymir」 | 16:00 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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