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第八話「Free Fall」(2)
 無代の『飛び降り』の準備は着々と進んだ。
 無代を守る神秘の術を使う、2人のソウルリンカーは待機済み。さらに、バリア呪文を重複して使用するために、プリーストのカプラ嬢も確保してある。
 加えて無代の計画に協力してくれるカプラ嬢たちから、様々な防具やアイテムの提供も受けていた。強力な武器や防具は没収されてしまっていたが、それでも多少のモノは用意できる。彼女らはそれを惜しげも無く、無代の計画に差し出してくれていた。
 この空の上の牢獄に幽閉されてから、まださほどの時間は経っていないのだが、既にこれほど多くのカプラ嬢と語り合い、その信頼を得ているところはさすが無代、と言った所か。
 「ん、これでよし。…と言ってもあくまで頼りは『カウプ』。防具は気休めよ。わかってるわね、無代さん」
 「承知しております、『G1(ジーワン)』」
 無代に防具を着せてくれた『G1』は、カプラ『グラリス』のトップ嬢だ。
 知的な眼鏡姿が特徴の『グラリス』だが、他のカプラ嬢に比べてやや異質な印象を受ける。制服の肩に『螺旋(スパイラル)』を持たない『無螺旋(ノースパイラル)』。
 実は『グラリス』を務めるカプラ嬢達は、いわゆる『生え抜き』のカプラ嬢ではない。元々は王国の騎士団や教会、セージキャッスルやマジシャンズギルドなどから引き抜かれた、他職業のエキスパートだけで構成される『教官部隊』、それが『グラリス』である。そして他のカプラ嬢に、それぞれの持つ最先端のスキルを教授することを役目とする。
 その中でも『G1』の名を冠するこの女性は特に有名。なぜなら現役カプラ嬢の中でも、その頭上に『鷹』を従えたカプラ嬢は彼女ただ一人しかいないからだ。
 本名は『ルフール・シジェン』。だが世間ではその名よりも、『鷹カプラ』の異名の方が通りが良かろう。
 彼女が『グラリス』として街角に立つ時、その頭上には必ず、その愛鷹が舞うのだから。
 「…私たちも最大限のサポートをするつもりだけど…、さすがにこの高さから飛び降りた、なんて経験は無いから。一か八かね、ほんと」
 「それも承知の上です、G1」
 「…考えたけど…『私もやる』とはどうしても言えなかった。…笑って頂戴」
 G1が視線を落として、自嘲気味に笑う。
 この『G1』、元はフェイヨンで一、二を争う猟師だった経歴の持ち主だ。が、カプラ嬢に憧れ、一芸を競う『グラリス枠』に応募し合格。礼儀作法の一から下積みを重ね、ついに『G1』にまで上り詰めた時には、もう現役最年長に近くなっていたという苦労人である。
 しかし、今は相棒の鷹がいないせいもあってか、さすがに懊悩の色が濃い。
 「『灰雷(ハイライ)』…私の鷹の翼が、今ほど羨ましいと思った事はないわ。…ちゃんと餌をもらえているといいけど…」
 カプラ嬢宿舎の鷹小屋に残された愛鷹を思うのだろう、懊悩はさらに深い。
 「きっと大丈夫でございますよ。それに、こんな場所から飛び降りるとか、どうせ無謀な話ですから。お付き合い頂く必要はありませんとも」
 無代が安心させるように笑うと、G1もつられて少し笑う。
 「…ちょっと失礼、用を足して来ます」
 言い置いて、無代は『避難所の穴』を出た。
 わずかな草木がまばらに生えただけの、吹きさらしの岩肌。そこを少し歩いて、人気の無い場所まで来るとうずくまる。
 「…うえ…」
 吐いた。
 「…畜生…情けね…」
 顔をしかめて、両手で胃を押さえる。
 「…痛ってぇ…」
 ズキ、ズキと、内臓の中から錐か何かを突き立てられているような痛みが突き上げる。病気や怪我ではない、精神的なものだ。
 当たり前だった。
 地上2000メートルから飛び降りるのだ。ダメージ無効・復活の魔法があると言っても『すぐ生き返るから死ね』と言われて平気な人間はいない。その精神的・肉体的な恐怖とストレスが消えるワケがなかった。こんなことが平気な人間がいたら、それは勇敢なのでも何でもない、ただ『壊れている』だけだ。
 確かに無代はこれまで、何度も自分の命を危険に晒しながら、文字通り身体を張って様々な目的を達して来た。しかしだからといって、脅威に対する恐怖や不安が無くなるわけではない。
 無代は人間なのだ。
 「…誰だ?」
 無代が背後に声をかける。
 「…すまん…私だ」
 応えたのは『D1』。外に出る無代を追って来たらしい。
 「…見るつもりはなかった。すまなかった」
 「こっちこそすまねえ。…みっともないトコ見せちまって」
 無代がぐい、と袖口で口をぬぐうと立ち上がった。D1に対してはこの男、もうタメ口である。
 「…ま、アンタになら見られても構わねえよな。…景気づけに一杯ひっかけたい気分だけど、さすがに酒はないからなあ」
 「…マステラ酒なら1瓶ある」
 「お?」
 「…飲む?」
 「ありがてえ」
 D1が腰の物入れから取り出した小さな瓶に、無代はおどけて合掌し、押し頂く。
 蓋を開け、一口飲んだ。
 「…う…効く効く…」
 マステラ酒は『酒』と名前がついてはいるが、本来は体力を大幅に回復させる貴重な『薬』であり、決して嗜好品ではない。が、今はまさに天上の甘露だ。
 「…私にもくれ」
 「瓶、口つけちまった」
 「いい」
 それでも無代が一応、ハンカチで瓶の口を拭ってから渡すと、D1はしばしその瓶を睨んでいたが。
 「…!」
 ごくごくごくっ!
 「お…おい!」
 無代が止める暇もなく、天を仰いでラッパ飲み。
 「…うっ…げふっ! げふっ! ご…ほっ!」
 「あー! 言わんこっちゃない、そんな飲み方するから…」
 身体を海老のように折り曲げて咳き込むD1の背中を、無代が撫でてやる。D1は代わらぬカプラの制服姿なものだから、これはなかなか珍しい光景だった。
 「…ごほ…。…何で…?」
 「ん?」
 「…何で、そんな無茶なこと出来るの?」
 「俺の事か?」
 「…そうよ!」
 がば、と胸ぐらを掴まれた。思えば、彼女に胸ぐらを掴まれるのは二度目だ。一度目は王都のカプラ支社で、拷問から助けられた時。
 だが、今回は様子が違う。
 掴む力も釣り上げる力も弱く、無代を持ち上げるどころか、見ようによってはむしろ縋り付いているようにさえ見える。
 「こんな所から飛び降りるなんて正気じゃない! …今だってあんなに吐いて…」
 「…まあね」
 無代は自重気味に笑う。が、その瞳に曇りはない。恐怖はあっても、退くことはしない。
 その目を前にして、D1は無代の胸ぐらを掴んだ手を離すと、がっくりとうなだれた。
 「…私は…駄目だ…」
 「…」
 無代の前で、D1の身体が膝から地面に落ちた。
 「…私は…怖いんだ。カプラ嬢になって、頂点のD1を襲名して…横暴と言われようとも、カプラ嬢の誇りを守って…。その人生を疑った事はなかったのに…」
 D1がその拳を握りしめる。
 「…その力が…私がずっと誇りにして来たカプラ嬢の力が…魔物の力だったなんて…!」
 がん、と、D1の拳が地面を、遥か空の上に浮く巨大な岩塊を殴りつけた。
 その叫びを聴いた者は、無代だけだ。
 彼女の苦悩。
 それは『D1としての勤めを果たせなかった』だけではない。
 世の女性の憧れであり、冒険者達のアイドルであり、『世界で最もやりがいのある仕事』と信じていた、カプラ嬢という存在。
 世界の誰も使えない強力な力を、全ての人のために分け隔てなく行使する、その自信と誇り。
 それが、得体の知れない『魔』の力を借りただけのもの、と知ってしまった時、D1の心は、存在は砕かれた。
 「…分かってる…ここでこうしていても仕方ないって…分かってても…どうしても…!」
 『D1』としての自分を支えていたもの、それが微塵に砕けてしまった。どれほどの実力があろうと、どれほどの人望があろうと、『自分』が砕けてしまってはどうしようもなかった。
 今のD1は、もう何者でもない。腕利きのパラディンでも、カプラ嬢の頂点を究めた者でもない。
 「…」
 無代にも、彼女を救う言葉はない。
 ただ。
 「…俺だってさ。落っこちずに済むならやりたくねえよ」
 膝をついたD1を前に、静かに告白する。
 「…でも、落とし前はつけなくっちゃいかんしな」
 「…『落とし前』…?」
 意味が分からなかったのだろう。D1が、俯いた顔を上げた。
 「そう…アンタに言っても分からんだろうけど…ちょっと前まで、俺は腐ってた」
 「…?」
 案の定、分からないという顔のD1。
 「故郷を飛び出して、いっぱしの冒険者になって名を挙げて…行方不明の友達を捜し出して、故郷に錦を飾る。そう決意してプロンテラへ来た。…でも、どれ一つとして果たせなかった。…『約束』したのに…」
 「…」
 どこまで行っても凡人の自分。
 その程度の冒険者なら、あの街には掃いて捨てるほどいた。それでも何とか腕を上げようと、金を儲けようと頑張れば頑張るほど、周囲との差が開いて行くようなネガティブな幻想。意志だけが空回りし、さっぱり現実がついてこない感覚。
 気がつけば、故郷を出る時に抱いていた『輝かしい未来』は、現実と言う壁の前で砕け散っていた。英雄になるはずの自分は、跡形も無くばらばらになっていた。
 残ったのは、情熱を失った『男の抜け殻』。生きているだけの自分。
 その『砕けてしまった自分の欠片』をもう一度拾い集め、やっとのことで『自分』を造り直し再び立ち上がる事ができたのは、静の叱咤と、『天井裏の魔王』の導きがあったからだ。

 彼らと交わした『約束』があったからだ。

 「…でも…死んじゃうかもしれないのよ?」
 「それは理由にゃならねえ」
 無代はきっぱりと言った。
 「俺は今、生きてる。死んでいた俺が、こうして生き返ることができたのは『約束』のお陰だ」
 
 せかいをかえてみせろ

 「なら、今の俺の『命』は『約束』と同じものだ。『無代っていう約束』、それが今の俺」
 にか、と無代が笑う。
 それは強がり。それは虚勢。
 耳障りの良い言葉で、無理矢理自分を騙しているだけだ。
 それなのに、その笑顔がやたらと清々しいのはなぜだろう。

 ゆうしゃでなくても えいゆうでなくても

 「それにさD1。何たってこれ、チャンスだろ?」
 「…『チャンス』…?」
 これまた意味が分からなかったのだろう。D1が訊き返す。
 「そう。『チャンス』。俺みたいな『凡人様』が、『英雄様』に肩を並べる大チャンス」
 にか、とまた笑う。今度は、ちょっとだけ悪戯っぽい笑顔。
 「こんな俺でもさ、実はお姫様が婚約者だったり、王子様が友達だったりするんだぜ? でもコレがさ、釣り合わないったらないワケよ」
 こちとら天下の凡人様だもん、と自嘲。 
 「でもここで頑張って、カプラ社とか世界とか救っちゃったりしたらお前、一気に成り上がりだろ。ココは一発行っとかねーとさ」
 親指立てて決めポーズ。
 「…ぷっ…」
 D1が思わず吹き出した。
 「えっ! 笑うとこ?! 笑うとこじゃねーだろ!?」
 無代が抗議するが、顔は笑っている。

 おまえなら きっとできる

 「『欲張り』なら誰にも負けねーよ。勇者でも英雄でもないけどさ」
 (…負けた)
 無代の笑顔を前に、D1は内心で白旗を上げた。
 この男はきっと、ずっとこうして生きて来たのだろう。
 何一つ優れたものなど持たず、それでも『何か』を掴むために身体ごと、命ごと投げ出すように生きて来たのだろう。
 負けて、泣いて、逃げ出して、それでもその度に『砕け散った自分』を拾い集めて、そして立ち上がって来たのだろう。
 笑顔で。
 「…分かったよ、無代」
 D1は立ち上がった。汚れてしまったカプラのスカートをパンパンとはたき、腰をしゃんと伸ばす。
 そして右手の拳を握ると、無代の胸をどん、と一つ、突いた。
 「…女たらしの、落ちこぼれ冒険者だとばっかり思っていた。謝る」
 「思ってたのかよ! …いやまあ、だいたい合ってるけどさ」
 わはは、と無代。
 「だが、無代。お前、一つ嘘をついたな」
 「…嘘?」
中の人 | 第八話「Free Fall」 | 02:13 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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