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第一話「Good morning!Adventure!」(4)
 朝。 太古からの恒例であるニワトリの革命歌も、3階のこの部屋に届く頃には優しい恋歌に変わっている。
 部屋の主、無茶な戦いと…涙で疲れきった静の眠りを妨げる力はない。
 その眠りを破るのは他のものだ。

 「おはよう存じます! 静お嬢様! お目覚め下さいませ!」
 
 「ひやああああ!」
 突然の大声に、静はベッドから文字通り跳び上がった。
 それでも、枕元に置いた護身の脇差しを構えたのはさすがだ。
 「お目覚めでございますか、静お嬢様? どうぞ刃物はお収め下さいませ」
 「……ふえ?……無代?」
 それでもすぐには事態が飲み込めないらしい。
 「はい。静お嬢様。無代でございます。おはよう存じます」
 部屋にずかずかと入って来た無代がカーテンを開け、窓を開け、朝の光と風をたっぷりと室内に招き入れる。
 「うん……おはよう。ってあれ? ヒゲがない…?」
 「はい、剃りましてございます。…昨日はお見苦しいところばかりお見せいたしまして、まことに失礼をいたしました。…さしあたり、身だしなみを整えてございますが、よろしゅうございましょうか?」
 「いいけど……言葉、も……変? あ? 転職したの?」
 静の目が点になったまま戻らない。
 「いかにも。この無代、本日より心を入れ替えまして商人から鍛冶師、ブラックスミスに転職いたしましてございます」
 それは、あの『てんじょううらのまおう』と同じ職業。
 「さて、つきましては静お嬢様にお願いがございます」
 「……はい」
 勢いに押され、きょとんとしたままうなずいてしまう静。
 「恐れながら、この無代をお雇い下さいますよう」
 「……はい?」
 「はい? ではございません。無代をお雇い下さいませ」
 「……は……う?」
 静の両目が点から疑問符に変わる。
  「今、無代をお雇い下さいますと! このお宿に無制限に滞在しつつ、お食事、お風呂、御寝所の心配は一切無用。狩りでのドロップ品はすべて無代がお売りい たしますし、冒険に必要な装備、アイテム、クエスト品に至るまですべて、無代がご用意致します! お金の管理もバッチリ!」
 「う? う?」
 「要するに、お嬢様は余計な事は一切考えず、好きなだけ冒険ができるのでございます!」
 「う? う? う?」
 「ですから是非とも! 無代を! お嬢様の! 従者に! お雇いくださいませ!」
 「……うー?」
 「……おい、聞いてんのかコラ?」
 「……聞いて、る」
 「それは結構。で、お雇いいただけますね?」
 「ちょっ、ちょっと待って!」
 静が無代の胸元にぴっ、と脇差しを突きつける。まだ若干寝ぼけているらしい。
 「こらこらこら静っ! 危ない危ないそれ刃物! 刃物ちょっと危ない!」
 「待って……ね?」
 静の目が据わっている。
 「ね? じゃねえ! いやわかった! いえ、わかりましたお嬢様!」
 やっと脇差しが鞘に収まる。
 「えっと……それはつまり……」
 静が額に指を当てる。
 「無代が、アタシのお世話してくれて……アタシはこのまま冒険していい、って……こと?」
 「左様でございます」
 「でも、国元のお父様とお義母様が……」
 「そちらも問題ございません。この無代がばっちりお手紙をお送りいたしまして、きっちりお許しをいただきましてございます」
 事実関係にはだいぶ誇張があるが、結果として丸っきり嘘というわけでもない。
 「本当、に……?」
 「はい。静お嬢様は武者修行……というか花嫁修業、ってのもも変か。まあとにかくもろもろの修行のため、ここで冒険していただくことと相成りました」
 「……」
 「つきましては、どうぞこの無代を従者に…って、なぜ泣く?」
 「……だって、だって……」
 朝の光の中、静の目にみるみる涙が溢れ出る。
 「うれしい……よお」
 彼女が涙を見せるのは何度目だろう。だが、今度の涙はこれまでとは、まるで意味が違っていた。今度こそ、無代がそっと差し出したハンカチで目を抑えるが、表情は喜びで輝きを増している。
 「え、えへへ、やった。無代が……無代兄ちゃんが、手伝ってくれるんだ!」
 「左様でございます」
 「アタシの、家来……!」
 「はい」
 「じゃ、ジュース買って来て!」
 「断る!」
 「ええええ!?」
 「調子に乗るんじゃねえでございますよ? 冒険以外のワガママは許しません。お金も今日からお小遣い制!」
 「えええええええ!」
 「それと!」
 無代は表情を改めると、静の正面に片膝をついた。そして少女の顔をまっすぐに見る。
 「勘違いするな? 俺はお前を『助ける』んじゃない。そんな力は俺にはない。これは、そう『共闘』なんだ」
 「……うん」
 静も表情を引き締めてうなずく。二人とも目をそらさない。
 「お前はお前の男、流を助けたい。俺も俺の友達、流を助けたい。それには俺たち一人ずつじゃ駄目だ。…恐らく、二人でも駄目だろう」
 「……」
 「だから、味方を増やす。一人でできないことを二人で、二人でできないことならもっと大勢で成し遂げる。これは、その『共闘』の第一歩だ」
 「うん! そして……無代兄ちゃんは上る気なんだね。……『姉様』のとこまで」
 「そうだ。手伝ってくれるな?」
 「無代が手伝ってくれるなら!」
 「決まりだ。おーい、女将さん!」
 無代がドアの向こうに声をかけると、女将がおずおずと入って来た。布をかけた盆を両手に捧げ持っている。
 盆の上には『銀狼丸』。
 「おはようございます、お嬢様。でも……いいのかい無代さん? アタシなんかで……こんな大事なことなのに」
 「いいんだ。アンタがふさわしい。立会人、頼んだよ」
 「承知した。ではお嬢様、お召しかえと身支度を……」
 「……?! アタシ、寝間着……! あ、頭も、寝癖……」
 静がはっ、とうつむいて自分の姿を見、次にきっ、と無代の方を睨む。
 「大丈夫でございますよ? わたくしは気にいたしませんので……」
 びぃん!
 無代のしれっとした言葉を切り裂くように、静の脇差しが宙を切り裂き、後ろの壁に深々と突き刺さった。いつ抜いてどう投げたのか、無代にはまったく知覚できない。
 無代の首筋から、細く血がにじむ。
 「わざと擦らせたのよ……?」
 それはわざと外すよりも、わざと当てるよりも難しい。
 凍り付くような静の視線に、無代が馬鹿みたいにこくこくとうなずく。
 「……出てけ?」
 「し、失礼致しますっ!」
 つむじ風を巻いて、無代が部屋から逃げ出す。
 
 30分後。
 「アンタからも何とか申し上げておくれよ無代さん。お嬢様のお召し物。いくら何でも『剣士服』じゃあさ……」
 「もー女将! アタシはコレでいいったら!」
 「でも……大事な儀式なんでございますよ? 無代さんにとっても」
 「どーでもいいのよっ! 無代の事情なんかっ!」
 やっと入室を許された無代だが、女二人は押し問答中。
 どうやら衣装のことでモメているらしい。
 女将としてはせめて小奇麗な格好をさせたいらしいが、静は勝手に昨日までの剣士の装いに着替えてしまったようだ。
 「しかも、まだ生乾きなんでございますよそれ……」
 「平気だったら。着てれば乾くもん!」
 静も、どうやらすっかり調子が戻って来たようだ。無代は苦笑いするしかない。
 「女将さん、静お嬢様がいいとおっしゃるなら、わたくしはか構いませんので。早速始めましょう」
 無代は静を立たせ、その前に片膝をついた。
 「ふん! そうそう。無代なんか、コレで十分よっ! さ、ちゃっちゃとやっちゃうんだからね!」
 女将がしぶしぶ、しかし厳粛な仕草で盆に乗せた銀狼丸を差し出す。
 無代が片膝をついたまま、盆の上の銀狼丸を受け取ると、それを両手で静に捧げた。
 「我が名は、無代……我が剣を、一条静に捧げ奉る。受け取り賜うや否や……?」
 捧げられた静もさすがに、表情と口調を厳粛なものに改める。
 「……我が名は一条静。無代、汝の剣をここに受け取る」
 静は剣を受け取ると鞘を払った。そこに、無代が自分の手のひらを差し出す。
 す、と静が刃を滑らし、無代の手のひらを浅く斬った。静が剣を収め、盆に戻す。
 無代の手に血がにじむ。
 女将が差し出した真っ白い布で、無代はその血を拭き取ると、血のにじんだ布をたたみ、再び静に捧げた。
 「ここに主従の誓いは立てられた。プロンテラ旅館業組合理事・コルネ・ユールリアン。確かに見届けた」
 女将が宣言する。そんな立派な名前だったのかと、無代は内心少し驚く。ユールリアン。確かこの国の貴族の列にそんな名前があったはずだ。
 「……」
 無代の感慨をよそに、静は受け取った布を軽く唇に当てる。
 そして、少しだけそれをじっと眺め…大事そうに、本当に大事そうに懐に収めた。唇に微かな笑み。
 だが、無代が立ち上がるとすぐに笑みを消し、
 「せ、せいぜい頑張ってお仕えしなさいよねっ!」
 「はいはい……って女将さん、アンタが泣くこたないだろ、おい」
 「ば、馬鹿言うんじゃないよ。泣いてなんかないよ! ちょ……ちょっとぐっと来ちまっただけさ! 勘違いすんじゃないよ!」
 そういうの流行りなのか、と無代は苦笑する。
 「さ! 今日の冒険に出発! 無代っ! 支度して支度っ!」
 「承知致しました、静お嬢様。では……」
 無代はひとつ間を置くと、言った。

 「あたらしいぼうけんをはじめますか?」

 「もちろん!」

 静の応えは短く、そして力強い。


 「もー、見送りなんていいったら! ここでいいから!」
 「ですが静お嬢様……」
 「ですがじゃないっ! ほら、銀狼丸かして! 盾も!」
 静が道の真ん中で、無代の手から剣と盾を奪い取る。
 「ではお嬢様、本日の獲物はウルフでございます。アカデミーからフェイヨンの近辺に転送がありますから。現地でアインに支援をもらうのをお忘れにならないように」
 「はいはい!」
 「ドロップはイチゴが高く売れますので。それと草とキノコ。一番北のワープポイントから出た所にもキノコがいくつか生えますから、それも叩いてくださいませ?」
 「アレ面倒くさい……」
 静が拗ねてみせる。
 「無精をなさってはいけません、お金のためでございます! 生活費はともかく、装備アイテムのお金は自分たちで稼がねばなりませんのですから!」
 「うー、わかったわよ〜」
 しぶしぶ、という風情だが、その表情は明るい。いや明るいどころか輝いている。
 冒険ができる、その喜びに。
 「ではくれぐれもお気をつけて、行ってらっしゃいませ」
 「は〜い。行ってきまーす。あ、おはようデフォルテー!」
 「おはようございますお嬢様。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
 道ばたのカプラ嬢と挨拶を交わすと、その脇をすり抜けるようにして、静の姿が人ごみに消えていく。
 「……」
 「……あ〜、おはよう、モーラ」
 「……」
 知らん顔するのもどうかと思い、無代は『元恋人』に挨拶するが……気まずい。
 「……お、は、よ、う、ご、ざ、い、ま、す 。 無、代、さ、ん、?」
 トゲだらけの挨拶でも、返ってくるだけマシだろうか。
 「奇麗なお嬢様ですこと〜。お歳はお幾つ?」
 「えーと、確か16……かな?」
 「ふーん……あーゆーのが好みだったんだ〜」
 「いあ、モーラ? それは誤解……」
 「もー話しかけないで下さる? 仕事中ですので」
 身もふたもない。が、自分のしでかした事を思えば実にもっともな対応なので、無代も立つ瀬がない。
 「すまなかった、モーラ。こんなこと言えた義理じゃないが、目が覚めた。感謝してる……ぐっ! は、あ……」
 土手っ腹に一撃。
 鋭く、しかも重い。無代の身体が見事に「く」の字に折れ曲がった。
 モーラの拳だ。だが通行人にも他の客にも、食らった無代にさえ『見えない』。
 カプラ嬢はいずれも相当の腕前の冒険者でもある。ましてその頂点であるディフォルテーのNo4、『D4』を名乗るモーラが弱いわけはない。
 しかも難所中の難所と言われる「東オーク村・オークダンジョン入り口前カプラ」を、現役カプラ嬢で最長の2年間、無事故で勤め上げた下積みは伊達ではなかった。
 「それで許してあげるわ。せいぜい頑張りなさいな」
 「ありがた……い」
 胃からこみ上げる『朝食』をこらえて、何とか声を絞り出す。
 「転職、したのね?」
 「ああ。ブラックスミス。『まおうさま』と同じ、な」
 「まおう?」
 「いや、なんでもない。まあ、転職してももう、狩りはしないんだけどね」
 「サポート専門ってわけ?」
 「ああ……俺は、俺にはてっぺん目指す力はないからな。でも……アイツなら」
 静が歩いていった方角を眺める。もうとっくに静の姿はないが、それでもまぶしそうに。
 「アイツならそんな限界なんか、きっと飛び越えていく。俺の背中を踏み台にして、ね」
 「……ちょっと、悔しいかな」
 モーラがつぶやいた。
 「?」
 「光ってないけど、輝いてるわ……貴方。できれば私が輝かせてあげたかったけど、ダメだった。でも、あの娘にはできたのね。だから悔しい」
 小さなため息。
 「君が突き放してくれたおかげで目が覚めた。ありがとう。君ならほかにいくらでも……がっ! ふ……ぅ……」
 二撃目。まあ、これは無代が悪い。
 「すまん……失言、だった……」
 「三度目は、ホントぶっ殺すわよ?」
  冗談、ではあるまい。
  「殴られついでに、もう一つ告白して……いいか?」
 「命の保障はしないけど、それでいいならご勝手に?」
 「『アレ』じゃないんだ……『本命』。国元に、いるんだけどな」
 肋骨の二、三本で済めばいいなあと、モーラの次の一撃を待つ。
 だが、モーラはあきれたような流し目を送ってきただけ。
 「わかってたわよ。どっかに『本命』がいることぐらい」
 「そか……」
 「こっちに呼んだりするの?」
 「いや、向こうから来る……と、思う。今の俺のこと知ったら……」
 無代の顔色が良くないのは、殴られたばかりではないようだ。
 「来たら……紹介するよ」
 呼吸を整えながら、無代は天を仰ぐ。
 「それまで俺が生きてたら……な。せいぜい頑張ってみるよ」
 無代は、腰のポシェットをぽん、と軽く叩く。昨夜届いた、あの一通目の手紙が入れてある。
 殿様からの手紙。だが中身は違った。
 少し色あせた紙に、短い、見慣れた筆跡。
 それは勇者になれず、道に迷った男のために、過去から届けられた遠い約束の証。

 『せかいをかえてみせろ』

 『ゆうしゃでなくても』

 『えいゆうでなくても』

 『おまえならきっとできる』

 『てんじょううらのまおうより』

 『みらいのともへ』


 気がつけば、モーラが片手を上げ、手のひらを広げている。
 無代はその手に、同じように広げた自分の手を力強くぶつけると、人ごみに向けて歩き出した。
 
 冒険は始まる。

 (つづく)

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