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外伝『Tiger Lily』(4)
 「…殿も若も、派手にやってんな…?」
 『泉屋』の厨房。
 無代は土間の丸椅子に腰掛けたまま、つぶやく。
 その側では同じ丸椅子に、咲鬼が身体を硬くして座っていた。
 店には他に、隣の部屋で着物の『再生』に集中している香、そして厨房を片付けている男女一人ずつの店員だけ。
 さっきから、表では鉄が放つ阿修羅の音が、裏ではそれの数倍の音量を持つ『艦砲射撃音』が、地鳴りを伴って店を揺らしている。
 実際にはほとんど『一方的な殺戮』なのだが、様子の分からない咲 鬼にはただ『酷い事が起きている』ことしか分からない。自分の身がいくら安全でも、外で戦う人々の方はどうなのか、不安でたまらなかった。
 「大丈夫。あ の人達が戦う時ゃ、『相手の方が気の毒』ってレベルだからさ」
 無代が励ましてくれるのへ、
 「はいっ!」
 と笑顔で応える が、さすがに顔色が悪い。
 無代がまた、不満そうな顔をする。
  「…おまえさあ」
 何か言おうとして、だがまた最後までいう事はできなかった。
 「無代!」
 香の鋭い声。
 「?!」
 無代が腰を浮 かせる。
 「下っ!」
 香の叫びは、やや遅かった。厨房の土間の、その地面が盛り上がり、爆発する。
 「が…っ!」
 「きゃ!」
 無代と咲鬼が 椅子から投げ出され、泥まみれになって土間を転がった。
 爆発の土の中から、鬼が現れる。
 乱鬼。
 昼間、石田の城 下で咲鬼を発見し、連れ去る所を無代と香に阻止された、あの若い鬼だ。
 地中を掘り進み、店内に直接侵入する『強襲班』は、リーダーの逆鬼が周到に用意した『二 の矢』である。
 乱鬼はそれに『志願』した。無代に噛み切られた足はとっくにヒールで癒えていたが、戦闘員でもない相手に手傷を負わされ た恥は、不気味な炎となって乱鬼の胸にある。
 「…」
 物も言わずに咲鬼に殺到し、その小さな身体に手を伸ばす乱鬼に、しかし再び無代が立ち向 かった。
 「しつけえぞこの野郎!」
 低い姿勢からのタックル。しかし、いくら何でもこれは『馬鹿の一つ覚え』の域だった。
 もはやその動 きを予測済みの乱鬼が、余裕を持って無代を迎え撃つ。振り上げた拳で、無代の頭を真上からぶっ叩く。
 ごっ!
 イヤな打撃音が して無代の身体がびたん、と垂直に地面に叩き付けられる。鼻血か、土間の地面に赤い物が散る。
 「…ひ…」
 その有様を咲鬼 が身体をすくませる。
 だが、はっとなったのはむしろ乱鬼の方だった。鬼の本気の拳を喰らっても、無代の頭が砕けない。それどころか、帰って来たのは異様な手応え。
 「効かねえ!」
 無代が跳ね起き、ついに乱鬼の脚にしがみつく。ただし顔はやはり鼻血と泥で、何とも物凄い有様だ。
 「!」
 乱鬼が追撃の拳を振るう。頭に、身体に、しかし一撃で致命傷を与えるはずの拳を喰らっても、無代は全く怯まない。
 「『色惚け鬼』の拳骨なんざ、この無代様にゃ通じねえ!」
 吼える。そしてまた噛み付く。
 昼間の再現だ。
 香が両手に針を 持って殺到する。が、今度は再現とはいかなかった。
 新たな鬼が、地面の穴から出現したのだ。
 「…!」
 香の攻撃が阻 止される。さらに反撃が来る。
 「香! ここはいい! 着物を守れ!」
 乱鬼の脚を思い切り噛み切った無代が、血ま みれの口で叫ぶ。
 「俺は治るが、着物は直らねえ!」
 言っていることが無茶苦茶だが、香はそれに従った。素早く土間を飛び退くと、修復中だっ た着物を恐ろしい速度で畳んで懐にしまい、さらに飛び退く。二人目の鬼が、それを追う。
 「幼女一人かっ攫うのに、大の鬼が二匹かよ! 情けねえな おい!」
 無代がまた吼える。威勢はいいのだが、状況はいいとは言えなかった。とにかくめった打ちである。
 叩いている乱鬼 にも、無代の耐久力のからくりはもう知れていた。防具だ。
 見かけの衣服の下に、薄くて軽いが異常に耐久性のある防具を仕込んでいる。当主である一 条鉄の一声で、一条家の宝物蔵から引っ張り出されてきた神器級の防具ばかり、頭の頭巾の中、着物の下などあらゆる場所に着込んでいるのだ。鬼の拳といっても、そうやすやすとは貫けない。
 だが、着ているのは所詮、凡人の無代である。いずれ限界はくる。
 乱鬼の脚にしが みついた手は、指の何本かが変な方向に曲がっているし、右目はもう明らかに視力が無い。左耳からの出血は、鼓膜の奥にまでダメージを受けている証拠だ。他にも肩や肘、膝の関節が外れかかっている。
 それでも食らいつく。
 そして吼える。
 「惚れてる、っ てんならいいさ。このチビにな。だが、ただかっ攫ってって無理矢理孕ませるだけなんざ、そんなのは許せねえ! たとえ鬼だろうが、やっていいことと悪い事 があらあ! っぐうっ!!」
 がん!
 今度こそまともに、乱鬼の拳が無代の顔面を撃ち抜いた。ぼろぼろ、と砕けた歯が地面に散らばる。
 ずるり、と無代の身体が落ちる。
 その様を、咲鬼は見ていた。
 土間に尻餅をつき、身体をすくませながらずっ と見て、そして聴いていた。目の前の若者の有様を見て、聴いていた。
 『身体を張る』という言葉があるが、これほど雄弁な身体の張り方など、咲鬼は見た事も聴 いた事も無かった。
 何のために殴られているのか。いや、戦っているのか。
 何に怒っているのか。
 何を守ろうとし ているのか。
 幼い咲鬼にも、分かりすぎるぐらいに分かった。

 かっ!

 咲鬼の心の中に、何かがきざした。
 かっ!
 咲鬼の身体の奥 の、何かが燃えた。
 かっ!
 頭が熱い。

  角が、熱い。

 今は髪の毛に隠れた小さな、咲鬼の『鬼の証』が、その角が熱 い。
 「…この…」
 目が熱い。
 「この…やろう…っ!」
 頬が熱い。
 首が熱い肩が熱 い胸が熱い腹が熱い脚が熱い身体が熱い。
 心が、熱い。
 「おまえ…なんか…!」
 目の前の乱鬼を 見据える。
 (吼えろ…! あの人のように!)

 「おまえなんか に、まけるもんかあっ!」

 声が出た。
 高く、高く響 く。
 表の阿修羅の音にも、裏の大砲の音にも、それは決して負けることなく響き渡る。
 「まける、もんかああああっっ!!!!!」
 小さな身体を 折り曲げるように、命の限り咲鬼は叫んだ。
 いや吼えた。
 諦めるのをやめて、そして逆らうのだ。
 身体を張って、 知恵を絞って、運命に逆らうのだ。
 あの人のように。あの人達のように。
 「大丈夫」
 母が言ってくれ た。
 「大丈夫」
 老婆が言ってくれた。
 「大丈夫」
 あの人が、あの人達が言ってくれた。
 だからもし、こ こで咲鬼が諦めてしまったら。運命に屈してしまったら。

 (みんなを『嘘 つき』にしてしまう!)

 だから、力の限り吼えた。
 「おまえなん かに負けない! ぜったい負けない! あたしは大丈夫だ! みんなを嘘つきになんかするもんか!」
 吼える度に力が湧いてくる。命が湧いてくる。
 咲鬼は今こそ、自分の意志で生きていた。生きると決めた。
 咲鬼がいくら叫んでも、だが乱鬼は無表情だ。子犬が吠えるほどにも感じていない。地面に落ちた無代をもう見る事もなく咲鬼に近づいて来る。
 だが、咲鬼はもう目を逸らさない。すくみあがることもない。その小さな全身に、ありったけ の力を込める。
 怒るんだ。逆らうんだ。戦うんだ。

 (生きるんだ!)

 「…よく、言ったぜチビ鬼…!」
 めちゃくちゃに潰れた声が、咲鬼の耳に届いた。咲鬼の叫びには無表情だった乱鬼の顔が、これには激しく歪む。
 無代だ。
 まばらに歯が抜け、頬の肉が裂けて骨まで見える血まみれの顔を上げて、無代が再び乱鬼の脚にしがみついていた。
 「…だけどな、勘違いすんなよ。まだお前の… 子どもの出る幕じゃねえぞ」
 がっがっがっ! 乱鬼が今度こそ、息もつかずに連打を浴びせるが、無代は離れない。その折れた歯で、再び乱鬼の膝裏に噛み付き、浅いながらも肉を噛み切る。
 そして吼えた。
 「…まだ…『大人の時間』だ! そうだろ…善兄ぃ!」

 「その通りだ」

  咲鬼はその時、生まれて初めて、成年の鬼の身体が『吹っ飛ばされる』のを見た。
 乱鬼の身体が、それこそ何かの爆発に巻き込まれでもしたように、真後ろに吹っ飛んだのだ。そしてそのまま、厨房の端っこにある大きな柱にめり込む勢いで激突する。
 「?!」
 さすが鬼の耐久力だけに、乱鬼はそれで死ぬ事はおろか大した手傷も負わない。が、その顔には明らかな驚愕があった。
 「…貴様…!」
 吹っ飛んだ乱鬼の前に、一人の男が立っていた。無代を上回る長身だが、地味な作務衣に頭巾。それは『泉屋』に残った店員のうちの一人のはず…。
 「善鬼っ!」
 乱鬼の顔が歪 んだ。
 「久しぶりだな、乱」
 『店員』の頭巾が落ちる。鷹のような鋭く、厳しい容貌。
 頑丈な作務衣の両肩が紙のように破け、そこから攻撃的な形状の『角』が出現する。『肩角(ショルダーホーン)』を持つ鬼は、その抜群のパワーこそが特徴だ。
 その角のせいで、何倍にも大きく見える背中。咲鬼と無代の位置からは、その背中しか見えない。
 一条家筆頭御側役・善鬼。
 鬼の掟を裏切 り、鬼の里を抜けた『はぐれ鬼』。
 その大きな背中が、咲鬼と無代を守る不抜の盾となって立ちはだかった。
 「無代、『釣り針』ご苦労」
 「何の。これしか芸がねえんでさ」
 背を向けたままの無愛想なねぎらいに、ボロボロの無代は軽く応じる。
 「咲鬼」
 「…はい」
 相変わらず背を向けたまま、声も変わらない。それが善鬼という男だ。
 「よくぞここまで来た。隠してすまなかった…俺が、善鬼だ」
 「はいっ!」
 振り向きもし なかろうが、声が無愛想だろうが、初めて会った咲鬼にも分かる。

 (『弟は優しくて強い。きっと貴女を守ってくれる』)

 母の言葉は本当だった。当然だ。
 母が咲鬼に嘘なんかつくはずがなかった。
 それはこの世で一番優しくて強い、『護る鬼』の背中だった。
 「善鬼ぃっ!」
 乱鬼が、叩き付けられた柱から身体を引きはがして吼えた。
 「…無代にこれだけ手こずっても、あれ以上の増援が来ない」
 だが、善鬼の声は冷静だ。
 「…つまり乱鬼、お前が本槍だ」
 咲鬼一人をターゲットにした強奪作戦。
 石田城下で香が得た情報から、鬼の人数は 『三十』と割れている。そしてそのリーダーの顔から、それが逆鬼であることも知れていた。香が描いてみせた精密極まりない似顔絵から、善鬼が楽々と特定し たのだ。
 指揮官が逆鬼ならば、三十人が全員で一斉に一方向から襲う、などという芸の無いことはしない。戦力を過信せず、必ずチームを分けて時間 差かつ連携した波状攻撃を仕掛けて来るはずだ。万一どこかの攻撃が止められても、どれかの矢が目的を達する。
 その内の一つを潰すのは難しくない。が、周到に分散され、連携した波状攻撃のすべてを潰すとなると難しい。
 だからこそ本槍、つまり本命の攻撃がどこに来るか、それを特定するために。
 「俺が『釣り針』ってわけさ」
 大けがのまま土間にべったり座り込んだ無代 が、しかし上機嫌で解説する。
 「咲鬼、無代に薬を。そこの壷のがそうだ。頭からいけ」
 「はいっ! … とう!」
 だば!
 「ごふっ!!!」
 咲鬼が大きな壷の中身を思い切り、無代の頭からぶっかけた。無代が盛大にむせるがその効き目は確かで、傷はもちろん折れた歯までもりもり回復していく。
 「すまんな咲鬼。そういうわけで名乗れなかったのだ」
 もし先に名乗っ てしまえば、咲鬼のそぶりから、鬼に対する罠が露見しないとも限らない。相変わらず善鬼は振り向きもせずに謝罪する。
 「だから乱、お前さえ潰せば、もう次の矢はない」
 「…潰してみろ…善鬼!」
 吼える乱鬼におう、と善鬼が応じる。
 がき!
 善鬼の右手が 乱鬼の左手に、乱鬼の右手が善鬼の左手に、それぞれがっちりと組まれた。
 手四つ。
 善鬼の額が、乱鬼の額に密着する。
 乱鬼の右肩 が、善鬼の左肩に密着する。
 ごりっ!
 ぞっとするような音が響いた。
 二匹の鬼の密着した部分に、あり得ない力がかかった音だ。
 人間を越えた力と耐久力を持つ『鬼』同士の戦いは、人間と違って打撃などでは決着がつかない。だからたいてい、このような『パワーに よる潰し合い』になる。
 技もフェイントもない、純粋な力だけを使った文字通りの『潰し合い』だ。
 ぎ。
 ぐ。
 ぐ。
 ご。
 が。
 ぐ。
 肉と骨がきし む音。それを聴いているだけで、人間の本能的な恐怖すら呼び覚ます。
 それはまるで、大地の底で地殻と地殻がこすれ合う、断層の形成音かと錯覚させる。あるい は遥か神話の時代、この大地を創造したという神々の戦いの再現のようでもあった。
「 …衰えたな善鬼。そしてオレは、強くなった!」
 乱鬼が吼え る。
 しかし、善鬼はあくまで冷静だ。
 「そうだな。お前の言う通りだ」
 常人なら数秒で肉塊になるであろう圧撃をお互 いにぶつけ合いながら、善鬼は顔色一つ変えずに応じる。
 「確かにお前は強い」
 「俺の勝ちだ!」
 「いや…乱、お前の負けだ」
中の人 | 外伝『Tiger Lily』 | 08:04 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
この数日間、本編を熟読…

そして今日、外伝も読破…

泣けました(;;
めちゃめちゃ感動しました(TT 号泣

本編(また外伝もあるのかな?)の続き楽しみにしてます♪

いい作品に感謝♪感謝♪(^^ 

posted by 犬耳娘 ,2010/06/23 4:27 PM

 御拝読、誠にありがとうございます(笑)
 外伝は自信作でもありますので、泣けると言って頂けるととてもうれしいです。
 外伝の予定は今の所ないのですが、思いつき次第でまたやるかもしれません。
 今後ともよろしくお願いします!

posted by sizuru ,2010/06/24 12:13 AM










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