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第五話「The Lost Songs」(4)
  香が翠嶺に放った一撃は、まさに必殺の一撃だった。
 速度、タイミン グ、どれをとってもまず避けようがない。
 最強レベルの戦前種である翠嶺でさえ、香が自分の命を囮にして作り出したこの罠から逃げる ことは不可能だろう。
 もし翠嶺が普通の状態であったなら、武術家でも豪傑でもない香の手刀など絶対に通じないはずだ。
 どんなに筋力や 神経を強化したとしても、それは所詮ごまかしにすぎない。香には、静や綾のような、超人的な武術や攻撃力は、ない。
 だが今、翠嶺は 香の力を必要としている。小さな弟子達の命を救うために、『香の死』を容認できない状態にある。
 だから、必ずこの罠にかかる。
 今この瞬間、 この場でのみ有効なピンポイントの罠。
 ぴたり。
 翠嶺の細く、白い喉に香の手刀が突きつけられ、止まった。
 「…助けても らった借りは、これでチャラ。…二度と言わないで」
 香の闇色の瞳が不気味なほど静かに、翠嶺の蒼玉の瞳を見つめる。
 「…『極秘事 項』、か。…当然だ。悪かった。私のミスだ。二度と言わないと約束しよう」
 危機に際して人格が変わったらしい翠嶺が、観念したように目を閉じ て謝罪した。
 こうしていちいち人格の変わる翠嶺、どうもややこしいので呼び名を決めよう。
 普段の優しい翠嶺を「春翠嶺」。
 厳しく激しい 翠嶺を「冬翠嶺」。
 そう呼び分けることをお許しいただきたい。
 謝罪を終えると、『冬』は『春』に入れ替わる。
 「…怖い娘ね え…貴方…」
 「『一条の女』なら当然」
 香が手刀を引いた。翠嶺の腰も椅子に戻り、何もかもが元に戻る。
 ただ、2人のや り取りによほどショックを受けたのか、クローバーが一人、死人のような表情で棒立ちしている。
 「…貸し借り無し、となれば…貴女に私の弟子 達を助けてもらうには、ひと働きしないとね。…何がよろしい?」
 ふう、と翠嶺がため息をついて、香に笑いかける。
 たった今、命の やりとりをしたばかりなのだが、どうやらこの戦前種は逆に、香の事をえらく気に入ったようだ。
 「…」
 「大抵のことな らしますよ?」
 「…蝶の羽を。一刻も早く無代…私の『夫』に会わなければ。彼が危険な目に遭っている」
 魔法で『位置 セーブ』した場所に帰還するアイテム。それがあれば見剣の城に返れる。
 「蝶の羽根はオススメできないわ」
 だが、翠嶺が即座に否定した。
 「香さん、貴 女一度『BOT化』されてるでしょう? だから、転移のセーブ先が今どうなってるか保証できないわ。いきなりとんでもないトコに跳ばないって保証はなくて よ?」
 なるほど、それはそうだ。
 「ジュノーの街のポタならヴィフさんが持っていますから転送してもらえますが…羽根にしろ ワープポータル使うにしろ、『船を止めないと』使えませんしね」
 「?」
 頭に疑問符を浮かべた香に、翠嶺がぴん、と人差し指を立てて説明す る。
 そういう仕草は実に『先生』らしい。
 「よろしいですか? ヤスイチ号はのんびり飛んでるみたいに見えますが、これでも時速にし て200前幣紊禄个討い泙后そんな時に、この船内から転送で跳んだらどうなると思います?」
 「あ…」
 納得がいった顔 の香に、翠嶺がにこり、と笑う。
 「そ。向こうに出た瞬間に、時速200舛任垢暖瑤鵑嚢圓辰舛磴い泙垢茵」」
 翠嶺の説明、 さて読者にはお分かりだろうか。
 例えば、時速200舛農召悵榮阿垢訃茲衒の中から、蝶の羽やワープポータルで転移した場 合。
 その時速200舛箸いΑ愨度』と、西方向という『方角』は『転移先でも保存される』のだ。
 例えば、ヤスイ チ号がまっすぐ西方向に時速200舛念榮阿靴討い燭箸靴董△修料テ發らプロンテラ中央のカプラへ転送をかけたとする。
 すると転移した 人物は、プロンテラの転移ポイントに出現した途端、時速200舛膿神召悗垢暖瑤鵑嚢圓。
 あの広場に整然と並んだ金属製のベンチを吹っ 飛ばし、その向こうの魚屋の屋台をなぎ倒し、恐らくは止まることなくどこかの建物の壁に激突して死亡するだろう。
 この世界にはそ もそも、ヤスイチ号のような高速移動体がほとんど存在しないので、普段はあまり意識されることはない。
 が、『慣性の法則』はこの世界でも、立派に 健在なのだ。
 「もちろん貴女が望むなら船を止めてよろしいですけど…そろそろ限界じゃなくて…? 眠気」
 「…」
 香は沈黙す る。
 が、翠嶺の言う通りだった。
 眠い。
 常人の何倍もの『脳力』を駆使する香はその分、脳や身体に多くの休息を求める。
 瑞波を『家 出』する前、十日も眠り続けていたのもそれである。
 本来なら長期睡眠による身体の回復も含め、目覚めた以降も数日の回復期間が必要だ。
 『家出』の 朝、義母の巴が脳と身体を休めるように忠告してくれたのも、それを気遣ってのことである。
 が、彼女はそれを振り切って家出し、弱った身 体を『脳』の力で無理矢理活性化しつつ、ここまで限界以上の活動を続けてきた。それこそ常人なら何度死んでいるか分からないような修羅場をくぐり抜けてき たのだ。
 同じ姉妹でも、姉の綾や妹の静なら平気だろう。
 だが香は違う。
 下手をすると常人以下の『スペック』しか持たない身体を、卓越し た精神操作によって加速・強化し、常人以上の『性能』を叩き出している。
 しかし所詮それはごまかしであり、脳と身体に無理をさせていること に変わりはない。どこかに必ずしわ寄せが来る。
 それが今、睡魔となって香を襲っているのだ。
 こうしてベッド にいるならまだしも、またあんな激しい活動をするとなれば、いつどこで限界が来て動けなくなるか分からない。
 十分な栄養と睡 眠を最低一昼夜、できれば数日間の休息が必要。それが今の香の状態なのだ。
 「…貴女の旦那様、『無代』っておっしゃるの? 今どちらに?」
 翠嶺が沈黙し た香を覗き込む。
 香はしばらく沈黙した後、決意したように顔を上げた。
 「…首都で冒険者をしているはず。年齢は二十二歳。『商 人』のはずだけど、『ブラックスミス』に転職しているかも。今、多分まずいことになっていると思う…詳しい事はわからないけれど…」
 「了解」
 翠嶺が両手の 袖をするする、と解いた。
 「それ、私が代わりに請け負いましょう。その人を無事に貴女の所へ連れて来てさしあげます」
 す、と立ち上が る。
 「危ない目に遭っているなら助けて…ついでに貴女にふさわしく教育してさしあげましょ」
 そこまでは頼んでないが、まあ害はなかろう。
 「…お願い」
 「任せてくだ さいな。あ、この船は今、ジュノーにある秘密基地へ向ってて、朝には着くはずです。どっちにしても安全ですから、ゆっくり眠っておくと良いですよ。…船長 さん?」
 「…は、はい? 何でしょセンセ?」
 先ほどからひどい顔色のクローバーが、棒立ちのまま慌てて応える。
 「…何惚けて らっしゃるの? …というわけですから、降りますよ。窓開けて下さいな?」
 「はいっ…って、ええええ、またあれですかいセンセ!」
 「大至急で す、船長さん?」
 「あーもう! 見かけによらず鉄砲玉なんだからこの人は! ヴィフ! センセの槍持ってこい! ヤスイチ号減速!」
 クローバーが 廊下に向って叫ぶのと、医務室の窓ガラスが開くのが同時だ。
 轟!
 高空を高速で飛ぶ飛行体で、窓など開ければ大変なことになる。
 猛烈な突風がそ こらじゅうを荒れ狂い、何もかもが外に吸い出されそうになるのを、クローバーが大慌てで押さえる。
 「センセ! パラシュート! パラシュー ト!」
 「んんー、あれカッコ悪いですから結構です。…あ、香さん!?」
 「…何!?」
 まともに目も開けていられず、耳もおかしくな りそうなほどの風の中で、香も必死で声を上げる。
 「貴女、とても良いモノをお持ちです! 事が済んだら私の生徒になりませんか? 考えてお いてくださる? では、また…!」
 言うだけ言うと、翠嶺は窓から外へ、肢体を風に乗せるようにして飛び出した。
 高度1000 メートル以上。下は海だが、この高さから水面に叩き付けられれば、例え誰だろうが死は免れない。
 「センセ、槍!」
 慌ててすっ飛ん で来たヴィフから二槍を受け取ったクローバーが、窓から外へ槍を放り投げる。二本同時の槍投げだ。
 一直線に飛来するそれを、翠嶺が両手でぱしっ と掴むのを確認して、
 「はー、ホント聞きゃしねえんだからもう…ヴィフ、来い!」
 「はい船長!」
 さすがの香が あっけに取られて見守る中、クローバーが窓から外へ手を突き出す。
 「献身(ディボーション)!」
 荒れ狂う突風にもびくともしない、クローバー の頑健な身体から光の線がほとばしった。
 落下する翠嶺の身体にその光が突き刺さり、クローバーとの間に奇跡の紐がつながる。
 この光が途絶 えない限り、翠嶺が受けたダメージは全てクローバーが肩代わりする。
 それが『献身(ディボーション)』というスキル。
 が、それを見守 る香はすぐに異変に気がついた。
 (…遠い…!)
 そうだ。
 本来、その光の紐の有効範囲はせいぜい十数 メートル。
 だが、香の目が『測定』するその距離は既に100メートルを超え、この瞬間も開く一方だ。
  (…200…250…300…凄い…!)
 青色の『振り袖』を激しくなびかせ、中空に鮮やかな軌跡を描いて落下する翠嶺の身体が、見 る見る小さくなっていく。だが。クローバーの身体からほとばしる光の線は揺るぎもしない。
 常識を遥かに越えた驚異的な有効範囲に、香の 目が丸くなる。
 (…まさか…このまま海まで?)
 ヤスイチ号の高度は1000メートル以上。そこまで光の紐を維持できるというのか。
 しかしそこま で届いたなら届いたで、水面との激突によってクローバーに届くダメージは即死級のはず…と思った瞬間、翠嶺の身体を別な光が包む。
 魔法陣。
 それが縦に十 連。
 『熱線砲(ブラスター)』。
 しかし、あの島で見た魔法陣より遥かに大きい。
 オートスペルで はなく、きちんと時間をかけて詠唱し、作り上げたものなのだろう。
 当然その威力も、人の首が消し飛ぶなどという『可愛らしい』ものではなかった。
 かっ!
 翠嶺の真下の 海が、まん丸く、真っ白に染まる。
 と、見るや、
 どどどどおおおおお!
 海中で何か巨大 な爆発でも起きたような、とてつもない量の水蒸気と海水が、猛烈な爆風と共に垂直に噴き上がる。
 恐らく海中のモンスターでもターゲットしたの だろう。水中深く撃ち込まれた熱線砲の膨大な熱量が、付近の海水を一気に蒸発させた結果だ。
 その垂直の爆風に煽られて、落下する翠嶺がぐ ん、と減速する。
 「…む!」
 クローバーの身体にエネルギーが満ちた。減速によって翠嶺の身体にかかるダメージを、彼が 引き受けたのだ。
 「ヒール!」
 クローバーの隣で、ヴィフが治癒の呪文を使う。
 治癒の光がク ローバーを包み込む。
 翠嶺の身体が、噴き上がる水蒸気と海水の中に消える…が、奇跡の『紐』はまだ途絶えない。
 もう間違いな い。
 この男、クローバーのディボーションはこの高度から海まで1000メートル、実に1キロ以上の効果範囲を持っている。
 人一倍の博覧強 記を誇る香でさえ、聞いた事もない能力。
 だが、香の驚きはそれで終わらなかった。
 もう一つの奇跡 が、目の前で展開されていたからだ。
 クローバーの身体を包む回復の光。
 その光が途切れない。
 持続的な回復を 行うスキルには「サンクチュアリ」などがあるが、それとは明らかに違っていた。
 回復が全く途切れないのだ。
 翠嶺の身体を 襲っているであろう、高熱の海水と水蒸気のダメージ。そこから送られてくる途切れることの無いダメージを、同じく途切れない治癒力が力強く押し返してい く。
 若きプリースト、ヴィフの力。
 「…永続治療師(パッシブヒーラー)…!」
 香が呆然と呟 く。
 今度は香にも知識がある、とはいえ、その実在を目の当たりにしたのは初めてだ。
 本来なら断続的にしか発揮できないはずの治癒 力を、途絶える事無く対象に与え続けることが可能な治療士。
 例えるなら、普通のヒールやサンクチュアリがコップで一杯ずつ水を移して行くのに対し、 引っ張って来たホースでだーっ、と水を移すのがパッシブヒーラーと思えばよかろうか。
 回復量そのものは同じかそれ以下であっても、即死以外ならば いかなる死も回避可能。
 人によっては『アナログヒーラー』とも呼ばれるその存在は、万人に一人ともそれ以下とも。
 「…先生、無事 降りられたみたいですねえ」
 香の驚きをよそに、奇跡の主のヴィフがむしろのんびりと窓の下を覗く。
 見れば、先ほど の大爆発が収まった海に、今度は氷の島が誕生し、その上に豆粒のような翠嶺の姿がある。今度は海に『凍線砲(フリーザー)』を撃ち込んで凍らせたらしい。
 たかだか蝶の 羽一つ使うためと思えば無駄な大騒動もいいところだが、
 (…ひょっとして)
 香はふと気づく。
 (…あれって、 あの人の『照れ隠し』…?)
 香がふと考えて、そして心の中で無代に訊ねてみる。無代の苦笑いからして、その答えは正解らしかった。
 照れ隠しにし ても大層なことに違いはないのだが。
 翠嶺の姿が転送の光に包まれて消え、ヤスイチ号の窓が閉まる。
 クローバーの身 体からほとばしる光も、消えた。
 「すごいでしょう? 船長のこれ、『一哩献身(マイル・ディボーション)』って言うんで す! 1キロ以上離れてても、献身の紐がつながるんですよ!」
 ヴィフが我が事のように香に自慢する。
 「…貴方も凄 い」
 香が人をほめるなどめったにないことなのだが、それを知らないヴィフはあんまり嬉しそうではない。
 「いえ…僕の は…。もうちょっと回復量があるといいんですけど…早くハイプリーストになりたいです」
 「いや、今でも十分反則級さ。ちったあ自信持ちなって。そ れに、ハイプリ転職だってもう少しさ」
 クローバーが傷だらけの大きな手でばしっ、とヴィフの背中を叩く。
 当のヴィフは痛 い痛いと文句を言いながらも笑顔。
 しかしクローバーにはなぜか、笑顔がない。
 「…一人でも多 くの人を、守れないかと思いましてね…献身…」
 それどころかその表情は沈痛でさえある。
 これまでの剛胆 で、それでいて飄々とした雰囲気はどこかへ消えていた。
 「…昔…殺し過ぎましたんで…それはもう、たくさん…」
 クローバーの目 が、香の目を見た。
 香の闇色の瞳に映った自分自身の姿を、クローバーは明らかに怖れていた。目を逸らさないだけで必死だ。
 いかなる痛み にも耐える無類の献身者が、しかし耐えきれぬ痛みに身を震わせている。
 「『鬼道』とお聞きして…全て分かりました。…姫様のお母上様はやはり…『御恵(みめぐ み)』の御一族でいらっしゃったのですね」
 「…」
 香は何も言わず、ベッドの上からクローバーの姿を瞳に映すだけ。
 クローバーの隣 ではヴィフが、あまりに様子の違う船長の姿にショックを受けたのか、凍り付いている。
 「『鬼道の目』をお持ちならば、もう何もかもお分かりだと存 じますが…香姫様…」
 クローバーの両膝ががくり、と床へ落ちた。
 香のベッドの脇で、クローバーの身体が微かに震える。
 「お母上の… 『御恵』の御一族を皆殺しにしたのは…あっしです」
 その声はしわがれ、絞り出すような響き。
 「こうして姫様 にお会いしたのも…因果応報というもんでございましょう。どうぞ…お気の済むようになすって下さい…」
 小さく震える、真っ青な唇から、かすれた声 が漏れる。
 その頑健極まる身体が、何かに押しつぶされるように深く、香の前に頭を垂れる。
 その姿を瞳に映しながら、香はしかし別なこと を考えていた。
 (…運命の輪が…つながり始めた…いえ…最初からつながっていた…?)
 気がつけば、ヤ スイチ号のエンジン音が低くなっている。
 もの言わぬ機械の彼が、会話に耳を澄ましているようにさえ感じる。
 
 「『ウロボロ ス6』…『六の死神』。それがあっしという…男です」

 クローバーの、 自分自身を吐き捨てるような告白が、香りの耳を打った。

 つづく。
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