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第九話「金剛不壊」 (3)
  「総員防御態勢!」
 タートルリーダー・一条流の号令が、夜の荒野に響いた。
 直ちにプリースト系、あるいはソウルリンカーの兵士らが、ウロボロス4の総員に向け様々な防御呪文をに降らせる。さらに各自が携帯している耐性装備や薬品も、惜しげも無く消費されていく。
 (だが、果たしてこれで防げるのか……?!)
 いかに天才・一条流と言えども今、目の前に出現した『飛空戦艦セロ』のような、全く情報のない敵が相手ではそもそも対策の立てようがない。現状、可能な限りの対処をするだけだ。
 「移動準備! 指示あり次第移動する! ……よろしいですね、マム?」
 言ってしまってから『総司令官』に訊ねる辺りがいかにも流らしいが、この時ばかりはマグダレーナも咎めない。むしろ、
 「今すぐ退がってもいいよ、流や」
 むしろ優しく、そして静かな声が返って来た。
 「……マム?」
 「思い出したよ、アレが何なのか。と言っても、アタシも噂に聞いただけで、この目で見るのは初めてだけどねぇ」
 「御存知なのですか、あれを?!」
 「ああ」
 「!」
 流の目が、この年齢不詳の『再現種(リプロダクション)』の表情に釘付けになった。思えば、作戦開始からこのかた、こんなにマグダレーナの顔を注視したのは初めてだ。どれだけ『総司令官』をないがしろにしてきたか分かるだけに苦笑いモノの話だが、今はそれどころではない。
 「あれは何です!? マム?」
 「『飛空戦艦アグネア』……『戦前機械(オリジナルマシン)』さ。『六の死神』ことクローバーが、御恵の一族の里で発掘したまま持ち逃げしたと聞いてる」
 「何ですって?!」
 流ほどの男が、今はマグダレーナの言葉一つ一つに翻弄される。
 読者はご承知の事と思うが、彼らの目の前にいるのはクローバーが発掘した『飛空戦艦アグネア』こと『ヤスイチ号』ではない。その姉妹艦である『飛空戦艦セロ』だ。だが、いかにマグダレーナと言えども、失踪したクローバーの消息と、姉妹艦セロに関する知識までは持っていないので、この誤認はやむを得まい。
 それよりも、流を驚かせたのは別の言葉だ。
 「『御恵』……!?」
 「そうさ。アンタの許嫁だっていう一条静の母親、桜の生まれ故郷だ。『御恵』の一族は聖戦の時代にあの船に乗って、遥か遠い所からやってきたそうだ」
 「それが、なぜここに?」
 「さあね……。だが確かな事もあるよ」
 そんな会話の間にも『飛空戦艦』は、圧倒的な力を誇る12枚の光翼を見せつけるように、静かに夜の空に浮かんでいる。
 「あれは……敵さ」
 マグダレーナの全身に、恐ろしいほどの気迫がみなぎる。その表情にはしかし、逆に微かな笑みさえあった。
 「アレが正真正銘の『戦前種(オリジナル)』なら丁度いい。この身は『再現種』、すなわち戦前種に肩を並べるために作られた。……今こそ!」
 すらり、と腰の剣を抜く。流すら名も知らぬ、だが神器にさえ匹敵すると噂されるマグダレーナの愛剣。
 「『完全再現種(パーフェクト・リプロダクション)』が看板倒れか否か、ここで証明してくれよう」
 ずい、と前に出る。
 「流、お前達は退がりな。……足手まといさ」
 「イエス、マム。しかし、これは明らかに待ち伏せ……罠です。作戦内容が漏れている」
 「……」
 マグダレーナは応えない。が、彼女にも当然、それは分かっていた。秘密部隊であるウロボロス4の作戦内容は、部隊以外にはまず漏れる事はない。それを知り得る立場と言えば……。
 「信じられませんが、大佐殿が……」
 「もしそうだとするなら、コンドルリーダーを逃がしたのもクルト本人か」
 「イエス・マム」
 「逃亡したコンドルリーダーは、自分が『ウロボロス8』を復興すると言ったそうだね」
 「イエス」
 「……ふん。ウロボロスの『他の首』に釣られたか。クルトのヤツも……信頼してたのにねえ」
 マグダレーナのこの言葉だけ聞けば、後悔しているようにも反省しているようにも取れる。だがその声音には、残念ながらそのどちらも感じられない。あるのはただ、目の前の事態を打開しようとする意志、前に進む意志だけだ。
 「なあに、今までだってウチを潰そうとした『他の首』はあった。いつものことさ……さあ、ココはアタシに任せて、アンタたちはとっとと逃げな!」
 「イエス、マム! 御武運を」
 「ふん、ありがとうよ」
 マグダレーナはもう振り向かない。
 流もまた即座にきびすを返す。
 「ウロボロス4退却! 退却路の確保にかかれ!」
 タートルチーム・ウイングユニットに指示を出し、事前に決めておいた退却地点に向けてワープポータルを出させ、一斉に先遣隊を送り込む。待ち伏せの有無を確かめるためだ。作戦内容が漏れている以上、安全な退却先は無いと見なければならない。
 「報告! e2、g4、p5、各ポイントに敵を確認!」
 「報告! w26に敵!」
 「v4駄目です!」
 案の定だった。退却路として設定しておいた10カ所の中継ポイントのうち、8カ所に敵の待ち伏せがある。敵がいない、と報告されたのは2カ所のみ。
 (……恐らく、全部罠だ)
 別に直感に頼らずとも、流にとってそれは明白だった。待ち伏せが確認された地点はもちろん、待ち伏せがいない、とされた場所にも何らかの罠があるはずだ。いや、包囲戦の基本を考えれば、一見『穴』に見える場所が実は真の罠、というのはよくある手である。
 「ウイングトップ! ソーヴィニア少尉!」
 「イエス、リーダー!」
 流の呼び出しに、若い女モンクが即座に飛んで来る。タートルチームの移動支援班・ウイングユニットを率いるジル・ソーヴィニア。前任者のヨシアからユニットを引き継いだばかりだが、引き継ぎ以前も副官として事実上、ユニットを指揮してきた切れ者である。職業は同じモンクでも、何かと型破りなヨシアとは違って戒律の厳しい名門寺院で行を修めただけに、流の厳格かつ精密な用兵システムとは非常に相性が良い。
 「いいか少尉、退却地点は現時刻を持って全て破棄。緊急だ、『xイニシャル』を使う」
 「イエス、リーダー! xイニシャルの使用を解禁します。ウィングユニット、x1移動用意!」
 『xイニシャル』。
 それは、タートルチームが独自に確保している、いわゆる『緊急避難場所』である。他の中継地点とはケタ違いの安全性と、大量の補給物資まで備蓄された軍事拠点。その場所はチームでも僅かの人間しか知らず、さらにその場所のポタメモを持っているのはウイングトップであるジルと、流の近衛であるウイングコアの2人。あとは流の副官であるユークレーズだけ、という念の入れようである。
 ジルが直ちにワープポータルを起動、そこにタートルチームの先遣隊が飛び込む。現地の安全を確認し、その場でポタメモを取って即座に返って来る。
 「x1に敵影なし!」
 「x2よし!」
 「うむ。x1を中継地点にして、x2に移動せよ。だが油断するな。タートルチーム、重突貫体勢で先陣を切れ。アングロル少尉、頼むぞ」
 「……イエス、リーダー!」
 低く、重く、しかし気合いに満ちた返事が返る。タートルチームの防御班・ウォールユニットのトップ、ダイン・アングロル。ウロボロス4で唯一、流を超える巨体を誇る重戦士が、同じく巨漢揃いの鎧武者達を鼓舞し、真っ先にワープポータルの光に飛び込む。その先で何が待ち受けていようと、後続が到着するまでその陣地を支え切るのが彼らの役目だ。
 「次、ハンマーユニット、ゾシマ少尉!」
 「イエス、リーダー!」
 今度は力強い女性の声。サリサ・ゾシマ。小柄な身体を重装甲で包み、身体より大きな盾を背負った女戦士は、タートルチームの打撃班・ハンマーユニットのトップである。
 「ゾシマ少尉。お前が以後、タートルチームの指揮を執れ。オウル、スワローほか他チームもお前に従うように指示しておく」
 「イエス……? リーダー、どういう事でしょう?」
 女だてらに攻撃班を率いるサリサが、さすがに訊き返した。訊かれた流は身を屈め、サリサの耳に小さく呟く。
 「大佐が裏切った。ならば、xイニシャルと言えども油断はできん。それに……点城に残したユークが危ない」
 「!」
 サリサの身体がはっ、と緊張する。
 「ユークにはヨシアが付いてる。ヤツなら短時間であれば、何としてでもユークを守るだろう。ならばxイニシャルのどこかに避難してくる可能性が高い。必ず保護しろ」
 「……イエス、リーダー」
 サリサの表情が厳しさを増す。
 「オレはギリギリまでここに残らねばならん。見届けたいものがある。もしオレが一時間経っても合流できない場合は……」
 「……!」
 「ユークに伝えろ。『x4の使用を許可する』。4番はユークしか持ってないポタメモでな。そう……『絶対安全』な場所だ」
 「……しかしリーダー!」
 「復唱!」
 「う……イエス、『x4に行け』。スヴェニア中尉に伝達了解!」
 サリサの復唱を確認し、流が屈めていた身体を伸ばす。
 「よし、行け!」
 「イエス、リーダー! ……おいアンタら!」
 流に敬礼を決めたサリサが、流の周囲を固める『タートルコア』のメンバーに声をかける。
 「リーダーをきっとお守りするんだよ! アンタらのその身体も、命も、もうアンタらの物じゃない」
 ぐい、とサリサが顔を上げる。
 「……アタシらタートルチーム、全員の物だ! リーダーの下に、アタシらはいつも一緒だよ!」
 サリサの熱い言葉に、応! と即座に返事が返ってきた。『タートルコア』の精鋭達も、サリサに言われるまでもなく、そのつもりなのだ。
 「御武運を、リーダー!」
 「うむ」
 流はもう、サリサを見送る事すらしない。
 その間にも、ウイングユニットが作る転送輪の光列が凄まじい勢いで伸び、ウロボロス4の総員を次々に飲み込んで行く。
 (……何もせず、無事に退却させてくれる……か。どうやら、こちらには興味がないらしい)
 『タートルコア』達に守られながら、流は夜空に浮かんだ未知の飛空艇を振り仰ぐ。
 (興味はあくまで『あっち』ということか)
 視線を空中から大地に戻すと、そこにマグダレーナの後ろ姿。『月影魔女』の面々を従えつつ、未知の敵を睨み据えている。
 「……どうした流。アンタも早く逃げな?」
 「ノー、マム。せっかくの機会ですので、後学のため見学をお許し頂ければと」
 「ぷっ」
 流を振り向きもせず、マグダレーナが笑う。
 「いいけどね。見物料は高いよ。……どっかでコソコソ隠れて見物してる連中にもねえ!」
 ぶん! 右手の剣を一振り、素振りをくれる。
 目の前の飛空艇を操る敵は、恐らくウロボロスの『他の首』と見てよかろう。『BOT』の件で敵対していたウロボロス2か、あるいはあの飛空艇を発掘した『6』、さらには逃亡したコンドルリーダー・テムドールが、復活させると宣言した『8』かもしれない。
 正直、それはどこでも大差ない。
 問題は、その連中があの飛空艇を使って今、何をしようとしているのかだ。
 (その気になればいつでも、即座にオレたちを消滅させられたはずだ。だが、それをしないで待っている)
 流には分かっていた。マグダレーナにも分かっているだろう。
 (狙いはマグダレーナその人。それも公開の場で『血祭りに上げる』事か)
 つまり、これは一種のデモンストレーションなのだ。
 ウロボロス4を敗った、という単純な事実ではなく、その首魁であるマグダレーナを制したという『名』が欲しいのだ。タイマン勝負で、誰にでも分かるように決着をつけたいのだ。それを、どこかから見ている何者かに、はっきりと見せつけたいのだ。
 だから待っている。
 「気に入らないったら無いねえ、その余裕がさあ」
 マグダレーナの視線が剣呑なものになっていく。半ギレという状態に極めて近い。
 「いつまでも人ナメてないでさ、かかっておいでな!」
 その挑発が聞こえたのかそうでないのか。『セロ』の光翼がひとつ、ちかりと光った。と、見るや、
 「!」
 マグダレーナの立っていた地面が真正面から、一直線に裂けた。ばりばりばりっ! という凄まじい破壊音は、かなり後から響く。
 何の予備動作もない、セロの直線突撃。そして『エネルギーウイング』の1翼による一閃だ。超高熱のエネルギーブレードが大地を抉った結果、光翼に直接触れた土や岩は一瞬で蒸発。そうでない場所では真っ赤な溶岩となって溶け、夜の闇に不気味な真紅の切り傷をさらす。
 もしそこに立ったままだったなら、人間など、いやたとえどんな生き物だろうと一瞬で蒸発していただろう。
 だがマグダレーナも、それに従う『月影魔女』達も、さらには付近で『見学中』の流でさえ、もうそこにはいなかった。
 流とタートルコアの面々は、遥か数百メートルも離れた荒野に移動している。当然、走って移動できる距離でも時間でもない。
 ワープポータルだ。
 タートルコアを形成するメンバーのうち、移動支援を行う『ウイングコア』のメンバーが、あらかじめ荒野の別の地点にポタメモを取っている。
 そして常時、流の後方に転送の光輪を出し続け、危機となればいつでも素早く飛び込めるように準備しているのだ。
 いかにセロの機動力が凄まじかろうが、空間と空間を繋げる魔法に追いつく事は不可能だし、行き先を予測する事も難しい。
 (『マグダレーナ』は……?)
 一瞬で安全圏に逃れた流が目を凝らす。直接見てはいないものの、マグダレーナと『月影魔女』達が彼らと同じ手段でセロの攻撃から逃れたことは間違いない。
 獲物を見失ったセロが、地上スレスレで速度を落としてぐるり、と水平に一回転。
 (ほう……索敵は目視か? その辺は意外と原始的なのかな)
 流が妙な所に感心する。回転するセロの船首が、その流の方に向いた瞬間に一度止まり、また回る。
 (オレたちなど全く眼中に無い、というわけだ)
 目の前の敵に無視されたからといって、それに屈辱を感じるような安っぽい情動など、流という男にはまるで縁がない。むしろ自由に行動できて好都合、と思うぐらいだ。
 「ワープポータルを絶やすな。カウプもだ」
 流が念を入れるまでもなく、タートルコアの支援に隙はない。ワープポータルの光輪も常に、流の背後ギリギリの場所に出し続けられている。流自身が動けなくても、流の周囲を固めたウォールコアの巨漢達が、体当たりしてでも流をワープポータルに飛び込ませる算段だ。
 どっぐぉぉおん!!!
 突如、轟音が荒野に轟いた。流達には耳慣れた超攻撃スキル『阿修羅覇鳳拳』の打撃音。同時に、宙に浮かんだ『セロ』の船体が激しく発光した。
 「……!」
 流はその閃光に目を灼かれつつも、ある種の執念で現場を睨みつける。一片でも多くの情報が欲しい、その一心だ。
 (アレでも傷一つつかないか……!)
 流の目には、『月影魔女』の一人が放った最大級のスキル攻撃が、セロに何の被害も与えられない光景がはっきりと見て取れた。いや、それどころか逆に撃った方のチャンプがその拳から肩まで、それこそ焼き切られるほどのダメージを受けて地面に落ちるのを目撃する。
 (あの光の翼で防いだ……まさに攻防一体の武器というわけだ)
 セロの翼が、地面に倒れたチャンプに迫る。が、すぐさま駆けつけたハイプリーストが彼女を治療し、即座にワープポータルを出して退避。
 他のメンバーからの追撃はない。最大級の一撃が通じなかったことで、正攻法では到底無理、と即座に判断したのだろう。
 いや、それは最初から分かっていたのかもしれない。 
 彼女らを率いるマグダレーナが望んだのは、『再現種』たる自分の力が『戦前種』に比肩しうるか否か、それを確かめる事だったはずだ。
 ならば……。
 ぴしゃぁああん!
 荒野に、新たな衝撃音が響いた。セロの光翼が繰り返し大地を焼き切ったため、異様な焦げ臭さに包まれた荒野が、再び異形の響きに満たされる。
 夜目にも鮮やかな、しかし神秘の力を凝縮した巨大な魔法陣。それが上下に2つ、『セロ』を挟み込むように出現する。
 そのさらに向こう、セロの光翼と魔法陣の光に照らされた夜の荒野の上に、マグダレーナの姿。
 魔法の触媒石である青石を連ねた、あのネックレスを掲げた独特の詠唱ポーズ。
 (……出たな!)
 流が、ここだけは決して見逃すまいと目を凝らす。

 『転送断頭台(ギロチンポータル)』

 これこそ『完全再現種』マグダレーナ・フォン・ラウムの必殺技。空間をつなげて物質を転送する魔法の光輪で、敵となる対象物を挟み込み、その転送による吸引力を使って対象物を引き千切る。
 その破断力に抵抗できる物は存在せず、理論上いかなる物質もまっ二つに引き裂くことが可能だ。
 びりびりびりびり!!
 夜の底を満たした大気が、盛大に震える。魔法陣が回転し、転送の光輪がその神秘の口を開けた。
 みしっ! とセロの巨大な、銀色の船体が軋んだ。MVPと呼ばれる最強クラスのモンスターさえ、手も足も出ないまま引き千切られてしまう必殺の破断力場が、その船体を完全に捉えたのだ。
 「……よしっ!」
 流を囲むタートルコアのメンバーから、思わず歓声が上がる。徹底的に訓練されたエリート中のエリートである彼らだが、さすがに『セロ』のような得体の知れない敵を相手にして、不安もあったのだろう。それをマグダレーナが完全な勝ちパターンにハメたのだから、多少の感激は仕方ない所だ。
 が、流は同調しない。
 (まだ勝負はついていない)
 観察をやめない。
 セロを上下に挟み込んだ2つの光輪が、さらに強い輝きを放つ。みしみしみしみしっ! セロの船体の軋みが大きくなる。転送断頭台のクライマックスだ。例え何者だろうか、数秒後にはまっ二つに引き裂かれる運命。
 だが、全てを破断する奇跡の光輪は、もう一つの奇跡の光によってその力を阻まれた。
 ばしっ! セロの船体から、再び猛烈な光が放たれた。エネルギーウイング『ルシファー』、その攻防一体にして推進機関でもある、余りにも万能な光の翼が、細長いセロの船体後部からまるで羽ばたくように伸長される。そして……
 「む?!」
 今度は、流自身が思わず呻いた。セロの『ルシファー』が力強く羽ばたき、その光を刃と化してワープポータルの光輪に襲いかかったのだ。
 がしゅぅぅぅっっ!!! 12枚の光翼が、6翼ずつ上下に分かれ、光輪の中に吸い込まれる。過日、プロンテラの石畳の上で転送断頭台によって羽を毟られたボスモンスターの姿が蘇る。
 だが、今回ばかりは事情が違った。
 羽は毟られない。それどころか、吸い込んだ光輪の中に膨大なエネルギーを流し込み、逆に光輪を内側から引き千切りにかかる。
 これほど巨大なエネルギーの衝突は、既に伝説となった聖戦時代でさえ稀だったろう。
 しかし、その拮抗は一瞬。
 ばしぃぃいいん!
 遥かに広がる夜空すら歪めるほどの猛烈な衝撃波が、地上の流たちに叩き付けられる。バリアの魔法が鋭い音と共にダメージを跳ね返さなければ、その衝撃波だけで人間など即死しただろう。
 「……なるほど、化け物だな」
 そんな中でも、微動だにせず状況を見つめ続けた流が、ぽつりと呟いた。
 転送の光輪が消えている。
 無敵を誇るはずの『転送断頭台』は、敗れた。
 「マグダレーナ様!」
 流が叫ぶ。
 マグダレーナと『月影魔女』達の全員が、荒野に倒れ伏していた。マグダレーナの転送断頭台とセロの光翼、2つの激突が巻き起こした衝撃波をまともに喰らったのだ。いかなる時も防御呪文を絶やさなかった『タートルコア』に対し、彼女達は一瞬、対処が遅れていた。
 だが、それを責める事はできまい。『月影魔女』達の、養母たるマグダレーナへの忠誠と信頼は絶対だ。マグダレーナが敗れるなど、最初から想像もしていなかったに違いない。もっとも一条流に言わせれば、
 「甘い」
 となるだろうが。
 それでも、マグダレーナが最初に身体を起こしたのはさすがだった。月影魔女たちも、何とか行動を回復する。
 しかしセロは今度こそ、待っていなかった。
 びぃぃぃいいい!!!
 12枚の光翼『ルシファー』を全開にし、マグダレーナに殺到する。その巨大な船体が一瞬で音速に達する機動性。今や無敵となった光の刃が、地上の敵を灼き尽くす勢いで振り抜かれる。
 ずばん! 
 マグダレーナ達は辛くも直撃を逃れたが、その衝撃と高熱の余波でまた吹き飛ばされる。今度こそ、全員が動けない。
 ただでさえ荒れ果てた辺境の野原が、今やセロの攻撃でズタズタだ。
 「マグダレーナ様!」
 流が再び叫ぶ。

 『無駄だよ、流』

 流の叫びをかき消すように、夜空にもう一つの声が響いた。
 「テムか……!」 
 テムドール・クライテン。ウロボロス4に反逆した末、逃亡した元コンドルリーダー。
 その底抜けに明るい声だ。
 『マグダレーナは敗れた。もう彼女の『神通力』も通じない。僕の言った通りになったろう?」
 大音量の含み笑い。
 『ルーンミッドガッツ王国元老院はたった今、彼女を犯罪人として指名手配した。罪状は、王国軍内で私的に秘密組織を結成し、他国のテロリストを引込んで王国の転覆を企んだ反逆罪。他国のテロリスト、というのはキミたちのことさ、流?』
 「……」
 『王国の影を牛耳ってきた外人部隊、ウロボロス4も終わりだ。キミ達には帰る場所も、逃げ場も、無い』

中の人 | 第九話「金剛不壊」 | 18:02 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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