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第九話「金剛不壊」 (6)
  「スヴェニア中尉殿! ゾシマ少尉! こっちだ急げ!」
 敵陣をぶち抜くように走るサリサに、重い、しかし頼もしい声が届いた。
 タートルチーム・ウォールユニットのトップ、ダイン・アングロルだ。今、チームを率いて文字通りの壁を張り、敵の包囲を辛抱強く跳ね返している。
 「ダイン! 飛び込むから道開けなっ!」
 「応! 真っ直ぐ突っ込め!」
 鈍くて不器用、と、自ら認める巨漢の、シンプルだが確かな指示。サリサはその声を目指して走る。そこに必ず道はあると、ただ信じて走る。
 ふっ、と、背負った盾を撃つ剣戟の衝撃が止んだ。魔法も、矢も降らない。
 抜けた。
 「ウォールユニット! 『根を降ろせ』! 一歩も通すな!」
 ダインの、巨象の咆哮にも似た命令が轟く。壁を張ったウォールユニットのメンバーが、その身を包んだマントを広げた。下手な鉄板より強度のあるモンスターの革にゴツい鎖を編み込み、なおも貴重なカードを挿すことで魔法的な防御力まで付加した防具だ。
 そして、その鎖の端を隣同士、頑丈な連結器具でつないで行く。
 じゃらららららん!
 その強靭なマントが今や、不抜の壁となって立ち上がった。
 「通すな! 一歩も通すな! 隣の者が倒れたなら支えよ! その隣が倒れても支えよ!」
 巨象が吼える。
 「退く場所は無い! 行く場所も無い! ここぞ! ここぞ!」
 何かに言い聞かせるように繰り返し叫ぶダイン。彼を始め、ウォールユニットの多くが、他のチームからのドロップアウト組だ。身体は大きいが武術はスジ悪で、足も遅い。戦術への理解も、戦闘勘も鈍い。
 でかいだけの木偶の坊、独活の大木。
 役立たずのレッテル。
 そんな彼らに居場所をくれたのがタートルリーダー・一条流だった。仲間に入れてくれたのが、タートルチームだった。 
 戦えるのはここしかなかった。
 信頼してもらえるのはここだけだった。
 ここに。
 だから。
 「ここが我らの居場所ぞ! 我らの家ぞ! 我らの揺りかご、我らの墓ぞ!」
 応っ!
 応っ!
 仲間達の命を背に、巨象の群れが吼える。
 いかな大軍と言えども、この壁をやすやすと崩せるものではない。
 「急ぎなユーク! 『X4』だ! 全軍を転送する!」
 「……は、はい……っ!」
 ウロボロス4が形成する自陣の奥に、サリサとユクレーズは守られた。2人の近くには既に、転送班であるウイングユニットのトップ、ジル・ソーヴィニアが部下を連れて待機している。ユークレーズがX4への転送輪を出すと同時に彼らが飛び込み、向こうでポタメモを取って帰って来る。後はタートルチーム得意の転送システムで一気に転送輪を増やし、並べ、ウロボロス4の全軍を一気に移動させるのだ。
 ユークレーズがポケットから、ワープポータルの魔法を使うための青い触媒石を取り出す。
 ぽろり、と地面に落とした。
 あわてて拾おうとするが、掴み損ねて余計に遠くへ転がる。
 拾うのをあきらめて、別の石を取り出すが、それも落とした。
 「……っ……!」
 ユークレーズの顔が歪む。見かねたジルが、自分の触媒石を手渡したが、それもぼろぼろと落としてしまう。
 手が震えていた。いや、手だけではない、ユークレーズの全身が震えていた。
 醜態だった。中尉として、チームのサブリーダーとして、あり得ない醜態だった。
 タートルチームの規律は、どこよりも厳しい。実戦の場で、魔法を使おうとして触媒石を落とす、などという失態を犯せば『懲罰モノ』である。通常なら、リーダーの一条流から厳しい叱責を受けた上に階級を降格され、さらに多くのペナルティを科されるだろう。
 だが今、ユークレーズを責める者はいない。責める視線すらない。
 だって、懲罰なら受けている。

 轟!

 轟!

 敵陣の向こうから響くあの咆哮。あの男が、ヨシアが、まだ戦っている。たった1人で立っている。
 それを、置いて行かねばならない。見捨てて行かねばならない。
 この少年にとって、それが懲罰でなくて何だというのだろう。
 「……僕は……僕は……ヨシアさんを……っ!」
 ユークレーズが、喉の奥から悲鳴のような声を絞り出した。
 「……助かったのにっ! 先に『X4』に行けば! 助けられたのに!」
 頭を、胸を、その指が掻きむしる。心まで裂けよと爪を立てる。
 あの時。ヨシアと2人、X3から逃げる時、しかしユークレーズは決断したのだ。
 『X4は使うな。話もするな』
 一条流の、その命令を守る事を。
 安全な場所へ逃げる事も、そんな場所があることをヨシアに告げることもせず。
 黙って、ここ『X2』へのワープポータルを出したのだ。
 ユークレーズの選択。その結果としての『今』。
 「あ……ああああ!!! ごめんなさい! ごめんなさいヨシアさん! ヨシアさんっ!」
 「ユーク! しっかりしなっ!」
 叫ぶユークを、サリサが叱咤した。
 「アンタが真っ直ぐココに来てくれなきゃ、アタシらはここで死んでた! ヨシアがあそこを守ってくれなかったら、アタシとアンタもあそこで死んでた!」
 だが、そう叱咤するサリサの表情にも、壮絶な色が浮かんでいる。
 「そして今も死んでる! この瞬間も! 仲間が死んでるんだよユーク!」
 サリサの言葉は真実だ。敵の攻撃は止むどころか、さらに激しさを増している。
 ウォールユニットが作り上げた『人間の壁』に、猛烈な攻撃が加えられている。1人が倒れ、それを支えようとしたもう1人も倒れる。後ろで支援するプリーストが蘇生をかけるが、生き返ると同時にまた倒れる。『いたちごっこ』ではない。死んでいる時間が、どんどん長くなる。
 死んだ人間を蘇生できる魔法やアイテムが存在する戦いでは、戦いの趨勢は死者の数ではなく、敵と味方の『死んでいる時間』を比較することが一つの尺度となる。優勢な方は、味方が死んでもすぐに蘇生させて戦いに復帰させられるが、劣勢な方はそうはいかない。蘇生してもすぐにまた殺され、そのうち蘇生も間に合わなくなって、放置される『死体』が増え始める。
 ウロボロス4は現在、そうなりかかっていた。生きていても死んでいる、『死に体』に近づいている。
 時間がない、どころかもうリミットはとっくに過ぎているのだ。
 「辛いのは分かるユーク。アタシだって、アイツを置いて行くなんて嫌さ」
 サリサが、むしろ静かな声で語りかけた。
 「アイツと一緒に戦って、皆してここで死ぬってのも、アリっちゃアリだ」
 サリサの、その言葉の内容は壮絶だが、その声音はあくまで静かなものだった。つまり、本気だ。
 「でもアンタは、本当にそれでいいのかい、ユークレーズ・スヴェニア?」
 「……!」
 びくん、とユークレーズの身体が大きく、震えた。 
 ぎゅっ。
 ユークレーズはその時、自分の手を別の細い手が握るのを感じた。
 ジルだ。ジル・ソーヴィニア。今、敵陣のど真ん中で戦っているヨシアから、ウイングユニットのトップを引き継いだ女モンク。色白のスキンヘッドを華奢な兜で包み、そして、じっとユークレーズの顔を見つめている。
 その目には、涙。
 その唇には、血。
 形の良いその唇を、白い歯で噛み切っていた。
 (……ああ……そうなのか……)
 その涙と血の色を目にして、ユークレーズは初めて気づく。
 ジル・ソーヴィニア。彼女もまた、ヨシアが好きだったのだ。ヨシアとは上司と部下の関係だったが、何かにつけて衝突した2人だった。いや、衝突というより、大雑把でいい加減なヨシアに、生真面目なジルが一方的に噛み付き、呆れ、軽蔑していた。

 『いい加減にして下さい、ヨシア少尉。規律を何だと思っているんです、貴方は!』
 『って、んなぶっ固えコト言うなよ、ジルよぉ。ガチガチにしたってさ、良いことばっかりじゃねーよ?』

 この騒ぎはウイングユニットの、いわば名物だった。またやってる、ホント仲悪いよねあの2人、と。
 だが、本当はそうではなかったのだ。
 彼女も、あの豪放で磊落で、明朗で快活で、そして誰よりも強靭な。あの男の事が好きだったのだ。
 見捨てて行きたくなどないのだ。
 だが、それが『規律』であり、ウイングユニットであり、タートルチームである。それを裏切ることもまた、彼女にはできないのだ。
 ぎゅっ。
 ユークレーズの手を握ったジルの手から、青い触媒石が押し込まれるように手渡される。
 ユークレーズが今度こそ、それを落とさないように。
 だってそうしないと、ジルだって落としてしまいそうなのだ。
 「……っ!」
 ユークレーズが石を握りしめて、そして立ち上がった。
 痛い。だがそれは、自分だけの痛みではない。
 喪失。だがそれは、自分だけの喪失ではない。
 ユークレーズにもまた、その身を捨てでも守るべきものがあるのだ。
 ヨシアと同じ様に。
 
 「……ヨシアさんっ!」

 声の限りに叫ぶ。
 返事は無い。

 「……ありがとう……!」

 返事は無い。
 
 「ワープ……」
 ユークレーズが奇跡の魔法を唱える。
 詠唱は、少し時間がかかった。
 「……ポータル……っ!」
 転送の輪が光る。
 「ウイングユニット! 続きなさいっ!」
 全てを振り切るように、ジルがその光に飛び込んだ。あとは、いつも通り。
 いつも通りにするだけだ。

 (……それでいい)
 ヨシアの脳裏を、安堵の風が吹き抜けた。
 ユークレーズの声は聞こえていた。どんな乱戦でも、混戦でも、その声を聞き間違える事なんかない。
 もう、ヨシアは戦っていない。立っているだけだ。
 敵に囲まれ、あらゆる方法でめった撃ちにされながら、もうわずかしか残っていない命を削り取られながら。
 それでも、ヨシアは笑った。
 (……礼を言うのはオレの方さ、ユーク)
 守るモノの無かった自分に、あの少年は守るモノをくれた。敵から何者かを守ること、それだけが自分の人生なら。
 それは、命をくれたのと同じ事だ。
 ヨシアの想いは、実を結ばなかった。いや、最初から実を結ぶはずの無い想いだった。
 だけど、それでも。
 それだとしても。
 (ユークよぉ……)
 もう記憶の中でしか見られない、それもあとわずかで消えるはずの、プラチナブロンドの無邪気な笑顔。寝顔。泣き顔。
 真っ赤になって怒った顔。
 やっぱりそれが一番しっくりくるのが、この期に及んで可笑しかった。
 (……お前の、リーダーへの想いも、決して実は結ばないだろうけど……)
 その顔に、記憶にしかないその顔に、ヨシアは語りかけた。
 (けれど、それでも……それでもな……)

 「誰かを好きになるって事はさ、この世で一番素敵な事なんだぜ?」
 
 その言葉を、自分が言葉として発したのか、それとも脳裏で呟いただけなのか、ヨシアにはもう分からなかった。
 しかしその言葉が決して消えない事、それだけは不思議と確信できた。
 この身が砕けても。この身が裂かれても。この身が灼かれても。
 この血と肉の最後の一片が、この世界から消えてしまったとしても。

 その想いだけは、決して砕けないことを。

中の人 | 第九話「金剛不壊」 | 18:04 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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