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第九話「金剛不壊」 (7)
  『さて、どうする流? キミなら今からでも、決して悪いようにはしないよ?』
 夜の荒野に浮かんだ『セロ』から、元コンドルリーダー・テムドールの声が響いた。
 どんな時でも、それこそ逮捕されて独房に幽閉されてさえ晴朗さを損なわない明るい声。不気味などに邪気がなく、生まれてから今まで不機嫌だった事が一度もないのでは、と思わせる相変わらずの名調子だが、今夜はさらにそれに磨きがかかっているようだ。
 まあ、それも仕方ない所だろう。
 『戦前機械(オリジナルマシン)』と『完全再現種(パーフェクト・リプロダクション)』との対決は、見事に前者の勝利に終わった。
 王国の影の世界で、神とも言われたマグダレーナ・フォン・ラウムは敗れたのだ。
 『頑固きわまりない王国元老院のお年寄り達も、ようやく理解してくれたよ。その女『マグダレーナ』は神なんかじゃない。怖れるにも足りない。あとは排除するだけだ』
 テムドールの言葉がいかに自慢げに聞こえたとしても、決して誇張ではない。
 マグダレーナという女性が、王国の中枢において巨大な影の権力を持っていることは既に書いた。彼女の信奉者、味方は数知れない。
 が、これは同時に、多くの敵がいるという事実の裏返しでもある。『あの女さえいなければ』と考える権力者は決して少なくないのだ。
 しかし、彼女が持っているのは権力だけではない。彼女自らもまた、前代未聞の『武力』を備えた無敵の戦闘者でもある。権力闘争といっても、嫌がらせや密告程度しか能のない連中が、どう歯噛みしたところでマグダレーナを排除することなど不可能だ。
 いや、不可能だった、というべきだろう。ついさっきまでは。
 『戦前機械(オリジナルマシン)』セロの力で、こうして実力で彼女を倒せると分かった今、彼女を邪魔者扱いしてきた人間にとって、あとは自らの権力にモノを言わせるだけのことだ。
 適当な罪状を被せ。
 それを看板に軍を動かし。
 マグダレーナという存在を、その信奉者や味方ごと消し去る。
 恐らく今頃プロンテラの城内では、反マグダレーナ派による粛正の嵐が吹き始めているだろう。当然、彼女が仕切ってきた『ウロボロス4』もまた、真っ先に粛正される運命だ。
 『王国内での『マグダレーナ』は、もう死んだも同然さ。ウロボロス4もね。……義理など尽くしても無駄だよ、流?』
 「……なるほど、見事なものだ」
 流はゆっくりと言いながら、しかし一方ではタートルコアに指示を出し、倒れたまま意識不明となったマグダレーナの身体を確保させる。一緒に吹き飛んだ『月影魔女』の面々も、傷ついた身体を引きずりながら流の元に集まる。
 だが、集まったからといって何が出来るワケでもなかった。確かにその場の全員がそれなりの力を持つ戦士ではあるが、眼前の『戦前機械』セロの前では、およそ戦力と呼べるようなモノではないのだ。
 「完全にしてやられたな、テム」
 「仕方ないよ、流。君の能力のせいじゃない」
 テムドールが慰める。だがそれは思いやりなどではなく『勝者の慈悲』。
 「君じゃない誰でも、ここまでは予測できなくて当然だ。言うなればこれは、君と僕との運の差だよ」
 「運か」
 「そうさ。だから君のせいじゃない」
 繰り返す慰めの声にも、底なしに明るい響きしかない。生まれながらの勝者、というのはここまでのものか。
 「で? どうする流? そこの実験動物を見逃す事はできないし、君があくまでそれに忠義を尽くすと言うなら仕方ないが……僕としては君の力が惜しい。ココで一瞬で皆殺しにするのは簡単すぎる」
 「……」
 流が黙る。太い腕を組み、鍛え抜いた巨体で大地に仁王立ちの姿勢。しかしその頭脳は、聞けば聞こえるほどの音を立てて回転しているはずだ。
 「……流、逃げな……」
 細い、掠れた声が、その背後から響いた。
 「アンタらも逃げるんだ……どうせ狙いはアタシだ、何としても時間を稼ぐから……」
 マグダレーナだ。意識を取り戻したらしい。
 流が振り向く。
 「情けないが、アタシがしてやれるのはもうコレぐらいさ。行くんだ流、故郷へ帰りな」
 枯れ草の上に横たえられた年齢不詳の美女、その顔は治癒魔法も追いつかないほどに焼けこげ、ひょっとしたら年齢相応かもしれない皺に覆われている。トレードマークの一つでもある、青い触媒石を連ねたネックレスはバラバラに千切れ、神器とも比せられる装備もボロボロ。背中や胸元、脚に二の腕、あちこちの肌も露出していた。何とも無惨な姿だ。
 「……マグダレーナ様」
 流が腕組みを解くと、つかつかと近寄り、マグダレーナを助け起こす。
 「……済まないね、流。だけど、急ぎな。この分だとウロボロス4の連中も待ち伏せを受けてる。アンタが行ってやらないと」
 「御心配なく。それより……」
 ぐい、と、流の巨体がマグダレーナの身体を、まるで抱きしめるように寄り添った。
 「……御免」
 「……!」
  びくん! と、マグダレーナの身体が痙攣した。その左右で色の違う、あの瞳が一瞬だけ見開かれ、力なく閉じられる。そして、ぐったりと流の肩に崩れ落ちた。
 「な……?! タートルリーダー! 貴様!」
 「動くなっ!」
 驚愕する『月影魔女』を、流の気合いが制した。
 「動けばマグダレーナ様のお命は頂く。ハッタリではないぞ」
 ひょい、と身体を巡らし、肩に担いだマグダレーナの背中を見せる。そこには小振りの、短剣らしい柄が生えていた。
 マグダレーナを助け起こす振りをして、流が背中から刺したのだ。その位置は正確に、心臓。
 「見えるか、テム」
 「見えるよ、流。だが殺したワケではないようだね?」
 飛空艇の中からどうやって見ているのか、しかしテムドールの返事は明確だ。
 「ああ。これは麻痺、毒、睡眠、呪いの4種類の状態異常を起こす針を数十本、束ねたものだ。それを心臓ギリギリに打ち込んである」
 「なるほど……さしずめ、心臓が鼓動する度に、その数十本の切っ先が心臓にちょっとだけ刺さって、必ずどれかの状態異常にかかる、というわけかい?」
 「その通りだ」
 流が落ち着いた声で応えた。同時に、タートルコアに命じて『月影魔女』の女達を武装解除させ、素早く拘束させる。流に従うコアメンバーも最初は意外な成り行きに驚いたようだが、そこは選び抜かれたタートルチームの精鋭。このリーダーがどんな状況で何をしようとも、いつまでもオタつくような雑魚はいない。
 「この『完全再現種』を制圧するために、こっそり作っていたモノでね。まあささやかな武器ではあるが、ぶっつけで役に立ってよかった」
 ぶっつけも何も、初めて使う武器を背中から正確に、それも心臓ギリギリに打ち込むというのがそもそも無茶苦茶だ。だが確かにその奇怪な武器は見事、マグダレーナの心臓をギリギリで刺し止め、心拍に合わせて収縮するそれに微かに触れるだけ。マグダレーナの自己治癒力なら、その程度の傷はすぐ治ってしまので死ぬ心配はない。だが、状態異常の方はそうはいかない。確率で考えても、それが刺さっている限り、一分間に数十回という心拍の度に、ほぼ確実にどれかの状態異常にかかり続けるだろう。いかにマグダレーナといえども、ここから自力で脱出する事は容易ではあるまい。
 「完全再現種殺し」。
 たとえ表面上は服従していても、常にそれに対抗する手段は考えている。それが一条流という男の本質、というは誇張でもなんでもないらしい。
 「君への土産としては、『死体』より『生け捕り』の方が価値があるんじゃないかと思うが? テム?」
 「お見事、と言っておくよ、流。その土産、喜んで受け取ろう」
 言葉とともに、『戦前機械』セロがゆっくりと、流達の眼前に舞い降りる。
 空には明るく、美しい月。
 だが、謀略と裏切りに満ちた地上の闇を照らすには、その光では足りない。



 地面に膝をついたユークレーズの身体を、清浄な夜露が濡らした。
 しん、と静まり返った、森の一角。ふた抱えもある巨木が、星を飾った夜空に向ってどこまでも真っ直ぐに伸びている。足元には、大人の膝まで埋まるほどの羊歯類が、夜露をたっぷりと乗せて生い茂っている。木々や草から染み出した心地よいエキスを含んだ風が、ボロボロに傷ついたウロボロス4の面々を優しく撫でて行く。
 『x4』。
 あの一条流をして、『絶対に安全』と保証した避難場所。
 敵の追跡はない。
 今は、死者の蘇生と負傷者の治療に全力を挙げている。特に、撤退のしんがりを務めたウイングトップ、ジルの負傷が激しい。ワープポータルを最後にくぐるのが彼女になるため、押し寄せる敵の攻撃を一身に受ける事になるからだ。それでいて、自分より先に敵がそれをくぐることのないように、転送輪を守らねばならない。全身に切り裂かれ、矢弾を浴び、魔法で焼かれた凄惨な姿でここにたどり着いた時は、文字通り生きているのが不思議なくらいの有様だった。
 だが、命の助かった彼女はまだマシだった。ここにたどり着けなかった者も相当数に上る。最盛期は1万を超えたウロボロス4も、今はその数を半分近くに減らしていた。タートルチームを筆頭に、ロビン、スワロー等の各チームも、被害が大きい。
 「……」
 その中にいて、ユークレーズは動かない。いや、動けないでいた。肉体よりも、精神へのダメージが大きい。
 いや、大き過ぎた。
 目の前でヨシアを失った。いや『見殺しにした』。
 そして、タートルリーダー・一条流までもがいない。あの場所に置いて来てしまった。それを知った時には、僅かな時間ではあるが半狂乱になったユークレーズである。サリサやダインといったユニットトップ達が彼をなだめ、あるいは力ずくで抑え込んでくれなければ、ひょっとしたらユークレーズ1人、あのx2へ再転送で戻っていたかもしれない。
 さすがに今は落ち着いている。が、落ち着いているからと言って何だというのか。失ったモノが戻るとでも言うのか。
 表情のない顔で、ただ呆然と座り込むユークレーズを、あのサリサでさえ遠巻きに見守るしかなかった。
 「……」
 草むらの中に膝をついたまま、ふとユークレーズは気づく。ポケットの中に何かある。
 ポケットに手を入れたユークレーズが取り出したのは、1個の『金剛焼き』だった。
 ヨシアが育った寺で作られたという、世界で一番堅い焼き菓子。あのx2の倉庫で、これをいくつかポケットに入れた事を、ユークレーズは思い出す。
 そして、思い出すのはそれだけではない。
 「……う……」
 だめだ。泣くな。
 いくらそう思っても、涙は言う事を聞いてはくれなかった。
 「……うっ……う……っ」
 堅い菓子を握りしめながら、ユークレーズは泣いた。せめて、声だけは殺す。例え聞こえても、それを笑う者も怒る者も、彼の周囲には1人もいないだろう。しかし今、声を上げて泣く事は、何かを裏切る事になる、そう強く感じたからだ。
 ユークレーズという命を、生かしてくれた何かを。
 ……かさっ。
 「……うっ?!」
 突然、草をかき分ける物音がした。近い。
 「誰だ?!」
 ユークレーズが涙を拭い、金剛焼きを急いでポケットに戻して、立ち上がって身構える。近くにいたサリサが、部下を連れてすっ飛んで来た。
 「どうしたユーク!」
 がさっ!
 ユークレーズの真正面の草むらが割れた。
 「?!」
 ぬうっ、と、姿を現したのは、夜目にも真っ白な塊。大型のイノシシほどの大きさだが、イノシシではない。
 「……ルナティック?!」
 ユークレーズが素っ頓狂な声を上げた。
 それは確かにルナティック、白いウサギに似た低級のモンスターだった。だが通常、その大きさは同じくウサギ程度のはずだ。コレがボス化したモンスターに『エクリプス』がいるが、それではない。
 見たことも聞いたこともない、超の字の付く大型ルナティックが草むらから顔を出し、ユークレーズとウロボロス4をじーっ、と見つめている。
 片目がない。
 片目が、大きな傷でつぶれているのだ。そのせいでもあるまいが、ユークレーズ達を見つめる姿には何かしら『風格』すら感じられる。この森のヌシ、と言われても納得しそうだ。
 「……あ、え……?」
 何となく、ユークレーズもあたあたしてしまう。真夜中の突然の闖入を、森のヌシに咎められているように感じたからだ。

 「……駄目デスよ、マサムネ。その方々はお客様デス」

 ころん、と小さな鈴を振るような声が、森の闇の中から響いた。
 少女の声。
 「『瑞波四郎正宗(みずはしろうまさむね)』。立派な名前をもらったのデスから、お行儀よくするデス」
 その声に、ルナティックがふい、と身を翻すとぴょん、とひとつ跳ねた。その堂々たる巨躯にふさわしく一跳びで数メートルの空中を駆け、すと、と音も無く着地する。
 着地した側に、声の主であろう少女が立っていた。豊かな髪をおかっぱに整えた、年齢は恐らくは十代前半。『スーパーノービス』と呼ばれる職業の衣装が反則級に似合っている。はっきり言って、とてつもなく可愛い。
 マサムネと呼ばれた巨大なルナティックはその隣、後ろ足だけですっくと立ち、少女の護衛とでも言わんばかりに、その隻眼でまたこちらを見つめている。
 森のヌシと森の妖精。神話の1シーンのような絵。
 ユークレーズも、またサリサを始めタートルチーム、あるいは他のウロボロス4の隊員達までが、何かに魅入られたように呆然していた。
 「あ、とりあえず皆さん、そこにいると危ないデスから」
 少女がその両手をぱっ、とバンザイの形に挙げると、
 「しゃがんで下さいデス。ほら、こうやって」
 バンザイの両手をおかっぱ頭の上にぺたん、と乗せて、少女がその場にぴょこん、としゃがんだ。隣の『マサムネ』も一緒にぺた、と地面に伏せる。
 「……は……?」
 ウロボロス4全軍がはた、と凍り付く。
 「急ぐデス!」
 怒られた。
 たった今、まさに『死地』から命からがら逃れてきたばかりの強者達……だからこそ、この意外すぎる展開に完全に虚を突かれた、というのが言い訳になるのかどうか。
 少女に言われるまま、全員がその場にしゃがんだ。頭に手を乗せて。
 五千近い精鋭軍団の、全員の頭の上に盛大な『?』が踊ったのも当然だ。
 だが、その『?』が一斉に『!』に変わったのが次の瞬間。
 ひゅん!
 何かが風を切る音が、少女の後ろから響いた。
 ひゅん……ひゅん……ひゅん……
 その音が連続して、しかも近づきながら大きくなる。何か巨大な物が、空中を回転しながら近づいて来る。
 「そ、ソードガーディアン……?!」
 ユークレーズが今度もまた、呆然と呟いた。ソードガーディアン。それは、難攻不落のダンジョンの奥深くで冒険者を待ち受ける、極めて高レベルのモンスターだ。それ一匹だけで、油断すれば熟練のパーティーといえども壊滅しかねない。
 それが縦に回転しながら飛んで来る。
 これを言葉で説明するのは非常に難しいのだが、例えるなら体操競技の『伸身宙返り』を思い出して頂ければよい。身体をピンと伸ばした『気をつけ』の姿勢のまま、空中で縦に宙返りするあれだ。
 その『伸身宙返り』を、さながら風車のように繰り返しながら、ソードガーディアンが飛んで来る。
 びゅんびゅんびゅんびゅんっ!
 モンスターの身体が少女の頭上を越え、居並ぶウロボロス4の頭上も飛び越えて、
 ずっどおおおん!!!
 遥か森の向こうの地面に、頭から突き刺さって、止まった。刺さった身体が真っ直ぐだったのは一瞬、すぐにべちゃっ、と地面に崩れ落ちる。既に命は尽きていたと見えて、その身体は即座に崩壊。退治されたモンスターの末路だ。
 後に残ったのは、一枚のカード。
 「わ! 出たデスっ!」
 それを見て、しゃがんでいた少女が歓声を上げた。即座に立ち上がり、ででででででーっ、と恐ろしいスピードでウロボロス4のど真ん中を突っ切ると、
 「ソードガーディアンカード! 取りましたデスっ!」
 少女が森の彼方、モンスターが飛んで来た方向に向かって叫んだ。
 返事は、すぐに返って来た。
 「うむ、でかしたぞ『咲鬼』」
 ずん、と森が揺れたような錯覚。いや、錯覚ではなかったかもしれない。
 ユークレーズは、そしてウロボロス4の隊員達は見た。
 生い茂る巨木を抜けてくる細い月光の中から、燃上がるような真紅のペコペコが悠然と進んで来るのを。
 そしてその背にまたがり、巨大な斧を担いだ女武者が、これまた悠然と微笑むのを。
 「今日は実に良い日だ」
 女武者の笑みが深くなる。
 「肩ならしにモンスター叩けばカードは出るし、客人も大勢。また楽しからずや」
 その言葉通りなら、先ほどのソードガーディアンを縦回転で吹っ飛ばしたのは、この女武者なのだろう。そして、そんな事が出来る武人が、しかも真紅の巨鳥を騎鳥とする女なぞが、この世に何人もいるワケがなかった。
 ユークレーズが何度も、何度も、上官である一条流から聞かされた、あり得ない武勇伝の数々。
 そして、その名前。
 「……一条、綾姫様……!」
 「おう。確かにオレが綾だ」
 静、香の姉にして、一条三姉妹の長女。瑞波大将軍・一条綾が、盛大な笑顔でにっこりと応えた。
 「も、申し遅れました、我々は一条流様の部下で……」
 「ああ、言わんでいい。言わんでもわかる」
 大慌てで頭を下げるユークレーズを、綾が上機嫌でさえぎる。
 「『ウロボロス4』だろう? 我が父上殿が現役時代に、さんざん付き合ったからな。……そうか、さすがは流義兄様、早くもウロボロス4をシメたと見える。しかも、もう既にひと暴れしたらしいな?」
 わっはっは。綾の笑いはどこまでも楽しげで、影の欠片もない。
 「よしよし。はるばると良うおいで下されたぞ、お客人。ご安心なされ、ここは天津・瑞波の国は『龍ヶ背(たつがせ)』という、我が一条家の隠し天領だ。一族の者しか知らぬし、立ち入りもせん。お客人らはもう絶対安全だ。オマケに……」
 オレもいるしな、と綾はまた笑った。
 なるほど、『x4が絶対安全』とはこのことか。
 「流義兄様の事も心配はいらん。オレには分かる。……うむ、いつもより元気なぐらいだなこれは」
 うんうん、と勝手にしゃべり、勝手に納得し、勝手に上機嫌。目の前の数千の精鋭軍団すら、本当に野ウサギの群れぐらいにしか思っていないようだ。
 『独壇場』という言葉は、この女将軍のためにあると言われたらうっかり信じそうな様である。
 「綾様、カード、カード!」
 「おお咲鬼、ご苦労」
 ででででーっと駆け戻って来た咲鬼から、綾が悠然と貴重なカードを受け取る。
 そして、右手の斧をぶぅん! と一振り。それだけで、数千の軍勢の端々まで熱風に似た刃風が届く。
 「うむ、客人にカードに、なんとも良き日だ。……そしていよいよ!」
 この日一番の、晴れ晴れとした笑顔。
 
 「オレの出番も近いと見えた!」
 
 続く。
中の人 | 第九話「金剛不壊」 | 18:05 | comments(1) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
し…しんだ…だと…

ハゲ死んだ!!どういうことなの!!ハゲが!しん……しん…………うわぁぁあんハゲがしんじゃったよぉおー!

ハゲのくせにカコイイちりぎわとか…どういうことなの…


いやあ激しい回だった…伝説にそして歴史に残る回だった…そうだなぁ……名前をつけるなら…「ハゲ伝説」…?だいなしだああ!!

とりあえず保存しました(*;w;*)落ち着くまでに時間かかりそうだ!今日はねれない!

posted by (ノД`) ,2010/08/14 8:30 PM










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