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外伝『Box Puzzle』(2)
   「……ところで『金良』さん、だっけ? 言っちゃ悪いが、名前も金良だけど、人も良いんだね」
 「ん?」
 「お道を助けてくれたんだろう?」
 「『お道』? ……ああ。あの下女か」
 銀が助けた、酔客に絡まれていたあの下女、名をお道というらしい。
 「『どじ』な女なんだ。放っておけばいいのに」
 無代、まだ子供のくせに、歳上の女を捕まえて容赦がない。
 「ああいうの、いちいち助けてたらキリないぜ?」
 このバッサリっぷりである。
 「いつもならそうしてるが、今日はたまたまな。気まぐれさ」
 「気まぐれねえ。でも、それで連中に追っかけられてんだから、金良さんだって十分『どじ』だ」
 「違いない」
 本来なら無礼極まりない無代の辛口に、しかし銀も苦笑するしかない。武術でも人脈でも何でもいい、自分の才覚であの連中を処理できないのなら、そもそも手を出すべきではなかったのだ。
 「だが、そういうなら無代よ、お前だってお人好しだろう? その『どじ』をこうして助けている」
 「頼まれたからね」
 「頼まれた?」
 「うん。お道に」
 聞けば、男達から逃げる途中に銀の前から姿を消したお道は、その足で無代の所へ行って事情を話し、銀を助けてくれと頼んだのだそうだ。
 「お道や金良さんみたいな『どじ』は、ホントは放っておくのがこの町の流儀なんだけどさ。お道には昔世話になったし、あんまり必死に頼むんで断れなくて」
 無代、いちいち言う事が『いっぱし』である。それにしてもあのお道、自分は逃げておいて、こんな子供に助っ人を頼むというのもどうなのか。よくよく大人としては駄目らしい。
 「一昨年に母が亡くなった時、お道には良くしてもらったからさ。まあ恩返し」
 無代が肩をすくめた。
 「母はいないのか」
 「親父だっていないも同然さ。俺は妾の子だからね」
 妾の子。その言葉に、無代は余人には真似の出来ない響きを乗せた。
 「『火の顔』。それが俺の親父」
 「『火の顔』? 去年、桜町の『顔役』に出世した?」
 「うん」
 無代が複雑な顔でうなずく。
 この桜町を事実上支配する『顔役』は、町の有力者8人で構成される。年齢、実力、財力、権力、いずれも抜群と認められた8人。これを易の八卦『天地山沢風水雷火』のそれぞれに当てはめる習わしだ。
 無代の実父であるという『火の顔』は、その顔役に50代の若さで加わったという異例の実力者、と、国主である銀にさえ聞こえている。
 「大物だな」
 「ふん」
 無代が鼻を鳴らした。どうやら父親の事は嫌いらしい。
 「アイツ、元は俺の爺ちゃんの店の番頭だったんだ」
  この無代の祖父という人も、桜町でそれなりに名を成した商人であったそうだが、無代が生まれる前、不運にも所有する貿易船が立て続けに沈む、という災難に 見舞われた。そのため財産の大半を失い、必死に建て直しを計る中で身体を壊した祖父は、そのまま無念のうちに帰らぬ人となる。
 その結果残されたのが一人娘、つまり無代の母親だったのだが、これが生まれながらの箱入り娘で、自分では何一つできない女。桜町の常識で言えば、この町では生きられない『どじ』そのものだ。父に代わって店を切り盛りするなど到底不可能である。
 そんな女に手を差し伸べたのが、既に祖父の店から独立し、自分の店と妻子を持っていた『火の顔』だった。
  育ててもらった恩のある店を助ける、という名目で事実上、無代の祖父の店を丸々乗っ取り、そしてその一人娘までも自分の物にした。かつて『お嬢さん』と呼 んだ高嶺の花を、金と力でモノにしたのである。一方、女は女でこれに反抗するだけの力をまるで持っていなかった。元の使用人の妾であっても、ただ男にす がって生きるしかなかった。
 そして生まれたのがこの『無代』というわけだ。
 その名は祖父が生前、いつか男の孫が生まれたら、と用意した名前だったという。
  一方、実父である『火の顔』は無代を愛さず、彼の誕生を機に妾宅に近づく事もなくなり、無代は母と、そして桜町の人々の間で成長する。なに、この町では片 親の子供などさして珍しくもない。現代とは比べ物にならない濃密な近隣関係の中で、子供達は『街の子』として育つ。そんな子供達の中でも、とりわけ頑健で 利発で人懐っこく、目端も利いた無代は、近郷のガキ大将として逞しく成長した。
 後に彼の代名詞ともなる、少々の事ではびくともしないその胆力はまさにこの時代、この場所で鍛えられたものだ。
 やがて母が死に(男に捨てられてから、もう生きる気力を失っていた)、独りぼっちになった無代が最初にしたことは、父である『火の顔』の店に父を訪ねる事だった。
 といっても無代、彼の母とは違い、父の情けにすがりに来たわけではない。店先で父の顔を傲然と睨みつけながら、
 『アンタの船に乗せてくれ。給金はいらない。メシさえ喰わせてくれれば何でもする』
 そう言い放つ息子に、『火の顔』が何を思ったかは知らない。ただ、彼は無言でそれを許可した。
 人間性はともかくとして、商売人としての『火の顔』の経営手腕は群を抜いている。既に40代で桜町でも有数の船主にのし上がり、世界各地へ貿易船を走らせて、それこそ倍々ゲームで財産を殖やす馬力に偽りはない。
 その船の一隻に、無代は望み通り放り込まれた。掃除、洗濯、料理、船客(主に美姫達だ)の遊び相手、何でもやった。子供ながら頑丈で気の効く無代は、すぐに船で重宝されるようになり、既に2度、ルーンミッドガッツ王国とモスコビアへの航海をこなしている。
 「その歳で大したものだ」
 銀が本気で感心した。ルーンミッドガッツ王国はともかく、遥か遠い島国であるモスコビアへは、銀でさえまだ行ったことがない。ワープポータルを使っての訪問さえしたことがなかった。
 「そんだけじゃないぜ。ちゃんと金も稼いできたんだ。それでこの船、買った。この着物だって。どっちも町の職人が、俺のために作ってくれたんだ」
 無代の言葉に力がこもる。
 妾の子から出発して、小舟とはいえ一船の主になったこと。成し遂げたこと。それがこの少年の、背伸びした雰囲気の軸となっているのだ。
 「立派なものだ。しかし、どうやって稼いだ?」
 銀はもうすっかり、この無代という少年に興味津々である。彼の操る船に揺られながら、少年の身の上話と自慢話を聞くこの時間が、昨夜馴染みの店で過ごした時間よりも楽しく、有意義にさえ思える。
 「コレさ」
 無代が懐から小さな塊を出し、ぽん、と銀に放った。受け止めてみると、それは子供の拳ほどの立方体である。木製。
 「寄せ木の……これは『細工箱』か」
 「うん。……開けられるかい、金良さん?」
  無代の顔には、ちょっとからかうような笑みが浮かんだ。というのも、『細工箱』とは一種の立体パズルなのだ。見た目はただの木の箱なのだが、そのままでは 蓋が開かない。箱自体が細かい木のパーツをいくつも組み合わせた複雑な構造となっていて、その一つ一つを押したり、引いたりしながら、最終的に蓋を開ける 方法を見つけてゆくのが醍醐味である。
 「これは……見事な物だな」
 銀が唸った。いや細工箱そのものは珍しいものではない。天津の伝統工芸の一つであり、銀も見慣れている。しかし今、銀が無代から放られたものは、並の物とはちょっとケタが違った。
  まず鍵となるパーツの数が半端ではない。普通の細工箱は、ものの2つか3つのパーツを動かせば開いてしまう。多くても5つか6つだ。だが、この細工箱は ざっと見ただけでも10以上のパーツが使われている。これほど精密かつ複雑な構造を持つ細工箱は、銀でもかつて見た事がない。
 「……」
 何かに吸い込まれるように、銀の手が動いた。まずは大きめの部品を引っ張り出し、何度か出し入れしてみる。その時の手応えから、内部の見えないパーツの組み合わせを類推するのだが……。
 (滑らか過ぎる……)
 どんな職人が削り出し、組み合わせたものか。その部品は他の部品と吸い付くように密着しながら、間に油を注したように滑らかに稼働する。一筋縄では行きそうもない。
 10本の指を総動員した。感覚だけでなく、銀が過去に蓄積した経験や知識からの情報も片っ端から引き出して、内部の構造を頭の中に再構築していく。かつてあのプロンテラ城の複雑な構造を、内部を散歩しただけで絵図面に書き起こして見せた、あの能力だ。
 (これが……こう……いや、こうか……)
 滑らかな立方体だった細工箱のあちこちから、細かい部品が飛び出し、あるいは引っ込み、まるで爆発でもしたかのような有様だ。
 「これで……よし、開いた!」
 「すげえ!」
 今度は無代が目を丸くする番だった。
 「こんなにあっさり開けた人、アンタが初めてだよ金良さん!」
 「あっさりじゃないさ。こんな細工箱こそ初めてだ」
 銀が笑いながら蓋を取ると、箱の中には小さな、豆粒ほどの水晶玉。決して貴重な物ではないが、謎解きのご褒美としては悪くない。高々こんな事なのに、自分がひどく高揚していることに銀は少し驚く。
 「天晴な代物だ。これを売ったのか。いくらで?」
 「10万。モスコビアでね。こっそり荷物に入れて行ったんだ」
 成る程このサイズの物なら、下働きの小僧の荷物でも多少は積めるだろう。10万は安い値段ではないが、売り方次第では十分に売れる値段だ。
 「でかした」
 心から誉める。
 「うん!」
 無代の笑顔が輝くのへ、銀が少々意地悪で、
 「その商才は、父親から継いだらしいな」
 とイジってやると、
 「もらえる物なら何でももらってやるさ」
 と返したものだった。銀が吹き出す。
 「喜助の親方、さっきの家で寝てたあの爺さんが作るんだ。俺の専売なんだぜ」
  あの水辺の家で床に伏していた喜助という老職人は、かつては石田の城下で名を馳せた名人だったそうだ。が、酒癖の悪さがたたって家族にも弟子にも去られ、 独りぼっちで最後に流れ着いたのがこの町であったという。無代とはなぜか気が合い、彼のためにその腕を振るってくれる代わりに、無代が稼いだ金で高価な薬 を融通しているらしい。
 なるほどこの無代という少年は、この町の濃密で複雑な生態系の中で、思うままに根を広げる能力を持っているらしかった。
 「来月、また船に乗るんだ。今度は前より数を揃えられた。親方の身体の調子がよくてね」
 希望と野心、さらに上へと昇ろうとする少年を、銀は見守る。
 「どこへ行く? またモスコビアか?」
 「いや、今度はアユタヤ」
 「アユタヤか」
 天津の遥か南に位置する『アユタヤ』は、豊かな雨と太陽が支配する熱帯雨林の国だ。銀は、手の中の箱を奇麗に元に戻すと、少し考えてからそれを無代に返し、
 「アユタヤなら、それをもっと高く売る方法がある」
 「?」
 無代が怪訝そうな顔で銀を見た。言葉の意味は分かっているだろうが、すぐには食いついて来ないで銀の意図を計っている。ばっさり言えば『いい加減な話には騙されないぞ』ということだ。
 「信じる信じないは自由だ。ただ聞け」
 銀は静かな笑みを浮かべ、その脳に蓄えられた膨大な情報の中から、有益な物を引っ張り出す。
 「アユタヤは我が天津と同じ仏の国、『仏教国』だ。しかも遥かに篤い信仰を集めている」
 「……」
 無代は無言、だがじっと銀を見ている。
  「だから無代よ。この箱の中に、水晶玉の代わりに仏像を入れるのだ。どこの寺の門前町でも売っている、真鍮の小さな豆仏、あれでいい。それ自体は安いもの だが、『この箱の中に仏がいる。上手く蓋を開けて外に出して差し上げれば、きっとご利益がある』とでも言ってみろ。必ず客はつく」
 「……うん」
 無代が初めてうなずいた。どうやら銀の話が『腑に落ちた』らしい。
 「もう一つ。かの国は、富める者とそうでない者の差が激しい。貧しい者は今日を暮らすのが精一杯だが、一方で貴族王族、富める者は本当に果てしなく金を持っている。だからそこを狙う」
 「無理だ」
 無代が即座に反論した。
 「あそこのお貴族様は、向こうじゃちょっとした神様みたいな扱いだって。船長でさえ、直接は話せないって言ってた。まして何のつてもない、俺は小僧だぜ?」
 「いきなり直接は無理だが、小僧でも手はある。いや小僧だからこそ、だ」
 銀がにやりと笑う。
 「いいか。アユタヤの市場に行ったらまず、周りより格段に身なりのいい若い女を捜せ。そしてそれに狙い撃ちで売りけるのだ。そいつらは貴族ではないが、貴族の『侍女』だ。大抵な」
 「……うん」
 「そういう女達は、主人に気に入られ、取り立ててもらうためなら何でもする。だから面白いもの、奇麗なもの、珍しいものでも何でも、主人の関心を買えそうなものがあったら即座に買って帰って、主人に献上する習慣がある」
 「!」
 「そうなればこっちのものだ。『だけどコレは簡単には開かない。もし自分で開けられないなら、この俺を呼んでくれれば俺が開けて見せよう』とでも吹き込んでおけ。何なら、『あまり長い間仏様を外に出せないと、逆に罰が当たる』とでも」
 無代の目が輝いた。 
 「そしたら、俺でもお貴族様の前に出られるかな」
 「ちっとは奇麗な着物も用意しておくのだ。多少奇矯な柄でもいい。その方が目立つ」
 「うん。でも金良さん、よくそんなの知ってるね。行った事あるのかい、アユタヤ」
 「ない」
 あっさり、と銀は言った。
 「だが、聞いて知っている。『佐里(さり)』からな」
 「え? 佐里って、汲月楼(きゅうげつろう)の?! まさか金良さん、佐里の客なのか?!」
 無代が目を丸くするのも当然だった。
  『汲月楼の佐里』といえば、桜町でも有数の格式を持つ店の、これまた最高級の美姫として名高い。このレベルの女性になると、美姫といえども単なる『買われ る女』ではなくなる。実際いくら大金を積んでも、美姫本人が気に入らない客だと宴席にも出ず、まして床を共にすることはない。中でもこの佐里は、宴席に出 る客だけでも5人とおらず、床に侍るのはせいぜいその半分。さらに、そのまま共に朝を迎える人間となると、この世に2人いるかいないか、と言われる。元は アユタヤの王族の娘、つまり本物の姫君とも噂されるが、当然その素性は明かされていない。
 だから、この佐里の本名が『サリポーン』といい、正真正銘アユタヤの王弟の娘、つまり姫君であること。そして、実父がクーデターに失敗した連座で処刑されるのを逃れ、独りぼっちでこの町にやってきたと知るのは、汲月楼の店主で顔役の1人でもある『沢の顔』とあと2人。
 この男・一条銀と、もう1人だけだ。
  佐里と銀とは、銀の妻となった巴が出産を迎えた当時、汲月楼で知り合った。その時、既に銀は男としての機能を失っており、佐里を床に侍らせることはあって も、ただ朝まで添い寝させるだけで、いわゆる男女の関係は結んでいない。だが、この気位が高く教養豊かな異国の姫君は、そんな銀にこそよく懐いた。
  まさに昨夜も、共に夜を過ごしたばかり。銀と佐里、2人で月を眺めて他愛のない話をし、佐里の故郷の茶を楽しみ、そして歳の離れた兄妹のように寄り添って 眠った。朝は彼女がしつらえる朝餉を食べて(美姫手作りの朝餉こそ、桜町の客の最大のステータスだ)、そして店を後にしたのだ。
 「ああ、客だよ」
 「……嘘だろ」
 無代の驚きは収まらない。明らかに銀を見る目が変わっていた。だが、それでも金良が何者かを問いたださないのは、それがこの町のしきたりだからだ。客の素性は聞かない、という不文律を叩き込まれている。
 「まあ信じなくてもいいさ。だがアユタヤで商売するなら、憶えておいて損はない」
 「……うん」
 まだ半信半疑、という顔だが、無代はうなずいた。銀がさらにいくつかアユタヤの情報を伝えてやると、それにも熱心にうなずく。
 「わかった。ありがとう、金良さん」
 「礼を言うのはこちらだ」
 一通りの話を終えた、その時だ。
 ちくり、と銀の胸を痛みが刺した。
 「……む」
 身体の異常。これに敏感でなければ、今の銀は命に関わる。
 (走りすぎたか……)
 先ほど薬を飲んだばかりだ。立て続けに服用するのは危険だと、医師団や妻からキツく言われている。が、このままではヤバい、と銀の直感が告げていた。
 「どうした、金良さん」
 「大丈夫だ。ちと身体がな」
 無代にそう告げると、また薬包を取り出して中身をあおり、船縁から河の水を直接すくって飲み下す。生水を飲む事になるが、贅沢を言っている場合ではない。それに剣竜川は大河ゆえに、今で言う水質汚染は少ない。
 「どっか悪いのかい?」
 「どこもかしこもさ」
 本気で心配そうに聞いて来る無代に、銀は自嘲気味に答える。どうもかなり深刻にいけないらしい。身体の異常は収まるが、全身を一気にだるさが遅い、目を開けているのも辛い。
 「もうすぐ俺の家だ。そしたら横になれるから」
 「重ね重ね、迷惑をかける」
 「病気なら仕方ねえよ」
 子供と老人、そして病人。本当の意味の弱者には優しいのが桜町の人間だ。この少年は本当に、骨の髄までこの町の子供だった。
 (だがそれにしても……)
 銀は、重くなる身体を必死で支えながら考える。
 (ドジな女を助けた事から始まって、この少年とここまで深い縁を結ぶ……)
 これは全て偶然なのだろうか。それとも、残り少ない自分の人生に、まだ何か役目が残っているとでも言うのだろうか。
 「おい……おい! 金良さん! しっかりしな!」
 無代の声を遠くに聞きながら、銀は大河の流れに沈むように、意識を失った。
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