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第十一話「Mothers' song」(3)
  シャレにならない一撃、とはその事だった。
 うきの蹴り。
 鳩尾への一撃で膝をついた静の、その頭部に真横から、手加減抜きの蹴りが叩き込まれる。余裕を持って間合いを計り、たっぷりと体重を乗せて放たれたローキックは、相手の意識を、いや下手をすると命まで刈り取りかねない攻撃だ。
 それでも、腹に喰らった初撃のダメージの下、両腕で顔面をブロックした静こそ賞賛されていい。が、しかしそれも虚しく、結果はあまり変わらなかった。
 ごっ!
 アサシンクロス専用の金属製の脛当て、それが静の頭をブロックごと撃ち抜く。これでもかと重い打撃音と共に、まるで立てた鉛筆を指で弾いたような勢いで、静の身体がなぎ倒された。
 横倒しにがつん、と地面に激突、そのまま動かなくなる。

 「はい終了ー。大丈夫、死んじゃいない」
 恐らくはもう意識が無い静に、うきはわざわざ言葉を投げる。そしてセンカルの方に向き直ると、
 「んーと。元『ウロボロス2』主席・ドクターセンカル、だよね? 『捕縛、さもなくば殺害』の命令が、王国全土に極秘で出回ってる」
 「……」
 聞いたセンカルは無言。この成り行きも、またうきの正体も測りかねているようだ。
 「あ、心配ないよ。アタシはアンタの敵じゃない。……味方でもないけどね」
 ひょい、と肩をすくめる。
 「アンタにゃ興味ない。ってか、その様子じゃどうせもう、長くないみたいだし。病気?」
 「……!」
 センカルは答えない。といっても、今度はうきの質問を無視したのではない。それが証拠に、その目が大きく見開かれ、うきを素通りして何かを見つめている。
 うきの背後を。
 「?!」
 センカルの視線に気づいたうきが、驚いて振り向くのと同時。
 「うん、よし。大体わかった」
 つぶやきと共に、ぶっ倒れていた静がむくり、と起き上がった。あれほどの蹴りをまともに喰らいながら、ダメージなどないかのように滑らかな、そして俊敏な動きですらりと立つ。
 「な……っ!?」
 さすがのうきが目を見開いた。先刻の一撃に手を抜いたつもりはない。いや、最初の腹への一撃だって、並の人間なら命を落としても不思議はないのだ。なぜ立てる、と衝撃を受けるのもやむを得ない。
 だがその種明かしは、目の前の静が自分でしてくれた。
 「べっ!」
 静の、その形の良い唇から、何かが地面に吐き出された。しゃり、ちゃりん、という音は、所々血まみれのガラスの破片だ。ひとしきり吐いて、そして最後にぺっ、と血の塊のような唾を吐く。
 「……ホワイトスリムポーション。イイもの持ってんじゃん」
 うきが呆れたように、その吐き出された物体の正体を言い当てる。それは普通のポーションよりも濃縮率が高く、小さくて軽い代わりに何倍も高価な治療薬だ。割れた瓶に書かれた『姫神製薬』の文字は、指折りの名製薬者から入手した名品の証だ。
 「ウチの執事がね、持たしてくれたの。ってもあんまお金ないから、緊急用に1本キリだけどね」
 「で、その『とっとき』を瓶ごと口に放り込んで、アタシの蹴り受けたってワケ?」
 答えの代わりに静がにーっ、と笑う。口元にはまだ血糊。容貌が可憐なだけに、逆に凄みのある表情になる。
 うきが蹴りを放った瞬間、静は即座に、それを避ける事もブロックすることも不可能と悟った。そして咄嗟の判断で蹴りをブロックすると見せかけ、ポケットから取り出した治療薬の瓶を口に放り込んだのだ。
 そして蹴りがヒットした瞬間、

 「衝撃で瓶ががっしゃん、んで中身が口ん中にどばー、って? よくまあそんなこと……」
 「ガラスで口切るから、その痛いので意識飛ばさずに済んだし、一石二鳥」
 切れた口の中は、通常の何倍も濃厚な治癒薬によって即座に回復する。身体のダメージも同様だ。
 確かに一石二鳥の理屈は通るのだろうが、それにしても女性、しかも歴とした一国の姫君の行状としては、いささか以上に荒っぽ過ぎる。これはむしろ……

 「『フール流』ってワケよ」
 にやっ、と笑顔で言いながら、静が何やら足をもそもそ動かしている、と思ったら、いつの間にか両足に履いたブーツを脱ぎ捨てていた。
 色気の欠片もない、頑丈さだけが取り柄の冒険者用ブーツ。靴紐で締め上げるタイプだが、その紐はほどけている。どうやらブーツの金具で靴紐の結び目を引っ掛け、手を使わずに脱いでしまったらしい。妙な所で器用なお姫だ。

 靴を脱いだその素足はすらりと白く、指や爪の変形もない。そんな所まで健康的で美しいのは、ほとんど嫌味の域かもしれない。
 「? 何してんの?」
 「見てわかんない?」
 片眉を吊り上げるうきに向って、わざと挑発的な言葉を返しながら、静はさらに頭に被ったヘルムも脱ぎ捨て、手近な岩の上にすぽん、と被せる。
 地面から静の腰ほどの高さまで鋭く突き出した岩は、格好の帽子置きだ。

 最後に腰の銀狼丸を鞘ごと抜いて岩の根元、揃えたブーツの上にそっと置く。
 これで素面、素足、そして素手。
 「いや、わかんないけどさ。降参、ってワケでもなさそうじゃん?」
 「もちろん、逆よ」
 静がうきに真っ直ぐ向き直る。
 「うき、今からアンタをシメる。イヤならそこどいて」
 「ひゅーっ! 静ちゃんカッコいい!」
 うきの逆挑発に、静は乗らない。それどころか、
 「あ、そっちは武器使っていいよ」
 ちょいちょい、とその指で『かかってこい』の合図。
 「……うっし、それ買った!」
 うきが、腰に下げたアサシンの武器『カタール』を外してぽい、と放り投げた。投げられた双刃は、地面に座り込んだセンカルの目の前にざくん、と、見事に交差して刺さる。
 「でもこのケンカ買うからにはさ、今度は手加減ナシだよん?」
 にこーっと、と笑ったうきの表情は明るく、邪気の欠片もない。昨夜、静の部屋を訪ね、捕われた無代を救出してやろう、と申し出た時の、あの好人物そのままだ。
 だが間違えてはいけない。
 アサシンは怖い。
 どんなに気さく見えても、好人物に見えたとしても、だからといって安全な人物だ、などと間違っても思ってはいけない。
 例えば誰かと心の底から談笑しながら、親しみを込めて相手の肩を叩く、その反対の手で平然とその誰かを即死させる。二つを切り替えるのではなく同時に、ごく当たり前に殺人行為を行えるのだ。
 それが『アサシンという生き物』。

 そして、うきというアサシンクロスの恐ろしさも、実はここに起因する。
 先刻の攻撃を、静が避けられなかった理由。
 「うき、殺気が全然ないんだもん。あんなの初めて」
 「そりゃだって、アサシンだもんさ?」
 真剣な目で賞賛する静に、うきが肩をすくめる。
 「アサシンっちゃ人殺すモンでしょ? んなのに、いちいち目ぇ釣り上げてやってらんないよ実際?」
 少し説明しておこう。
 人間が誰かを『殺す』時、本来そこには強烈な意志を必要とする。
 例えば誰かが、別の誰かと争う場面を想像してほしい。

 まずはお互いに視線を交わすだろう。俗な言い方なら『ガンをつける』というヤツだ。
 それで決着がつかない場合、次は言葉だろう。
 相手を傷つけるための語彙を含んだ、激しい言葉を投げ合うのだ。この段階で既に、両者の間には相当に強烈な『意志』がある。相手を敵とみなし、そこから自分を守り、かつ自分の意志を通すためのエネルギーだ。
 言葉でも決着がつかない場合、いよいよ暴力である。
 拳で、蹴りで、あるいは武器を使って、相手の身体に直接的な攻撃を叩き込み、その神経に痛みを感じさせる事で、相手の意志を挫く。それでもダメなら肉を裂き、骨を砕くといった具体的なダメージによって、それを実現しようとする。
 だがそれでも敵が怯まない場合、そしてこちらも諦めない場合。
 最後に選択されるのが殺す、という手段だ。
 鋭く効果的な攻撃を使い、一撃で殺す場合もあるだろう。あるいはもっと鈍い攻撃を何度も、執拗に繰り返す事で死に追いやることもあるだろう。
 だがいずれにしても、そこには争いの初期とは比べ物にならない、猛烈な意志の力が働く。これがすなわち『殺気』と呼ばれるものである。
 静が昨夜のルティエの戦いにおいて、敵の攻撃を全く見ないで避けた、その要素の一つでもあるのだ。
 だがうきの攻撃には、この殺気がない。
 アサシンだから、という彼女の言葉は多分に謙遜だ。アサシンを名乗る者は数多けれど、ここまで完璧に殺気を消し、しかも戦闘ができる者は、まず皆無と言っていい。
 本来なら長い修行の末にやっと身につける、その『殺気のない攻撃』を、ほとんど生まれながらに実行できる。『殺人』というモノに対する捉え方が、常人とは明らかにズレている。
 いや、いっそどこか壊れている、と言ってもいいかもしれない。
 加えてさらに悪いことに、アサシンという職業には『姿を消せる』という特有が備わっている。
 盗系、いわゆるシーフから上位転職するアサシンは、敵の視線から自分の姿を完全に隠してしまう『ハイディング』、さらには『クローキング』と呼ばれるスキルを習得できる。
 これらの技は、人間の目の死角域を巧妙に突くと同時に、周囲の人間に対し、ある種の瞬間催眠のような精神操作を行う。
 この相乗効果によって、アサシンは敵の目に映らず、もし映っても認識できない、という状態を造り出してしまうのだ(だから表現としては『消える』というより、『見えなくなる』と表現した方が正しいだろう)。

 ちなみにこの時、術者の足音や衣擦れといった『音』も、聞こえるけれど認識できなくなる。耳すらも騙してしまうのである。
 この見えなくなる効果と、そして殺気を完全に消す特性が加わる時、一条静にすら膝を着かせた攻撃が生まれる。それは『潜伏(ハイディング)』でも『掩蔽(クローキング)』でもない。

 『滅失(バニシング)』

 アサシンクロス・うきが使う、それこそが希有の技。
 その持続時間はわずか半秒、しかし熟練の暗殺者が人間一人を殺すには、十分過ぎて余るほどの時間だ。
 対峙するうきと静、その間にもう言葉はない。
 大げさではなく世紀の対決。だがそれを見守るのはセンカルと、魂無き2人の双子のみ。

 うきは、その両手を手刀の形に変え、両刃の構え。対する静は素手、素足、素面のまま、構えすら取らない。
 (ソレでアタシに勝とうとか、ナメてくれるじゃん!)
 自らのスキルに絶対の自信をもつうきが、当然の如く先手を取った。
 前触れもなく、静の視界からうきの姿が消失。
 半秒の無敵時間が始まる。
 圧倒的優位に立っているとはいえ、そこはうきもアサシン、真正面から仕掛けるほど馬鹿正直ではない。
 たとえ姿を消していなくとも、恐らく視認は不可能だろう神速の足さばき。そこから発生する凄まじい機動力を使い、身体を独楽のように一回転させ、相手の真横へ瞬時に移動。 

 そしてヘルムを脱ぎ捨て無防備となった静の後頭部へ、右手の手刀を思い切り振り抜く。
 (獲った!)
 うきはそう確信した。
 姿を消した状態から放つ、しかも完全な死角からの一撃。当れば確実に首の骨が砕け、ひょっとしたら頭が千切れ飛ぶかもしれない必殺攻撃だ。だが。
 すかっ。
 その攻撃が空振った。もう笑いが出るほどあっさりと、うきの必殺の攻撃が空を切っていた。
 (はぁ?)
 もちろん外したのではない、静が躱したのだ。手刀が襲って来るより一瞬早く、身体を低く沈める事で、静はうきの攻撃を回避している。
 (見切られたあ!?)
 うきの脳裏を驚愕が走った。視覚で見えず、気配でも察知できないはずの自分の攻撃が、なぜ躱せるのか。
 (……って、まさか?!)
 脳裏に浮かんだ可能性を、うきは一瞬信じられなかった。当たり前だ。
 (『双子の目』を盗んだ……!?) 
 そう。
 静はうきを見ていない。
 いや、どうせ見えないのだから、見たって意味はないのだ。

 静が見ていたのは、別の物。
 それは意外にも『月』と『星』だった。BOT化された二人の少年。
 その双子の『目』を、静は見ていたのだ。

 BOTの失敗作である双子、だが彼らの身体的機能はまだ十全に働いている。身体に触れれば反応するし、匂いや音も感知できる。
 そして『目』も、きちんと機能している。いや希少な戦前種を母に持つ彼らだけに、その身体能力・視覚性能はむしろ常人を上回ると言ってよい。
 さらにもう一つ、今の彼らには『意志がない』。魂を抜かれているのだから当然のことなのだが、実はここが重要だ。
 人間の感覚と意識を騙すのがアサシンの技ならば、それに騙される『意志』のない双子に、その技はかからない。
 
つまり、うきの『滅失』の術が通じないのだ。
 常人には消えて見えるうきの姿も、この魂なき双子の目には、はっきりと映っている。
 静は、うきの最初の一撃を喰らった時その事に気づいた。『大体わかった』の言葉に嘘はなかったのだ。
 見えないうきの姿を追わず、床に座り込む双子の4つの目、その瞳の動きを追う。さながら双子の目を『電波探信儀(レーダー)』のごとく利用した。
 そこから得られた情報から、うきの位置と攻撃のタイミングを割り出し、これを避けたのである。
 静姫こそ恐るべし、と何度書いたことか。
 だからこの時、うきが内心で毒づいた言葉は、あまりにも正しい。

 (可愛い顔して、この化け物娘っ!)
 
中の人 | 第十一話「Mothers' song」 | 20:06 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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