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第十一話「Mothers' song」(5)
  芝村屋敷の独房を脱走した速水は結局、誰に見とがめられる事もなく、その広大な敷地を抜け出した。
 ルーンミッドガッツ王国最大の貿易港・アルベルタ。その町外れの原野を切り開いて構えられた、天津貴族・芝村家の出屋敷。外観こそ白亜の大陸風だが、内部のあちこちに天津の意匠が取り入れられた、この時代の天津建築の傑作と呼ばれる建物だ。
 あのウロボロス8の崩壊後、自由になった速水がたどり着いたのが、天津にある芝村家の領地だった。
 そこで速水は、

 『ボクはルーンミッドガッツ王国から布教に来た宣教師です』
 と身分を偽り、芝村家に入り込む。
 この『初めての嘘』は上手くいった。信仰に情熱を燃やすあまり、教会の許可も何もないまま、他国へ密入国して布教する僧侶というのは、当時としてはさほど珍しい存在ではない。
 そして以前にも書いたが、芝村家は天津とルーンミッドガッツ王国との交易を独占し、莫大な利益を上げている一家である。その中で速水は、王国についてのネイティブな知識を持ち、王国語の読み書きにも堪能な人間として、すぐ重宝される事になった。
 身元が怪しいと言えば怪しいのだが、そもそも芝村家の活動だって、決して明るいモノばかりではない。事実その配下には、大陸語を喋れるというだけで雇われた海賊崩れもいたし、ひどいのになると家業を隠れ蓑にして、密かに人身・麻薬売買にまで手を染める者までいた。
 その中で、速水はそれなりに真面目に仕事をこなし、一家の中で信頼を得て行く。元々、神様なぞ信じてもいない速水だけに、布教らしい事など何もしなかったことも逆に幸いした。
 そしてとうとう当主・芝村巌(いわお)の侍従の一人に加わり、芝村家がルーンミッドガッツ王国に出屋敷を建設したのを機に、この地へ赴任したのである。
 身元の怪しい成り上がりにしては、なかなかの出世ぶりと言える。

 が、どうも今回ばかりはしくじった。


 『プロンテラの下町に、瑞波の一条静姫を名乗る女がいる』。

 その情報が、ここアルベルタの芝村屋敷へ寄せられたのが2日前。
 これに対し、芝村屋敷の人間の反応は、
 『またか……』。
 これだった。
 静が登場する場面でも書いたが、このルーンミッドガッツ王国において『我こそは天津の姫』と詐称する人間は後を絶たない。
 天津と大陸の交流が始まってまだ数十年、まともなメディアもない時代だけに、一部の人間を除き、お互いの情報が正確に伝わっているとは言いがたい。

 例えば『天津は黄金の国だ』、などという与太話を真剣に信じ、またそれに乗じて詐欺を働く者もまだまだ多い、というのが現状なのだ。
 ルーンミッドガッツ王国内で、こういう不逞の輩を取り締まるのもまた、芝村家の仕事である。というより、天津の人間の行状に一方的に責任を取らされる立場にあるため、やむなく取り締まっている、というのが正しいだろう。二国間の貿易を独占する権利を維持する、その代償として、まあやむを得ない義務とも言える。
 だから今回も『どうせまた偽姫だろう』と誰もが思いはしたが、といって放っておけば芝村の落ち度になってしまう。
 で、とりあえず様子を見て来い、と上層部の命を受け、派遣されたのが速水だったわけだ。

 まず速水は最初に『静は本物だ』と、ちゃんと報告した。だが、屋敷の上司達は信じなかった。何を馬鹿な、というわけだ。
 だがまあ、これは仕方ないと言えば仕方あるまい。本物の瑞波の姫君が、プロンテラ下町の安宿に泊まって冒険者修行してます、などと誰が信じるか。
 むしろそんな話をすぐ信じるような安い連中が、逆に芝村の幹部要職に就けるはずはない。

 しかし昨夜、静に引きずられる形で速水が経験した、あの凄まじい戦いについて報告すると、彼らの顔色は一変した。(静やフールが心配した通り、速水は馬鹿正直に全部報告したらしい)。
 カプラ嬢を殺害する謎の軍団、それに対してわずかの手勢で立ち向かい、なんとコレを撃退してしまった少女。剣を振るい、飛爪を飛ばして無双の働きをするその異能っぷりは確かに、天津で音に聞こえた『瑞波三姫』の末姫、静と重なる。
 となると話は全く違って来る。下手をすれば、いやしなくても、天津とルーンミッドガッツ王国の国際問題に発展しかねない大事だ。
 芝村の幹部達は、ほとんど恐慌をきたした。
 とにかく事実確認を、と、王国政府と瑞波国の両方に問い合わせた。が、まず一方の王国政府は知らぬ顔。それどころか、暗に『その件には触れるな』と圧力がかかる。これはもう『何か裏がある』と見ない者はいない。

 一方の瑞波の返事は、遥かに振るっていた。筆頭御側役・善鬼の文に、当主・一条鉄の花押付きでこんなのが来た。
 『当家の三女・静は目下、ルーンミッドガッツ王国にて花嫁修業中にて候。内々のこと故、芝村殿には御構い無きよう、お願い申し上げ候』
 要するに『内緒で花嫁修業してんだから放っとけや』ときたものだ。
 冗談ではなかった。
 『花嫁修業』だか何だか知らないが、無責任にもほどがある。いやそれよりもこの騒動に芝村の人間、速水厚志がのこのこ参加していました、などと知れたら、どれほどの災厄が一家を見舞うか想像もつかない。
 最悪、『静姫に加担した速水などという人間は、芝村にはいない』という事にするしかない。
 速水が独房へ幽閉されていたのは、そういうわけである。
 (……でも、約束あるしなあ)
 遠目にも慌ただしい芝村家を尻目に、速水はとっととワープポータルを出すと、自らをプロンテラに転送した。
 当の速水自身には、悪い事をしたという認識は無い。いや実際、彼はさして悪い事はしていないのだ。ただ、その行動が芝村家にとって都合が悪い、というだけである。
 芝村家に真から忠誠を誓っているならともかく、元々人間ではない速水にとって、芝村家はただ寂しさを消すための入れ物、というだけに過ぎない。一人でいてはいけない、というあの人との約束を守る、そのための手段と言ってもいい。
 それに芝村家は、家長である巌を中心とした厳格な家内統治が敷かれた『組織』である。その辺は、何かと人情・愛情に篤い一条家とは正反対だ。そういう意味では、モンスターである速水でなくても、愛着や忠誠心は湧きにくかった。
 唯一、芝村の一族で彼に関わろうとする少女、彼女にだけはちょっと申し訳ない気持ちがある。いつも不機嫌で、何かと速水に辛く当る少女は、彼が脱走したと知ればさぞ怒るだろう。
 (まあ、いつも怒ってるけどさ……ごめんね、舞ちゃん)
 速水は内心で苦笑する。
 (でも、しーちゃんやふーちゃんと約束があるんだ)
 速水の脳裏に、静の笑顔が浮かぶ。その顔に良く似た笑顔を、速水は知っているはずだが、彼の頭の中でそれはまだ、一つにはならない。
 (僕が嘘つきでも、人間じゃなくても、笑ってくれるんだ)
 速水にもう迷いはなかった。
 プロンテラに着くや否や、静達の宿屋に向う。だが、遠くから入り口を見ただけで、速水は向きを変えた。
 宿屋の入り口で、宿の女将が数人の男を相手に揉めているのが見えたからだ。揉めている相手は、速水と同じ芝村の人間達。恐らくは静を捕縛に来て、女将を相手に『一条静を出せ』『出さない』で押し問答しているのだろう。
 (約束の時間もとうに過ぎているし……あの様子じゃあそこにはもう、しーちゃんたちはいないな)
 宿から離れた速水は、人気の無い路地へ入り、そこで一匹のモンスターに姿を変えた。
 『サベージペペ』。
 小さなイノシシ様のモンスターで、ペットとして人気があるため、都市にいてもさして不審がられない。何より、鼻が利く。
 『鼻が利く』といえば、卵の匂いだけでフールを追跡した静だが、モンスターの生命情報を再現した今の速水の嗅覚は、その静すら遥かに上回る。くん、とひと嗅ぎしただけで、目的の匂いを探し出した。
 フールのペコペコ、プルーフの匂いだ。

 人間の匂いよりもずっと強い、その獣の匂いを追って、速水は小さなモンスターの姿のままてこてこと都市を出る。
 匂いが続く方角から、目的地はすぐに分かった。首都南方の港町・イズルード。
 そこまではいい。だが、そこからが厄介だった。
 二人の目的地がイズルードだとすると、船、あるいは飛行船に乗り換える可能性が高い。いくら鼻が利くといっても、海の上や空を飛ぶ乗り物の匂いまでは追えない。そうなったらアウトだ。
 だが、速水は運が良かった。
 (……あの飛行船!)
 速水がイズルードへ着いた時、ちょうど停泊中の飛行船からプルーフの匂い、そして静とフールの匂いまで漂って来たのだ。彼らを乗せてラヘルへ運んだ船が、ちょうど航路を一周して戻って来た所だった。
 速水は大急ぎで人間の姿に戻り、乗船券を買って乗り込む。ちなみに券を買うのに払った金は、こういう時のために体内に取り込んだ財布から出した。とんだ『へそくり』である。
 その飛行船も今は空の上。後は2人と1匹が下船した場所を特定できれば、また追跡が可能である。
 2人と1匹の下船場所の特定、だが難しそうに思えたそれは、しかし意外なほど簡単だった。

 ラヘルの空港、そこに静とフールの匂いが濃厚に残っていたのだ。
 匂いの元は、何とゴミ箱の中。2人が空港で買って飲み、そして捨てたあのお茶の容器に付着した、それは匂いだった。
 遥かルーンミッドガッツ王国からラヘル法国辺境へ。大陸を横断する速水の追跡行が、とうとう完成しようとしていた。
 飛行船を降りた速水は一人、荒野を駆け出す。しかし『速度増加』の呪文を使ってさえ、人間の姿では速度に限界がある。
 人目がなくなってから、この地に生息する狼型のモンスター『ガリオン』に姿を変えて疾走。
だがそれでも遅い。
 もっと速く、もっともっと速く。速水は自分の中を探る。蓄えられた無数の生命情報をひっくり返し、この荒れ果てた荒野に最適化された最速の生物を、ついに探し出した。

 変身。
 轟! と速水が風を巻く。
 2人と1匹の匂いを追う必要は既にない。この荒野を覆う、猛烈な血の臭いが、今は速水を導いていた。静とフール、それぞれが戦いの化身のような2人が、その血臭の先にいる事など疑うまでもない。

 そして2人がきっと、速水を待っていてくれる事もまた、疑うまでもないことだった。

 『貴方を待っている人たちがいる』

 あの人の言葉は嘘ではない。

 嘘ではなかったのだ。

(……待っててね、しーちゃん、ふーちゃん!)
 轟々!!
 速水が風を巻き、そしてその風すらも追い越していく!
中の人 | 第十一話「Mothers' song」 | 20:08 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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