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第十一話「Mothers' song」(6)
  「……んがっ!?」
 うきは目を醒した。いや、それまで死んでいたわけだから、ここは『生き返った』という方が正しいだろう。
 「あー、久々に見た……お花畑」
 ぶすっと独り言。嘘か本当か、臨死体験とかしたらしい。
 むくり、と半身を起こしたものの、身体の調子は本調子にはほど遠いようだ。直前まで死んでたのだから当たり前だが。

 ポケットの中の回復剤を探る。が、そこに常備されているはずの薬は1本もなかった。
 「回復剤なら、静姫様が持って行かれました」
 センカルだ。その手に、役目を終えてしわくちゃになったイグドラシルの葉がある。死人を蘇生させる奇跡の魔法を封じたそのアイテムを、彼女が使ってくれたらしい。
 『回復剤を持って行った』というからには、静はもうここにはいない。半壊した洞窟の中に残されたのは、うきとセンカル、そしてBOTの双子だけ。
 「姫様から御伝言が」
 「……」
 聞いているのかいないのか、うきは座り込んだまま、ごりごりと頭を掻いている。
 「『アタシの勝ちだから、行かせてもらう。戦利品ってことで、回復剤はもらってく。あと、その3人をお願い』」
 「……んだよ、もう」
 起こした半身を再び仰向けにばた、と倒して、うきは渋い顔。
 「こんなの聞いてないぞ畜生ー。ちゃんと正確な情報渡せよなー、あの『キザ亀』」
 『ここにいない誰か』に向って毒づくと、そのまま大の字になって目を閉じる。回復剤がない以上、このままじっとして体力の回復を待つしかない。
 「大体あんな強かったっけ? あの娘……?」
 ぶつぶつ言いながら、初めて静と会った時の事を思い出す。先日、プロンテラで無代が『ウチのお嬢様』と紹介してくれた少女は、確かに強力な武人であることは間違いないものの、少なくともあんな『化け物』ではなかったはずだ。昨夜、彼女の宿屋を訪ねた時も同じである。歴戦のアサシンとして、相手の力量を測る事に関しては相当の自信があるだけに、そのギャップには首を捻るばかり。
 「いつのまにか激烈パワーアップしました、ってか?」
 「……多分、『今』よ」
 「あ?」
 うきの独り言に、小さな声で応えたのはセンカルだった。ひっくり返ったうきが顔を向ける。
 「『今』ぁ?」
 「そう……。貴女と戦いながら、貴女に勝つために、精神と肉体をレベルアップさせた。『進化した』って言ってもいい」
 「はあ?」
  怪訝な表情のうき。対するセンカルは地面に座り込んだまま、まるで独り言のような言葉を吐く。その側には、フールのマントに包まれた『戦車(チャリオット)』の首が置かれたまま。考えてみれば不気味なシチュエーションだ。
 「普通の人間なら、自分より強い相手に勝つためには、まず経験が必要。そこから学習し、そして学んだ内容を基に、何度も練習を繰り返さなくてはならない」
 「まあ、そりゃね?」
 「でも、あの方は違う」
 センカルはぼそぼそと呟く。
 「途中の学習と練習の過程をほとんどすっ飛ばして、経験からいきなり結果を導き出す。それも一瞬で」
 「……何それ?」
 「敵に対する情報把握と、学習の速度がケタ外れなの。わずかな経験から膨大な情報を吸収し、脳内で無意識のうちに、それも一瞬で数千、数万回の模擬戦闘(シミュレーション)を繰り返して、最も理想的な結果をはじき出してしまう」
 「……」
 うきの眉間に皺が寄る。センカルの言葉がよく理解できない、というか理解はできるがどうにも信じられない、という表情。
 「戦いながら、戦ってる相手に合わせて強くなる、っての?」
 「そう。それこそ最初の一撃で殺しでもしない限り、足音一つ、目線一つからも敵の情報を吸い出す。そして全身全霊を挙げて即座に対抗策を練り上げ、勝ちに来る」
 「何それ、怖っ!」
 うきがぶるっ、と身を震わせた。センカルが展開する理屈は実感できずとも、実際に静と戦って負けたという事実が、何よりも強烈にうきを刺す。
 しかし本当にセンカルの言うことが正しいならば、静が瑞波を出てから今日までに得た経験と学習量はどれほどになるのか。
 プロンテラの下水やフェイヨンの森でモンスターと戦い、さらに昨夜うきと別れてから、ウロボロス4のアタックチームと死闘を演じた。
元々、瑞波での厳しい修行によって形成された下地の上に、常識では考えられない量の戦闘経験が、同じく常識外の猛烈な勢いで積み上がったに違いない。
 これが常人なら、それだけの戦闘経験を結果として生かすには一定の時間がかかる。何度も繰り返し練習し、修行しなくてはいけない。だが静はほとんど時間を置かず、いきなり完成した形で身につけ、実行することが可能なのだ。
 「反則じゃんか、そんなの」
 うきがボヤくのも無理はなかった。
 「……羨ましかったのよ」
 「ん?」
 センカルの、ほとんど消え入りそうな言葉を、うきの耳は捉えた。衰弱が進んでいるらしく、センカルの声は、もう明らかに普通の状態ではない。
 「ちょっとドクター、あんた大丈夫? 一応、静ちゃんに頼まれたからさ、死なれると困るんだけど」
 「羨ましかった……あの人が」
 うきの呼びかけが聞こえないのか、センカルの呟きは止まらない。さすがにやばいと思い、うきがえいっ、と身体を起こして立ち上がった。座り込んだままのセンカルの背に手を添えて、その顔を覗き込む。
 「ドクター、薬とかは?」
 「……」
 センカルがのろのろと、自分の胸ポケットを指差した。うきは中を探り、錠剤を発見。自分の荷物から水筒を出し、薬と共にセンカルに飲ませると、そっと寝かせてやる。
 ついでにBOTの双子、『月』と『星』にも水筒を渡してやると、それぞれ一口ずつ、大人しく飲んだ。飲み食いや歩行など、基本的な行動は自律的に可能であるらしい。
 「羨ましくて……だから『BOT』を作り続けた。負けたくなかった」
 横たえられたセンカルの唇が、小さな声を発した。
 「負けたくなかったのよ、あのひと……一条、桜に」
 「『一条桜』って確か、静ちゃんのお母さん?」
 センカルの側に再び座り込んだうきが訪ねる。まだ体力は回復しないらしい。
 「『伝承種』の貴重な血を引き……最強レベルの男を夫にして、物凄い能力を持つ子供を3人も授かる。同じ女として、それはあまりにも羨まし過ぎた。……おまけに美人だし」
 「あ、最後んとこ一番重要だ」
 うきが茶々を入れる。
 「ま、確かに色々とハイスペックだったんだろねぇ。あの静ちゃん見てりゃ分かるわ」
 ふん、と一つ鼻を鳴らし、そしてうきは声音を変える。
 「だからって、1万人以上も人体実験やらかす理由としちゃどうなの? 『女の嫉妬』ってさ?」
 「後悔は、してない」
 だからセンカルが、細い声でそう答えても、うきは軽く肩をすくめただけだった。センカルが何を言おうが、謝罪しようが開き直ろうが、もうどうしようもない事だからだ。

 そしてそれを誰よりも、センカル自身が良くわかっている。

 作り続け、殺し続けた。
 何の感情も持たず、やり尽くしてきた。
 フールを始めとする『失敗種(エラー)』を処分せず、生かしておいたのも、別に情が湧いたからではない。何かに使える、そう思ったからだ。
 魂の入れ替えで問題が発生したとはいえ、一応は死なずに生き残った個体である。入れ替えもできずに死亡した個体に比べて、何らかの優位性がある、そう考えるのが自然だ。
だから『愚者』フールを筆頭に『月』や『星』までも、処分せずに手元に置いて観察した。
 それだけだ。
 フールら『失敗種』に、BOT化以前の記憶はない。

 『古里を大規模な疫病が襲った』
 『お前達は辛うじて生き残ったが記憶を失った』
 『古里は壊滅し、今は立ち入れない』
 『センカル博士はお前達を無償で助けてくれた恩人だ』

 そんな偽りの説明を信じるしかない彼らに、センカルも最初は、本当に何の感情も持っていなかった。

 繰り返される、殺しては造り出す日々。
 そして時たま、彼ら『失敗種』が暮らすラボを訪れては、経過を観察する。
 『博士、いらっしゃい! お疲れさまです!』
 その度に、無邪気な笑顔で出迎えてくれる彼らに、しかしセンカル自身が癒されるようになったのはいつだったか。
 そしてその胸に、罪悪感の芽が芽吹いたのはいつだったか。
 その時期ははっきり思い出せない。が、一度芽吹いた芽が育ち、センカルの心を崩壊させるに至る時間は、本当にあっという間だった。

 センカルの人体実験のペースががくん、と落ちた。いや、落ちるどころか全く進まなくなった。
 フール達のラボに入り浸り、一日を過ごす事が多くなる。
 当然『ウロボロス2』のスポンサー、軍や貴族達からクレームが届き、部下達からも突き上げを喰らう。だがそれでも、センカルの手はもう動かなくなっていた。
 事件が起きたのは、そんな時だ。いや、センカルがそうだったからこそ、事件は起こされたと言うべきだろう。
 ウロボロス2のラボを『皇帝』・エンペラーが襲ったのだ。
 
 『よくも騙しやがったな! この嘘つき婆あ!!!』

 そう叫びながら、エンペラーは全てを破壊し尽くした。
 『取り替え児(チェンジリング)』の成功例として、既にセンカルの手を離れ、軍の指揮下に入っていた彼だ。充実した装備と、それを使いこなす訓練も積んでいる。何の軍事的防御力もないラボなど、文字通り鎧袖一触だった。

 こうなることを予想した上で、その彼に『真実』を教えた者。それはセンカルの部下達だった。いわゆるクーデターである。
 不覚にもセンカルは、部下達がそこまで自分を排除したがっていた事を、その時初めて気づいた。そして彼らの口から、ウロボロス2でセンカルが挙げた成果が、外部へ勝手に持ち出されていることも、初めて知った。
 彼らはセンカルに隠れてBOTを量産し、他の組織に供給していた。いや、それだけではない。秘密裏に王国政府の重要人物を、BOTに改造することまでやっていた。
 『政府』
 『教会』
 『カプラ社』
 王国を牛耳るこの三大機関に対し、送り込まれたBOTの数はもう数知れない。
 最強の守護者にして断罪者、『ウロボロス4』マグダレーナがそれに気づき、対応を始めていたが、それすら完全に遅きに失していた。彼らの作戦により、BOT化された末端のカプラ嬢が数人排除されていたが、実はその程度ではもうどうしようもない所まで、BOTの浸食は進んでいたのだ。
 しかし『BOT製作者』センカル自身は、それを知らなかったというのも、実に皮肉な話だった。
 そのセンカルに、エンペラーの怒りの一撃が落ちる瞬間。
 『博士!!』
 その剣を受け止め、彼女を助けたのが『愚者』フール。そして彼の兄妹達だった。
 フールは兄妹達を指揮し、直ちにワープポータルを使って、炎に包まれたラボを脱出。エンペラー達の追跡を振り切り、ここラヘルの辺境にある廃墟に隠れ住んだのだった。
 フールを始めとする『失敗種』、彼らもまたエンペラーと同じく、センカルの『真実』を知らされていた。
 だがそれでもエンペラーと同じ道を歩まず、
センカルを殺すこともなく、今まで共に暮らしてくれた事。
 その理由を、センカルは今も知らない。
 「……それでも、自分のやったことの意味ぐらい理解できている」
 誰に聞かせるでもなく、センカルは呟く。
 「『神様』とやらが本当にいたとして、罰を受けろと言うなら罰を受ける。地獄へ行けと言うなら行く。本当にいるならね、神様」
 センカルは地面に横たわりながら、マントに包まれて側に置かれた『戦車』の首を抱きとり、胸に抱きしめる。

 「でも……でも神様、貴方が本当にいらっしゃるなら」

 「どうして私を」

 「『私だけを』罰して下さらないのですか……!」

 それきり黙ったセンカルを、うきはそっと目を開けて見た。その時だ。
 「……ぐっ!」
 センカルが血を吐いた。
 「!? ドクター!?」
 けふ、けふ、と弱々しく、吐血が続くのを見て、うきがはっ、とした表情になる。
 「毒!? あんた……この卑怯者ぉ!!」
 さっき飲ませた『薬』が、自殺用の毒だったのだ。毒の扱いに関しては専門家以上のアサシンをして、これに気づかなかったのは、正にうきの失策だった。汎用の解毒薬ならうきにも手持ちがあるが、センカルの様子から見て、もう明らかに手遅れ。
 「……救われねー!」
 うきは叫んだ。
 「誰も! なんにも救われねーじゃんよ、こんなの!」
中の人 | 第十一話「Mothers' song」 | 20:09 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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