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第十一話「Mothers' song」(7)
  フールの何度目かの突進が、モンスターの壁に阻まれた。
 単騎で、しかもこの乱戦の中で足を止めるというのは命取りになる。囲まれ、滅多撃ちにされる前に、即座に騎鳥・プルーフの手綱を引き、撹乱のための疾走に移るしかない。

 生きた三大魔剣を駆る『魔剣醒し(アウェイクン)』・フールの戦力が低いわけではない。ただ単純に、敵の数が多く、そして強いのだ。
 いや例えそうであっても、ただ強力なモンスターを数揃えただけなら、フールとてここまで苦戦はしないだろう。
 今、フールが相対している敵の真の厄介さ。それは彼らが、自律的かつ効率的な戦闘プログラムを与えられた『BOTモンスター』である、という点にある。
 普通ならば、ただ獲物に向って突進してくるだけのモンスターが、役割を分担し、余計な事をせず、組織立って向って来る。ただそれだけで、フールほどの異能の強者でさえ攻めあぐねる、精強極まりない軍団と化す。
 敵陣の奥で悠々と腕を組むエンペラーに、一太刀浴びせる隙すらない。
 フールがこうして敵陣から離れても、敵は簡単に追って来てはくれない。これでは少数ずつ釣り出して殲滅する『各個撃破戦法』は通じない。それどころか逆に、しっかりと陣を組んだまま、じわり、じわりと押して来る。嫌らしいと言ったらなかった。
 これに対してフールが取れる戦法と言えば『一撃離脱』、それしかない。疾走しつつ敵を攪乱し、いきなり突撃する。そして何とか陣を破り、内側へ斬り込むチャンスを狙うのだ。
 敵陣深くに斬り込んでの乱戦になれば、三大魔剣による人工MHを造り出せるフールにも戦いようがある。混乱の中では同士討ちを怖れ、集団では逆に戦いにくいものだからだ。

 だが、見事に組織立った敵の前衛は厚く、フールが何度突撃しても、どうにも斬り込むチャンスを作れずにいた。
 「うおーい、もういい加減あきらめろよフール。陽が暮れちまうぜぇ」
 エンペラーが変らぬ嘲笑でフールを揶揄する。
 確かに陽は傾いている。小石だらけのラヘルの野に、北の山脈が造り出す巨大な影が長く、その手を伸ばし始めていた。
 「しっかし、何でそこまでするかねお前。あの女のためにさ。マジで恨んでるとかねーの?」
 本気で気持ち悪そうに、エンペラーがフールに問いかける。
 なぜセンカルを守ろうとするのか。彼女を恨んでいないのか。その問いはしかし、むしろ当然のものだろう。
 分かっている。
 フールにだって分かっているのだ。
 (……エンペラーが正しい)
 その事を、ちゃんと理解している。
 記憶がないとはいえ、フールにもちゃんと子供時代があった。それが幸せなものだったかどうか、今となっては分からないが、それでも自分の人生と呼べるものが、確かにあったはずなのだ。
 本当の両親からもらった、自分だけの肉体も。
 だが、それは奪われた。
 何の罪もないのに、何の関わりもない運命に巻き込まれ、何もかもを奪われた。
 それを奪った人間も、はっきり分かっている。

 『ウロボロス2』フランシア・センカル、その人だ。
 フールはそれに怒っていいし、恨んでいい。たとえセンカルを殺したとしても、その行為は復讐として十分な正当性を持つだろう。
 事実、エンペラーは迷わずそうしている。むしろそれこそが自然な行動であり、おかしいのはフールの方ではないか。

 だがフールは、その道を選ばなかった。センカルを恨み、復讐する道を歩かなかった。
 いや、フールだって真実を知った直後は、怒りや恨み、困惑の気持ちが確かにあった。
 だが彼はその時、考えてしまったのだ。
 センカルを恨み、彼女を殺す。そこまではいい。
 では彼女を擁する『ウロボロス2』は放っておいていいのか?
 いいわけがない。
 太古から『BOT』を研究してきた忌まわしい組織、そもそもそれが存在しなければ、センカルとてこの研究に手を染める事なく、フールも自分の人生を歩めたはずである。
 ならば『ウロボロス2』も恨むべきだ。当然、その上位機関である『ウロボロス』全体も、憎悪の対象にすべきだろう。

 ではさらにその母体である、ルーンミッドガッツ王国そのものはどうだ?
 それを認めた王は? 裏で糸を引く貴族どもは? 教会は? 世界は?
 神は?
 自分はどこまで恨めばいいのか。どこまで憎悪すればいいのか。
 どれだけ壊し、どれだけ殺せば、復讐は終わるのか。
 いや、そもそも終わりなどあるのか?
 また万一終わりがあったとして、では『その後』フールはどうするのか。
 復讐に満足して隠遁でもするのか。いや、今度はフール自身が、世界を滅ぼした罪人として生きることになるのか。
 何度も何度も考え、自分に問いかけ続けた。心が破れ、血が流れるほど考え続けた。
 そしてとうとう、フールは選んだのだ。


 『誰も恨まない』ことを。

 恨みや怒りや悲しみがなくなったわけではない。捨てたわけでもない。
 だが自分に残されたこの心と身体を、復讐のために使う事はしない。

 そうではなく、
 『これ以上、BOTの悲劇が広まるのを止めよう』
 この力は、そのために使う。
 それがフールと、その兄妹達が決めたことだった。
 そしてあの時、怒りに狂うエンペラーからセンカルを守って逃亡し、この辺境の地に匿ったのだ。
 フールは兄妹達にセンカルの護衛を頼むと、自分は首都を拠点に狩りや傭兵をして金を稼ぎ、センカル達の隠遁生活を支えた。
 そしてBOTの情報があれば密かに出向き、彼らを『保護』してセンカルの元に連れて行った。

 そうして首都とラヘルの辺境を駆けずり回る生活。
 だが正直な所、未来に光は見えなかった。
 保護したBOTは数十人にも上ったが、魂のないプログラムだけの彼らに生活力などない。彼らがこの辺境で暮らして行くだけでも、フールへの負担は増えるばかり。
 一方で、彼らを助ける研究もはかばかしくない。そもそもBOT製作は、彼らを元に戻すことなど想定していないのだから当然だ。
 さらに問題なのは、センカルの心身だった。研究者としていかに優秀でも、研究資料も資材もほとんどない状態では、彼女とて大した事はできない。その罪悪感と焦燥が、センカルの心を蝕み続けた。
 悪い事に、その身体が病に冒される。余りにレアケースのため治療法が確立されていない、厄介なラヘルの風土病。センカルの命が尽きるのも、もう時間の問題だった。
 『もう自分を殺して欲しい』
 そう頼まれた事も一度や二度ではない。
 その度にフールはセンカルを説得した。自分達を置いて行かないでほしい、力を貸して欲しいと何度も頭を下げ、センカルの心と命をつないできた。
 そんなフールに、何か希望があったわけではない。むしろ絶望だけだったかもしれない。
 だがそれでもなお、フールという青年はその恨みを、怒りを心に沈め。
 センカルも、ウロボロスも、王国も、神も、何も恨まず。
 自分とか、世界とか、現実とか、それらどうしようもないものと、真っ直ぐに向き合ってきた。
 そのフールの選択を、人は何と言うか。エンペラーは何と言うか。

 『愚か』


 そう言ってしまうなら、これほど愚かな選択もないだろう。

 愚かな戦いもないだろう。
 無謀とも言える突撃を続け、今やフールの身体は傷だらけだ。回復剤を瓶ごと叩き付ける、あの無茶苦茶な治療法でも、全ての傷を治し切れるわけではない。抜き切れない矢や、折れた槍が身体の各所に刺さったまま。防具だってあちこち砕け、防御の用を成さなくなった箇所もある。無事な物と言えばもう、彼が振るう生きた三大魔剣ぐらいだ。
 頼みの回復剤だって残り少ない。
 だがそれでも、それでもフールは止まらない。
 フールの身体は痛みを感じない。叩かれても斬られても、撃たれても、何も感じない。
 一見すると便利そうにさえ見えるその身体はしかし、フールに苦悩しかもたらさなかった。
 
 (ボクは、本当に生きているのか……?)

 その実感を、どうやっても持つことができない。
 (本当はもう自分は死んでいて、『フール』とはただのプログラムに過ぎないのではないか?)
 痛みのない、他人の身体を押し付けられた彼に、その疑念がずっとつきまとう。
 「!」
 フールが何度目かの突撃を敢行した。敵の剣をはね飛ばし、陣形に隙を作って割り込もうとする。だが、陣の奥から突き出される無数の槍が、その行く手を塞ぐ。
 「うぉぉぉおおお!!!」
 フールが吼えた。槍と槍の間、その間隙を狙って、無理矢理身体をねじ込ませる。

 (生きている)

 当然、その肉体に刺さり、肉を裂く槍もあるが、身体の動きに支障のない限りは無視。その暇があれば魔剣を駆り立て、槍の群れを切り払って前進する。

 (生きている!)

 痛みを感じない身体だからこそできる、まさに捨て身の攻撃。

 (生きている!!)

 気の弱い人間なら、見ているだけで気絶しかねない、凄惨な特攻。

 (ボクは生きている!)

 だがそれはフールという青年の、たった一つの『生存証明』。
 だからこそ、その身を削り続ける。光の無い未来でも、進む事をやめない。 
 恨みも、怒りも、悲しみも、その身に深く沈め。センカルも、王国も、世界も、神も、誰一人恨まず。
 一途に。
 ただ一途にその道を。
 人、それを『愚者』という。
 だが言わば言え。しかし見るがいい。

 荒れ野を独り往く、聖者の如きその姿を。

 だがその突撃も、ついに行き足を失った。槍が、剣が、敵の身体を張った防御が、フールの突進をついに食い止めたのだ。
 こうなると、敵の集中攻撃が来る前に離脱するしかない。これまでもそうして来たように。
 だが、今度はそうはいかなかった。一か八かの突貫が災いし、身体に食い込んだ槍がフールの身体の自由を奪っている。
 逃げられない。
 足を止めてしまったフールに向って、敵の陣が一気に殺到する。
 「……!」
 フールの表情が激しく動揺した。だが、それは決して自分の危機を感じてのものではない。
 「フール!!!」
 背後から叩き付けられた声のせいだ。その声を、一体誰が間違えようか。
 「姫!? なぜ!?」
 声の主は間違いようもない、一条静。だがフールのその質問は、いささか愚問に過ぎた。
 なぜも糞もない。
 この姫様が、一度戦うと決めた戦いから黙って引き下がる、などと本気で思う方がどうかしているのだ。
 「マグナムブレイク! 撃って! 今すぐ!」
 静の叫びが猛烈な勢いで近づいて来る。背後を振り返る暇さえない。迷っている暇も、ない。
 「マグナムブレイク!」
 フールがスキルを発動するのと、フールの肩に背後からとん、と静の足がかかるのが同時。
 ずどん!!!
 フールを囲んだ敵が一瞬、数メートルも吹き飛ばされる。ノックバック。フールの身体から噴き上がる、爆発的な闘気の力だ。
 先刻のエンペラーとの遭遇戦の際、やはりフールの頭を飛び越えようとした静を空中で押し返したあの爆発力が、再び猛烈なエネルギーをぶち撒き、周囲の空気を白熱化させる。

 そしてフールは見た。
 静が、飛んだ。
 剣士服の背中に背負っていたバックラー、それを足下に踏みつけて、その上にうずくまる低い姿勢。フールの起こしたマグナムブレイクの爆風を、まるでサーフィンのように足下に受け、静が宙を舞う。
 「フール! 後でぶん殴るから、生きてなさいよぉおっっ!!!」
 地上のフールに向かって、捨て台詞を長く引きながら、敵陣の上に見事な放物線を描く。
 「うお?!!」
 それを見ていたエンペラーが驚嘆の声を上げた。こんな方法でBOTモンスターの陣を飛び越えて来るなどとは、さすがのエンペラーも想像もしていなかったのだ。
 だが驚嘆の割に、その声に慌てた様子はない。むしろ面白そうな響きさえある。
 それもそのはず、時に静すら上回る彼の『目』には、その程度の動きは止まっているも同然だ。その動きを捕捉して迎撃することも、MOBの群れの真上に撃ち落とすこともたやすい。
 例えるなら、浜辺で戯れに打たれたビーチボールを打ち返すようなもの。

 静が描く放物線が落下に移る、そこを引きつけておいて、
 「マグナムブレイク!」
 フールよりも遥かに強大な爆熱の闘気が、ラヘルの荒野に巨大な火球を生み出した。フールのマグナムブレイクに乗っただけの、翼も持たない静には、これを避ける術はない。あっさりと撃墜され、BOTモンスターがひしめくラヘルの荒野に無惨に墜落する。そう思われた。
 だが。
 「!」
 エンペラーの起こした爆風が直撃するより一瞬早く、静が足下のバックラーの縁に手をかける。そしてそれを思い切り引っ張り、『ある角度』に調節した。
 マグナムブレイクの爆風、それが静に到達したのは直後。角度のついたバックラーに、爆風のパワーが襲いかかる。
 ぐん!
 静の身体が、まるで弾かれたように急上昇した。撃ち落とされるどころか、水面に投げられた水切りの石のように、見えない爆風を巧みに捉え、更なる飛翔につなげたのだ。
 バックラーを足下に敷いた静の身体が、まるで空に吸い上げられるように高々と舞い上がり、空中で回転する。スノーボードの空中技(エア・トリック)を思わせる縦方向、そして同時に横方向の激しい螺旋運動。
 遥か遠く、雪の山脈から伸びた影と、夕陽の光が出会う境界線。高く空中に引かれたその境界線上で、静の身体がラヘルの乾風とダンスを踊る。紅い光と、暗い影と。二つの色をめまぐるしく身にまとい、同時に脱ぎ捨てながら。
 静が身につけているものは、アカデミー支給の簡素な剣士服のみ。だがこの時ばかりはその姿、夕陽に舞う風の精霊か、それとも戦場に死を呼ぶヴァルキリーの眷属か。
 先刻、洞窟の前でただ一度だけ、マグナムブレイクの爆風をその身に受けた。たったそれだけの経験を元に、バックラーを使った飛翔、さらに高度なエア・トリックすら完璧に実行してみせる。
 それも一度の練習も無し、ぶっつけ本番の一発勝負。

 それこそが『成功種の中の成功種(サクセス オブ サクセス)』・一条静なのだ。

 遥か宙空での回転がついに止まり、頭を下にした逆落としの姿勢。
 腰から銀狼丸を抜いた静が、ついにエンペラーに襲いかかる!
中の人 | 第十一話「Mothers' song」 | 20:10 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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