07
--
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
--
>>
<<
--
RECOMMEND
RECENT COMMENT
MOBILE
qrcode
OTHERS
(c)
このページ内における「ラグナロクオンライン」から転載された全てのコンテンツの著作権につきましては、運営元であるガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社と開発元である株式会社Gravity並びに原作者であるリー・ミョンジン氏に帰属します。 © Gravity Co., Ltd. & LeeMyoungJin(studio DTDS) All rights reserved. © 2010 GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved. なお、当ページに掲載しているコンテンツの再利用(再転載・配布など)は、禁止しています。 当ページは、「ラグナロクオンライン」公式サイトhttp://www.ragnarokonline.jp/(または、ガンホーゲームズhttp://www.gungho.jp/)の画像(またはテキスト)を利用しております。
ro
ブログランキング
にほんブログ村 ゲームブログ ラグナロクオンラインへ にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
ブログランキング
LATEST ENTRY
CATEGORY
ARCHIVE
LINKS
PROFILE
SEARCH
Day of Glaris(3)
 「御開門!!御開門を願わん!!」
 国境の街・アルデバランを囲む堅牢な城壁、その向こうから響いた大音声は、遥か街の真ん中に聳える時計塔まで、くっきりと届いた。
 「これに罷り越したるは神聖ルーンミッドガッツ王国の騎士にしてモロクの守護職、王国元老院議員、オウカ・フォン・ラピエサージュなる!」
 「?!?!?!」
 そろそろ広場を埋め尽くしそうなアルデバラン市民、そしてカプラファンたちは一斉に目を剥き、一方で時計塔の正面に整列したチーム・グラリスは平然。
 アルデバランの空に朗々と響いたその名乗りこそは、『元』グラリスNo10ロードナイト。
 抜群の資質と容姿、そして非の打ち所のない血統家柄から、カプラの最高峰『ディフォルテーNo1』すら勤められるとされた、かつての新人グラリスその人だ。
 彼女は『あの戦い』で大きなダメージを受けた母国の混乱を見かね、自ら決断してグラリスを辞し、王国貴族として帰参。直後から、王と元老院議会の絶大な信頼の下、モロクとその周辺の土地を領土として与えられ、全身全霊でその復興に取り組んでいる。
 同時に、王国の意思決定に深く関わる元老院、その最年少の議員にも選ばれ、『あの戦い』を通じて手を取り合った様々な国々の人々と共に、信頼関係に基づいた盛んな外交を行っている。
 もはやこの大陸のVIPの一人と言って差し支えない、庶民には顔すら拝めない雲の上の存在。
 それが今、白銀に輝くアーマードレスに身を包み、騎鳥ペコペコにまたがった華麗な騎士姿で、アルデバランの大門を悠々と潜り抜けて来る。極彩色のペコペコの羽をこれでもかと飾った兜を小脇に抱え、聖戦時代から彼女の家系に伝わる魔剣は腰だ。
 「よー、おひさーG10、じゃなかった、『マム・ラピエサージュ』」
 何かと遠慮のないG2ハイウィザードが、手に持った巨大な杖をぶんぶん振り回して挨拶。ちなみに『マム(Ma’am)』は『マダム(Madam)』の省略形であり、男性なら『サー(Sir)』にあたる敬語なのだが、このG2が言うとほとんど敬語に聴こえない。実に魔法使いらしい、王も貴族も、神様だって知ったことかという気位の高さ。
 「キャ〜♪ ロナチャ〜ン♪ 税金安クシテ〜♪」
 また適当な黄色い声を張り上げての歓迎は、もちろん虹声のG6ジプシー。
 だが言われたG10ロードナイトには怒りの欠片もない。
 「お久しぶりです魔法使い殿、唄人殿も、お元気そうで安心しました」
 すべての役柄を女性だけで演じる、アルナベルツ名物・女演劇の花型男役のような、いっそ男より男前な声と態度も相変わらずだ。
 「どうぞ昔のように『G10』と呼んで下さい。マム、などと呼ばれるよりも、私にとっては遥かに大きな誉れです」
 どこかに台本でもあるのかと疑うほど、いちいちセリフが大仰なのも相変わらず。
 ちなみに『10番目のグラリス』も『師範貴騎士(マスター・ロードナイト)』も、彼女がその座を辞して以来、ずっと空位のままだ。とはいえ騎士として抜群の能力はもちろん、家柄や血筋まで厳選されるグラリス・ロードナイトは、チーム・グラリス中で最も人選が難しいと言われるだけに、それも致し方ない。
 裏話になるが、かつて瑞波一条家の長女・綾もグラリス・ロードナイト候補として名前が上がったことがあるのだが、結果として彼女でさえ『実力はともかく血統家柄が悪すぎる』とハネられている(もっとも決まったところで綾が受けたとは思えないが)。『大陸三大国の上級貴族出身で、少なくとも3親等以内に王族の血統を持つ』等の暗黙の内規を満たす、次代のグラリス・ロードナイトが誕生するのは、実に27年も後、なんとこのG10ロードナイトの長女である。
 もちろんこの時、まだ生まれてすらいない。
 華麗なる長身のグラリス・ロードナイトがくるり、とペコペコを返した。
 アルデバランの大門を、彼女に続いて数台の『鳥車』が列をなして入街してくる。馬のいないこの世界で、馬の代わりにペコペコに曳かせた車のことをこう呼ぶのだが、馬よりパワーのあるペコペコだけに、通常は1羽か、せいぜい2羽もいれば十分だ。
 だが今、G10ロードナイトの先導でアルデバランに入ってくる鳥車は4羽立て、中には6羽立てという最大級のものまで、いずれも巨大かつ豪華な鳥車ばかり。
 大門から時計塔までまっすぐに進み、そこから時計塔をぐるりと車回しに使って整列し、一旦停止。同時に、並んだ鳥車の一台からアマツ風の服を着た使用人が、別の一台からは双子らしい二人の少年従者が飛び降り、手早く乗降用の低い階段をしつらえる。
 まず最初に時計塔正面に来た鳥車は、扉に『カプラの螺旋(カプラスパイラル)』を刻む、カプラ社の重役専用車だ。
 扉が開く。
  迎えるはG10ロードナイトの大音声。
 「カプラ社代表取締役社長、ルフール・シジェン殿!」
 どおっ!! と群衆が湧いた。カプラの紋章を見た時から予想はしていても、その姿を生で見るのはやはり格別だ。
 長かった黒髪をばっさりとショートにし、『最もグラリスらしい』と謳われたカプラ服と眼鏡の姿から、かっちりとした男物のスーツに着替えた長身のシルエット。階段をしつらえてくれたアマツ風の使用人と、双子の少年従者に軽く黙礼し、ヒールの音も高らかにアルデバランの石畳の上に降り立つ。
 神眼を謳われた『元』グラリスNo1スナイパー、そして『現』カプラ社社長、その人の姿である。
 「G1……いや社長、このたびは申し訳ない」
 事の発端である義足のG9パラディンが頭を下げるのへ、
 「ん……? ああ、そのことはいい、G9。旦那さんが無事で何より」
 これも相変わらずの冷静さで、神眼のG1スナイパーがうなずく。
 「後は任せておけ。必ず無事に助け出す。堂々と、正面からね」
 にやり、微かに微笑む表情も、あの日の頼もしさと変わらない。が、
 「キャ〜♪ シャチョサ〜ン♪ ボーナス上ゲテ〜♪」
 また適当な黄色い声を張り上げるG6ジプシーに、じろり、と意味深な流し目を投げておいて、はー、と溜息。かつての仲間と一堂に会する久々の機会だが、どうも機嫌はよろしくない。
 回りの群衆には聴こえない低い声で、
 「……これでアンタらが好き放題しなきゃね……女子寮の建設費、最終的に幾らかかったか知りたい?」
 「ぅおっと……!」
 G5ホワイトスミスが首をすくめる。破壊された女子寮を要塞化するのはカプラ社の総意としても、グラリス達が半分ノリで考えたアイディアを片っ端から盛り込み、勝手にどんどん予算をふくらませた『戦犯』こそ彼女だ。
 「あと、シュバルツバルドの『国宝武器』、勝手に持ちだして狩りしたヤツ!」
 「バレたさ!?」
 G11ガンスリンガーが首をすくめる。巨銃『エクソダスジョーカーXIII』はあの戦いの後、『国宝』に指定されたが、保管はそのまま『マグフォードII』の船内だ。
 「それと先週! 賢者の塔の架綯先生を連れ出して、ジュピロス廃墟の未踏破区域でさんざん鍵開けやらせたの誰!? 賢者の塔から猛抗議が来てるんだけど!」
 「げ」
 「あ」
 「う」
 「アイヤ〜」
 「あらら〜♪」
 「アイィエ」
 「ほっほ」
 「……ほぼ全員か」
 G1スナイパーが天を仰ぐ
 「ちっ、まさかあのガキ、チクりやがるとは……あんだけサービスしてやったのにっ!」
 何をしたのかG2ハイウィザード。
 「ほら、やっぱG2のおっぱいじゃ駄目だったじゃん?」
 両手を首の後ろで組んで、G8チャンピオン。
 「アンタの胸板腹筋に言われたくないわよ。……くっそー、お子ちゃまにはコッチのが効くと思ったのにっ」
 「……あのね、架綯先生の名誉のために言っとくけど、チクリじゃないからね」
 G1スナイパーが、今や部下となったかつての同僚たちをじんわりと睨み回す。
 「架綯先生、熱出して寝込んでらっしゃるってよ、あれ以来。『うわ言』でバレましたとか……どんな顔して謝りゃいいのよっ!」
 眉間のシワをぐりぐり。気苦労が絶えないようだ。
 「あー、まあまあG1、それぐらいに。方々をお待たせしては失礼ですから」
 乗降用の階段を抱えたアマツの使用人に促され、G10ロードナイトがとりなす。
 G1スナイパーをその場に残し、先頭の鳥車が移動。時計塔をぐるりと周回して次の鳥車が止まり、アマツの使用人と双子の従者が、素早く階段を据え付ける。
 扉には『神聖アルナベルツ法国』の紋章。群衆のどよめきが高くなるのは無理もない。ここアルデバランの街が属する『シュバルツバルド共和国』とアルナベルツ法国とは、ぶっちゃけ『敵国』だ。『あの戦い』以後、その関係はかなり改善されてはいるが、長い年月の間、血で血を洗う戦いを繰り返してきた両国の関係が、そうそうインスタントに友好化されるなら、世の中こんな世話のない話はなかろう。
 だが群衆のざわめきと視線の原因は、決してそこにあるのではない。
 それが証拠に、彼らには『敵意』はない。あるのはむしろ『期待』に満ちた『疑念』。
 まさか。
 まさか。
 まさかそんなことが。
 扉が開く。
 G10ロードナイトの大音声。
 「神聖アルナベルツ法国・法王庁第3席! アキラ・スカーレット枢機卿殿!」
 うおおおおおおお?!?!?!?!
 今度こそ、街を埋め尽くした大群衆から驚愕と歓喜の声が吹き上がった。
 『元』グラリスNo3ハイプリースト。
 彼女はG10ロードナイトと同じく、戦乱で人材不足に陥った母国に帰参し、少女法皇を支える中枢人物として活躍中。
 と、いう情報は誰でも知っていても、カプラ退任以来、彼女の姿を見ることも、噂を聞くことすら絶えて無かった。アルナベルツ法王庁の並外れた排他性、そして秘密主義のためである。
 名高い少女法皇に仕える神官達のうち、人前に姿を見せるのは下級、せいぜいが中級神官まで。最高位である『大神官』、それに続く『枢機卿』クラスが人前に、しかも『外国』でその姿を晒すのは、恐らくこれが史上初めてではないか。
 それゆえに、決して二度とは揃わないと言われた『あの日のグラリス』。
 それが今、青空に聳える時計塔の前に。
 真っ白な布地を金糸で縁取った法服を、茶色の帯でゆったりと結ぶ、アルナベルツ法国女性神官のベーシックな装い。失った片目を覆っていたトレードマークの黒革眼帯は、柔らかな白絹に銀糸でアルナベルツの紋章を刻んだ豪華なものに変わっている。
 とはいえ、その歴戦の傭兵教官めいた厳しい風貌は現役時代そのまま、少しも変わっていなかった。
 「わははははは!!!!似合わねー!!!!!」
 挨拶代わりの爆笑はもちろんG2ハイウィザードだが、他のグラリス達も苦笑を隠せない。
 誰よりも、G3ハイプリースト自身が、
 「笑うな。自覚はしている」
 と、苦笑交じりなのだから世話はない。
 「わざわざすまない、枢機卿殿」
 義足のG9パラディンがかつての敵、そして同僚、そして戦友に頭を下げる。
 「礼を言うのはこっちだな、G9。おかげで神殿を抜け出す口実ができた」
 回りの群衆には見えぬ、小さな笑み。
 「神殿は清浄だが、どうにも空が狭い。『イトカワ』で見た空さえ、今では懐かしい」
 珍しくセンチメンタルになっているのは、さしもストイックな彼女も、閉鎖的な神殿での生活がよほど堪えたか。
 それとも。
 G9ハイプリーストが階段を降りるのと同時に、アマツの使用人と双子の従者が、アルナベルツの石畳の上に緋色の絨毯を広げる。神に仕える者を穢れから守る、高度な紋章を刻んだ逸品だ。
 お付きの女神官を従えたG3ハイプリーストが鳥車を降り、絨毯の上に降り立った。お付きの神官はまだ子供で、低級神官の戒律に従って顔は隠されている。辺りの風景が余程に物珍しいのか、布ですっぽり覆われた顔を思い切り仰け反らせ、聳える時計塔を見上げてみたり、居並ぶ群衆やチーム・グラリスの面々をきょろきょろと見回したり。しまいには隻眼のG3ハイプリーストに、小声でたしなめられる始末だ。
 二人を残し、また鳥車が巡る。こういう時、呼ばれるのが後になるほど社会的地位が高い、というのが通常の礼。
 扉には、賢者の塔『知識の紋』。
 群衆が再びどよめき、扉が開く。
 エメラルドグリーンの髪と、青を基調とした教授服が、シュバルツバルド山脈を吹き降ろす風になびいた。
 「賢者の塔・セージキャッスル第1席、『放浪の賢者』、大教授(グランドプロフェッツオル)翠嶺殿!」
 G10ロードナイトの迎え口上を聞くまでもない。市民、そしてカプラファンも関係ない大歓声が、巨大な時計塔さえ震わせる。
 あの戦いを収束に導き(真実はともかく、表向きはそうなっている)、今や超国家の調停組織となった賢者の塔・セージキャッスルを率いるこの戦前種は、世界中の人々にとっての平和と繁栄の象徴であり、尊敬の対象でもあるのだ。
 整列したチーム・グラリス、今や大陸のVIPの一人である長身のG10ロードナイト、隻眼のG3ハイプリーストさえも、この女賢者に対しては現役同様の礼。
 「翠嶺先生、わざわざのご足労、感謝いたします」
 代表して神眼のG1スナイパーが再度、頭を下げる。続けて、
 「あのう……架綯先生のご病気、誠に申し訳なく……」
 謝罪の言葉にキレがないのは、さしも沈着冷静をもって鳴る女弓師をして、さすがにバツが悪いとみえる。
 「いいのよG1。まあ病気と言っても、ちょっと『のぼせた』だけ」
 翠嶺が柔らかく微笑む。『春』の方らしい。
 「おかげさまで、色々と『お勉強』させてもらったみたいだし」
 柔らかい微笑みのまま、チーム・グラリスに流し目。
 『春』が一瞬『冬』に逆戻りし、一同がひいっ、とすくみ上がる。翠嶺先生の『怒らせてはいけない人』の評価はますます高いようだ。
 車列が巡り、最後の鳥車が時計塔の正面に泊まる。官能的なほどに美しい艶を持つ黒色の車体は、大陸ではまだ珍しい『漆塗り』である。しかも車体すべてを漆で塗り、そこに金銀の蒔絵をほどこしてある。外へ外へとアピールする大陸の美意識とは真逆の、内側へ内側へと深く染み透っていくような彩色美。
 『アマツ・瑞波の守護職、一条家王女、香殿!』
 G10ロードナイトの声は短く、その姫君の名を知る人々も少ない。あの戦いで彼女がどこで、何をしたかを知るものは、今でもほんの一握りなのだ。
 とはいえ、扉から現れたその姫君の姿に、群衆から思わず感嘆の溜息が漏れる。
 人形のように冴えた造形はそのままに、人妻として、また母としての柔らかさと包容力をのせた美貌。
 これも大陸では珍しい艶やかな黒髪を腰まで長く梳き、黒地に藤の花を染め抜いた見事な着物をすっきりと着こなした姿。
 乗り物の黒漆そのままに、見る者を自らの内面へと誘う静謐の美。
 アマツの使用人に手を取られ、階段を降りる足にも漆塗りの履物。アルデバランの石畳にかろん、と軽い音を転がす。
 美女には事欠かないカプラの面々も、思わず魂を奪われたように一礼。ついでにG3ハイプリーストのお付き神官が、思わず顔の覆いを持ち上げそうになり、隻眼の上司の手でばすっ、と戻されたり。
 漆の鳥車が車列に戻り、そのまま他の鳥車と共に時計塔をぐるりと囲んだ状態で待機。アマツの使用人と、双子の従者の手で、筒状に巻かれた長い絨毯がころころころ、と伸ばされる。
 方向は西。アルケミストギルドの方角。もちろん、街を半分横断するほどの長さはないので、複数の絨毯を伸ばしては巻き、伸ばしては巻きしながらつないでいく。
 まるで喜劇のような仕事だが、アマツの使用人の絨毯さばきが実に見事で、まるで街の中に緋色の川が流れるように淀みがない。
 「さて」
 一同を見回した翠嶺が、ぽんぽんと手を叩く。
 「では『殴り込み』と行きましょうか」
 
 つづく
中の人 | 外伝『Day of Glaris』 | 08:43 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
1/5PAGES | >> |