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外伝『The Gardeners』(18)
 『座敷の襖を開けたら騎鳥騎士がいて、問答無用で襲ってきた』
 という状況を現代に例えるとしたら、
 『座敷の襖を開けたら戦車がいて、問答無用で襲ってきた』
 といったところだろうか。ともかくもそれは、常識ではまず考えられないことだった。
 そもそも騎鳥ペコペコが屋内にいる、というのがおかしい。
 この泉屋、咲鬼襲撃事件(外伝『Tiger Lily』 参照)で完全に破壊された後、瑞波・一条家の資金援助(というかほぼ全額出資)で建て直されており、華美さこそないが広さも高さも余裕を持った造りとなっている。
 今風に言うなら『誰もがくつろげる癒し空間』というところだ。
 しかしだからといって、屋内にペコペコが、しかも騎士を乗せた状態で入り込む、というのは非常識に過ぎた。
 実際、ペコペコを座らせた状態で騎乗した女騎士・一二音(ひふね)の頭は、そのままでも天井すれすれ。ペコペコがちょっとでも腰を浮かせば、天井を突き破りそうな状態だ。
 だが。
 「?!」
 侵入者・『鬼殺しの閃鬼』めがけて飛ぶ一二音の剣は鋭い。
 ぎゃりいん!!
 殲滅士・アサシンクロスの回避力に、鬼の神速を加えてなお、避けきれぬ一撃。しかも重い。辛うじて両手のカタールで受けても、その不自然さゆえに体勢が崩れる。その隙を逃す一二音ではない。
 「むんっ!!」
 突き。
 「はっ!!」
 薙ぎ。
 閃鬼のトレードマークである編笠が裂け、その相貌がのぞく。
 それにしても一二音、巨大な騎鳥に跨ったまま、常識で考えれば身動ぎ一つできそうもない屋内で、ほとんど屋外と変わらない攻撃を繰り出している。
 その秘密は、騎鳥ペコペコの方にあった。
 珍しい薄紫色の羽色をした騎鳥が、一二音の足下で『立たずに動いている』。
 敷き詰められた畳の上、両足の爪を器用に使って、まるで『すり足』のように巨体を移動させている。さすがに畳はズタズタになってしまうが、戦支度で完全装甲された騎鳥に、同じく重装甲をまとった貴騎士・ロードナイトの総重量が数百キロにもなることを考えれば、被害としては極微。
 まして一二音の武器が巨大な両手剣・ブラッディイート、通称『鮮血喰らい』であることも加えると、建物そのものを壊さず屋内で戦闘を行うことは、ほとんど奇跡に近いと言ってよいだろう。
 がぎぃん!!
 『鮮血喰らい』の魔力が発動し、回避不能の一撃が閃鬼を直撃する。どうにか深手だけは避けたが、手入れが悪く赤錆びたアサシンクロスの衣装が削ぎ取られ、畳の上に無様に転がされる
 屋内での戦いならば、本来圧倒的に有利なはずの暗殺者が騎士に、しかも騎鳥騎士に圧倒されている。
 あっていいことではなかった。
 ずざあ!!
 騎士を乗せた騎鳥が畳をすり下ろしながら、巨大な爪で閃鬼を踏み潰しに殺到する。上からは一二音の『鮮血喰い』。
 「……!」
 とうとう、閃鬼が逃げた。庭へ転がり出て、そのままジャンプ。全職業中でもトップクラスを誇るアサシンクロスの体術をフルに使い、屋根の上まで超跳躍を敢行する。本来、屋根の上を守るべき二人の女忍者は、と言えば……。
 「ちょっ!! さやかちゃん! ストップ!! もう火いいから! 店が燃えちゃうから!!」
 「……燃」
 閃鬼の出現で再び『焼滅スイッチ』が入ったさやかを、みいやがあわてて止めている真っ最中。
 好機。
 「……と、思ったか?」
 一二音の声は、閃鬼の『上』から響いた。
 堅牢な瓦でびっしりと埋められた泉屋の屋根。その上に立った閃鬼より、さらに高みから。
 ぶんっ!!!
 唸りを上げて降ってきたのは、以外にも『鮮血喰い』ではなかった。
 『足』。
 その正体は、巨大な爪を煌めかせた騎鳥ペコペコの『足』だった。
 ばすっ!!
 閃鬼の編笠が再び盛大に裂け、その片頬に太い血の筋が走る。もし直撃していたら、鬼の身体といえども真っ二つに引き裂かれていただろう。
 屋根より、その上に立つ閃鬼より高く跳躍した騎鳥が、騎士を載せたまま空中で宙返り、同時に足を真下に蹴り下ろして閃鬼を襲った。
 縦回転の踵落とし。
 だがそれで終わりではなかった。
 ぶおんっ!!
 目の前に降り立った巨大な薄紫の巨体が、振り下ろした足を軸にして今度は水平回転。反対の足の爪を煌めかせ、閃鬼の胴体を薙ぎに飛んで来る。
 回し蹴り。
 今度こそ避けきれない。肘を曲げてブロック、だが無駄だ。
 どぎぃんん!!
 騎鳥の爪にはめられた金属性のハーケンと、アサシンクロスの衣装に象嵌された禍々しい形状の金属部品、それが激突する重い衝撃音。
 いかにアサシンクロス、しかも鬼の身体といえども、重装甲・重武装の騎士を乗せて馬より速く、遠く、長く疾走し、戦となれば平然と一昼夜を戦う戦闘生物・騎鳥ペコペコのパワーには到底かなうものではない。
 閃鬼の身体がほとんど真一文字に、いや多少上向きとさえ言える軌道を描いて吹っ飛ばされる。
 泉屋の庭を、壁さえ越えて道まで飛び、辛うじて着地。どうやら閃鬼、蹴りの衝撃を抑えるために自ら跳躍した部分もあるようだが、それでもこれだけの距離を飛ばされた経験は人生でも初だろう。
 しかも道まで飛ばされたところで、戦いが終わったわけではない。
 ばっさあ!!
 羽音も高らかに、しかし着地の音は立てず、薄紫の巨体が目の前に舞い降りる。
 一二音、そしてペコペコ。
 「店の外なら、もうお客様でもない……参る!」
 まるで今までは遠慮していたような口ぶりで、一二音が『血喰い』を構える。
 同時に、彼女を乗せた薄紫の騎鳥が両足を素早く交差させ、片方の膝をぐっ、と沈める。瑞波武道の足技『天津風(アマツカゼ)』にも似た構えは、まるで騎乗した一二音と、乗せたペコペコが文字通り、一体となったような錯覚を引き起こす。
 「せぇい!!」
 『鮮血喰い』の一撃。尋常ではない速さ、そして重さ。人間の剣技に、騎鳥のパワーとスピードを正確に組み込んだその威力を見よ。ルーンミッドガッツ大陸の各地で毎週末に、『砦』の所有権をを巡って繰り広げられる『ギルド戦』。その砦を守る巨大モンスター『ガーディアン』を相手にしてさえ、真正面から堂々と撃ち合えるだろう。
 いや、それより何より、屋内に入り込んですり足で戦うだの、屋根より高く跳躍しておいて宙返りからの蹴り、さらに連続技で回し蹴り、こんな無茶苦茶な体術は、いかに戦闘生物ペコペコといっても異常だ。
 それを可能にしているのは、騎乗している乗り手の絶妙のバランスと、そして何よりも徹底的な『調教』にある。

 『騎乗術』

 泉屋の女中頭、一二音こと『フィフネ・アルフ』が持つ神技こそがこれである。
 本名は『フィフネ』だが、初めて泉屋で顔を合わせた無代が聞き違えた上に、店員達がうまく発音できず『ひふね』。これをアマツ風に『一二音』と書き換えたのを本人が気に入り、以来、その名を名乗っている。
 生まれはアユタヤの一地方で、その地を治める領主の下、代々親衛隊長を勤める武人の家に生まれた。そこで騎乗術に天才を発揮し、アユタヤに知らぬ者なしという名手にまで成長する。
 だが彼女が成人し、父から親衛隊長の座を譲られたところで悲劇が起きた。
 アユタヤ王の座を巡って起きた騒乱、あの桜町は汲月楼の遊姫・佐里が国を捨てるきっかけとなった事件に、一二音の主が加担した。
 一二音は事情を知らされぬまま、しかし騒乱の状況は混乱を極め、気づいた時には一二音の主は反逆者として断罪される立場となっていた。陥れられたのか、もともとそうだったのか、今となってはそれを解く術はない。一二音はただ、代々守ってきた領主一家の命を救う、それだけのために駆けるしかなかった。
 王国の正規軍が領地に迫る中、味方は一二音が率いる親衛軍以外、事実上崩壊している。勝ち目のない戦いに命をかける義理は、誰にもなかった。
 『もはや手段を選んではいられません』
 一二音は、青ざめる領主一家に一人、進言した。
 そして単騎で城を抜け出すと、走りに走ってアユタヤの港の一角に駆け込む。アマツ・瑞波国がアユタヤに建てた商館、それは事実上の『大使館』でもある。
 「瑞波の第一王女・綾様におつなぎ頂きたい! フィフネ・アルフが一命を賭してのお願いである、と!」
 一二音と一条綾の二人が、同じ手練の女武者として交友を結んでいること、アユタヤの瑞波商館でそれを知らぬ者はいない。ただちに瑞波本国直行のワープポータルが開かれる。
 そして戻って来た時、一二音の後ろには一条綾、そして精強無比の一条武士団が続く。綾は一二音の頼みをすぐさま聞き入れ、実父の鉄、御側役の善鬼もこれを認めたのである。
 結果、血は流れなかった。
 領主の城に入った瑞波軍団を前に、さしものアユタヤ軍も行動を停止。瑞波国が間に入る形で講和が結ばれ、領主一家は領土を大きく減らしたものの、命を永らえた。
 「めでたしめでたし……とは、行かないな」
 講和が結ばれた夜、一二音は城の地下牢の中で、静かにつぶやいた。
 領主一家を救ったとはいえ、国内に他国の軍隊を引き入れたことは『売国』、極刑は免れない大罪である。一二音とて、それを覚悟で行動した。
 親衛隊長一人の命で、すべてが救われる。この結果は、むしろ彼女の望むところである。
 その最後の夜の静けさを、だが破る者がいた。
 「末期の酒だ。存分にやろう!」
 他でもない、綾である。
 『瑞波の銘酒』という触れ込みの酒を樽のまま担ぎ、『瑞波一の料理人』という、これまた触れ込みの青年を引きずって現れた綾は、一二音に酒と料理を勧め、自身も大いに飲み食いした。
 一二音も友人の気づかいを想い、飲んだ。決して酒に弱い一二音ではないが、とはいえ相手が綾ではどうにもならない。
 酔いつぶれて眠り、起きてみたら綾と、料理人の青年が口喧嘩の真っ最中。どうも元の牢屋ではない、見事な木の天井、柔らかい絹の布団。畳の匂い。
 何度か訪れた、アマツの空気。
 「だから! なんでもかんでも拾ってくんな! しかも俺の店に置いていくな!!」
 「いいじゃないか美人だし、しかも強いぞ?」
 「だから何だよ?! ウチは料理屋だぞ!!! それこそ一条家で召抱えりゃいいだろ!」
 「無理」
 綾がぴしゃりと言う。
 「見かけよりはるかに頑固者でな。何があろうが、二君には仕えん」
 二君に仕えず、つまり仕える主を一度決めたら忠義を貫き、別の主に仕えることはない、ということだ。
 そんな話を、一二音は綾にした覚えはないのだが、がさつなようでいて相手のことを良くわかってくれていることが、なんだか少しうれしかった。
 「それに、アユタヤに戻せばコイツ、死ぬぞ? いいのか?」
 「う……いや、それは」
 「国を売った『売国奴』として処刑されるのを覚悟で、主君とその一家を救った。実は彼女をこっそり逃がしたのも、その一家の依頼なんだぞ? そんな心づかいのあれこれを台無しにするのが、『瑞波の無代』と言われた男のすることか? ん?」
 「ぐ……っ」
 決まったらしい。
 一二音の意志はどこへやら、といって他に行くところもないのは事実だ。死は覚悟していたが、格別死にたいわけでもない。
 昨夜の酒も、料理も美味かった。この世にまだ、一二音の知らぬ喜びがある。
 「雇っていただけるなら、何でもしよう。『瑞波の無代』殿」
 布団から身を起こし、一二音は言った。
 言われた無代は目を丸くし、次いでくるり、と体ごと反対方向に向き変えると後ろ向きのまま、
 「わかった! わかりましたから、まず何か着て下さい!!」
 と、叫んだものであった。

 以来、一二音は泉屋に雇われている。雇ってみれば、貴族の親衛隊長として礼儀作法は完璧だし、人当たりもよい。綾の友人として、また武人として一条家の面々にもウケがよく、やがて実力で『女中頭』として店をまとめる立場となった。
 彼女自身が雛から育てた薄紫羽の愛鳥『竜胆(リンドウ)』も、もちろん一緒だ。同時に一条家の『騎鳥指南役』として招かれ、一条家の面々に騎乗術を伝授している。一条静が初見で有翼獅子・グリフォンを乗りこなすことができたのも(第十一話『Mothers' song』参照)、一二音の教えがあったことが大きい。
 
 「ていっ!!」
 人鳥一体、暴風の如き斬撃が閃鬼を襲う。閃鬼も反撃するが、異常ともいうべき騎鳥の機動性の前に戸惑いを隠せない。油断すれば鋼でおおわれたクチバシによる突きが、蹴りが襲ってくる。厄介といえばこれほど厄介な敵はいなかった。
 だがその時だった。
 「咲鬼は、厳忽寺(がんこつじ)にあり」
 誰が言ったものか、その姿は見えない。閃鬼が雇った八ツ谷の忍者は壊滅しており、彼らではない。
 だがその一言の効果は絶大だった。
 閃鬼の姿が消える。そして次の瞬間、遥か道の向こうに出現する。バックステップ、だが一気にこの距離を移動する、まさに神業。
 それでも。
 「逃げられる、と思うか?」
 十二音の声は真横から、同時に斬撃。
 薄紫の疾風、駆け比べ上等。
 瑞花の街、高速の追撃戦が始まった。

 つづく
 
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中の人 | 外伝『The Gardeners』 | 12:47 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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