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第十五話 Crescent scythe(8)
 (あ、意外と効いた?)
 敵の真ん前に刀一本、盾一つで立ちはだかりながら、静は内心でほくそ笑んだ。
 『神も頂かぬ、名も名乗れぬ賊ども』と、ほとんど思いつきで口にした煽りだったが、静が予想したよりよほど敵の心を刺したらしい。さして細心の観察や、精密な分析をしたわけでもなく、本当に思いつきで煽っただけ、というのがこの姫様の恐ろしいところなのだが、当の静にしてみれば、こうして言葉で敵を煽ることなどに大したウエイトを置いているわけではない。
 極言すれば、これは単なる『時間稼ぎ』だ。
 彼女の後ろでは、重傷を負わされた速水が自身に治癒魔法・ヒールをかけ、回復につとめている。彼の傷が治り、改めて速水自身と静に支援の魔法をかけ直す、その時間さえ稼げればいい話だった。
 そのために、まず指揮官らしき鎧僧に大ダメージを負わせ、『ついでに』言葉で煽った、それだけの話だった。
 圧倒的不利な戦場のど真ん中で、これだけの余裕というか『軽快さ』を発揮できる。一歩間違えば命を失う局面であっても、かくの如く飄々として振る舞う。
 『戦人(イクサビト)』とは、いや『戦女(イクサメ)』とはこういうものか。
 「あっちゃん?」
 「お待たせ。治ったよ、しーちゃん」
 後ろも見ずにかけた声に、速水が応える。
 「おっけー。じゃブレスと速度だけちょうだい。んでココもういいから、フールとうきの方、手伝って」
 「了解」
 同時に、後ろから支援魔法『ブレッシング』と『速度増加』が飛んでくる。静の身体が魔法光に包まれるのと、敵の鎧僧が3人同時に襲いかかってくる、それが同時。
 「『多けりゃ良い』ってモンじゃ……」
 静の身体を包んだ魔法光が一瞬、左右に大きくブレる。瞬時に起動したフェイントの動きを、魔法光が増幅して見せた。面白いのはこの場面で、静に『フェイントをかけている』という意識はなく、といってフェイントを使っていないわけでもない。
 戦場のど真ん中で棒立ちに見えて静、実は常時フェイントを使い続けている。立ち位置から半歩も動かないにも関わらず、常に身体の軸や重心をゆらゆらと移し、真の動きを敵に悟らせない。
 『そこにいるようで、そこにはいない』。ただ立っているだけで『技』である。
 「……ないのよ!!」
 3人の敵には、静がいきなり消えたようにも、突然目の前に出現したようにも、遥か彼方に瞬間移動したようにも見えたろう。
 結果、3人同時に仕掛けたはずが、うち2人はタイミングと間合いを外され、気づけば1対1。
 「うりゃ!」
 一人目が撃ち込む大槌の一撃。迎え撃つは静の銀狼丸。鍔元に近い位置に左掌を添え、刀身と鍔を使って外へ逃がすように、思い切り受け流す。相撲でいう『うっちゃり』の形。
 敵の巨体が、肩からバランスを崩す。
 「しッ!」
 ひらり、と身体をさばいた静が敵の背後に回りこむ。銀狼丸を逆手握り、柄頭に左掌を添えた逆突き。
 狙うは『脇の下』。鎧の構造上、そこには重装甲を仕込めない。もし仕込んでしまうと脇が閉じられなくなり、打撃斬撃の動きを阻害する。
 ざくん!
 脇から肺を貫き、心臓へ達する一撃。
 即死。
 がん!!
 直後に響いた、金属が金属を撃つ重い音は、二人目の敵が一人目の身体を撃った音だ。正確には、静が撃たせた音。
 一人目の胴体を貫いた銀狼丸の柄を、抜かずにぐいっ、と操り、二人目が撃ち込む打撃を、一人目の死体で受けてみせた。
 「よいしょお!」
 刺した柄はそのまま、崩れ落ちる一人目の死体に『足払い』をかけつつ、二人目の身体に向けて『タックル』を敢行させる。意識のない、ただ倒れてくるだけの身体というものは、生きている身体以上に重い。人間は、意識があれば無意識にバランスを取ろうとし、身体を預ける人間に対しても、負担を減らそうと活動するものだ。
 だが死人にその活動はない。
 「う、わ!?」
 崩れ落ちる鎧僧、その身体を下半身に預けられ、二人目が仰向けに仰け反る。
 仰け反った『顎の下』、それもまた鎧の弱点だ。そして、それを逃す静ではない。
 「ふッ!」
 一人目の脇から引き抜いた血塗れの銀狼丸を、至近距離から思い切り振り抜く。渾身の突き。ほとんど敵に密着した状態で、肩と肘の関節を綺麗に畳み込んで刀身を引き付けた姿勢から、上半身の力だけで撃ち抜くのだ。
 ぼりりっ!
 喉元から後頭部へと抜けた刃は、肉を裂くよりも骨、頚骨と頭蓋骨を砕く不気味な破壊音を残し、敵を絶命させた。これで2人、残るは1人。
 いや、もう勝負はついていた。
 3人目が、兜を脱いで両目を押さえ、よろよろとうずくまっているのだ。
 何が起きたのか、当の敵にも分からなかっただろうが、読者の皆様にはおよその予想がついているはず。
 そう、『飛爪(ヒヅメ)』だ。親指の爪ほどの鉄片、その複数の角を刃物に研ぎ上げた静の隠し武器。それ自体の殺傷力は低いが、静が使えばこの通り、敵の眼球や口腔、関節や急所に正確に撃ち込まれ、肉に埋まり込む。うまくすれば治癒魔法や治癒薬を使われても、しぶとく埋まったまま取り出せなくなり、敵の行動を大幅に制限してしまう。
 3人目は既に、その洗礼を受けていた。一体いつ投げたのか、おそらく誰にも分からなかっただろうが、明かせば『最初』である。3人の鎧僧が襲いかかってきた最初のタイミングで、一人目を迎え撃つ直前に、既に静の手から2個の飛爪が放たれ、3人目の両目を抉っていた。
 その結果、ヒールをかけても取り出せず、苦痛のあまり兜を脱ぐに至っている。
 ルーンミッドガッツ王国から治癒魔法・ヒールを含む様々なスキルが伝わって以降、アマツの武人たちが苦心して生み出した『治癒殺し』。傷を治癒しても、傷に埋まったまま取り出せない工夫をほどこした武器は、治癒スキルに依存する戦い方が染み付いた大陸の戦闘者には脅威だ。
 特に、ハイプリーストだけで構成された『聖槌連』、彼らにはほとんど『天敵』レベルだろう。
 「覚悟」
 銀狼丸にびゅっ、とひとつ血振りをくれた静が、さらに悠々と血糊を拭いながら鎧僧の脇に立ち、ふっ、と両手上段に構えたと見るや、一切ためらいなくびゅっ、と、その首を斬り落とした。
 ざばあ!!
 首の太さの鮮血が、遥か十数メートル先まで吹き散らされる。人間の心臓が血液を送り出す圧力は、人が考えるより遥かに強力だ。このように首を落とした場合、斬られた首は血液の圧力で遥か向こうまですっ飛ばされてしまう。ちなみに一部の武士は切腹で介錯を受ける際、これで首が汚れてしまうことを忌んだため、首の皮一枚を残して斬るのが上とされた。または身体を切り離すことを親不孝とする儒教の思想もあったとされるが、こうして首(正確には喉)の皮を残して斬ると、首は斬られた人間の懐にぽとり、と収まる。これを『抱き首』という。
 剣に不調法な者が行えば、抱き首どころか斬ることもできず、何度も首に斬りつける無様を演じることもあった。
 だがそこは静姫。別に切腹でも介錯でもないが、鮮やかに抱き首に撃ち落としている。
 これで3人。まさに鎧袖一触。
 異形に変身できる速水厚志の援軍を断り、他へと回す余裕は伊達ではなかった。確かに元から達人ではあったが、あのエンペラーやその配下の魔物どもとの戦いで、また一段と経験値を上げたらしい。
 技に淀みがなく、そして殺すに容赦がない。
 眼前に残るは大将格の鎧僧、1人。さきほど静に食らったダメージは既に回復したようだが、殺害された部下を蘇生させる素振りはない。
 「一対一(サシ)が望み?」
 再び血塗れを拭った銀狼丸を肩に、静が言い放つ。いちいち『上から』な物言いだが、こと戦場にあってこの姫君より『上』はそうそう存在しないだろう。
 だが。
 「静ちゃん、気ーつけて! そいつ『大将』だ!」
 「あ?」
 警告は、うきの声。だが静はその意味を理解できなかった。
 「知ってるよ。こいつがアタマでしょ?」
 「違げぇ〜!!!」
 うきが叫ぶ。
 「アルナベルツの大将は全員『神器持ち』なんだってば!」
 
 『神器持ち』

 やっとそれを理解した静が、さすがにあわてて大将に向き直った瞬間。
 びぃっ!!!
 巨大な質量が空気を引き裂く音。だがそれより速く、大将の大槌が静の身体に殺到していた。さっきとは明らかに違う、音速級の超打撃。
 びぃん!!
 静の身体がきりもみ状になって弾き飛ばされ、岩だらけの地面をガラガラと転がる。
 「っ……痛った!!」
 それでも素早く立ち上がったのはさすが、というより、最初に一撃で絶命しなかったのが、そもそも奇跡だ。
 いや、もちろん奇跡ではない。銀狼丸だ。
 静が肩の銀狼丸をとっさに振り下ろして盾にし、大槌の一撃から身体を反らした。猛烈なきりもみ回転は、その打撃力を受け流した余波である。
 ただし、だからといって無事では済まない。
 静が素早く、銀狼丸の刀身を切っ先から鍔元まで確認する。
 「ちっ!!」
 舌打ち。
 銀狼丸の『刃こぼれ』が、限界を迎えつつある。ウロボロスやエンペラーとの戦いで、相当の負担を強いた銀狼丸が今、かつてない強力な打撃を無理に受けた結果、刃にかなり大きな破損が発生した。
 手入れが、『研ぎ』が必要だ。さもなくば……。
 「静ちゃん! 逃げて! 『メギョンギルド』持ちだ! やばい!!」
 うきの声が聞こえる。
 だが、逃げる隙なし。
 豪っ!!
 神器の助力を得た超打撃が、静を襲う!

 つづく
 
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中の人 | 第十五話「Crescent scythe」 | 13:50 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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