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第十六話「The heart of Ymir」(20)

 わら、と敵の自動人形が群がる。そこへ、

 ひゅ!

 G16自動人形が両膝を落とし、右掌を前下方へ、そして左拳を腰に密着させる。

 『フェリオチャギの構え』。

 フェリオチャギ、通称は『旋風蹴り』。

 び、ひょお!!

 G16の右足が、左足を軸にして高速回転する。

 グラリスが本気で戦う時にのみ着用を許される『重任務仕様』のカプラ服は、スカートが邪魔にならないようスリット入り。人造物とは信じられない滑らかな、そして伸びやかな脚線と、清楚な下着の白色までが、見るものの目に焼きつく。

 ひゅばっ!

 回転と同時に、G16の体内に召喚された霊物質・エクトプラズムがほとばしり、周囲の大気を円形の刃に変える。

 ばぁん!

 G16に詰め寄ろうとした自動人形たちが、まとめて激しいダメージを受けて吹っ飛ぶ。

 瞬間、G16は次の構え。腰を高くすっくと伸ばし、右掌を正面、左拳を腰へ。

 『ネリョチャギの構え』。ネリョチャギ、いやこれは『かかと落とし』と言った方が断然、通りがいいだろう。

 ふ!

 G16の見事な脚線が振り上げられ、ほとんど垂直に天を指す。そこへ敵!

 ふっ!

 天を指したG16の足先が一瞬、人間の動体視力を上回り、消える。

 ごっ!

 G16に襲い掛かった敵が、まるで不思議さに首を傾げるようなポーズで、地面へ垂直に崩れ落ちる。敵の真上から打撃を与え、同時に敵の体幹へ闘気を叩き込むことで、相手を短時間、マヒ状態に追い込む。

 がっ!

 そこへもう一撃、今度こそ自動人形の首がへし折れる。

 さらに次の構え。両足前後に開き、軽く腰を落とす。右掌を正面、逆に左手のひらは後方へ大きく開く。

 『トルリョチャギの構え』。

 トルリョチャギ、回転蹴りだ。

 ネリョチャギとは違い、やや斜め上に流すように足を振り上げ、

 ふひゅっ!

 右から襲ってくる敵の顎を、斜め下へ刈り取るように蹴り下げる。

 ぎゅ、ん!

 G16のかかとから、敵の体幹へ大量の霊物質が流れ込み、背骨を中心に斜めのきりもみ回転。同時に、周囲に群がっていた仲間の自動人形をローラーのように巻き込みながら爆発、四散する。

 ただの物理的な蹴りではない、敵の身体そのものを爆弾と化す『術』だ。

 この世界に数ある職業の中でも、最も不可思議でユニークな職業といえば、モーラたち『拳聖』だろう。ほとんど手を使わず、足の蹴りだけで戦う格闘職『テコンキッド』が、その格闘術を神秘のレベルまで高めたのが『拳聖』とされる。

 ……とはいえその実態は、格闘職というよりもむしろ魔法職に近い。

 マジシャンやウィザードは、呪文や魔法陣を使って霊物質・エクトプラズムを召喚し、『燃焼という現象』や『凍結という現象』を再現する。

 対して拳聖は、その肉体の内部に霊物質を召喚・蓄積し、それを使って『打撃という現象』を再現する。

 よって拳聖が放出する霊物質を浴びた者は、実際には蹴られていないのに、まるで蹴りを食らったような現象を受け、倒れる。あるいは体内に『蹴られた』という事実だけを再現され、爆発四散する。

 『敵を物理破壊する魔法の化身』、とでもいうべきか。

 きわめて習得が難しく、高レベルとなると数えるほどしかいないとされる拳聖の、それが正体だ。自動人形であるG16の打撃も、霊物質の召喚を伴うことで拳聖の技を再現できる。

 G16の攻撃を受け、敵の陣形、というより『群れ』の一角が崩壊した。

 かぁん!

 G16のヒールが高らかに雪の床を打ち、長身に作られた人造のボディを前進加速。高速移動スキル『タイリギ』。

 今や美しい凶器と化した両足を、まるでナイフのように閃かせ、乱れた敵の群に突進。そして敵の直前で床を踏み切る。

 ど! ……っかあん!

 『ティオアプチャギ』、目にも止まらぬ飛び蹴りが炸裂、膨大な量の霊物質が周囲にばら巻かれる。まるでビーズをぶち撒けた机を、巨大なハンマーでぶっ叩いたような有様だ。敵が吹っ飛び、そして敵の群れ全体が激しく動揺する。

 ひょう!

 G16が再び、戦車・バドンの正面に戻ってくる。正面を見据える横顔は美しいが、無表情。そして、

 こき。

 無表情のまま、首を右に。

 こき、こき。

 続いて首を左右に。

 くい、くいっ!

 両手を振り上げ、振り下ろす。そうして次々、全身の関節を動かしていく。まるで『自分の身体の動かし方を確認している』ようだ。

 不恰好なラジオ体操、だがもちろん音楽なし。

 そして無表情。

 だが、その姿を最初は呆気にとられ、そして今は妙に真剣に見つめていた無代が、ぽつりと口を開いた。

 「……モーラ?」

 ぴく、と、その言葉にG16が反応する。正面を見つめていた無表情の美貌が、くるり、と後ろを振り返る。

 「やっぱり、モーラなのか? 」 

 短い間、恋人だったカプラ嬢。ディフォルテーNo4を持つカプラナンバーズ。

 彼女と無代は、カプラ社の正義を裏切ったアイダ専務の陰謀の下、共に捕らわれ、そしてモーラの身体は『BOT』に堕とされた。

 拳聖として鍛え上げられたその身体に、無代は一度叩きのめされ、そして浮遊岩塊イトカワへと送り込まれたのだ。

 あの時の蹴りは、魂の籠もらぬ『BOT』の蹴りだった。そして今は、肉体を人形に変えた蹴り。どちらもモーラその人のものとはいえない。

 それでも、目の前の女性を『彼女』と見抜いた。

 『人を見る目』において並ぶものなし、と言われた瑞波の無代らしいといえば、実に『らしい』話だ。

 「モーラ、お前……あ痛ぇっ!」

 思わずG16=モーラに駆け寄ろうとした無代が、見事に後ろへずっこける。

 無代の襟首を、いつのまにか飛来した武装鷹・灰雷がくちばしでがきっ、とくわえたのだ。

 「痛ってえ……おい、なにすんだ灰雷、って痛ぇ!!」

 鷹相手に猛然と抗議しようとした無代に、再び灰雷のくちばし。おでこを正面からげしっ、と突かれた。もちろん対人・対物用の重装備に換装した灰雷が本気で突いたなら、無代の頭などスイカか、下手をすれば水風船のように破裂して即死だろう。無代が『痛い』で済んでいるのは、よほど手加減している証拠だ。

 とはいえ、この幕間狂言のおかげで、無代とG16=モーラの感動の再会は水入りとなる。

 「来るぞ!」

 戦車の上から、ヒゲの大統領が警告。戦車の砲塔を巡らせ、敵を照準する。大統領親衛の兵士たちも、それぞれモーラを中心にポジションを取る。

 細かい事情はともかく、モーラという強力な前衛を得たことで、陣営の立て直しができた。

 「も、モーラ! お前が来たってことは、『マグフォード』も来てるのか!?」 

 無代が叫ぶ。

 「……まだ」

 正面を向いたまま、モーラの答えは短い。しかも不明瞭だ。『まだ』が『みゃあだ』に聞こえる。人形の発声器官に、まだ慣れていないのだろう。

 「まだ?!」

 「先に飛んで来た」

 「飛んで?!」

 「『融合』」

 「飛べんの?! 融合で?!」

 簡潔に説明しているつもりで、簡潔すぎて分かりにくい。

 拳聖には『太陽と月と星の融合』というスキルが存在する。魂術士・ソウルリンカーによって『拳聖の魂』を付与された状態でのみ使用可能な『浮遊戦闘技』だ。

 この状態になると、およそ10分ほどの間、空中をふわふわと浮遊しながら戦うことが可能になる……が、あくまで『浮遊』であって『飛行』ではない。

 原理としては、体内に蓄積した霊物質をわずかずつ放出させ、『地面を蹴るという現象』を細かく何度も再生することで『浮いているように見える』だけだ。

 そもそも拳聖が飛べるのならば、浮遊岩塊イトカワからの脱出も簡単だった。ちなみに『融合』の状態でイトカワから落ちれば、真っ逆さまに地上へ落下する。地面を『蹴る』には、距離が遠すぎるのだ。一応、地面に落ちる寸前で若干のブレーキがかかるものの、そのまま激突して死亡する。いくら頑丈なG16自動人形のボディでも粉々だろう。

 「説明は後」

 「お、おう……で、『マグフォード』は無事なんだな?! カプラのみんなを連れて、ジュノーへ戻って来るんだな!?」

 無代の質問は、ほとんど祈りにも似ていただろう。彼自身、それを信じてはいても、決して確証はなかったのだ。

 「もちろん」

 『もちろん』は『もてろん』。モーラ、だいぶ発音に慣れてきた。

 「マグフォードが来る! 帰って来る! やりましたよ大統領閣下! 皆様!」

 「うむ!」

 もう手放しではしゃいでいる、といっても過言ではない無代の様子に、ヒゲの大統領以下、仲間たちも相好を崩す。

 「よし、いずれにしても、もはや逃げ隠れできる状況ではない。このまま地上に出て『ユミルの心臓』を目指す!」

 ヒゲの大統領が決断を下す。確かに、ここに自動人形の軍団が送り込まれた以上、地上のレジスタンスに見つかるのも時間の問題だ。

 見つかれば当然、飛空戦艦セロの攻撃を受けるだろうが、そこは『マグフォード』とカプラ嬢たちを頼むしかない。

 一か八か。

 生来の戦人(イクサビト)である一条家の人間がいたら、目を覆うような博打戦法、下手をすれば特攻・玉砕戦法でもあるだろう。

 だが今、彼らに取るべき選択肢はほとんどない。

 「行きましょう、閣下」

 無代が起き上がる。今まで無代の襟をくわえたままだった武装鷹・灰雷が翼を打ち、宙へと舞い上がる。

 「うむ、行こう! 機甲、前進!」

 轟、とエンジンの音。がりり、とキャタピラの音。わずかな反抗勢力が、空中都市奪還へ動き出した。

 

 つづく

 

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中の人 | 第十六話「The heart of Ymir」 | 12:48 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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