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第十六話「The heart of Ymir」(27)

 「おっしゃ、任されたぁ!」

 グラリスの最大破壊力・G2ハイウィザードが、その杖を天にかざす。

 飛行船の甲板には既にG6ジプシーの歌が流れ、周囲には聖戦時代そのままの濃厚な魔素が満ちている。G4ハイプリーストによる強化の魔法も配備済みだ。さらに、

 「G2……!?」

 G3プロフェッサーが思わず警告の声を発したのは、G2ハイウィザードが追加の魔力薬剤を取り出したのを見たからだ。

 「その量は危険っ!?」

 だがG2、制止の言葉も聞かず、ぱきん、と瓶の口を折り飛ばし、くい、と中身をあおる。

 しらしらと白銀色に輝く、見るからに『身体に悪そうな』薬剤。この世界に魔力が満ちていた聖戦時代から、現代に生き残った魔法生物のうちでも最強とされるドラゴンの体液、そこから抽出されたものという。高レベルなものになれば、その価値は同じ重さの貴金属、もしくは宝玉と同等とされる。

 その効果は、人間の脳の魔力に関わる部位を、一時的に(ドラゴンの脳が結晶体であるのと同様に)結晶化させ、魔力回路を通過する魔力の量を増やし、速度を加速する。本来ならば脳が焼きつくほどの魔力を一気に流しても、問題なく魔法が発動するように、人体そのものを作り変えてしまうのだ。

 ただ、当然のごとくリスクはある。

 「ふっ……ぎイッ!」

 G2ハイウィザードの喉から、気味の悪いうめき声がもれた。

 ぴしっ!

 澄んだ、しかしやはり不気味な破裂音は、魔術師の眼球が一瞬、紫水晶色に結晶化した音だ。

 くち。

 濡れた、これも不気味な音は、魔術師の右の犬歯が一瞬だけ鉱物化し、ねじれた刃物のように唇を突き破った音だ。

 めり、と全身の体毛が鱗化し、一瞬で戻る。

 ぱき、と、頭髪が角化し、また戻る。

 わずか数秒のうちに、細身の魔術師の身体が猛烈に変化する。

 先刻までの戦闘準備で、既に相当量の薬剤を摂取しているはずの身体に、さらに危険な薬剤を追加した代償。

 「竜化現象だ。これ以上は!」

 人が、人でなくなってしまう。しかし、

 「だあってお」

 黙っていろ、と魔術師は言う。後ろも見ず、ただ眼下の敵をにらんで言う。

 そしてもう1本。

 「だめだ!」

 「……!」

 止める暇もない。

 

 ぎ……ギィィィィィィィ!!!!!

 

 人外の叫びが、今や牙の巣となった魔術師の口からほとばしる。安全圏などとっくに通り越し、明らかに自殺行為まで踏み込んだ過剰投与だ。

 誰だって危険とわかる、それ以上はいけないとわかるライン。

 だが、彼らはそれを踏み越える。

 いっそ鼻歌交じりで、もはや後戻りできない地点(ポイントオブノーリターン)を越えてしまう。

 魔術師とは、そういう者たちだ。

 だから、誤解を恐れずあえて言おう。

 

 魔術師とは、魔法のエキスパートではない。

 

 魔法のエキスパートとは翠嶺や架綯のような、多彩かつ精密な魔法技術を駆使するプロフェッサーに与えられてしかるべき言葉だ。

 だが、魔術師はそうではない。

 彼らにとって、魔法は手段に過ぎない。

 より多く、より早く、より広く、敵を駆逐し、蹂躙するための手段でしかない。

 だから極端に言えば、もっと効率良く敵を駆除できる手段が見つかったならば、彼ら魔術師は簡単に魔法を捨て、その新たな手段へとコンバートしていくだろう。彼らはそういう『生き物』なのだ。

 だから魔術師は、魔法のエキスパートではない。

 

 破壊のエキスパートである。

 

 「『メテオ……』」

 グラリスNo2ハイウィザードが、魔法を駆使する。もはや人語もまともに発音できないほど異形と化した口と、舌。

 だが心配は無用だ。

 もともと魔法とは、それら異形の者たちから人類が盗んだもの。

 異形の口から放たれる魔法こそ、いっそ『ネイティブ』といって差し支えないのだ。

 「『……ストーム』!!!!」

 がば!!

 青空が、灼熱の赤黒に裂けた。

 異形の、破壊の権化と化したG2ハイウィザード、彼女の身体を鋳型にして生成された魔法が、異界から膨大な量の霊物質(エクトプラズム)を召喚。

 同時に、霊物質を媒介とした『燃焼という現象』を再現する。

 酸素も、燃料も必要ない、ただ『燃えて高熱を発するという現象』そのものを、現実空間に投影するのだ。

 その熱量と範囲、そして対象物に対する破壊力は、術者の思念に比例する。

 (ぶち……壊せぇぇえ!!!!!!)

 一部どころか、ほぼ完全に結晶化した脳髄を、いっそマグマ状に溶かすほどの思念でもって、G2ハイウィザードは吠えた。

 どぉん!

 召喚された巨大な霊物質が、燃焼現象を引き起こしながら落下し、飛空戦艦『セロ』を直撃する。

 ごばあ!!

 さしも頑丈な流体金属の装甲が、焼けた溶岩を打ち込まれたミルクのように逆巻き、赤黒く変色していく。

 それも一発ではない。

 どぉん!! どぉん! どぉおん!!

 小山のような大きさの流星が続々と出現し、『セロ』に襲いかかる。いくつかはエネルギーウィングに防がれるものの、すべてを防ぎきれるものではない。

 「おお……!」

 甲板に陣取るグラリスたちから、誰ともなく感嘆の声。さしも経験豊富なチーム・グラリスも、これほどの破壊力を目にするのは初めてのことだ。

 いや、聖戦集結からこの方、これだけの破壊力を示した人類は稀、ひょっとしたら唯一かもしれぬ。

 ぱっ!

 『セロ』のエネルギーウイングが1本、消失した。もはや装甲に溜め込まれたダメージを保持しきれない。ダメージのエネルギーを熱に変え、時間をかけて放出するか、海へでも潜って一気に冷却する。

 これだけのエネルギーを放出すれば、たとえ海でも受け止めきれず、大地震クラスの津波が発生するだろうが、そうでもしなければ飛行を維持するエネルギーすら不足し、最後は墜落・爆散するだろう。

 異世界で建造され、聖戦終結まで戦った戦前機械(オリジナルマシン)として、ここまで深刻なダメージを負ったのは初めてのことだった。

 ぱっ!

 もう1本、光の翼が消失する。

 

 あと1本、あとたった1本。

 未来まで。

 

「いっけぇ!!!」

 G5ホワイトスミスが絶叫する。それはチーム・グラリスのみならず、飛行船『マグフォード』に乗るすべての人々の叫びだったろう。

 どぉん!

 最後の流星が『セロ』を撃つ。

 そして最後から二番目の流星は、大きく『セロ』を外れ、赤茶けた地上へと消えていく。

 

 そして。

 

 「だめだ」

 G1スナイパーの神眼、それを借りるまでもない。

 「1本、残った」

 忌々しく輝く光の翼が、『マグフォード』に迫る。

 

 つづく

 

JUGEMテーマ:Ragnarok

中の人 | 第十六話「The heart of Ymir」 | 13:48 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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