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第十六話「The heart of Ymir」(36)

 「状況はお分かりですか、マム?」

 マグダレーナが装備を整える合間を縫って、流が質問。

 「いや、ほとんどわからないね。この船、『何か』と戦闘になった?」

 「シュバルツバルトの飛行船に攻撃を仕掛けようとしていた。そこまでは自分たちも見ていました」

 流の答えに、

 「飛行船?!」

 マグダレーナが珍しく、素っ頓狂な声を上げる。

 「ええ、飛行船です。そこから、何かの攻撃を受けた。そこで窓が閉められ、見えなくされました」

 「途中までは見えてたのかい」

 「この船の指揮官は、無能な上に見栄っ張りのようでして」

 けちょんけちょんである。

 とはいえ事実、この飛空戦艦『セロ』を指揮する元王国レジスタンスのプロイス・キーンときたら、船の力を他人に誇示し、捕虜にした放浪の賢者・翠嶺をわざわざ流に見せびらかすような男だ。

 今回も、おそらくは『セロ』の力を誇示したかったのだろう。飛行船『マグフォード』を待ち伏せし、これを襲う様を流に『見学』させるべく窓、実際には壁面のリアルタイム映像を投影していた。

 だが、

 「逆に攻撃を受けて、都合が悪くなったのでしょう。また目暗にされました」

 「ふん」

マグダレーナにも、プロイス・キーンに対する流の軽蔑が伝染したようだ。

 「しかし、飛行船でこの戦艦をシメるとはね」

 「ジュノーで、この船の待ち伏せから逃げ切った飛行船がありました。おそらくアレでしょう。見たこともない双胴の飛行船で……」

 「そいつは『マグフォード』。『提督』アーレィ・バークが指揮する、賢者の塔直轄の飛行船だ」

 さすがにマグダレーナは知っている。賢者の塔の研究者たちを乗せ、国境・航路無視の特権を得て各国を飛び回る機密船。それが『マグフォード』だ。

 しかし流、そちらには興味を示さず、

 「『提督』アーレィ・バーク、とは何者です?」

 「バークかい? 元はシュバルツバルドの定期航路で飛行船の船長してた。当時から腕が良くて、ついたあだ名が『提督』。それを賢者の塔が引き抜いた」

 「ほう……」

 流の気のなさそうな返事だけ聞いていれば、まさかその瞬間、彼の『人さらいリスト』にバークその人の名前が書き込まれた、とは思うまい。

 後に流、無代を通じてバークの知己を得るや、凄まじい熱意で瑞波へスカウトを敢行し、バークを大いに迷惑がらせることになる。無代のとりなしで、瑞波への仕官こそ免れたが、流はそれでも諦めず、瑞波の若者を何人かバークに弟子入りさせている。

 その若者たちが後に『瑞波空軍』創設の礎となり、飛行船内にグリフォンを搭載した『飛空空母』が世界の空を席巻することになるのだが、それはまた後の話だ。

 とはいえ、いくらバークが凄腕であっても、

 「まさか『戦前機械(オリジナル)』を退けるとは……?」

 「さあ、そこはわからんね」

 マグダレーナも、まさか飛行船『マグフォード』に戦前兵器・エクソダスジョーカーXIIIが搭載され、さらにはカプラ嬢の師範部隊チーム・グラリスが搭乗し、まるで聖戦時代さながらの激闘を繰り広げた、とは想像もつかない。

 「ま、この船が今ボロボロで、乗っ取りのチャンスだ、ってことは私も同意だ」

 装備を整えたマグダレーナが部屋を出て、流の巨体に相対する。

 プリーストの意匠を取り入れた軍服は、墨色の禁欲的な色使いの反面、スカートの両側に深いスリットが刻まれ、武器を収納するガーターリングが丸見えだ。

 中身はともかく、外見はいっそ少女じみた美しさを誇るマグダレーナが着ると、なるほど悪魔でも堕落させられそうな、相反する魅力がある。

 流、その姿を上から下までじっくり観察しておいて、

 「よくお似合いです、マム。やはりそのお姿でないと」

 「そうかい。お眼鏡にかなって嬉しいよ」

 どこまで本気か分からないお世辞と、これまたどこまで本気か分からない皮肉。

 飼い主と飼い犬、喰う者と喰われる者。

 平気なのは本人たちだけで、ヒリヒリするような緊張感に顔を強張らせるのは周囲の方だ。

 (おいおい、どうなるんだよコレ?)

 アクト=ウインドが天を仰ぎ、ろくに信じてもいない神様に祈ったのは言うまでもない。

 「で? 艦橋を制圧かい?」

 マグダレーナが流に聞く。

 「いえ、まず先に船尾へ」

 「船尾?」

 流の答えが意外だったのは、タートルコアの面々も同じだ。

 「リーダー、船尾ですか?」

 アクトが確認する

 「そうだ。先に翠嶺師を救出する。戦力は多いに越したことはない」

 「ああ、なるほど」

 納得したアクト。確かに放浪の賢者・翠嶺は、流たちの部屋で見世物にされた後、船尾に運ばれた。それはキョウが見抜いている。

 「キョウ、翠嶺師はまだそこにいるな」

 「んふ」

  魔剣ムラマサを握り、握った手の親指爪をカリカリと齧りながら、キョウがうなずく。魔剣の憑依が進んだか、その目に輝きはなく、もう完全に言葉はしゃべれないようだ。

 一方で、驚いたのはマグダレーナだ。

 「翠嶺だと?! 戦前種(オリジナル)のか?!」

 「我らと同じく、この船に囚われておられます。我が母のご縁で、味方になっていただけるでしょう」

 「……」

 「何か、マム?」

 「いや、なんでもないさ」

 マグダレーナは首を振るが、そもそも彼女自身が聖戦時代を生きた戦前種(オリジナル)を模し、現代に生み出された『完全再現種(パーフェクトリプロダクション)』だ。

 複雑な思いがあって当然。

 そこを流、分かっているのか、いないのか。

 (多分、分かって煽ってるよな、大将)

 後尾へと廊下を移動しながら、アクトが内心で苦笑。付き合いが深いだけに、

 (まったく、タチ悪りぃぜ)

 ほんの一瞬だが、マグダレーナを気の毒に思った。

 

 つづく

 

 

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中の人 | 第十六話「The heart of Ymir」 | 15:00 | comments(1) | trackbacks(0) | pookmark |
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