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第十六話「The heart of Ymir」(56)

 「『カプラの諸君! 橋を守ってくれ!』」

 シュバルツバルト共和国大統領カール・テオドール・ワイエルシュトラウスの声が拡声器越しに響く。

 この国における『大統領』という存在が、他国の王様や殿様や教皇様と決定的に違う点は、しょっちゅう国民の前に姿を表し、しかも結構長めのスピーチを行うことだ。それは『選挙』という特殊な手続きを経て選ばれる、この国に固有の事情にも関わっている。

 そんな事情もあって、このヒゲの大統領の声は国民には馴染みであり、また国民ではないがシュバルツバルト共和国内に拠点を持つカプラ嬢たちも同様である。

 ましてジュノーに女子寮を持ち、この街を中心に街角を守るカプラ・グラリス達はなおさらで、当然、聞き慣れた人間の声をいちいち聞き間違えるような間抜けもいない。

 びゅん!

 橋に向かって移動を開始した戦車・バドンの真上を、何かが高速で通過する。

 矢だ。

 かーん!!!

 グラリスNo1・神眼のG1スナイパーの仕事と理解するより早く、橋の袂に集まっていた敵兵が1人、自分のバリア呪文の発動に驚いて顔を上げる。

 そして次の瞬間、

 ばつん!

 首筋を撃ち抜かれてぶっ倒れた。

 息をもつかせぬ2連撃。一の矢でバリア呪文を消費させ、二の矢で倒す。しかもこの射程、通常の矢場の数倍では効かない距離だ。

 もっとも飛行船『マグフォード』の船上で、既にキロ単位の長距離射撃を見せつけられてきたことを思えば、この程度の射撃にいちいち驚いていては身が持たない。

 ひょう!!

 直後、飛来したのは銀色の疾風。

 風に愛された女神の翼を持つ武装鷹・灰雷(ハイライ)だ。なぜか理由は不明だが、今は主人であるG1の指揮下を離れ、まるで自らの意思と戦略があるかのように行動し、戦いを続けている。

 がっ!! がっ! がっ!!!

 完全武装の爪と嘴、そして刃と化した羽を武器に、一襲にして3人の敵兵の眼窩をえぐり、二の腕を握りつぶし、喉を切り裂く。

 「撃(て)ぇ!」

 どぉん!!!

 ヒゲの大統領の射撃命令に、双頭戦車バドンの砲身が火を噴いた。直後、

 だがぁん!!

 橋のたもとに砲弾が着弾、橋を破壊しようと集まっていた敵兵を一気に突き崩す。

 「ハート技研の諸君は、カプラ嬢たちと合流してくれ!」

 「わかった……大統領、武運を!」

 戦車と共に地上に出ていたイナバ技師以下、ハート技研の社員達が、見よう見まねの敬礼で戦車を見送る。

 その背後、不時着した飛行船『マグフォード』からは、グラリスNo10・長身のG10ロードナイトを先頭に、カプラの前衛部隊がこちらに向かってくるのが見える。

 一方、戦車に従うのは大統領の親衛部隊と、戦車の車内にちょこなんと座り込んだ少年賢者・架綯(カナイ)。戦車の外にはカプラ公安部のエスナ・リーベルト。

 そしてもう一人、グラリスNo16自動人形(オートマタ)。今はディフォルテーNo4、モーラの魂が乗り移った憑依型グラリスが戦車の直衛だ。

 そしてバドンの車内狭しと働く瑞波の無代その人。

 「ありがとう! 機甲前進(パンツァー・フォー)!」

 ヒゲの大統領が気どって答礼、そしてお決まりの台詞。

 がああああああ!!!!

 バドンが加速する。車体の前部が持ち上がったまま降りてこない、その走りっぷりは、まるで大海で船を襲う巨大なサメが、波を蹴立てて突進しているかのようだ。

 同時に、大統領親衛の騎鳥騎士や魔法使い達が、僧侶の加速呪文を受けてだっ、とばかりに走り出す。速い。だが、滑らかな石畳が敷かれたジュノーの市街地では、戦車のスピードも相当だ。

 がああああああ!!!!

 たちまち浮遊岩塊をつなぐ空中橋に近づく。

 「閣下、我々が先行します!」

 「いかん!」

 戦車を追い抜いて橋を渡ろうとする親衛隊を、しかしヒゲの大統領が止める。

 「敵の集中攻撃があるぞ。キミらでは良い的(まと)だ。 ここは戦車で突破する!」

 言うなり、小太りの身体を砲塔から引っ込め、バタン、と装甲扉を閉めてしまう。

 「このまま橋を押し渡る!」

 「承知!」

 二門の戦車砲に、それぞれ砲弾を装填し終わった無代が応える。どうでもいいが、本来は部外者のはずの無代なのに、いつの間にか戦車を仕切っている。

 「前進(フォー)!」

 ヒゲが跳ね、戦車が進む。空中橋。空中都市ジュノーを構成する3つの巨大岩塊と、シュバルツバルトの大山脈をつなぐ四大橋のひとつだ。

 一個小隊が横列を組んで通れる、とされるこの巨大な橋は、人や物資の往来はもちろん、巨大岩塊が風に流されないように繋ぎ止める連結機構の役割も持っており、その強度は折り紙付きだ。

 がつん!

 戦車の無限軌道が、橋と岩塊のつなぎ目を乗り越える。この部分は可動式で、風などの影響を受け流す緩衝機構となっている。戦車の重みを受けた橋が一瞬、沈み込むような動きをみせたのが証拠だ。

 があああ!!

 戦車が走る。

 どぉん!

 走りながら発砲。当たりはしないが、橋を破壊しようと工作する敵部隊を牽制する。

 その間にも、カプラの遠矢と灰雷の攻撃が続く。

 「間に合え!」

 ヒゲの大統領が叫ぶ。瞬間、

 だっ!

 橋のたもとに集まっていた敵が、一斉に退いていく。工作が完了した。

 「いかん……! エンジン全開!」

 がああああああああ!!!

 戦車のエンジンが吠える。思い切り持ち上がった前方の覗き窓には、細く切り取られたシュバルツバルトの空の青。

 戦車と、それに続く親衛隊が橋の上を急ぐ。G10たちはまだ後方、橋にたどり着いていない。

 その時。

 ずがぁあああん!!

 目指す橋のたもと、右方向で大爆発が起きた。敵が工作していた、恐らくは爆弾が爆発したのだ。

 がくん!

 橋が一気に斜めに傾く。

 「うわあああ!?」

 傾いていく戦車の中に、悲鳴がこだまする。

 「若先生!」

 「平気ですっ!」

 架綯をきづかう無代に、少年賢者が気丈に叫び返す。

 「怯むな、突っ切れ!」

 「うぉおおお!!」

 戦車の操縦手が唸り声を上げ、必死に操縦桿を操作。波打つ橋を乗り越えていく。

 だだだっ!

 何かが外を駆け抜ける音。後に続いていた親衛隊だ。この悪条件では、無類の走破性を持つ騎鳥ペコペコや、いっそ加速呪文でスピードアップした徒歩の方が速い。

 がらがらがらがら!!

 橋が崩壊する。まず上面の石畳が砕け散り、その中に仕込まれた頑丈な鉄骨が歪み、ねじれていく。

 空中に浮遊する巨大な岩塊に、不断に影響する風の負荷が、一気に押し寄せてくる。

 があああ!!

 ほとんど斜めになりながら、バドンが走る。

 「行け!」

 がぁん!!

 戦車が飛び跳ねた。岩塊と橋をつなぐ、今や捩くれて千切れる寸前の緩衝機構を、無限軌道が乗り越えたのだ。

 ソロモン岩塊。シュバルツバルトの大統領府やセージキャッスル等の重要施設を要する巨大岩塊。

 戦車はたどり着いた。しかし、

 ががががががが!!!!

 橋が、ついに崩壊する。石はすでに散り散りになって地上へと降り、残った鉄骨の最後の一本が捻れ、根本から千切れてぶらん、と垂れさがった。

 「おのれ!」

 橋の直前で停止せざるを得なくなったG10が歯噛みする。この橋を落された今、彼女らがいるミネタ岩塊から、大統領達に続いてソロモン岩塊に渡るには、ぐるりと迂回してハデス岩塊を通るルートしかない。

 時間がない。

 事実上、ヒゲの大統領府達は孤立したのだ。

 がん!

 橋のたもとで停止した戦車の装甲扉が、まるで跳ねるように開く。

 「エスナ、無事か!」

 飛び出してきたのはヒゲの大統領、そして無代だ。

 「大丈夫……!」

 気丈な返事はエスナ。長い紫の髪を乱しながらも、どうにか戦車にしがみついている。

 「よかった……!」

 ヒゲの大統領が目に見えてほっとする。だが猶予はない。

 「閣下、囲まれます!」

 「わかっている!」

 戦車の周囲を固めた親衛隊に、大統領が怒鳴り返す。カプラの援軍がない以上、彼らは逆に崖っぷちへと追い詰められた格好だ。

 「ここにいても死ぬだけ、ならばこのまま敵を突破して、セージキャッスルに突入するしかない!」

 大統領が決然と言い放つ。

 「機甲前進!」

 聳え立つ賢者の塔へ、戦車が走り出す。

 

 つづく

 

 

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中の人 | 第十六話「The heart of Ymir」 | 16:21 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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